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雑誌目次

雑誌文献

medicina41巻13号

2004年12月発行

雑誌目次

今月の主題 ミネラルと骨代謝異常と骨粗鬆症 Editorial

ミネラル代謝調節と骨代謝に関する新たな展望

著者: 竹内靖博

ページ範囲:P.1962 - P.1963

ポイント

 カルシウム感知受容体・副甲状腺ホルモン・ビタミンDを中心としたカルシウム代謝のみならず,リン代謝をも含めてミネラル代謝を総合的に理解することが臨床的に重要になりつつある.

 骨粗鬆症の治療にはEBMの考え方を積極的に取り入れていく必要がある.

 ステロイド骨粗鬆症への対応を十分に行うことが不可欠である.

ミネラル代謝異常 【ミネラル調節機序の基礎知識】

ミネラル(カルシウム・リン)代謝調節のしくみ

著者: 岡崎亮

ページ範囲:P.1964 - P.1966

ポイント

 低アルブミン血症時には,血清Ca濃度を補正する.

 副甲状腺ホルモン(PTH)と1,25(OH)2Dは血清Caを上昇させる.

 カルシトニンは生理的な血清Ca濃度調節にかかわらない.

 血清P濃度は,Caほど厳密に調節されていない.

 血清P濃度は,Pの細胞内外のシフトの影響を受ける.

 PTHは血清P濃度を低下,1,25(OH)2Dは血清P濃度を上昇させる.

 FGF-23が,生理的な血清P濃度調節にかかわっているかもしれない.

副甲状腺ホルモン―副甲状腺ホルモンの分泌調節と作用機序

著者: 岡崎具樹

ページ範囲:P.1968 - P.1973

ポイント

 副甲状腺細胞膜上のカルシウム(Ca)感知受容体が,血中Ca濃度変化を認識し,PTH分泌量を瞬時に調節することによって,血中Ca濃度の恒常性を厳格に維持する.

 骨や腎臓において,PTH作用の中心的な役割を担うエフェクターが次々と判明してきたが,まだ全貌は明らかではない.

 特に,骨におけるPTH作用のさらなる解明は,骨形成促進による骨粗鬆症治療薬の開発に大きく寄与することが期待される.

ビタミンD―ビタミンDの代謝調節と作用機序

著者: 難波範行 ,   大薗恵一

ページ範囲:P.1974 - P.1976

ポイント

 ビタミンDは90%以上が皮膚で産生され,肝臓で25-OH-Dに,さらに腎臓で活性型の1α,25(OH)2Dに代謝される.

 1α,25(OH)2Dは核内受容体であるビタミンD受容体に結合し,特定の標的遺伝子の転写活性調節を行うことにより作用している.

【ミネラル代謝異常の診断と治療】

高カルシウム血症へのアプローチ―病態と鑑別診断

著者: 栗若里佳 ,   井上大輔

ページ範囲:P.1978 - P.1980

ポイント

 血清カルシウム(Ca)濃度は,副甲状腺ホルモン(PTH)および1,25-dihydroxyvitamin D〔1,25(OH)2D〕という主に二つのホルモンにより規定されている.

 高Ca血症のうち,90%以上が原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism:1°HPT)もしくは悪性腫瘍に伴うもの(malignancy-associated hypercalcemia:MAH)である.

 高Ca血症の鑑別診断の際には,同時に尿中Ca排泄量および尿細管Ca排泄率(FECa),血清P濃度,intact PTH,PTHrP-IRMA,血清1,25(OH)2Dなどを測定し,原因疾患を検索する.

原発性副甲状腺機能亢進症

著者: 杉本利嗣

ページ範囲:P.1982 - P.1984

ポイント

 血中カルシウム(Ca)あるいは副甲状腺ホルモン(PTH)が正常範囲内を示す例が少なからず存在する.

 軽症例では,家族性低Ca尿性高Ca血症との鑑別が重要である.

 複数腺の腫大があるときには,多発性内分泌腺腫症の合併を疑う.

 病的副甲状腺摘出術により,著明な骨量増加と尿路結石の再発防止が期待できる.

悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症

著者: 佐藤幹二

ページ範囲:P.1986 - P.1988

ポイント

 高カルシウム血症患者は腎性尿崩症患者と同様の病態になっており,脱水状態で入院してくる.

 脱水を補正し,尿量を増やすことが最も重要である.

