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文献詳細

雑誌文献

medicina41巻12号

2004年11月発行

文献概要

特集 臨床医必携 単純X線写真の読み方・使い方 胸部

ポータブル胸部単純X線写真の読影法―いかに正確な情報を抽出するか

著者: 栗原泰之1

所属機関: 1聖マリアンナ医科大学放射線医学教室

ページ範囲:P.178 - P.186

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典型的な症例

 ポータブル撮影装置による胸部単純X線写真(以下,ポータブル写真)には,さまざまなカテーテルやチューブが描出されていることが多い.これらのカテーテルやチューブは適切に挿入されていないと,機能しないだけではなく予想もしない合併症を招くこととなる.

 写真の心臓手術後の患者には,Swan-Ganzカテーテル,気管内挿管チューブ,左胸腔内チューブ,そして経鼻胃管が挿入されているが,経鼻胃管は食道ではなく気管内挿管チューブと同じ気管を通って,その先端は右下葉気管支末梢に位置している(矢印).このままでは経鼻胃管として機能しないのはもちろん,無気肺,肺炎あるいは気胸などの重大な合併症を招きかねないので直ちに抜去する必要がある.


 本邦ではあまり聞き慣れない言葉であるが,集中治療室や救急救命センターの患者に対して施行されるモニタリングのためのX線写真のことをintensive care radiologyとかintensive care imagingとかcritical care radiologyと呼び,広範囲をカバーする画像診断である.そのなかで最も多いのが,ポータブル胸部X線写真(以下,ポータブル写真)である.

 ポータブル写真は種々の制約があるものの,呼吸状態のみならず全身の水分量の評価もでき,きわめて情報量の豊富なモニタリングデバイスである.系統的で客観的なポータブル写真読影法と臨床情報の付き合わせから,かなり正確な病態把握が可能であると筆者は考えている.またカテーテルやチューブの不適切な挿入による医原性合併症を未然に防ぐことも可能であり,security controlのうえでもその重要性が増している.

 こうしたintensive care imagingが,実は中規模,大規模病院のX線診断のうち大きな割合を占めている.当院でもポータブル写真は,胸部単純X線写真の15%前後に達しており,全単純X線写真のうち10%に上っている.大量のポータブル写真から迅速に的確な画像情報を抽出する必要があるのだが,ポータブル写真という特異な写真であること,有所見率がきわめて高いこと,読影の担い手がきわめて多忙である集中治療室の主治医に任せられていることなどのため,多くの施設において個々のポータブル写真から正確な情報が十分抽出はされていないのが実情であろう.

 本稿では,ポータブル写真の読影に少しでも役立つように,実際の画像を中心に論を進めたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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