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雑誌目次

雑誌文献

medicina41巻2号

2004年02月発行

雑誌目次

今月の主題 腹部疾患をエコーで診る 超音波画像って何?

知っていると診断の幅が大きく広がる超音波画像の原理

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.172 - P.174

個々の疾患に関する知識が深くても,超音波診断をパターン認識のみから理解しようとすると,遠からず壁に突き当たる.同じ疾患であっても,超音波像は十人十色であるからである.しかしながら,超音波像の成り立ちとそのアーチファクトとを理解すれば,超音波像自体から,体内で起こっている現象を推定することも可能となる.かくのごとき過程は一見遠回りのように思われるかもしれないが,実は,超音波診断の前に立ちはだかる壁を乗り越える最も有効な手だての一つである.本稿では,超音波像を理解するうえで避けて通れない,超音波像の成り立ちに関して,そのエッセンスをできるだけ平易に概説する.

1. 超音波とは何か?

 超音波は,可聴域以上すなわち20kHz以上の周波数をもつ粗密波である.超音波断層装置で用いられる超音波の周波数は,2~30MHz程度である.周波数が高いほど,超音波像の分解能も高くなるため,できるだけ高い周波数の装置を使用することが望ましいわけであるが,周波数が高くなればなるほど超音波ビームの減衰も強くなるため,深部の臓器は捉えにくくなる.したがって,腹部超音波検査では,一般に3~5MHz程度の低い周波数の探触子が,また表在性の甲状腺や乳腺などでは,7.5~12MHzの高い周波数の探触子が用いられる.最近では,1つの探触子で広帯域をカバーするものが用いられるようになってきた.

アーチファクトを征する者は超音波を征す

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.175 - P.182

1. solid pattern, cystic pattern, mixed patternって何?

 超音波が最初に注目されたのは,囊胞と充実性組織とを比較的容易に鑑別しうるという点である.囊胞は内部に液体が入っているため,一般に音響学的には均一である.つまり,囊胞内部ではエコーが生じるような音響インピーダンスの異なる境界面は存在しないため,無エコー,すなわち真っ黒に表示される.これをcystic patternという.厳密には,cystic patternというためには,さらに2つの条件が必要となるが,これらに関しては後述する.一方,充実性組織では,前稿で述べたようなスペックルパターンが表示される.これをsolid patternという.われわれはアーチファクトであるスペックルパターンを利用して充実性組織を認識しているということになる.cystic patternとsolid patternとが混在して認められる場合をmixed patternという(図1).

2. Bモード超音波断層法の主なアーチファクト

 超音波断層像は組織の割面そのものとは異なる.したがって超音波像では,①本来組織として存在しないものが描出されたり,②本来組織として存在するものが描出されなかったり,あるいは③画像自体が歪んで描出されることもある.これらを総称して,アーチファクトと呼ぶ.アーチファクトをなくすことが,超音波装置を開発する技術者の目標になるが,診断をするうえでは,アーチファクトは必ずしも悪い結果ばかりをもたらすものではない.前述のスペックルパターンはその格好の例である.

症候からのアプローチ

上腹部痛

著者: 金田智

ページ範囲:P.184 - P.184

上腹部痛の診療にあたっては,問診や診察,臨床経過,臨床症状,採血データなどの情報から鑑別診断を進めるわけであるが,確診したり否定するために超音波検査やCTなどの画像診断が行われる.超音波検査は無侵襲で簡便であるが,十分な技術がないと大きな病変も見落とすことがあり,検者の技能や患者の状況による検査の限界も心得ておかなければならない.

 上腹部痛の原因としては,心疾患と上腹部臓器の病変をまず想起するが,上腹部痛といっても,激痛から不定愁訴的な漫然とした痛みまで,きわめてさまざまである.激痛であれば,胃・十二指腸潰瘍の穿孔や急性膵炎などを考える.痛みと熱があれば,肝膿瘍,急性胆囊炎,腎膿瘍,腎盂腎炎などの炎症性疾患を考える.慢性的な痛みの場合は,悪性腫瘍も含めて考えなければならない.各臓器の超音波所見と臨床所見から鑑別していく(表1).

下腹部痛

著者: 平井都始子 ,   大石元

ページ範囲:P.185 - P.185

超音波検査は,下腹部痛をきたす各種疾患の確定診断と適切な治療法選択に役立つ有力な情報を与えてくれる場合が多い.したがって,下腹部痛患者が来院した場合,腹部単純X線検査とならび,ファーストチョイスの検査法として超音波検査を行うのが望ましい.ただし,超音波検査には,簡便かつ非侵襲的に広い範囲の臓器が検索できる大きな利点があるが,①術者の経験や知識により診断精度に差がみられる,②客観性に欠ける,③患者の体型・症状によっては十分な検査ができない,という欠点もあり,必要に応じてCT(婦人科疾患などにはMRI)などの併用を躊躇してはならない.特に急性腹症では,患者の状態に応じて臨機応変な対応が求められる.

 下腹部痛を主訴とする疾患は数多く認められ,超音波検査に際して,個々の臨床症状や特徴的超音波所見を認識しておかねばならない.図1に臨床症状と予測される疾患を示したが,痛みの場所,強さ,間欠的疼痛か持続性疼痛か,急性発症か慢性的な痛みか,女性か男性か,などによって予測される疾患をある程度絞ることが可能である.例えば,右下腹部痛をきたす代表的疾患として,急性虫垂炎,大腸憩室炎,腸間膜リンパ節炎などが挙げられる.しかし女性で持続的な痛みであれば,急性付属器炎,卵巣出血,子宮外妊娠破裂,卵巣腫瘍茎捻転などの婦人科疾患を考慮する必要がある.また間欠的な痛みであれば,感染性腸炎,Crohn病,腸重積症などの消化管疾患も念頭に置いて検査を進めることになる.通常病変に一致した部位に圧痛を訴えるが,必ずしも痛みの強い部位にだけ病変が存在するとは限らないため,症状のある部位のみならず全体を観察する姿勢が大切である.特に消化管病変は,後述されている個々の疾患の特徴的超音波所見を熟知し,高周波のプローブを使用するなど工夫しながら注意深く検査することが疾患の診断あるいは推定につながる.

背部痛

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.186 - P.186

背部痛(図1)の原因となりうる疾患は表1のように多数あるが,腹部超音波領域での疾患で最も多いのは,腎ないし尿管結石である.そのほか,腎疾患であれば水腎症や腎盂腎炎などが,上腹部臓器では膵炎,膵癌,胆囊炎(胆石を含む)などが,血管系では大動脈瘤・解離などが考えられる.

腹部外傷

著者: 高良博明 ,   堀晃

ページ範囲:P.187 - P.187

腹部外傷においては,特に出血性ショックなどの循環動態不安定な患者では致死的となりうる腹腔内出血を迅速に検出し,タイミングを逸することなく早期開腹術などにより根本的止血を施し救命することが最も重要である.このような状況下で,循環動態管理を含む救命処置と並行してベッドサイドで遂行できるエコー検査は,迅速性・簡便性・無侵襲性・易反復性の点において非常に有効である.腹腔内出血を迅速に検出する目的から,FAST(focused assessment with sonography for trauma)と呼ばれるエコー検査手法が推奨されている.これは決められた4カ所のP領域(pericardial, perihepatic, perisplenic, pelvic)を最低限エコーで検索することにより,腹腔内出血だけでなく心タンポナーデ,血胸の有無を迅速かつ簡便に検出しようとする方法である(図1)1).実際には心窩部,右横隔膜下腔,肝周囲,Morison窩,右傍結腸溝,左横隔膜下腔,脾臓周囲,左傍結腸溝,そしてDouglas窩の順で検索を行う.出血は最少100mlの貯留で同定可能であり,エコー所見は通常無エコー領域として認められるが,経時的に凝血を生じると,索状,網目状の内部エコーを伴ってくる.出血量推定法は,前述の検索部位における出血の有無や右横隔膜下の液体の厚みでもって出血量を推定する松本らの報告(表1)2)をはじめ,いくつかの方法がある.受傷直後は腹腔内出血がみられないか,あるいは少量で循環動態が安定している患者において,これらの推定方法を用いて繰り返し出血量の評価を行うことで,今後の治療方針の判断材料の一つとして活用することが可能である.女性における生理的な腹水,腹腔内癒着による不均一な血液分布,腹腔内膀胱破裂による尿漏出は,正確な腹腔内出血の評価を誤る可能性があり注意が必要である.

 本稿では,腹部外傷におけるエコーの最重要課題を腹腔内出血の評価であるとの観点から,これに絞って記述を行った.

黄疸

著者: 森秀明

ページ範囲:P.188 - P.189

黄疸は,臨床的には血清ビリルビンが2mg/dl以上に上昇し,皮膚や粘膜などが黄染した状態をいう.黄疸は障害される部位により,①肝前性(溶血性)黄疸,②肝性黄疸,③肝後性(閉塞性)黄疸に分類され,また増加するビリルビンの種類により,①非抱合型(間接)ビリルビン性黄疸,②抱合型(直接)ビリルビン性黄疸に分類される.非抱合型ビリルビンの上昇する疾患には,肝前性黄疸(溶血性貧血,シャント高ビリルビン血症など),肝性黄疸(体質性黄疸:Gilbert症候群やCrigler-Najjar症候群など)があるが,いずれの疾患も超音波上は有意な所見はみられない.抱合型ビリルビンの上昇する疾患には,肝性黄疸〔肝細胞障害,肝内胆汁うっ滞,体質性黄疸(Dubin-Johnson症候群やRotor症候群)〕,肝後性黄疸がある.肝性黄疸と肝後性黄疸の鑑別には超音波検査が有用であり,肝後性黄疸では肝内および肝外胆管の拡張が認められる(図1a,b).健常者では肝内胆管径は1mm前後,肝外胆管径は6mm以下であるが,胆囊摘出術後や高齢者では肝外胆管は太くなる傾向があるため注意を要する.また肝後性黄疸では胆囊の拡張の有無がポイントで,肝内および肝外胆管の拡張とともに胆囊の腫大を伴っていれば3管合流部より下方の閉塞,胆囊の腫大がなければ3管合流部より上方の閉塞が考えられる.表1および図2に超音波が診断に有用な黄疸をきたす代表的疾患とその鑑別のポイントを示す.

悪心・嘔吐

著者: 小川眞広

ページ範囲:P.190 - P.190

悪心とは咽頭~前胸部に感じる不快感のことをいい,消化管の内容物が口腔内に逆流することを嘔吐という.嘔吐はその原因により,中枢性,反射性,精神性,乗り物酔いなどでみられるその他,に分けられる.もちろん,詳しく病歴を聴取することが診断に際して重要であるが,消化器疾患が原因の場合には超音波検査でも所見が得られる.

 消化器疾患では,消化管の閉塞や運動機能の低下により起こり,疾患としては,食道炎,アカラシア,胃炎,胃・十二指腸潰瘍,胃癌,大腸癌,幽門狭窄症,イレウス,腹膜炎,虫垂炎,胆石症,胆管炎,肝硬変,急性肝炎,慢性肝炎,急性膵炎,慢性膵炎,膵癌などが挙げられる.したがって,超音波検査で診断を行うためのポイントとしては,①消化管の閉塞部を直接描出する,②消化管の機能低下状態を観察する,③消化管の機能低下をきたす他の主病巣を描出する,などがあり,通常腹部スクリーニング検査で使用される3.5MHzのプローブのほかに高周波プローブを用いて腸管壁の状態などを細かく観察することも重要である(最近の装置では高周波プローブでも深部減衰が少なくなっており,10MHzでも腹壁から7cm程度まで観察可能である).消化管疾患を疑う場合,全消化管を超音波でスクリーニングするのは無理であり,腸液の貯留や異常ガス像などの間接所見に注目し,その末梢側を観察するようにして主病変を同定することが大切である.これらの疾患のなかで,超音波検査が特に有用な疾患としてはイレウスが挙げられる.イレウスは,機械的な閉塞で腸管の血行障害のない単純性イレウスと,血行障害を伴う絞扼性イレウス,機能的に腸管が麻痺して起こる麻痺性イレウスに分類される.単純性イレウスでは腸液がto and froとなり動くが,絞扼性になると限局した腸管の拡張で内容物の動きも少なくなり腸管壁の肥厚や腹水が著明となる.貯留した腸液内にKerckringの襞が浮かんで見える状態はkey board signともいわれ,特徴的な所見である(図1).また,忘れてはいけないのが若年の女性においての妊娠であり,非侵襲的な検査である超音波検査は有用な診断法となりうる(図2).