 骨吸収阻害薬(ビスフォスフォネート)を点滴静注する.

高カルシウム血症を呈する多発性内分泌腫瘍症

著者: 櫻井晃洋

ページ範囲:P.1991 - P.1993

ポイント

 若年者(50歳以前)や男性の副甲状腺機能亢進症では1型多発性内分泌腫瘍症(MEN1)を疑う.

 副甲状腺病理が過形成の場合,MEN1を疑う.

 下垂体,膵内分泌腫瘍の患者では,必ず副甲状腺機能の検索も行う.

 遺伝子診断が確定診断や家族スクリーニングに有用である.

 遺伝子検査は必ず遺伝カウンセリングを行った後に施行しなければならない.

低カルシウム血症へのアプローチ―病態と鑑別診断

著者: 長谷川行洋 ,   沼倉周彦

ページ範囲:P.1994 - P.1997

ポイント

 低カルシウム(Ca)血症の頻度からみた鑑別診断として重要なものとして,以下のものが挙げられる.①新生児期に特有なもの(低出生体重児など),②腎不全,③重症疾患,④ビタミンD欠乏症,⑤Ca摂取不足,⑥低Mg血症,⑦22q11.2欠失症候群などにみられるPTH分泌不全,⑧稀な遺伝子異常として,Ca感知受容体の活性型変異,偽性副甲状腺機能低下症(Ia,Ib)によるもの.

副甲状腺機能低下症

著者: 千勝典子

ページ範囲:P.1998 - P.2000

ポイント

 特発性および偽性副甲状腺機能低下症の治療の基本は活性型ビタミンD3製剤だが,投与中の高Ca尿症に注意が必要である.

 Ca感知受容体(CaSR)の活性型変異による常染色体性優性低Ca血症では,活性型ビタミンD3投与により著しい高Ca尿症から尿路結石や腎障害をきたす場合があり,慎重に治療適応を検討する.

 低Mg血症による低Ca血症ではMg補充が不可欠なので,低Ca血症の患者では,低Mg血症の有無を確認する必要がある.

低リン血症の病態と診断

著者: 田中弘之

ページ範囲:P.2002 - P.2005

ポイント

 重症の低リン血症では筋症状や心不全となることもある.

 血清リンの主たる調節臓器は腎臓である.

 リン共輸送体NptIIの働きによりリンは調節されている.

 低リン血症の病態は,①リン供給の低下,②排泄の増加,③必要量の増加,である.

 新規のリン利尿因子としてFGF-23が同定されたが,FGF-23はPHEXの天然基質ではない.

ミネラル代謝異常と尿路結石症

著者: 中山耕之介

ページ範囲:P.2006 - P.2010

ポイント

 高カルシウム(Ca)尿症は,尿路結石症のリスクとなる.

 尿路結石発作を繰り返す症例や二次性高Ca尿症の原因疾患患者では,一度は尿中Ca排泄量を評価する.

 高Ca尿症の定義:蓄尿;200mg/日以上あるいは4mg/kg体重/日以上,随時尿;①尿中Ca×血清クレアチニン(Cr)/尿中Cr≧0.13mg/dl GF,②尿中Ca/Cr≧0.3.

 高Ca尿症の多くを占める特発性高Ca尿症の治療は,①腸管吸収亢進型:中性リン酸製剤,②腎型:サイアザイド系利尿薬,③骨塩溶解亢進型:ビスフォスフォネート製剤.

 さまざまな高Ca尿症関連遺伝子が明らかになり,病態の理解も進みつつある.

骨代謝異常 【骨代謝調節の基礎知識】

内科臨床の視点からみた骨代謝調節のしくみ

著者: 田村康博

ページ範囲:P.2012 - P.2014

ポイント

 内科臨床で遭遇する骨疾患の多くは,骨形成と骨吸収のアンバランスを伴っている.

 正常の骨代謝では,力学的負荷を目安に骨量や骨構造が調節されている可能性がある.

 ホルモン,サイトカイン,加齢,栄養,生活習慣などの因子が代謝性骨疾患などの病的な骨代謝の変化に関与していると考えられる.

骨代謝の指標―日常臨床での役割と正しい使い方

著者: 津村真由美 ,   三浦雅一

ページ範囲:P.2016 - P.2019

ポイント

 骨粗鬆症における骨代謝マーカー(BAP,DPD,NTX,CTX)の測定は,臨床的に骨粗鬆症と診断された患者の骨代謝状態の評価による治療薬の選択と治療効果の判定が測定実施の主な目的である.