下血

著者: 入江健夫 ,   宮本幸夫

ページ範囲:P.191 - P.191

広義の下血は,消化管からの出血の存在を示し,上部消化管からの出血は主として黒色のタール様の排泄としてみられる.一方,下部消化管からの出血は主として暗赤色から鮮紅色の排泄として認められる.狭義の下血は,血液が消化管に長く停滞していることを示す暗赤色から黒褐色(タール様)を呈する場合を指し,通常は食道から大腸上部までの疾患によるものとされ,大腸下部からの鮮紅色を示す出血は血便と呼ばれ区別される.

 原因疾患としては,食道静脈瘤,食道炎・食道潰瘍,Mallory-Weiss症候群,胃炎・急性胃粘膜病変,胃潰瘍,胃癌・胃肉腫,十二指腸潰瘍,小腸腫瘍,Meckel憩室,Crohn病,潰瘍性大腸炎,出血性腸炎,感染性腸炎,大腸憩室,大腸癌・ポリープ,腸重積,血管奇形などの消化管由来のほかに,重症肝疾患,感染症,血液疾患なども原因となる.緊急を要する消化管出血に対する検査としては,内視鏡検査,CT,消化管出血・Meckel憩室シンチグラフィ,血管造影などが主な適応となるが,超音波検査による腹部全体の検索も有用である.特に,消化管全般の壁肥厚の状態,腫瘤の存在の有無の確認が重要である(図1).消化管の進行癌では,全周性に肥厚した壁と腸内容物・ガスを反映してpseudokidney signと呼ばれる像を呈する.炎症やリンパ腫でも同様の形態を呈することがあるが,炎症などでは比較的平滑な壁肥厚を示すことが多い.小児の腸重積では粘血便を示すが,target signと呼ばれる重積した腸管が横断像で多重リング状に認められる像を示す(図2).

便秘と下痢

著者: 水城啓

ページ範囲:P.192 - P.192

便 秘

 便秘の診断は,病歴聴取が重要である.食事,運動不足,薬剤による腸管運動低下,痔などによる排便痛,また全身疾患に伴う場合もあり,症例に応じて全身検索も行う.特に長期便秘症では大腸癌が疑われるので,注腸検査や大腸ファイバーを行う.

 便秘における超音波検査は,補助的なものであり,進行大腸癌のスクリーニング,イレウスの原因検索などに用いられる.最近の報告で大腸癌症例において,ニフレック®投与により穿孔などの合併症があり,大腸の狭窄とその口側の高度便秘が診断できれば,このような事態を回避できる可能性がある.

血尿・排尿障害

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.193 - P.193

血尿(図1)の原因となる疾患として,表1に挙げたようなものが考えられるが,腹部超音波領域ではその多くは腎結石で,ほかには腎尿路系腫瘍,腎・尿路の外傷,腎梗塞,腎盂腎炎などの腎炎症,尿路感染症,膀胱炎,前立腺炎,腎動静脈瘻,nutcracker syndrome,腎動脈瘤,腎静脈血栓症,大動脈解離(腎動脈に解離が及んだ場合)などが考えられる.

 一般に間歇的血尿を呈する場合は上部尿路に,持続的血尿の場合は下部尿路に原因があることが多いとされる.

腹水

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.194 - P.194

超音波像による腹水の評価においては,その分布と性状とが重要となる.仰臥位において解剖学的に腹腔内で最も低位となるのは,Douglas窩とMorison窩であり,少量の腹水の存在を評価するためには,同部位の観察が必須となる(図1).また,腹水は原則的に左右対称性に分布する.ゆえに腹水が非対称性に分布する場合は,腹膜の癒着や奇形,(癌性)腹膜炎などの存在を考慮する必要がある.腹水は一般に無エコーの液体として捉えられるが,内部に微細点状エコーやdebris,あるいはフィブリンネット様の構造が認められた場合は,炎症(膿瘍を含めて)や出血,癌性腹膜炎などの存在が示唆される.腹水の原因はさまざまであるが,腹水存在時に胆囊壁肥厚(double wall,triple layers)の有無をチェックすることは,腹水の原因を診断するうえできわめて重要となる.日常臨床において腹水の原因として最も多いものは,肝硬変とネフローゼ症候群などに伴う低蛋白血症であろう.肝硬変の有無にかかわらず,低蛋白血症では,腹水中の胆囊壁は浮腫性に肥厚する.また,低蛋白血症を伴わない肝硬変においても,門脈圧亢進症により門脈に流入している胆囊静脈はうっ血するため,胆囊壁はしばしば肥厚する.一方,癌性腹膜炎では,悪液質などで低蛋白血症をきたしている場合でなければ,腹水は存在しても胆囊壁が肥厚する理由は特にない.筆者らの経験では,腹水中の胆囊壁に肥厚が認められない場合の9割以上は癌性腹膜炎であった.ただし,例外はある.例えば,胆囊癌や肝硬変に伴う肝細胞癌では,腹水と胆囊壁肥厚とが同時に認められる(図2).また,肝十二指腸間膜リンパ節に転移をきたしている場合などでは,胆囊壁にリンパ浮腫を伴うことがある.これらの場合は,癌性腹膜炎であっても腹水中の胆囊壁が肥厚することになる.逆に,癌性腹膜炎ではないにもかかわらず,腹水中の胆囊壁が肥厚しない場合もある.例えば,pseudomyxoma peritoneiでは腹水中の胆囊壁肥厚は認められないし,慢性胆囊炎により胆囊壁の線維化が著明な場合は,少なくとも腹水中の胆囊壁に浮腫性の壁肥厚は認め難くなる.CAPD(持続性自己管理腹膜透析)中の患者の胆囊壁に肥厚が認められないことは自明ではあるが,筆者は,硬化性腹膜炎の判定を目的としたCAPD施行中の患者の超音波検査中に,何度も思わず“どきり”とした経験を有する.

腹部腫瘤

著者: 丸山紀史 ,   松谷正一 ,   税所宏光

ページ範囲:P.195 - P.195

超音波検査は腹部腫瘤の拾い上げにとどまらず,良悪の鑑別,さらには本法だけで確定診断に至ることも少なくない.また非侵襲的に繰り返し施行可能であることから,病変部の経時的な観察にも役に立つ.このように超音波は,腹部腫瘤の診断において最も重要な検査法の一つといえる.

1. 腫瘤の局在(表1)

 腹部腫瘤の診断では,腹部の全臓器がその対象となる.したがって腫瘤の局在は,由来臓器の判定においてきわめて重要である.例えば腹壁由来の腫瘤である場合や,既存の臓器(動脈瘤,脾腫など)が原因であることもある.詳細は各論に譲るが,より多くの疾患とその所見を理解しておくことが大切である.

下腹部腫瘤(女性)

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.196 - P.196

骨盤内臓器の評価には膀胱充満下での検査が必要であり,検査1時間前に1~1.5lの水分を摂取し,尿を溜めておくことが必要である.特に妊娠可能年齢であれば,妊娠の可能性,月経痛の有無などを確認する.

 最初に子宮の腫大の有無を確認し,その内部の内膜を同定する.内膜が正常あるいは圧排,変位のみで,子宮体部が腫大している場合には,形状が比較的保たれていれば子宮腺筋症を挙げ,結節状の腫大の場合には子宮筋腫を挙げる.時に重複子宮,双角子宮あるいは後屈子宮が腫瘤状を呈する場合があり注意を要する.

臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー 〈肝(解剖と破格)〉

肝(解剖と破格)

著者: 森秀明

ページ範囲:P.199 - P.200

肝臓の解剖

 肝は横隔膜直下の右上腹部に位置する腹部最大の臓器で,肝内を走行する脈管には肝動脈,門脈,肝静脈および胆管がある(図1).肝動脈は腹腔動脈から分岐した総肝動脈が固有肝動脈となり,さらに右・中・左の3本の肝動脈に分かれ肝内を走行する.門脈本幹は膵頭部の背側で上腸間膜静脈と脾静脈が合流し形成され,肝門部において右枝と左枝に分岐し,さらに右枝は前・後区域枝に,左枝は水平部と腹壁方向へ立ち上がる臍部に分枝する.肝に流入する血液の約3/4は門脈で,約1/4が肝動脈であり,肝動脈は門脈に比して細いため,左右の肝動脈の分枝部付近までは超音波検査にて描出可能であるが,肝内の肝動脈は通常描出されない.肝静脈は右・中・左の3本からなり,肝内門脈枝と交差するように走行し,下大静脈に流入する.肝内胆管は肝内門脈枝の分枝と併走している.

 肝の区域分類としてはCouinaudの8区域分類が用いられている(図2).肝左葉(S1~S4)は外側区域と内側区域(広義),肝右葉(S5~S8)は前区域と後区域に分けられ,さらにこれらの4区域はおのおの2区域に分けられる.右葉と左葉の境界は胆囊窩と下大静脈を結ぶ仮想の線(Cantlie線)であり,解剖学的には中肝静脈がCantlie線に一致している.

〈肝(びまん性)〉

脂肪肝

著者: 篠原正夫 ,   住野泰清

ページ範囲:P.201 - P.201

脂肪肝は,過食や飲酒,糖尿病などさまざまな成因により肝細胞内に中性脂肪が生理的範囲を超えて蓄積した病態で,超音波検査で肝実質エコーの変化を捉えることにより精度の高い診断が得られる唯一のびまん性肝疾患である.


脂肪肝の特徴的超音波所見(図1)

 肝細胞内の脂肪滴と,それを取り囲む組織成分との間には大きな音響インピーダンスの差異が生ずるため,脂肪滴表面は音響学的に強い反射・散乱面となり,さまざまな特徴的超音波所見を呈する.

急性肝炎,慢性肝炎

著者: 渡辺学 ,   住野泰清

ページ範囲:P.202 - P.202

肝炎は急性と慢性に大別され,その原因はウイルス性をはじめとして薬剤性,自己免疫性など多岐にわたる.診断には臨床所見や血液検査所見が重要であり,時に肝生検組織所見が必要とされるが,超音波検査の出る幕はない.ただし,診療に際して補助的に寄与しうる超音波所見もいくつかあるので,本稿ではそれらについて述べる.


急性肝炎

 肝は腫大し辺縁は鈍化する.脾腫や腹水をみることもある.著明な脾腫が認められた場合にはEBウイルス性の可能性が高い.実質像に特徴的所見はないが,胆汁うっ滞性はbright patternを呈する場合が多い.また,いずれの原因によるものでも,回復期にはbright patternや肝腎コントラストを認めることが多いとされている.問題は劇症肝炎であるが,今のところ劇症化を示唆する所見は得られていない.

肝硬変

著者: 仁平武

ページ範囲:P.203 - P.203

1. 肝硬変の特徴的超音波所見

 特徴的超音波所見として肝臓の所見と肝外所見(門脈圧亢進症と低アルブミン血症による所見)があり,そのポイントを述べる.

1) 肝臓の所見

 (1) 肝外観の所見:肝表面の凹凸不整,肝縁の鈍化(先端鈍化から全体鈍化へ進行)(図1a,b),肝全体の形態変化(代償性肝硬変では左葉腫大・右葉萎縮,尾状葉腫大,非代償性では肝両葉萎縮)が挙げられる.

肝ポルフィリン症

著者: 石田秀明 ,   小松田智也 ,   大場麗奈

ページ範囲:P.204 - P.204

先天性または後天性代謝異常により,二次的に種々のポルフィリン体またはその前駆物質(以下,ポルフィリン体と総称)が過剰生産され,これが多臓器に過剰沈着し多彩な臨床所見を呈する.この状態はポルフィリン症と総称される.

 またポルフィリン症は,臨床像の差異から,①急性ポルフィリン症(神経,消化器,循環器症状が急性に発病するもので,ほとんど先天性)と,②皮膚ポルフィリン症(日光皮膚炎と軽度の肝障害を示すもので,先天性または後天性)に大別される.

von Meyenburg complex

著者: 石田秀明 ,   小松田智也 ,   高木正仁

ページ範囲:P.205 - P.205

von Meyenburg complex(VMC)は一種の過誤腫で,剖検肝では1~5%に認められる.VMCは,慢性肝炎や肝細胞癌などとの合併例の報告もあるが,基本的には単なる迷入胆管で,前癌状態でも慢性肝疾患の一表現形でもなく,それ自体は精査や治療の対象とはならない.そのため,超音波診断上VMCを他疾患と誤診しないことが求められる.

 組織学的には,内部に胆汁を含む胆管上皮で縁どられた小囊胞であることから,超音波でも小囊胞(円形無エコー腫瘤)の集簇として描出されると期待されるが,囊胞径が超音波の空間分解能程度の0.1~数mm前後のことが多く,超音波画像上単純に多発小囊胞として表現されない.

日本住血吸虫症

著者: 岸野智則 ,   森秀明

ページ範囲:P.206 - P.206

日本住血吸虫症(schistosomiasis japonica)は,山梨県甲府盆地,広島県片山地方,関東利根川流域,九州筑後川流域に流行したいわゆる風土病であるが,日本では現在,感染歴のある高齢者に慢性期所見を認めるのみである.一方,中国や東南アジアでは今でも流行地がみられる.日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)の成虫は,雌雄抱合して門脈系に寄生し,腸管壁の細血管で産卵する.虫卵の一部は腸管壁に壊死を起こし腸管内に脱落して排泄されるが,一部は門脈血流により肝内門脈の末梢枝に流れ着き,塞栓する.虫卵の毒素またはアレルゲンにより肝に炎症を惹起し,慢性化すると線維化と石灰化をきたし,やがて門脈圧亢進症を呈する.便とともに排出された虫卵は,水田,沼,川などで孵化し,中間宿主のミヤイリガイに侵入して生育した後,再び水中に出てヒトなどの終宿主の皮膚より侵入して,最終的に門脈に到達する.

 本症の超音波像(図1)は,肝内に多発する網目状(network),亀甲状(turtle back),あるいは魚鱗状(fish scale)パターンと呼ばれる特異な高エコー帯が肝を分断することが特徴であり,これは肝内門脈の虫卵石灰化と線維化に起因する.B型肝炎ウイルスによる肝硬変でみられるメッシュ(mesh)パターンと類似するが,明らかな網目状構造を呈する点で鑑別される.この隔壁の間が低エコー結節様に見える場合があり,肝細胞癌との鑑別が困難になるため,CTやMRIの併用が必要なこともある.肝硬変に至ると肝縁の鈍化,表面不整,肝右葉の萎縮と左葉,尾状葉の腫大所見のほか,脾腫などの門脈圧亢進所見を呈する.

〈肝(腫瘤性)〉

海綿状血管腫(過誤腫)

著者: 小川眞広

ページ範囲:P.208 - P.208

肝良性腫瘍のなかで最も多い肝血管腫は,自覚症状がなく,スクリーニング検査や健康診断の超音波検査で初めて指摘されることが多い.肝以外にも発生し,組織上いくつかに分類されるが,肝ではほとんどが海綿状血管腫(cavernous hemangioma)である.腫瘍は,線維性隔壁からなる海綿状の形態を示し,症例により血栓,静脈炎,瘢痕化,硝子様変化,石灰化などを伴うことがあり,このため超音波像でも多彩な像を呈する.超音波像としては大きく,高エコー型,辺縁高エコー型(marginal strong echo),混合型の3型に分けられ(図1),形態学的には,境界は比較的明瞭で辺縁が凹凸不整の類円形の腫瘍として描出される.小さな血管腫は高エコー型が多く,腫瘍内にある無数の隔壁による多重反射により高エコーを呈するといわれている.肝腫瘍類似病変として扱われるvon Meyenburg's complexと呼ばれる胆管過誤腫も線維性結合組織内の不規則な小囊胞状の拡張胆管により高エコー腫瘤として描出されるが,血管腫よりも輝度がさらに高く,内部に胆管が小さな囊胞様変化として観察できることで鑑別可能である.このほかに鑑別診断としては,肝細胞癌,転移性肝癌,限局性の脂肪浸潤などが挙げられるが,確定診断に至るには血行動態も合わせた評価が必要となる.

 超音波カラードプラ検査では,肝血管腫は多血性の腫瘍であるにもかかわらず,その流速が遅いために腫瘍内の血流表示を認めないことが多い.したがって,造影CTや血管造影でみられる特徴的な血行動態(斑状,綿花状濃染)は,超音波でも造影検査を行い経時的な変化を観察することで描出可能であり,十分確定診断となりうる.図2にB-modeのtissue harmonic imaging(CHA mode)による造影超音波検査の画像を呈示する.腫瘍の大きさやシャントの有無により腫瘍濃染の出現時間には幅があるが,腫瘍の周囲から中心に向かう斑状の濃染部が徐々に増加するのが特徴である.

限局性結節性過形成(FNH)

著者: 水口安則

ページ範囲:P.209 - P.210

1. 疾患概念

 限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH)は,良性の肝腫瘤である.近年の画像診断,特に超音波の進歩・普及により,日常診療で偶発的に,または検診などで発見される頻度が増加しており,もはやめったに遭遇する病変ではなくなってきた印象である.局所動脈血流異常に伴う過形成性変化が成因と考えられている.通常,無症状であり,肝機能検査で異常を認めず,肝炎ウイルス陰性,腫瘍マーカー陰性を示し,肝硬変などの慢性肝障害を伴わない.比較的若い女性に多いとされている.診断学上,肝細胞癌,fibrolamellar hepatocellular carcinoma,肝腺腫,血管筋脂肪腫,肝血管腫などとの鑑別診断が問題となる.

2. 超音波像

 腫瘤の多くは肝被膜下に発生し,多くは単発性である.多発例も存在する.境界明瞭な充実性腫瘤として描出される.内部エコーはさまざまで,低エコー,等エコーあるいは高エコーを示す.低エコーまたは等エコーが多い.最も特異的所見は,中心性瘢痕内の動脈が腫瘤辺縁に向かって放射状に分布する車軸様血流パターン(spoke-wheel pattern)である.ただし,神代らによれば,肉眼的に明瞭な中心性瘢痕が認められたのは63.3%と報告されており1),中心性瘢痕のはっきりしない病変も少なからず存在するので,診断に際して留意すべきである.カラードプラでは,車軸様血流パターンを最も簡便に描出可能である.しかし,機器の感度,プローブから腫瘤までの深さ,motion artifactなどの要因で,その描出は必ずしも容易ではない.最近は経静脈性造影検査の普及により,腫瘤内の血管構造のみならず血流動態の詳細がわかるようになってきた(図1).われわれの経験では,造影早期相にて8例中明瞭な車軸様血流パターンの描出が4例,腫瘤全体の造影効果が全例で認められ,遅延相での造影効果の残存が7例中7例,中心瘢痕の描出が3例に認められた.これらの造影所見を組み合わせることによりFNHの質的診断能を高めることができると考えられた2).造影超音波検査は他のモダリティに頼ることなく鑑別診断に非常に有用と思われる.良性病変だけに不必要な過剰な検査は避けたいと考える.

肝腺腫

著者: 丸山紀史 ,   松谷正一 ,   税所宏光 ,   菊池保治 ,   篠崎正美 ,   後藤信昭

ページ範囲:P.211 - P.211

肝細胞腺腫(肝腺腫)は,肝の上皮性良性腫瘍に分類される.経口避妊薬との関連についてはよく知られ,欧米では同薬剤の普及に伴って増加の傾向にある.しかし本邦ではきわめて稀な腫瘍であり,その報告例も少ない.増大した腫瘍による圧迫症状や腫瘤触知によって診断されることが多いが,最近では,比較的小さな腫瘤として発見された報告例も散見される.本稿では肝腺腫の臨床像とその超音波所見について概説する.

1. 肝腺腫の臨床的特徴

 経口避妊薬や蛋白同化ホルモンの服用,糖原病,チロジン血症などが背景因子として挙げられる.20~30歳台の若年者に多くみられ,正常肝に発生することが特徴である.通常は単発であるが,糖原病に合併した例では多発例も認められる.腫瘍内へ高率に出血し,短期間で増大した例や破裂によって腹腔内出血をきたした報告例もある.また経口避妊薬の連用例や糖原病に合併した場合には,悪性化の傾向を呈することもある.

偽炎症性腫瘤

著者: 峯佳毅 ,   森秀明

ページ範囲:P.212 - P.212

偽炎症性腫瘤(inflammatory pseudotumor:IPT)は炎症性非腫瘍性疾患で,近年,画像診断の進歩によりその報告例は増加している.原発臓器としては肺が最も多く,そのほか眼窩,胃,耳下腺など,さまざまな臓器にみられるが,肝に発生することは稀である.本症の原因としては,感染説,閉塞性静脈炎説,自己免疫説などの推測がなされているが,いまだ明確な結論は得られていない.病理組織学的には形質細胞,リンパ球を主体とした炎症細胞の浸潤を伴う肉芽腫性の組織像を特徴とし,同じ炎症性結節でも肝膿瘍,結核,寄生虫などの疾患が特定できるものは本症から除外される.臨床症状としては発熱が最も多く,そのほか全身倦怠感,腹痛,体重減少などがみられる.本症は,経過観察にて自然縮小や消失がみられることも特徴の一つである.

 血液検査所見としては,白血球増加,CRP高値などの炎症所見と軽度の肝障害を認めることが多いとされるが,無症状で検査所見に異常のみられない例も存在する.

腺腫様過形成(AH),異型腺腫様過形成(AAH)

著者: 小川眞広

ページ範囲:P.213 - P.213

画像診断の進歩により肝内の小さな腫瘤性病変も描出されるようになり,早期の肝細胞癌との鑑別が必要となるようになった.特に,肝癌取扱い規約1)による肝腫瘍の組織学的分類における腫瘍類似病変に分類される腺腫様過形成(adenomatous hyperplasia:AH)や異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia:AAH)は,肝硬変症にみられる過形成病変であり,肝細胞癌の非腫瘍部にもみられ,腫瘍径3cm以下の切除例の約20%にも並存しているといわれ,大再生結節,早期の肝細胞癌との鑑別が重要となる2).これらは,肝癌の前癌病変として扱われることもあるが,まだ組織学的にも一部確立されていない部分もあり,超音波検査のみで鑑別診断を行うことは不可能である.したがって確定診断には超音波ガイド下の針生検が必要だが,少ない組織では病理学上も診断が困難となることが少なくない.肝細胞癌の多くは腫瘍径が15mm以上になるとその組織学的特徴が画像上にも現れるといわれており,多くは肝硬変症に伴う10mm前後の結節がこれらの鑑別診断上問題となる.したがって超音波検査を行ううえでは腫瘍径も重要な因子となり,周囲の肝組織と同等の結節性変化であれば再生結節を疑い,周囲の結節より一回り大きく10mm前後であればAH,AAHを疑い,15mm以上となる場合には早期の肝細胞癌を疑う.

 また,腫瘍内の門脈血と動脈血の割合の変化は組織学的悪性度と相関しており,これらの鑑別診断には腫瘍内の血流診断が重要となる.現在,肝細胞の評価も可能なFe造影剤を用いたMRI検査が早期肝癌と境界病変の鑑別に有用であるが,血流診断としては血管造影とCT検査を併用した門脈造影下のCT検査のほうが有用であるとされている.しかし,最近では経静脈性超音波造影剤(レボビスト®)を用いた造影超音波検査も細かな血流変化が観察可能となってきており,診断に有用である(図1,2).

肝細胞癌(分化度診断を含む)

著者: 小川眞広

ページ範囲:P.214 - P.215

肝悪性腫瘍の約9割を占めるのが肝細胞癌である.肝細胞癌の超音波画像の典型例は,辺縁低エコー帯(halo),内部エコーの不均一化のmosaic,nodule in nodule,外側側方陰影(lateral shadow),後部エコーの増強(PEE:posterior echo enhancement)である(図1).超音波像の分類は切除標本の肉眼分類に基づくことが多く,原発性肝癌取扱い規約の肉眼分類1)に準じることが多い.組織学的な分類では,分化度を細胞・構造異型より高分化型,中分化型,低分化型,未分化型に分類し,後者になるほど腫瘍の悪性度が高くなる.肝細胞癌は,de novo発癌として悪性度の高い癌が発生することもあるが,多くは境界病変から早期の肝細胞癌,進行肝癌へと徐々に進行していく多段階発癌の形式を取るものが多いといわれている.また,装置の改良により,小結節性病変が指摘しやすくなった今日では,早期の肝細胞癌といわれる高分化型肝細胞癌と境界病変との鑑別が重要となる.これらの鑑別に超音波ガイド下の針生検により診断を行うことも多いが,明確な境界があるわけではないので,組織診断上も鑑別が困難なことが多い.そこで,肝細胞癌の場合は血流の変化と組織学的悪性度(分化度)が相関しているといわれており2),血流診断を合わせて行うことが重要である.従来カラードプラ検査で腫瘍の内部および周囲を取り囲む動脈血流を認める場合には肝細胞癌,腫瘍内部に門脈血流を認める場合には腺腫様過形成と診断できるため波形解析も合わせて行っていたが,最近では経静脈性超音波造影剤レボビスト®が臨床応用されるようになり,その有用性は高く評価されている.特にB-modeのtissue harmonic imagingを用いた場合,腫瘍内の不整血管,腫瘍濃染像が描出でき,動脈血流の経時的な観察も可能となり,中分化型以降の進行した癌の診断はより確実なものとなった3).また,造影剤はKupffer細胞や類洞に溜まることがわかってきており,造影後約5分以降の肝実質染影像ではKupfferイメージングを表し,欠損像として描出される高分化型肝細胞癌とその境界病変の鑑別に役立つようになった(図2).