 原発性副甲状腺機能亢進症の手術適応の決定,副甲状腺機能亢進手術の治療効果判定においては,OC,DPD,NTXなどの骨代謝マーカーが保険適用可能となり算定できる.

 悪性腫瘍の骨転移の指標,骨転移病巣の進行度の指標としてPICP,ICTP,DPD,NTXなどの骨代謝マーカーが悪性腫瘍特異物質治療管理料として保険適用できる.

骨量の評価―日常臨床での役割と正しい使い方

著者: 曽根照喜

ページ範囲:P.2020 - P.2021

ポイント

 骨量測定の部位・方法によって,骨折の予知能,骨量減少や治療効果の検出感度が異なる.

 腰椎と大腿骨近位部のDXAが骨粗鬆症診断のための最も標準的な測定法である.

 踵骨超音波法や橈骨DXAは骨粗鬆症のスクリーニングに適している.

 椎体変形,脊椎側彎,退行性の骨硬化などは腰椎DXAの値に大きく影響する.

 骨密度は測定再現性の2~3倍以上の変化をもって有意と判定される.

 腰椎DXAは薬物治療に対する感度が高い.

【骨粗鬆症の診断と治療】

病態からみた骨粗鬆症への臨床的アプローチ

著者: 細井孝之

ページ範囲:P.2022 - P.2024

ポイント

 骨粗鬆症は骨量の減少に起因する骨微細構造の破綻によって骨の脆弱性をきたし,易骨折性が亢進した状態である.

 本症は全身性の代謝性骨疾患としてとらえられている.その代謝異常の本質はいまだ明らかにされていないものの,骨強度の質的評価方法の確立がますます望まれている.

骨粗鬆症の診断と治療計画

著者: 板橋明

ページ範囲:P.2025 - P.2028

ポイント

 骨粗鬆症は骨量が減少し,骨強度が低下するために骨折しやすくなった病態であり,早期からの骨量減少予防の指導が肝要である.

 骨量が減少してきたら,骨吸収抑制薬などを積極的に使用し,骨折を予防するが,骨折がある場合にも,次の骨折を予防するために積極的な治療が必要である.

 骨折の予防には栄養や運動などの日常生活の指導と薬物療法に加えて,転倒防止対策が必要である.

続発性骨粗鬆症

著者: 田口学 ,   竹内靖博

ページ範囲:P.2030 - P.2032

ポイント

 薬理量のグルココルチコイドは使用量に伴って骨量を減少させ,骨折リスクの上昇を招く.骨量の回復には数年を要するため,ビスフォスフォネートなどを用いた早期の対応が必要である.

 糖尿病,関節リウマチ,慢性肝疾患など,日常よく接する疾患においても続発性骨粗鬆症は起こる.

 続発性骨粗鬆症は原発性骨粗鬆症に比較して進行が速いため,早期からの予防的治療が重要である.

【骨粗鬆症の診断と治療】―骨粗鬆症をどのように治療するか

骨粗鬆症治療におけるビタミンD

著者: 池田恭治

ページ範囲:P.2034 - P.2036

ポイント

 栄養素としてのビタミンDの欠乏は,高齢者に多くみられ,骨折の危険因子とみなされている.ビタミンDの補充が骨折を減少させるとの報告がみられるが,メタ解析では確実な証拠とは結論づけられていない.

 ホルモンとしての活性型ビタミンD作用不全の骨折への寄与は明確でない.活性型ビタミンDの骨に対する“薬理作用”は,骨吸収の抑制と相対的な骨形成の促進である.脊椎骨折に対しては,活性型ビタミンDの有効性を示す傾向にあるが,これも確実な証拠とはいえない.

 現在用いられている1α(OH)D3あるいは1α,25(OH)2D3の場合,カルシウム作用の個人差が大きく,骨における治療効果にもばらつきが大きい.副作用を懸念することなく,十分な薬理量を投与できるようなアナログの開発が必要である.

骨粗鬆症治療におけるビスフォスフォネート

著者: 中村利孝

ページ範囲:P.2038 - P.2040

ポイント

 ビスフォスフォネートでは,アレンドロネートとリセドロネートの脊椎骨折,非脊椎骨折に対する防止効果の結果には再現性がある.

 ビスフォスフォネートの骨折防止効果は,骨代謝の安定的な制御と骨密度増加効果による.

 アレンドロネートの長期連続使用のデータでは,安全性と有効性は10年間持続することが示されている.

骨粗鬆症治療におけるSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)

著者: 太田博明

ページ範囲:P.2041 - P.2044

ポイント

 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)とは新しく確立された薬剤で,エストロゲン受容体との結合を介して組織選択的作用を発揮する.

 塩酸ラロキシフェン(RLX)は骨折の既存の有無にかかわらず,ビスフォスフォネート製剤同様,新規椎体骨折の発生を低下させ,椎体変形の高度な重症骨粗鬆症であるSQ3度に限っては非椎体骨折も有意に低下させる.

 RLXの骨吸収抑制作用は骨の代謝状態を制御し,骨組織のターンオーバーを閉経前の状態に戻すことにより発揮されると考えられる.

骨粗鬆症治療におけるカルシトニンとビタミンK

著者: 和田誠基 ,   小野加津広

ページ範囲:P.2046 - P.2048

ポイント

 カルシトニンは破骨細胞表面のカルシトニン受容体を介して作用し,骨吸収を抑制する.

 カルシトニンは椎体骨折に伴う腰背部痛を軽減する.

 カルシトニン,ビタミンKは骨量増加や骨折抑制効果を示すという小規模の報告がある.しかし,エビデンスレベルが高いとされる大規模な検討が少ない.

骨粗鬆症における運動とヒッププロテクター

著者: 鈴木隆雄

ページ範囲:P.2050 - P.2053

ポイント

 骨粗鬆症に対する運動効果は確実に存在する.

 骨密度に対する運動効果は,特に荷重骨である腰椎あるいは大腿骨近位部において認められる.

 ヒッププロテクターの大腿骨頸部骨折に対する予防効果も,多くの比較対照試験で効果が認められている.

【その他の内科で診る骨疾患】

腎性骨異栄養症へのアプローチ―病態と治療

著者: 藤井秀毅 ,   深川雅史

ページ範囲:P.2054 - P.2056

ポイント

 腎不全患者においては,さまざまな骨・カルシウム代謝異常を生ずるが,その内容は以前と大幅に変わってきている.

 腎性骨症の予防のためには,血清Ca,P,PTH濃度の異常を是正させ,骨回転を適正に保つことが重要である.

 以上の目標は,血管の石灰化などの危険を伴わずに達成されなくてはならない.

腎不全における骨量減少と血管石灰化の病態と治療

著者: 塩井淳 ,   西沢良記

ページ範囲:P.2058 - P.2060

ポイント

 腎不全における血管石灰化は,高リン血症と二次性副甲状腺機能亢進症によるカルシウム・リン積の上昇により引き起こされる.

 腎不全における血管石灰化は,心血管合併症や死亡のリスクを増加させる可能性がある.

 腎不全における骨量減少および血管石灰化の治療において,カルシウムの過剰負荷に注意を払う必要がある.

悪性腫瘍による骨病変の診断と治療

著者: 安倍正博

ページ範囲:P.2061 - P.2063

ポイント

 骨は悪性腫瘍の転移の好発部位である.

 骨転移の診断には,画像診断とともに骨代謝マーカーが有用である.

 骨転移の治療には放射線療法・手術療法・抗癌剤があり,ホルモン依存性癌では内分泌療法が行われる.

 近年,骨転移に伴う骨病変に対し強力な骨吸収抑制薬であるビスフォスフォネートが臨床応用され,骨折など骨関連事象の発生防止や骨痛などの改善に伴うQOLの向上が示されている.

クル病,骨軟化症の病態と治療

著者: 山本威久 ,   大薗恵一

ページ範囲:P.2064 - P.2068

ポイント

 クル病,骨軟化症には,生理量のビタミンDで治癒するビタミンD欠乏性のものと,生理量のビタミンDが無効であり,生理量または薬理量の活性型ビタミンDを必要とするビタミンD抵抗性のものがある.

 ビタミンD欠乏性クル病は,近年の夜型生活の普及やアトピー性皮膚炎の増加による過度の食事制限のため最近散見されるので,注意を要する.

トピックス

Fibroblast growth factor (FGF)-23

著者: 福本誠二

ページ範囲:P.2070 - P.2071

ポイント

 くる病/骨軟化症は,骨石灰化障害を特徴とする疾患群である.