転移性肝癌

著者: 松本茂藤子 ,   森秀明

ページ範囲:P.216 - P.216

転移性肝癌は肝臓以外に発生した癌や肉腫が肝に転移したもので,転移経路としては血行性転移,リンパ行性転移,直接浸潤がある.血行性転移としては,胃癌,大腸癌,膵癌などからの経門脈性と,乳癌,腎癌などからの経肝動脈性がある.

 本症の超音波所見としては,腫瘤は高エコーから低エコーをきたす例までさまざまで,多発性で大きさが揃っていることが多い.胃癌や大腸癌からの転移例は高エコー像のことが多く,膵癌や乳癌,悪性リンパ腫からの転移例は低エコー像のことが多い.また高エコー腫瘤の内部に不整形の無エコー域を有する像は扁平上皮癌や胃癌,大腸癌,肉腫による転移例に多く,この無エコー域は融解壊死を反映している.大腸癌,胃癌,卵巣癌,骨肉腫などからの転移例では腫瘍内に石灰化を伴うことがあり,後方に音響陰影が認められる.

肝芽腫

著者: 金川公夫

ページ範囲:P.217 - P.217

1. 肝芽腫の一般的な知識

 小児肝腫瘍は,小児腹部固形腫瘍では神経芽腫,Wilms腫瘍に次いで多く,約2/3が悪性である.肝芽腫は原発性肝悪性腫瘍では最も多く,肝細胞癌がこれに次ぐ.5歳以下に発症することが多く,半数は1歳以下で発症する.Beckwith-Wiedemann症候群,hemihypertrophyに合併することがある.通常は単発性腫瘤として認められ,右葉に存在する例が左葉に存在する例の約2倍である.多発性腫瘤像を呈する場合や,びまん性に認められる場合もある1)

2. 肝芽腫の超音波像(図1)

 正常肝実質に対して,低エコー,高エコーおよび両者が混在したエコーを呈しうるが,高エコーを呈する場合が多い1,2).境界は,不鮮明な場合も鮮明な場合もある.石灰化を1/3~1/2に伴うため,acoustic shadowを伴う腫瘤像を呈する場合も多い.他に辺縁に低エコーを伴う場合もある.びまん性に広がる場合は肝実質のエコーレベルが不均一になる.パルスドプラでは高速度の血流を呈し,カラードプラでは腫瘍辺縁や中心部に血流が認められる.辺縁の血流は腫瘍辺縁の細かな血管のネットワークを見ている.腫瘍と門脈,肝静脈との関係や腫瘍塞栓の有無などに注意し,手術可能かどうかの評価も重要である.腫瘍血栓は血管内腔の高エコー腫瘤として描出される1)

肝原発悪性リンパ腫

著者: 江口貴子 ,   水口安則

ページ範囲:P.218 - P.218

1. 疾患概念

 肝原発悪性リンパ腫は稀な疾患であり,現在までの報告は150例に満たない.節外性非Hodgkinリンパ腫のうち,肝原発は1%以下とされている.組織学的には非Hodgkinリンパ腫のdiffuse large B-cell lymphomaが約半数を占める.Leiらは90例の報告例をまとめて,41%が単発性腫瘤,30%が多発性腫瘤,19%がびまん性,10%が形態的所見なしと報告している1).それに対し全身性リンパ腫の肝浸潤は,剖検例の検討でHodgkinリンパ腫の60%,非Hodgkinリンパ腫の50%程度に認められる.Hodgkinリンパ腫はびまん性に肝へ浸潤する場合がほとんどである.非Hodgkinリンパ腫は,びまん性に浸潤するものと,1cm以下の多発性肝腫瘤の形態をとるものが同程度認められる.

2. 超音波像

 肝原発性悪性リンパ腫は,他臓器のリンパ腫と同様,多彩なエコー所見を呈し,特異的な超音波像はないといわれている.Gazelleらの報告では,6例中4例で低エコー,2例で無エコー腫瘤を呈していた2).Leiらの報告では5例中3例がびまん性低エコー性肝腫大,1例で低エコー腫瘤を呈し,1例で異常所見を認めなかった.いずれも内部エコーは均一であった.また,二次性の肝リンパ腫の9例では,6例が低エコー,1例が高エコーを呈し,びまん性浸潤の2例では異常所見を認めなかったとも報告している3).ターゲットパターン様のエコー像を示す腫瘤の報告例もある.

肝腫瘍のIVRと治療効果判定

著者: 飯島尋子

ページ範囲:P.219 - P.220

1. 肝腫瘍のIVR治療

 肝腫瘍のIVR(interventional radiology)は,肝動脈塞栓療法(TAE)とラジオ波熱凝固(焼灼)療法(RFA)が主体である.治療支援イメージングとして超音波は重要な位置を占めている.RFAにおいては,本邦では超音波ガイド下に経皮的に穿刺することが主体である.超音波ガイド下穿刺には,①Bモード,②静脈投与の造影超音波,③肝動脈にカテーテルを挿入し,CO2マイクロバブルを動注する超音波検査の3つがある.

 ①Bモードは,セクター型プローブにアタッチメントを装着して,決められた穿刺ラインに沿って穿刺する.ティシュハーモニックが装備してある場合には,それを使うほうがノイズが少なく正確な穿刺ができる.しかしRFAを行う場合には,交流が入る場合もあり,モードや周波数を随時変更するなどの工夫も必要となる.

肝囊胞

著者: 小川眞広

ページ範囲:P.221 - P.221

肝囊胞(ciliated foregut cyst)は,大きく先天性・後天性の肝囊胞に分類されるが,通常,超音波検査のスクリーニングにおいて遭遇する囊胞は,胆管の先天的な形成異常により発生したものであることがほとんどである.

 典型例の超音波所見は,境界明瞭な類円形の占拠性病変として描出され,内部エコーが無エコー(echo free),後部エコーの増強(posterior echo enhancement:PEE),外側側方陰影(lateral shadow:LS)である(図1).比較的頻度も高く超音波検診でも頻繁に指摘されるが,良性疾患でもあり,通常超音波検査で単純囊胞と診断した場合,無治療でよいため,特に精査を行うことはない.治療の適応が生じるのは大きな肝囊胞で他臓器圧排所見などを有する場合で,超音波ガイド下での囊胞穿刺を行い,エタノールや抗生物質を注入し治療することが多い.小さなものでは脈管系疾患との鑑別がつきにくいこともあるが,断層面を変え脈管や胆管との連続性を確認することや,カラードプラや造影超音波検査で内部に血流信号を認めないことより鑑別を行う.鑑別疾患で最も重要となるのは囊胞腺癌,囊胞腺腫であり,囊胞が増大傾向を認める場合や,隔壁の存在,壁の肥厚囊胞内部への隆起性病変の存在などの所見がみられる場合には精密検査を行う.肝囊胞の内容液は通常透明な分泌物であり内部エコーは無エコーであるが,囊胞内出血や感染を起こした症例では内部エコーが出現するため,症例によっては精密検査の対象になる.特にこのような症例では呼吸移動や体位変換により内容物が可動するか否かが腫瘍性病変との鑑別に役立つので積極的に行う.図2に大型の肝囊胞の症例を呈示する.本症例は内部が出血によるフィブリン塊により乳頭状の隆起性病変を認めている.

肝膿瘍

著者: 小榑二世 ,   森秀明

ページ範囲:P.222 - P.222

肝膿瘍は,肝内に膿瘍が形成される疾患で,原因により細菌性とアメーバ性に分類される.臨床症状として,発熱,全身倦怠感,右上腹痛などが認められ,経過によっては敗血症などの重篤な病態に移行することもあり,早期診断および早期治療が望ましい.


肝膿瘍の超音波像


 発症早期は形状は不定形で,境界不明瞭な充実性腫瘤像を呈する(図1).腫瘤の内部エコーは肝実質よりやや高エコーで,一部に低エコー域を伴い,微細な点状高エコーを混在することがある.発症初期の肝膿瘍は,腹部CT上,境界不明瞭な低吸収域として描出され,一見,内部が囊胞性病変のように観察されるにもかかわらず,同時期の超音波検査では充実性病変の所見を呈するといった所見の乖離が認められることがある.

肝内シャント

著者: 石田秀明 ,   小松田智也 ,   鈴木俊夫

ページ範囲:P.223 - P.223

肝の血管系は2本の栄養血管(動脈,門脈)と1本の灌流血管から構成され,末梢組織のミクロレベルではそれらは互いに自由に交通(シャント)し合うが,通常肝内シャントとして扱われるのは,それよりは径が大きく(数mm以上),画像上限局性病変として認識可能なものを指している.原因としては,①急性,慢性肝疾患による組織破壊に起因するもの,②Osler病や動脈瘤などの血管病変に続発するもの,③肝生検や外傷による組織挫滅の一表現として,④原因不明,に大別される.シャント数の増加やシャント径の巨大化という特殊例を除くと臨床的な意味はなく,むしろ腫瘍などの他疾患との誤診が問題となることが多い.肝内シャントの診断法のうち最も効率が良く精度が高いのは,(ドプラを加えた)超音波検査であり,その診断のポイントは下記のごとくである.

 1) 超音波所見(通常の白黒画像,図1):確定診断は困難であるが,肝内シャントを強く疑う所見は次の2つの場合である.①脈管に接した囊胞や形状不整な囊胞のうち,囊胞内に点状エコーの動きを認めるもの,または後方エコーの増強を欠くもの*),②肝内の末梢血管が部分的に拡張している場合**)

〈胆囊・胆道系〉

胆囊炎(急性,慢性)

著者: 金田智

ページ範囲:P.225 - P.225

1. 急性胆囊炎
 右上腹部痛と発熱がある場合には,急性胆囊炎を疑って緊急に超音波検査が行われることが多い.急性胆囊炎の超音波像としては,胆囊の緊満,壁肥厚,内部デブリエコー,胆石嵌頓が挙げられるが,このうち胆囊の緊満だけが必発である(図1).短径で4cm以上が腫大とされている.壁肥厚は発症してしばらくしてからみられることが多い.層状の肥厚が特徴的で,高低高の3層を呈する.中央の低エコー帯をsonolucent layerと呼ぶ.急性胆囊炎の95%は胆石の嵌頓が原因といわれているが,超音波検査で嵌頓した胆石が描出されることはそれほど多くない.これは胆囊の腫大により胆囊頸部が深部に描出されるため,また高エコーである壁に結石がはさまっているためと思われる.胆囊内部に壊死物質や膿を反映した不整なエコーが浮遊もしくは沈澱してみられることがある.これをデブリエコーと呼ぶ.胆囊の穿孔や胆囊壁の透過性が亢進して,胆囊周囲に胆汁の貯留をきたすことがある.胆囊周囲炎の所見である.胆囊腫大は胆囊水腫や閉塞性黄疸でもみられるが,痛みや黄疸の有無などの臨床所見から鑑別は容易である.急性胆囊炎では,右肋骨弓下をプローブで押さえると痛がることも検査上のポイントである.

2. 慢性胆囊炎

 慢性胆囊炎は急性胆囊炎に引き続いて起こるものや,胆石症に伴うものなどがある.超音波像としては,胆囊壁肥厚と胆囊萎縮が基本所見である.急性胆囊炎に引き続いて起こるものは,壁の線維化に対応して低エコーの壁肥厚となる.癒着が高度であると胆囊床の脂肪織が不明瞭で,特に胆囊炎の既往がはっきりしない場合は胆囊癌との鑑別が困難となる(図2).CTやMRIで肥厚した壁がよく造影されることが確認できれば慢性胆囊炎をより強く疑うことができるが,癌の可能性を否定しきれないため最終的には手術されることが多い.

陶器様胆囊

著者: 金田智

ページ範囲:P.226 - P.226

胆囊壁に石灰化をきたしたものを陶器様胆囊という.腹部単純X線写真で右上腹部に卵の殻状の石灰化像が描出されるものが典型的である.胃X線検査の際に偶然発見されることもあるが,最近ではCTで発見される症例が増えているものと思われる.本邦における伊勢らの集計によれば,好発年齢は50~60歳代,男女比は1:3.8で女性に多い1).症状としては腹痛が多いが,無症状例は約15%である.胆囊結石,胆管結石の合併は82.2%であったという.病理学的には,粘膜の脱落と壁の線維化および硝子化,石灰化を認め,慢性胆囊炎の所見である.また,胆石の嵌頓による胆囊管もしくは胆囊頸部での閉塞を伴うことが多い.

 超音波像としては,壁に一致する弓状の高輝度エコーと音響陰影を認める.音響陰影が軽度であると,内腔が透過され,内部の結石が描出されることがある(図1).逆に音響陰影が高度であると,胆石の充満した胆囊と鑑別が困難となる(図2).胆囊自体は腫大しているものもあるが,萎縮しているものもある.