 慢性の低リン血症は,くる病/骨軟化症を惹起する.

 低リン血症性くる病/骨軟化症の原因として,腫瘍随伴症候群の一つである腫瘍性くる病/骨軟化症がある.

 FGF-23は,腫瘍性くる病/骨軟化症の原因因子として同定された液性因子である.

 FGF-23は,腎近位尿細管でのリン再吸収を担う2a型ナトリウム-リン共輸送体発現を低下させることにより,リン利尿,低リン血症を惹起する.

栄養としてのビタミンDとカルシウム再考

著者: 岡野登志夫

ページ範囲:P.2072 - P.2074

ポイント

 ビタミンDとカルシウムの摂取不足は,必ずしも骨粗鬆症のリスクファクターとはならない.

 ビタミンDとカルシウムの補充は,骨粗鬆症治療における基礎治療であり,そのうえで適切な治療薬の選択が行われるべきである.

 日本人高齢女性では,血中25(OH)D濃度が50nmol/lを下回るとビタミンD不足とみなされる.

 一般に,血中の25(OH)D濃度とPTH濃度は負の相関を示す.

骨粗鬆症における女性外来の役割

著者: 伊東昌子

ページ範囲:P.2075 - P.2077

ポイント

 性差を考慮した医療の必要性が示され,女性外来への意識が高まってきた.

 骨量は女性のライフサイクルと強く関係する.

 女性ホルモンの低下とかかわりの深い骨粗鬆症は,更年期あるいはそれ以前からの健康管理が重要である.

 骨粗鬆症や脊椎骨折に伴う腰痛や外見の変化など,患者のQOLへの配慮も必要である.

生活習慣病の治療薬と骨代謝

著者: 竹田秀

ページ範囲:P.2078 - P.2080

ポイント

 近年,ライフスタイルの欧米化とともに高血圧,高脂血症,糖尿病などのmetabolic syndromeが問題となってきた.

 最近,それら生活習慣病の治療で用いられる治療薬が骨代謝にも影響を与えることが知られてきた.これは,他の生活習慣病の治療により骨粗鬆症をも同時に治療しうる可能性を示すものである.

座談会

ステロイド骨粗鬆症の現状と対策

著者: 岡崎亮 ,   田中良哉 ,   田中郁子 ,   竹内靖博

ページ範囲:P.2081 - P.2093

竹内 本日は,「ステロイド骨粗鬆症の現状と対策」というテーマで,海外の状況もふまえわが国の現状と将来の展望について,専門の先生方にご意見を伺いたいと思います。

■ステロイド骨粗鬆症診療の現状

 竹内 「ステロイド骨粗鬆症」については,1970~80年代前半までに,薬理量のステロイドを投与されている患者さんで,著明に骨折が多くなるという臨床成績が明らかにされました.その後,1990年代に入り特にビスフォスフォネート製剤の導入をきっかけに治療介入がなされるようになり,その臨床成積が飛躍的に増えてきています.現在,ステロイド治療による頻度の高い重篤な副作用としてステロイド骨粗鬆症に対する関心が高まっており,この数年,米国,英国,カナダなどから,治療指針あるいは管理指針が提唱されています.実際にわが国でも,膠原病内科,リウマチ内科を中心に,この病態が非常に注目されています.

 この度,2004年8月5~7日に開催された第22回日本骨代謝学会で,わが国でのステロイド骨粗鬆症に対するガイドライン,管理基準の原案が発表されました.今回はその機会を捉え,このような座談会を企画いたしました.

理解のための31題

ページ範囲:P.2095 - P.2101

演習・小児外来

〔Case11〕生後6カ月時より発熱,口内炎を繰り返す2歳男児

著者: 滝田順子

ページ範囲:P.2103 - P.2105

症 例:2歳男児.

 主 訴:発熱,頸部リンパ節腫脹.

 現病歴:2002年10月1日より発熱,軽度鼻汁が認められ,翌10月2日に近医を受診したところ,左頸部の腫瘤を指摘された.発熱と左頸部腫瘤の原因精査・加療目的で同日,当科に紹介された.

 家族歴:6歳の姉が慢性歯肉炎のため歯科でフォローされている.

新薬情報【最終回】

ゾレドロン酸水和物注射液(ゾメタ®注射液4mg) Zoledronic acid hydrate

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.2106 - P.2108

適応■悪性腫瘍による(固形腫瘍の骨転移や多発性骨髄腫に伴う)高カルシウム血症の治療.