黄色肉芽腫性胆囊炎

著者: 仙谷和弘 ,   水口安則

ページ範囲:P.227 - P.227

1. 疾患概念

 黄色肉芽腫性胆囊炎(xanthogranulomatous cholecystitis)は,稀な炎症性疾患である.本疾患を診断するうえで,常に胆囊癌との鑑別が問題となる.Rokitansky-Aschoff's sinus(RAS)の破綻または粘膜潰瘍などのため,胆囊壁内に内容物(胆汁,粘液)が流入することが原因となって引き起こされるとされている.病理組織学的には,それらの脂質成分(コレステロール,リン酸)を貪食しようと集簇した泡沫状の組織球が主体の,黄色を呈する肉芽腫性病変が観察される.本症は高齢者に多く,やや男性に多いとされている.臨床症状として初期に急性胆囊炎様の症状を呈することが多い.合併症として炎症による周囲臓器(肝臓,胃,十二指腸,横行結腸,大網)との癒着や,胆管や血管の巻き込み,リンパ節腫大,胆囊穿孔,胆囊周囲膿瘍,胆囊腸管瘻などを認めることがある.また本症はCA19-9が高値を示したり胆囊癌の合併例が知られているため,外科手術の適応となることが多い.

2. 超音波像

 胆囊壁は,びまん性または限局性の壁肥厚像を呈する.壁肥厚は不整であり,肝実質エコーと比較して高エコーを示し,多くは境界明瞭である.また,肥厚した壁内に低エコー結節成分または帯状低エコー域を認めることが本疾患に特徴的であり1),これらは壁内膿瘍または黄色肉芽を反映しているとされている2)(図1).ほとんどすべての症例にて内腔に胆石またはsludgeを伴う.その他,肝または胆囊周囲の液体貯留,肝との境界不明瞭化,瘻孔形成による気腫像などを認めることがある.しかし,これらの所見はいずれも診断の助けとはなりうるも,診断を確定するものではなく,常に胆囊癌の可能性を念頭に置く必要がある.さらに,最大の特徴とされる壁内低エコー結節もさまざまな条件,すなわち壁内膿瘍,コレステローシス,胆囊腺筋症などでみられることもあるため,本症の術前診断に際しては,他のモダリティを組み合わせて慎重に判断する必要がある.

胆囊ポリープ

著者: 成尾孝一郎

ページ範囲:P.228 - P.228

胆囊ポリープとは胆囊壁より隆起する病変の総称で,腫瘍性ポリープ(腺腫,胆囊内腫瘤形成型の胆囊癌)と非腫瘍性ポリープ(コレステロールポリープ,過形成ポリープ,localized typeの胆囊腺筋腫症,炎症性ポリープなど)に分類される.コレステロールポリープは胆囊ポリープのなかで最も高頻度にみられる.典型例では,10mm以下の有茎性病変で細い茎を有し,表面は小顆粒状を呈する.多発性のことが多い.病変全体が高輝度点状エコー(5mm以下のものに多い)または内部に高輝度点状エコーの集簇を認める.高輝度点状エコーは脂肪を貪食した泡沫状の組織球の集合したもので,コレステロールポリープに特徴的な所見である(図1).しかし非典型例では,広基性,無茎性病変,10mm以上の病変,低エコー病変もみられ,これらは腫瘍性ポリープとの鑑別は困難である.localized typeの胆囊腺筋腫症は胆囊ポリープの形態を呈することがある(図2).無茎性のものが多いとされるが,自験例では有茎性であった.内部にRokitansky-Ashoff sinusによる複数の小囊胞構造,壁内結石によるコメット様エコーを認めれば診断は可能であるが,これらの所見を欠く場合は腫瘍性ポリープとの鑑別は困難である.

 腺腫はmalignant potentialを有し(adenoma-carcinoma sequence),腫瘍性ポリープはすべて手術の適応となる.これに対し,無症状の非腫瘍性ポリープは治療の適応外であり,腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープとの鑑別は重要である.しかし,上述したような典型的な所見を呈するコレステロールポリープや胆囊腺筋腫症以外は,鑑別が困難なことが多い.10mmを超える病変(特に15mmを超える病変は癌を第一に念頭に置く),低エコー病変,広基性,無茎性病変,急速に増大傾向を認める病変は,腫瘍性ポリープの可能性を念頭に置いて,精査,摘出が必要である.

胆囊腺筋腫症

著者: 白川崇子 ,   宮本幸夫 ,   福田国彦

ページ範囲:P.229 - P.229

胆囊腺筋腫症 (adenomyomatosis)とは,胆囊上皮と筋層の過形成,および胆囊壁内に胆囊粘膜が嵌入し,洞状をなす,いわゆるRokitansky-Aschoff sinus(RAS)を伴う疾患概念である.RASとは,胆囊内圧の増大に伴い,胆囊粘膜上皮が軟膜固有層,筋層へ嵌入した憩室状の深いくぼみである.

 組織学的にはRASの集簇と拡張,腺管周囲の線維組織や平滑筋細胞の増生を認める.

胆囊癌

著者: 入江健夫 ,   宮本幸夫

ページ範囲:P.230 - P.230

胆囊癌の超音波所見として,大きく限局腫瘤型(図1)とびまん浸潤型(図2)に分類される.限局腫瘤型は乳頭状ないしは不整形の腫瘤を形成する.いわゆる,胆囊ポリープ様病変といわれるもの(コレステロールポリープ,腺腫,過形成ポリープ,炎症性ポリープ,癌)が含まれ,その判別にあたっては大きさによる判定基準が用いられており,特に1.5~2cm以上のものに関しては悪性病変を疑うことになる.近年では,カラードプラによるいくつかの指標から良悪の鑑別を試みる報告もみられる.びまん浸潤型では,胆囊は不自然に変形し,胆囊壁は不整に厚く内腔は不鮮明化する傾向を示す(図3).慢性胆囊炎,胆囊腺筋症などとの鑑別が重要である.慢性胆囊炎では壁肥厚は比較的均一で胆囊内腔は明瞭であることから鑑別されるが,鑑別が困難なものも多く注意が必要である.胆囊腺筋症では,肥厚した胆囊壁内にコメットエコーやRokitansky-Aschoff sinusに相当した囊胞性部分の存在を確認することで鑑別が可能であるが,胆囊腺筋症に合併した癌の同定は時に困難である.

胆囊結石

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.231 - P.231

胆囊結石の診断に関しては,超音波検査は最も簡便でかつ最も診断能が高い検査法である.胆囊内に音響陰影を伴う高輝度病変を認め,体位変換により可動性が確認されれば確診を得られる.ただし,結石の種類により超音波像に違いがあり(図1,2),治療法は結石の大きさ,種類,数により変わってくるため,その点に注意する.胆囊壁の性状,胆囊の緊満状態,胆囊周囲の脂肪織の輝度変化などを観察し,急性胆囊炎,慢性胆囊炎,胆囊腺筋症,胆囊腫瘍などの合併がないかどうかを確認する.また同時に,肝内胆管,総胆管をできる限り描出し,肝内結石,総胆管結石の有無,胆道系の拡張の有無を確認する.

原発性硬化性胆管炎

著者: 金田智

ページ範囲:P.232 - P.232

胆管の慢性炎症に伴う線維化により,胆管狭窄を生じる疾患である.多くの症例は自覚症状の出現前に,ALP高値など胆道系酵素値の異常がきっかけとなって診断される.

 原因は不明であるが,遺伝因子をもつものがなんらかのきっかけに免疫異常を生じ,発症するのではないかと考えられている.欧米では潰瘍性大腸炎の合併が約70%,本邦では21%,また本邦の40歳以上の症例では慢性膵炎の合併率が高いなど,欧米と本邦では疫学的特徴が異なっている.そのため本邦では異なった病態の疾患が原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)に含まれている可能性が指摘されている.肝内胆管結石や胆道感染に伴う二次性の硬化性胆管炎は除外しなくてはならないが,進行した硬化性胆管炎では,胆道感染や胆管内結石を合併することが知られており,区別の難しい症例があるものと考えられる.

胆管癌(肝内,肝外)

著者: 金田智

ページ範囲:P.233 - P.233

胆管細胞由来の悪性腫瘍である.太い胆管から発生したものは,肝門部癌,総胆管癌など,病変の存在部位により呼び分け,肝内の末梢の胆管細胞由来であれば,胆管細胞癌(cholangiocellure carcinoma)と呼ばれることが多い.

 肝内腫瘤として描出される胆管細胞癌は,比較的境界の鮮明な低エコー腫瘤として描出されることが多い(図1).腫瘤の末梢の胆管が拡張していればより強く疑うことができるが,拡張を伴わないことも多い.CTやMRIでは,転移性腫瘍に類似した造影パターンを呈するが,原発巣を示唆する所見がないことから胆管細胞癌を疑う.確定診断を早くつけるためには,積極的に生検したほうがよい.

〈膵〉

急性膵炎

著者: 唐澤英偉

ページ範囲:P.234 - P.234

急性膵炎の診療ガイドラインによれば,「急性膵炎とは膵臓の急性炎症で,他の隣接する臓器や遠隔臓器にも影響を及ぼしうるものである.(中略)臨床的特徴:大多数の急性膵炎は突然発症し,上腹部痛を伴い,種々の腹部所見を伴う.急性膵炎は多くの場合,嘔吐,発熱,頻脈,白血球増加,血中または尿中の膵酵素の上昇を伴う」と定義されている1)

 超音波検査は,急性膵炎が疑われるすべての症例に対し,最初に行われるべき検査の一つである.超音波検査は,膵腫大や膵周囲の炎症性変化を捉えることが可能である.

慢性膵炎

著者: 唐澤英偉

ページ範囲:P.235 - P.235

慢性膵炎は,膵臓の内部に不規則な線維化,細胞浸潤,実質の脱落,肉芽組織などの慢性的変化が生じ,膵臓の外分泌・内分泌機能の低下を伴う病態である.多くは,非可逆性である.慢性膵炎では,腹痛や腹部圧痛などの臨床症状,膵内・外分泌機能不全による臨床症状を伴うものが典型的である.観察期間内では,無痛性あるいは無症候性の症例も存在する.アルコール性,胆石性,稀な成因によるもの,特発性などに分類される.

特殊な膵炎(自己免疫性膵炎)

著者: 唐澤英偉

ページ範囲:P.236 - P.236

自己免疫性膵炎は,発症に自己免疫機序の関与が疑われる膵炎である.びまん性の膵腫大や膵管狭細像を示す症例が中心で,高γグロブリン血症,高IgG血症や自己抗体の存在,ステロイド治療が有効など,自己免疫機序の関与を示唆する所見を伴う膵炎である.Sjögren症候群などの自己免疫疾患を合併している症例もみられる.臨床的特徴としては,下部胆管狭窄に伴う閉塞性黄疸,上腹部不快感,糖尿病を認めることが多い.中高年の男性に多く,予後は比較的良好である.

1. 超音波所見のポイント

 自己免疫性膵炎の超音波所見の特徴は,膵のびまん性の腫大,内部の低エコーである.辺縁は,比較的平滑である.図の症例は,右上腹部横走査で膵頭部は円形の腫大を呈し,内部は均一な低エコーである(図1).超音波造影剤の静脈内投与により,腫瘍内部に規則性のある微細な血流信号が出現し,膵癌とは異なるパターンであった(図2).

囊胞腺腫

著者: 唐澤英偉

ページ範囲:P.237 - P.238

囊胞腺腫は,漿液性囊胞腺腫と粘液性囊胞腺腫に分かれる.

1. 漿液性囊胞腺腫(serous cystadenoma)

 microcystic cystadenomaあるいはglycogen-rich cystadenoma とも呼ばれる.中年女性の膵尾部に好発するとされる.被膜の薄い凹凸した類球形腫瘍で,基本的に壁の薄い径数mmまでの小囊胞からなる多房性腫瘍であるが,しばしばその一部に大きな囊胞腔を含む.単純CTでは,水に近い低吸収の腫瘍で石灰化を有することがある.時に中心部に大きなものを見る.造影すると蜂窩状,海綿状を呈する.囊胞の大きさ,数により,充実性腫瘍から単房性,少数の多房性の囊胞の形をとりうる.島細胞腫,粘液性囊胞性腫瘍と類似するものがある.

膵内分泌腫瘍

著者: 唐澤英偉

ページ範囲:P.239 - P.239

膵内分泌腫瘍は膵・消化管ホルモン産生腫瘍である.産生ホルモンは必ずしも1種類ではなく数種類を同時に産生することがある.ホルモン過剰症状がみられたものを症候性(機能性)腫瘍と呼び,そうでないものを非症候性(非機能性)腫瘍と呼ぶ.一般には充実性腫瘍であるが,出血をきたし囊胞状となるものもある.機能性腫瘍は症候群の責任ホルモンに-omaをつけて呼ばれることがある.機能性の場合には症候群と悪性度がよく相関する.insulinomaの大半は良性.gastrinoma,glucagonoma,somatostatinomaは悪性の頻度が高い.

1. 超音波所見

 上腹部横走査により膵頭部に楕円形の境界明らかな腫瘤像がみられる.内部は周囲より低エコーであるが,通常,エコーレベルは膵癌よりやや高い.辺縁に線上の低エコー部分がみられる(図1a).カラードプラおよびパワードプラにより,腫瘍の辺縁に明瞭なカラー信号が得られる(図1b).

solid pseudopapillary tumor(SC tumor)

著者: 唐澤英偉

ページ範囲:P.240 - P.240

solid pseudopapillary tumorは,若年女性に好発する,稀で分化方向の不明な上皮性腫瘍である.大部分は良性であるが,悪性の報告もある.多くは,厚い線維性被膜を有する球形腫瘍,充実部分と出血壊死性の囊胞部分が共存する.稀に出血壊死性の囊胞部分のない例がある.基本的組織像は,小~中型,円形~卵円形の好酸性細胞からなる充実性腫瘍で,間質は毛細管性である.また腺腔形成がみられることもあり,papillary cystic tumorとも呼ばれる.電子顕微鏡的には,主体はミトコンドリアの多い未熟な細胞である.一部の細胞にチモーゲン顆粒がみられたり,時にα1-antitrypsinが陽性である.腺房細胞癌や内分泌腫瘍を鑑別する必要がある.

1. 超音波所見

 20歳代,女性.超音波で膵頭部に境界比較的明瞭で内部低エコーの腫瘤像を認める.腫瘍に接する管腔構造がみられる(図1a).カラードプラ,パワードプラにより明らかな血流信号は検出されない(図1b).CTでも低濃度の腫瘤がみられた.切除標本で腫瘍の中心部は出血壊死に陥っていた.

浸潤性膵管癌

著者: 唐澤英偉

ページ範囲:P.241 - P.241

浸潤性膵管癌は明らかな進行膵癌で,膵管類似の腺腔形成や膵管上皮への分化がみられる.

 多彩な組織形態を有するが,優勢像をもって分類する.乳頭腺癌,管状腺癌(さらに高分化型,中分化型,低分化型に分かれる),腺扁平上皮癌,粘液癌,退形成性膵管癌などがある.

膵管内乳頭粘液性腺腫

著者: 唐澤英偉

ページ範囲:P.242 - P.242

膵管内腫瘍(intraductal tumors:ITs) は,膵管内に限局し粘液の貯留あるいは腫瘍自身により種々の程度に膵管拡張を示す膵管上皮系腫瘍で,高年男性の膵頭部に好発する.腫瘍自身の肉眼形態は,限局隆起性(ポリポイド扁平隆起性)のものが多いが,膵管内をびまん性平坦に拡がるものも存在する.膵管内乳頭粘液性腺腫(intraductal papillary-mucinous adenoma:IPMA)は,従来,膵管内乳頭腫瘍と呼んでいたものと同一のものである.病変の主座が,主膵管にあるものは主膵管型,分枝にあるものは分枝型,両方にまたがるものを混合型と呼ぶ.

1. 超音波所見

 上腹部横走査で膵体部主膵管の拡張を認める(図1).膵頭部の縦走査により主膵管の拡張とその腹側に分枝の囊胞性拡張を見る(図2矢印).

〈腎(解剖と破格)〉

dromedary hump(ひとこぶ駱駝のこぶ)

著者: 入江健夫 ,   宮本幸夫

ページ範囲:P.244 - P.244

左腎上極の外側部分が脾に圧排されるため,腎中部が外側に突出して腫瘤様に見えることであり(図1),多くは脾腫を伴う.ひとこぶ駱駝腎(dromedary hump kidney)とも呼ばれる.腫瘍との鑑別では,突出部分が皮質のエコーレベルと同じであり,カラードプラにおいて同部位の弓状脈管などの腎実質の構造に異常を認めないことで容易である.

fetal lobulation(胎児性分葉)

著者: 入江健夫 ,   宮本幸夫

ページ範囲:P.244 - P.244

胎生期の腎分節の遺残である(図1).腎は約10個の腎葉が集合してできたもので,胎生期には腎表面は腎葉に一致して膨隆し分葉の状態を呈する.通常,成長とともに膨隆は消失し,腎表面は平滑となる.この胎児性分葉は,5歳程度までにみられるとされるが,成人でも認められることがある.腎葉に一致して,腎全体にnotch(切痕)を認めることが特徴である.notchが正常の腎葉間にあり,腎皮質および髄質に異常がないことを確認する必要がある.慢性腎盂腎炎では腎葉のほぼ中央にnotchを形成することで,また,腎梗塞では同部位の皮質に菲薄化を認めることで,ある程度鑑別が可能である.

〈腎(非腫瘤性)〉

糸球体腎炎(腎不全)

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.245 - P.245

正常腎の超音波像は,馬蹄状に描出される腎実質と,中心部に高輝度に描出されるCEC(central echo complex)とにより構成される.腎実質は,腎髄質(錐体)と腎皮質とに区分され,前者は肝よりもやや低エコーに描出され,後者はさらに低エコーレベルを呈する.腎皮質は,腎の辺縁を覆うouter cortexと髄質間に位置するinner cortexとに区分されるが,後者は腎柱あるいはBertin柱(Bertin's column)とも呼ばれる.Bertin柱が局所性の過形成を呈する場合(renal columnar hyperplasia)には,しばしば腫瘍様に描出されるため初学者は注意を要する.CEC内には,腎盂・腎杯,腎動静脈,腎洞をはじめ,さまざまなcomponentが含まれるが,CECが総じて高輝度に描出される原因は,腎洞内の脂肪組織に由来する.

 糸球体は腎皮質に局在するため,糸球体腎炎では一般に腎皮質のエコーレベルは上昇し,皮髄コントラストが強くなる(図1a).腎皮質のエコーレベルとクレアチニンクリアランスは,おおむね相関するという報告もある.糸球体腎炎が進行すると,皮質のエコーレベルはさらに上昇するが,しばしば病変が髄質にも及ぶため,腎実質全体のエコーレベルは上昇するとともに,腎は次第に萎縮していく.なお,高度の萎縮を伴うケースにおいても,時に皮髄コントラストは保たれていることがあるが(図1b),糸球体腎炎の分類と皮髄コントラストとの関係は,今後の課題であろう.糸球体腎炎の診断と腎機能の評価において,超音波検査はきわめて有効であり,しばしば血液生化学検査にてBUNやクレアチニンの異常値を呈するよりも前に,超音波像にて異常を捉えることも可能であることは銘記されたい.カラードプラ法では,一般に腎の血流は低下する.なお,慢性糸球体腎炎に伴うネフローゼにおいても,超音波所見は同様であるが,低蛋白血症の程度と超音波像との関連は明らかではない.なお,腎アミロイドーシスや糖尿病性腎症においても,しばしば腎皮質のエコーレベルは上昇する.

hyperechoic medulla

著者: 豊田圭子

ページ範囲:P.246 - P.246

hyperechoic medullaとは,腎髄質高輝度エコー所見のことである.正常では低エコーである各髄質のエコーレベルが上昇し,中心部高エコーと一塊となったように見える.腎の大きさ,皮質厚の大きな変化は認めない.両側腎にみられることが多い.

 その原因として,高尿酸血症,腎髄質石灰化症,低カリウム血症など両側の腎臓を侵すような病態が挙げられる.それぞれの病理は尿酸塩の尿細管内沈着,髄質内石灰沈着,髄質間質の線維化が考えられ,疾患は多岐にわたる(表1).腎髄質石灰化症では,高エコーの後方に音響陰影を伴うこともある.

腎囊胞

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.247 - P.247

腎内ないしは腎被膜下より腎外に突出する囊胞で,加齢とともに頻度が高くなる.単発の場合もあれば多発することもある.通常は無症状である.

1. simple cyst(図1)

 ①類円形,②辺縁明瞭かつ平滑,③内部は無エコー,④後方エコーの増強を伴う,といった所見があれば確診できる.腎盂や腎杯と接して存在する場合はparapelvic cystと呼ばれ,円形でないことが多いため腎盂の拡張と間違われることが多いが,後方エコー増強の有無,尿管と相互に連続するかどうかで鑑別する.

多発性囊胞腎

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.248 - P.248

polycystic diseaseとは両側の腎に囊胞が多発する疾患で,常染色体劣性遺伝であるautosomal recessive polycystic kidney disease(ARPKD),と常染色体優性遺伝であるautosomal dominant polycystic kidney disease(ADPKD),acquired cystic disease of kidney (ACDK),von Hippel-Lindau病,結節性硬化症によるものなどが考えられる.

 ARPKDは,多くは出産直後より発症し,周産期に死亡することが多い.肝線維症を伴う.病理学的にはネフロンや集合管の拡張による小囊胞が特徴である.超音波上,微小囊胞が多発するため実質エコーレベルが上昇して見える(図1).この中に比較的大きな囊胞が認められると,pepper and salt appearanceないしはstripped appearanceを呈する.

腎結石

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.249 - P.249

腎結石の大部分(95%)は腹部単純X線で捉えることが容易な石灰化を伴う結石であるが,残り5%の尿酸結石は見えないことが多い.しかし超音波検査ではこのような尿酸結石の確認も容易である.腎は大きく腎洞部,髄質,皮質に分けられる.このうち腎洞部は腎動静脈,腎盂・腎杯,脂肪織などからなっており,超音波上は比較的高輝度を呈し,中心部エコー像(central echo complex:CEC)と呼ばれる.腎結石はこのCEC内に高輝度病変として捉えられ,背側には音響陰影を伴うことが多い(図1).検査上は結石の位置,大きさ,個数を確認し,腎盂・腎杯の拡張の有無や腎盂尿管移行部の結石の有無などを同時に観察する.

 診断上の注意点としては以下が挙げられる.①腎盂・腎杯を鋳型状に占めるサンゴ状結石では音響陰影により腎実質の一部の描出が得られず,腫瘤性病変を見落とす.②腎杯憩室内の結石(図2).腎杯憩室はCECに接してその外にある腎杯と交通する先天性の囊胞で,憩室内部に結石形成を起こしやすい.小結石のためコメットエコーやmilk of calciumと呼ばれる液面形成を呈する.体位変換により可能性を確認することで,壁石灰化を伴った腎囊胞と鑑別する.③腎血管の壁,あるいはその石灰化は高輝度やコメットエコーを呈するため紛らわしく,線状の形状や位置により鑑別する.④5mm以下の小さい結石の場合には,超音波ビームの方向によっては音響陰影を伴いにくく,体位変換によりできるだけ多方向からの観察を試みる必要がある.

水腎症

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.250 - P.250

中心部エコー像(central echo complex:CEC)内には8個程度の小腎杯,2~3個の大腎杯および腎盂が含まれる.何らかの理由で尿路に閉塞・狭窄が起こり,これらに尿が貯留すると水腎症となり,超音波検査上はCEC内に限局性あるいは分葉状の無エコー域として描出される.水腎症の程度,持続期間により,無エコー域の大きさ,形状,あるいは腎実質の萎縮の程度は変化し,最終的には腎実質が菲薄化,無機能となり,分葉状の囊胞性病変のみとなる.一方,先天性の腎盂尿管移行部狭窄の場合には,著明な水腎症をきたしており,囊胞性の腹部腫瘤として描出される.比較的均一の大きさの10個前後の囊胞が,より大きな囊胞を取り囲んで存在するような特徴的な像を呈することから,多囊胞性腎異形成症と鑑別される.

 診断上の注意点としては以下が挙げられる.①腎杯に限局する拡張の場合には,傍腎盂囊胞と鑑別が困難な場合があるとともに,腎盂腫瘍を疑いCEC内を十分に観察する必要がある.②腎盂は腎内腎盂と腎外腎盂に区分されるが,この腎外腎盂がやや大きく拡張している場合に水腎症と誤りやすい.この場合には腎杯の拡張がないことにより鑑別される.③膀胱内に大量の尿貯留がある場合には,軽度の腎盂,腎杯,尿管の拡張をきたすことがある.④時に拡張した腎静脈が水腎症と紛らわしいことがあるが,腎門部方向に追跡していくと,尿管は尾側へ,腎静脈は頭側へと連続していくことより鑑別が可能である.⑤重複腎盂尿管の場合には,一方のみが水腎症を呈する場合が多い(図1).