用法・用量■通常,成人にはゾレドロン酸として4mgを100mlの生理食塩水または5%ブドウ糖注射液に希釈し,15分以上かけて点滴静脈内投与する.ただし,軽症の高カルシウム血症(血清補正カルシウム濃度が12mg/dl以下)の場合は,事前に輸液などによる治療を試みたうえで投与の必要性を判断する.なお,再投与が必要な場合には,初回投与による反応を確認するために少なくとも1週間の投与間隔をおいたうえで4mgを投与する.ビスホスホン酸に対して過敏症を有する患者,妊婦には投与禁忌である.

聖路加国際病院内科グランドカンファレンス(8)

意識障害をきたし,ショック状態で搬送された75歳女性

著者: 岡田定 ,   飛田拓哉 ,   児玉知之 ,   綾部健吾 ,   山本博之 ,   岡島由佳 ,   鈴木高祐 ,   藤原美恵子 ,   不破相勲 ,   林田憲明 ,   小松康宏 ,   蝶名林直彦 ,   橋本明美 ,   古川恵一 ,   中村匡宏 ,   横田恭子 ,   西村直樹 ,   内山伸

ページ範囲:P.2109 - P.2121

岡田(総合司会,以下総司会) それでは本日のグランドカンファレンスを始めます.症例のプレゼンテーションを,担当の児玉先生,よろしくお願いいたします.


症例提示

 児玉(担当医) 患者さんのプロフィールは75歳女性,専業主婦です.脳梗塞で左半身不随の夫の介護をしておられます.息子さんとともに3人暮らしの方です.主訴は意識障害です.

 現病歴:今まであまり医療機関を受診したことはなく,2003年12月頃より,体の節々の痛みが続いたが,放置していた.2004年2月初旬頃に微熱,咳き込みが1週間ほど続いたが,すぐに軽快した.2004年3月下旬頃より時折だるいと訴えるようになり,2004年3月26日頃から歩けなくなり寝たきりになった.息子,夫が自宅で看病していたが,4月3日夕方頃より意識障害が出現,呼びかけにも反応不良となったため,4月4日(日曜日)未明,救急車にて当院搬送受診となった.

 既往歴:50年前に帝王切開.以後時期不明だが,子宮摘除. 医療機関の定期的な受診はなかったもよう.

 家族歴:特記すべき事項はなし.

連載

目でみるトレーニング

著者: 岩崎靖 ,   竹村佐千哉 ,   中曽一裕

ページ範囲:P.2122 - P.2127

問題 391

 症 例:74歳,男性.

 主 訴:右上下肢脱力,ろれつ不全.

 既往歴:高血圧にて近医に通院加療中.通常は降圧薬の内服により,収縮期血圧160mmHg前後,拡張期血圧100mmHg前後で安定していた.

 現病歴:朝起床時より全身倦怠感を自覚していた.昼頃からろれつ不全が出現し,その後次第に右上下肢の脱力が出現してきたため,神経内科を受診し入院した.

 身体所見:血圧120/86mmHg,脈拍60/分・整.体温36.0℃,呼吸音正常,心雑音なし.眼瞼結膜に貧血・黄疸なし.その他,一般内科所見に異常なし.

書評

臨床研修の現在 全国25病院医師研修の実際

著者: 宮城征四郎

ページ範囲:P.2057 - P.2057

 COML(Consumer Organization for Medicine & Law:医療と法の消費者組織―代表:辻本好子氏)に「病院探検隊」という,患者の視点から見た病院のあり方をただす社会活動がある.多くの場合,患者本位に改善を望む心ある病院からの要請に応ずる形で隈なく病院全体を探検するのであるが,その目は厳しく,病院にとっては痛いところを鋭く指摘される.しかし,その病院が提供している医療の質の改善という観点からは,大いに参考になる立派な活動である.

 本書は研修医の視点から見た「病院探検」ルポルタージュである.同氏は東京大学美術史学科卒業後,銀行などの勤務を経て東海大学医学部を再受験し,2002年に卒業したばかりの新人医師である.1年の初期研修の後,故あってある医療情報誌を刊行する会社に就職し,臨床研修必修化元年にふさわしく,研修医の立場に立って医療情報を発信するユニークな仕事に従事された.本書はその仕事の一部である.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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