腎盂腎炎・腎膿瘍

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.251 - P.251

腎の腫大をきたす疾患は,腎腫瘍,急性腎盂腎炎,急性腎不全,腎静脈血栓症,水腎症,アミロイドーシス,糖尿病,代償性腫大などが挙げられる.そのなかで炎症所見が強く,腎盂・腎杯の拡張と壁の肥厚を伴い,皮髄境界領域に浮腫を示す低エコー領域が認められる場合,急性腎盂腎炎が疑われる(図1).しかし,超音波検査上は異常の認められない例も多い.特に免疫不全や糖尿病合併例では,限局性の境界不明瞭な低エコー病変を形成する場合があり,急性巣状細菌性腎炎と呼ばれる(図2).このような症例では超音波所見だけでは腫瘍性病変との鑑別が困難である.

 腎萎縮をきたす疾患は,慢性腎不全,慢性腎盂腎炎,腎梗塞,腎動脈狭窄などが挙げられる.特に,腎杯の拡張とそれに一致した腎実質の萎縮と輝度の上昇がみられた場合には,慢性腎盂腎炎が疑われる(図3).鑑別として胎児性分葉が挙げられるが,この場合,腎葉(腎杯)間に切痕が認められることにより鑑別が可能である.

腎結核

著者: 豊田圭子

ページ範囲:P.252 - P.252

腎結核は,mycobacterium tuberculosisによる腎臓の慢性肉芽腫性炎症である.尿路結核は腎結核に始まり,尿管,膀胱,尿道へと結核が進行していく.片側性の場合は75%といわれている.

 血行性の感染にて腎皮質に最初の初期病巣が作られ,次に腎髄質ごとに乳頭部に孤立性病変を形成し,周囲実質に広がり,癒合して乾酪化や空洞の形成をする.進行すると,腎杯・腎盂粘膜に膿瘍が自壊して粘膜潰瘍を形成する.この膿により腎盂腎杯が満たされたのが結核性膿腎症である(図1).超音波像では部分的水腎症あるいは腎盂の拡張を伴わない腎杯拡張を反映して,境界の不明瞭な低エコーの腫瘤様病変が腎杯部に描出される.

〈腎(腫瘤性)〉

血管筋脂肪腫(AML)

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.254 - P.254

血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)は血管,平滑筋,脂肪からなり,組織学的には過誤腫とされる.中年女性に多い.20%が結節性硬化症に合併するとされており,両側性・多発性の場合は結節性硬化症に多い.また,pulmonary lymphangiomyomatosis(pulmonary LAM)に合併することもある.

 通常は無症状であるが,腫瘤が大きくなるとmass effectや腹痛,血尿の原因となることがあり,また自然破裂により出血することもある.

腎細胞癌(RCC)

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.255 - P.255

腎腫瘍の7~8割を占め,高齢者に多い.尿細管上皮由来の悪性腫瘍で,古典的には無症候性血尿・側腹部痛・腫瘤触知の3主徴を呈するが,最近では無症状で偶然発見されることも多い.腎盂癌と異なり,膨張性発育を呈することが多いため,腫瘍が大きくても腎機能は保たれることが多い.

 小腫瘤である場合,内部は低~高エコーいずれもとりうるが,比較的均一であることが多い.腫瘤が増大するとともに内部の出血や壊死を反映して低エコー部分(intratumoral cyst)と高エコー部分の混在する不均一な腫瘤となる.偽被膜を反映して辺縁に低エコー帯(anechoic rim)が認められることが多く,intratumoral cystとともに腎細胞癌に特徴的な所見である(図1)1).不整な多房性囊胞性腫瘤を呈する場合もある(図2).

腎盂癌

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.256 - P.256

腎盂・腎杯粘膜より発生する腫瘍で,その大部分は悪性である.腎原発悪性腫瘍の5%を占める.浸潤性の発育を呈し,腎そのものが腫瘍に置換されるため,大きな腫瘍の場合腎機能は低下する.移行上皮癌(transitional cell carcinoma:TCC)が多いが扁平上皮癌や腺癌のこともあり,この場合はより浸潤傾向が強い.移行上皮癌は多中心性発生をきたすため,尿管腫瘍,膀胱腫瘍の有無を確認することが重要である.

 多くは無症候性血尿が認められ,腫瘍や凝血塊による尿管閉塞により側腹部痛や水腎症となることがある.

その他(オンコサイトーマ,悪性リンパ腫など)

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.257 - P.257

腎細胞癌,腎盂腫瘍以外の腎腫瘍について述べる.

1. oncocytoma(オンコサイトーマ)

 好酸性細胞質が膨化している細胞よりなる上皮性良性腫瘍.

 hypervascularな充実性腫瘍で,サイズが小さいときは内部エコーは比較的均一であるが,大きくなるにつれ内部低エコーの中心瘢痕(satellite scar)が認められ,特徴的な“spoked wheel”様の血管構築が認められ,これがカラードプラ法などで観察できることがある.大きな腎細胞癌でも内部の壊死により中心瘢痕様所見を呈し,いずれにせよ鑑別は困難で,手術が必要となることが多い.

〈副腎〉

副腎皮質過形成

著者: 金田智

ページ範囲:P.258 - P.258

病理学的には皮質の細胞が増加した状態を指し,被膜を欠く大小の結節を伴う結節性過形成とびまん性の過形成がある.臨床的には,下垂体や視床下部からの過剰分泌を呈するCushing病,肺癌などの異所性ACTH産生腫瘍によるCushing症候群,Conn症候群,コルチゾールの自律性過剰分泌を呈する結節性過形成,その他先天性のコルチゾール代謝異常に伴うものと,さまざまなものが含まれる.一方,非機能性で結節外の副腎皮質に過形成がない場合には,nodulesもしくはmultinodular adrenalsとして区別すべきとされる1)が,本邦では非機能性結節性過形成と診断されていることが多い.

 真の過形成もmultinodular adrenalsも,画像上は両側性の副腎の腫大,すなわち形状は維持されたまま厚みが増した状態として描出されるか,あるいは単発もしくは多発腫瘤状病変として描出されることになる(図1).

副腎腺腫

著者: 金田智

ページ範囲:P.258 - P.258

副腎皮質の良性腫瘍である.有症状のものではCushing症候群やConn症候群を呈するものが多い.画像診断の発達とともに無症状のもの(機能性,無機能性にかかわらず)が発見される頻度が増えてきている.画像診断で偶然副腎に腫瘤が発見されたものを偶発腫(insidentaloma)と呼ぶ.

 超音波検査での確実な描出(特に左側の副腎腫瘤)は困難であるので,有症状のものはCTでの評価が基本である.超音波検査では,内部エコーが均一で低エコーの境界鮮明な丸い腫瘤として描出されることがほとんどである.褐色細胞腫と異なり,比較的大きいものでも囊胞状変性や出血を伴うことは少ない.Cushing症候群を呈するものは3cm大程度,Conn症候群を呈するものは1cm大程度のことが多いことは知っておいたほうがよい(図1).

褐色細胞腫

著者: 金田智

ページ範囲:P.259 - P.259

副腎髄質由来の腫瘍である.カテコールアミンを産生し,心悸亢進や頭痛などを起こす.高血圧は発作性のものだけでなく持続性のものもある.副腎外10%,両側性10%,悪性10%であることから「10%病」と呼ばれる.家族性発生のものや多発性内分泌腫瘍(MEN)では,両側性のものがみられる.

 無症候性の症例では,超音波検査で偶然発見されることもあるが,左副腎腫瘤は3cmを超えるような大きさでも見落とすことがしばしばある.したがって褐色細胞腫が疑われる症例では,CTかMRIの検査が基本の画像診断である.また副腎外のものを検索するためには全身を検索できるMIBGシンチグラムが有用である.

myelolipoma

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.259 - P.259

myelolipoma(骨髄脂肪腫)は,脂肪と骨髄組織よりなる比較的稀な良性腫瘍とされるが,本来は新生物ではなく,副腎の血液洞中における細網内皮組織の限局性増殖から発生する細胞の蓄積を表す,ある種の小結節性病巣の誤称であり,実際は赤血球生成細胞または骨髄性細胞を含む骨髄巣である1)といわれている.超音波像では一般に,比較的内部エコーの均一な高輝度の腫瘤として描出されるが,腎上極に突出する血管筋脂肪腫との鑑別が時に問題となる(図1).腫瘤と腎実質との境界や,腎実質そのものが保たれているか否かが鑑別のポイントとなる.カラードプラ法では,乏血性腫瘤として描出されることが多いが,血管筋脂肪腫も一般に乏血性に描出されるため,同法による両者の鑑別は,しばしば困難である.

副腎癌

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.260 - P.260

副腎癌は,通常5cm以上の大きさで捉えられることが多く,被膜浸潤や血管浸潤を特徴とする.超音波像にて,わずかな被膜浸潤を捉えることは困難であるが,血管浸潤に関しては,カラードプラ検査やドプラスペクトルの解析によりある程度診断可能である.良性腺腫に比して腫瘍内出血,壊死,石灰化などを伴うことも多く,診断の一助となる.広範囲に転移し,予後が悪いことはよく知られている.副腎癌の50%は機能性であり,そのうち半分はCushing's syndrome,30%は男性化,12%は女性化を伴う.逆に,女性化を伴う副腎腫瘍の3/4は癌,1/4は良性腺腫といわれており,両側の女性化乳房,libidoの減退,精巣や陰茎萎縮などを呈する.非機能性副腎癌では発熱を伴うことが多い.低血糖を伴ったという報告もある.

 転移性副腎癌の多くは両側性であり,2.5cm以下で発見されることが多い.副腎髄質へ最初に転移するといわれており,欧米の報告では,原発巣の1/3は肺癌(扁平上皮癌),25~30%は乳癌とされている.その他,胃癌,大腸癌,膵癌,悪性黒色腫,腎細胞癌,甲状腺癌などからの転移が多い.

〈膀胱〉

膀胱炎・神経因性膀胱

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.262 - P.262

膀胱は,筋性の中空臓器であり,膀胱壁は外層から順に,外膜,平滑筋層,移行上皮の3層より構成される.左右の尿管口と内尿道口とを結ぶいわゆる三角部以外は周囲に固定されていないため,尿量に応じて変形し,膀胱壁厚も2~5mmと著明に変化する.なお,膀胱の天蓋部(上壁)は腹膜に覆われているが,底部(後壁)は上部のみ腹膜に覆われている.経腹壁的な超音波像にて,正常膀胱壁のzonal anatomyを明瞭に捉えることは困難であるが,膀胱壁の肥厚例においては,各層が捉えられることもある.なお,膀胱前壁は腹壁の多重反射によりマスクされ,明瞭に捉えられないことがあるため,初学者は注意を要する.膀胱炎はその成因などにより,bacterial cystitis(細菌性膀胱炎),cystitis colli(膀胱頸部炎),cystitis cystica(囊胞性膀胱炎),emphysematous cystitis(気腫性膀胱炎),cystitis glandularis(腺性膀胱炎),hemorrhagic cystitis(出血性膀胱炎,図1),incrusted cystitis(痂皮性膀胱炎),interstitial cystitis(間質性膀胱炎),viral cystitis(ウイルス性膀胱炎),radiation cystitis(放射線性膀胱炎)などに区分される.細菌性膀胱炎などの急性炎症では,超音波像にて膀胱粘膜の肥厚が低エコー層として捉えられ,筋層の肥厚もしばしば描出される.また,神経因性膀胱など排尿障害に基づく慢性の膀胱炎では,筋層が肥厚し著明な壁の凹凸(肉柱形成:trabeculation)が認められる.近年のTHI(tissue harmonic imaging)法の開発により,多重反射やサイドローブによるアーチファクトが軽減されたため,膀胱壁もより明瞭に描出され,尿中の出血などによる微細点状エコーなども鮮明に捉えることが可能となった.

膀胱癌・肉腫など

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.263 - P.263

膀胱癌は年々増加傾向にあり,泌尿器科領域では前立腺癌に次いで多い腫瘍である.組織型のほとんどは移行上皮癌であり,経腹壁的超音波検査でも,5mm程度の大きさであれば描出可能であるといわれている.ただし,腫瘍の局在が膀胱の前壁にある場合は,腹壁や消化管などの多重反射により描出が妨げられ,容易に見逃しうることは注意を要する.また,尿量が多すぎる場合には,膀胱後壁が焦点域から外れてしまうため,小さな病変の見落としにつながることも銘記すべきであろう.膀胱癌は超音波像にて,通常,円形ないし不整形の腫瘤として描出され,エコーレベルは膀胱壁に比して低エコーレベルに描出されることが多い.しかしながら,等輝度~高輝度に描出されるものもあり,エコーレベルのスペクトルはかなり広いものと考えられる(図1).腫瘤の表面が石灰化を伴う壊死組織により覆われていることも少なくない.予後診断においても,治療方針の決定においても最も重要なのは深達度であるが,経尿道的な超音波検査では,膀胱壁筋層が高輝度の層として描出されるため,同法を用いればT1(粘膜固有層浸潤)とT2(浅い筋層浸潤)の区別,およびT3b(膀胱周囲脂肪織浸潤)以上の診断は可能である.

 膀胱癌と鑑別すべき疾患としては,慢性排尿障害に基づく肉柱形成,凝血塊,膀胱結石,前立腺肥大症,子宮筋腫,および膀胱三角部の隆起した尿管口などがある.カラードプラ検査では,膀胱癌はgradeが高くなるにつれて,むしろ乏血性に描出される(図2).腫瘍血流のドプラスペクトル解析では,gradeが進むにつれ,血流抵抗の指標であるPI値・RI値が上昇することが知られている.なお,carcinosarcomaやleiomyosarcomaにおける筆者の経験では,カラードプラ法にて腫瘤は富血性に描出され,ドプラスペクトル解析ではPI値・RI値の上昇が認められた.

〈脾〉

脾腫,副脾,多脾症,無脾症

著者: 成尾孝一郎

ページ範囲:P.264 - P.264

脾 腫

 脾腫の指標として,脾の最大断面像における長径と脾門部よりこれに直行する短径との積をspleen indexとする方法(古賀法)が広く用いられている(図1).これに正常例で0.8,肝疾患例で0.9を乗じた値が断面積に相当するとされ,成人では30cm2以上を脾腫と判定してきた.しかし,これはリニア探触子を用いた基準であり,最近のコンベックス型や,セクタ型プローブを用いた検討では36~38cm2以下が正常範囲とされる.また若年者ではこれより大きな値でも,必ずしも異常とはいえない.脾腫をきたす疾患は,感染(敗血症,伝染性単核球症,マラリアなど),うっ血(肝硬変,特発性門脈圧亢進症),溶血性貧血,腫瘍浸潤(悪性リンパ腫,白血病),物質沈着(Gaucher病など),膠原病などの多彩な疾患が挙げられる.悪性リンパ腫や白血病はびまん性に浸潤した場合,超音波所見は脾腫のみを呈し,腫瘤を形成しないこともある.

副 脾

 正常人の約10%にみられる.胎生期の背側胃間膜内の脾臓原器の癒合不全により生ずる.脾門部に好発する.径は数mmから2cm大の円形腫瘤で,脾臓と等エコーを呈する(図2).90%は単発性である.

Gamna-Gandy結節など

著者: 成尾孝一郎

ページ範囲:P.265 - P.265

Gamna-Gandy結節は,肝硬変や特発性門脈圧亢進症などの門脈圧亢進をきたす疾患でみられる.脾臓の慢性うっ血により,脾被膜,脾柱の動脈周囲に限局性出血が生じ,これにヘモジデリン沈着や石灰沈着が起こるためと考えられている.超音波では,脾臓にびまん性に多数の点状のstrong echo(高輝度エコー)が認められる(図1).脾結核などの石灰化と比べ小さく,音響陰影を伴わないことが多い.また,肝硬変の所見や,門脈,脾静脈の拡張,脾腫などの門脈圧亢進を示唆する所見を認めることが多い.

 脾臓に石灰化をきたす疾患として,陳旧性結核,ヒストプラスマ症,静脈石などが挙げられる.結核,ヒストプラスマ症は多発性のことが,静脈石は単発性のことが多い.これらは,Gamna-Gandy結節と比較してstrong echoは大きく,音響陰影を伴うことが多い(図2).

脾囊胞性疾患と石灰化病変

著者: 平井都始子 ,   大石元

ページ範囲:P.266 - P.266

画像診断の進歩により,偶然発見される脾囊胞性疾患は増加傾向にある.脾囊胞は真性囊胞と仮性囊胞に分けられ,前者に,類上皮囊胞,リンパ管腫(図1),血管腫などが含まれる.後者は外傷によるものが最も多く,他に梗塞,感染,膵炎などが挙げられる.類上皮囊胞や仮性囊胞は単房性,リンパ管腫は多房性である.囊胞壁に石灰化を伴う例も多いが,著しい石灰化を伴っている例は大半が仮性囊胞である(図2).CA19-9高値を呈する脾囊胞も報告されているが,ほとんどが真性囊胞で,診断の一助となるが悪性を示すものではない.稀ではあるが偽粘液腫の脾臓転移は小囊胞が蜂巣状に群をなして認められ,通常の臓器癌からの転移性脾腫瘍も液状変性をきたす場合がある.石灰化を伴う脾病変は,これらの脾囊胞性疾患のほかに,結核,非定型性好酸菌,ブルセラ菌などに起因する炎症性肉芽腫,特に孤立性結核腫が知られている.石灰化は腫瘤内部や辺縁にみられ,不整形を示すことが多い.アミロイドーシスも脾腫大に点状石灰化をきたす場合がある.

転移性脾腫瘍

著者: 水口安則

ページ範囲:P.267 - P.267

1. 疾患概念

 日常診療において発見される転移性脾腫瘍(metastatic splenic tumor)の頻度は稀であり,われわれの経験では約0.03%である.原発巣はさまざまであり,卵巣癌,肺癌,悪性黒色腫,大腸癌,胃癌,子宮体癌などが認められた1).本疾患は,原発巣の臨床情報があり,他臓器に多発転移が存在する場合は診断に苦慮することは少ないと考える.しかし,原発巣未発見の場合,あるいは限局性に脾のみに転移が認められるときは,今後の診療方針に重大な影響を与えることが予想されるため,他臓器における診断と同様,的確に質的診断を行う必要がある.脾転移性腫瘍が発見され,その後の全身検索にても他病変が発見されないため切除され,予後に良好な影響を与えた症例を少なからず経験している.鑑別すべき疾患として,悪性リンパ腫,過誤腫,血管腫,リンパ管腫,血管肉腫などがある

2. 超音波像

 他臓器への転移性腫瘍と同様,さまざまな所見を呈する.多くは不整形,境界明瞭,輪郭不整を示す.転移性肝腫瘍にて特徴的に認められる辺縁低エコー帯の存在は,脾では約6割に認められる(図1).辺縁低エコー帯を認めない腫瘍も存在するので注意を要する.内部エコーは低エコー,等エコー,高エコーとさまざまである.卵巣癌原発では腫瘍内部の大部分の領域が囊胞成分で構成されていることがほとんどであり,特異的な超音波像を示す(図2).検査時に同時的肝転移巣が認められる症例が約半数あり,この場合,肝病変と脾病変の超音波所見が全く同一または類似している場合が多いため,鑑別診断の参考となる.

〈消化管〉

食道・胃接合部疾患(腹部食道を含めて)

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.269 - P.269

1. 超音波解剖と描出法

 食道・胃接合部(esophago-gastric junction:EGJ,esophago-cardiac junction:ECJ)および腹部食道は,比較的管腔内のガスが貯留しにくく,かつ肝を音響窓として利用することが可能であるため,通常は腹臥位にて心窩部を走査することにより,比較的容易に捉えることが可能である.腹部食道は,横隔膜食道裂孔を通過した後,腹部大動脈の前を斜めにトラバースし,食道・胃接合部を経て胃底部へと連続する.このため,腹部食道は,心窩部矢状断ではやや斜め輪切りに描出され,腹部食道から胃への長軸像をとらえるためには,探触子を矢状断の位置から反時計回りにやや回転させる必要がある.食道は通常ターゲット(標的)様に描出され,低エコーに描出される外層は固有筋層を反映し,中心部の高エコーは,食道粘膜と粘膜下層との複合エコーを示す.腹部食道の長軸像は,食道前壁および後壁の固有筋層がtram line様に平行に走行する2本の線として描出され,EGJでは,壁がやや肥厚する(図1).

2. 食道・胃接合部疾患の超音波像

 食道癌(図2)や胃癌の食道への進展例は,食道壁の不整な肥厚像として捉えられる.EGJを越えての腫瘍進展を評価することも可能であり,横隔膜脚部や大動脈への直接浸潤,さらに周囲転移性リンパ節の評価にも超音波検査はきわめて有効である.狭窄部位より口側の食道はしばしば拡張し,時に液体貯溜を認めるが,食道アカラシアでは,食道の拡張は捉えられるものの,腹部食道に狭窄はなくEGJ自体の壁肥厚はあまり目立たない.門脈圧亢進症では,食道静脈瘤と傍食道静脈瘤とが鑑別可能であり,硬化療法の評価も可能となる.食道裂孔ヘルニアでは,同部位が貯留するガスにより描出しえなくなることもあるが,ガスのない場合では,上記のtram lineの蛇行などにより,ある程度診断可能となる.

胃癌

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.270 - P.270

胃癌ないし大腸癌の超音波像における古典的な所見は,pseudo-kidney signと呼ばれる全周性壁肥厚像で,進行癌に特徴的としてよく知られている(図1).同所見は,消化管の悪性リンパ腫や高度の消化管の炎症においても認められる.胃癌の局所的な壁肥厚像が経腹壁的な超音波検査においてもある程度捉えられることは少なくないが,胃内腔のガス像は一般に胃壁描出の大きな妨げとなるため,飲水法などを併用することで観察部位からガスを排除し,対象を焦点域に捉えようとする試みが広く用いられている(fluid-filled stomach,liquid-filled stomach)(図2).超音波内視鏡を用いて,胃壁の構造を高分解能探触子で直接捉える方法も広く普及してきている.

 胃壁が超音波像にて5層構造として捉えられることはよく知られている.各層の解釈に関しては,現在もなお十分なコンセンサスが得られたわけではないが,粘膜層より順に,①粘膜と胃内腔との境界より生ずるエコー,②粘膜(腺窩上皮および粘膜固有層),③粘膜下層,④固有筋層,⑤漿膜および漿膜下層,とするという考え方が最も妥当なものと思われる.なお,より高分解能な探触子を用いれば,胃壁が11層を超える多層構造として描出されることが知られており,それらの多層構造のなかに,胃壁内の各層における境界(interface)より生ずるエコーが数多く含まれていることは,胃癌の壁深達度診断を行ううえでの重要な指標となる.これらの多層構造を前提とした胃壁の超音波診断は,胃癌の内視鏡治療の適応を決めるうえでも重要であり,腫瘍の壁内進展範囲の診断や,治療効果の判定にも有用となる.

胃粘膜下腫瘍

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.271 - P.271

胃粘膜下腫瘍の診断には,内視鏡におけるbridging fold signや上部消化管造影profile像における90度程度の粘膜面からの腫瘤の立ち上がり角度(angle sign)がよく知られている.しかしながら,これらの所見は,腫瘤を粘膜側より観察した場合における,いわば間接的な所見であり,粘膜と腫瘤との関係を断層像として捉えたものではないため,おのずと診断精度には限界があった.一方MRIやCTは断層像ではあるが,胃粘膜,粘膜下層,固有筋層などを明瞭に識別するような空間分解能を有していないため,胃粘膜下腫瘍の診断を確実に施行することは不可能であった.こうしたなかで,超音波像における胃壁層構造描出の応用として,bridging layers signが胃粘膜下腫瘍の特徴的所見として考案された(図1).胃壁は超音波像にて5層構造として描出されることはよく知られている.5層構造が粘膜側より順に,①粘膜と胃内腔との境界より生ずるエコー,②粘膜(腺窩上皮および粘膜固有層),③粘膜下層,④固有筋層,⑤漿膜および漿膜下層であるとする解釈が一般的である.腫瘤の粘膜側に3層構造が認められ,そのうち少なくとも粘膜側より第1・第2層が,正常胃壁の第1・第2層から連続している場合をmucosal bridging layersとし,正常胃壁の第5層が腫瘤の漿膜側に連続していることをserosal bridging layerとして,両者をまとめてbridging layers signと呼ぶ.前者は腫瘤が胃の粘膜下に存在することを示す所見であり,後者は腫瘤が胃壁より発生したことを意味する所見であるため,両者が満たされれば,腫瘤が胃粘膜下腫瘍であることを直接的に診断することになる.bridging layers signは飲水法にても,超音波内視鏡にても有用なサインであるが,腫瘍の良・悪性を問うものではない.平滑筋肉腫(図2)は平滑筋腫に比して,変性壊死をきたしやすい傾向にあることなどはよく知られているが,神経鞘腫なども変性壊死をきたしやすいことはよく知られており,明らかな転移や播種などの付随所見を認める場合を別とすれば,良・悪性を鑑別する特異的な超音波所見は筆者の知る限り報告されていない.

胃悪性リンパ腫

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.272 - P.272

胃悪性リンパ腫は,超音波像では一般に胃壁の肥厚像として捉えられる.胃壁の肥厚が全周性に及ぶ場合は,いわゆるpseudo-kidney signとして描出され,巨大皺襞として捉えられることも少なくない.飲水法(図1)や超音波内視鏡などを用いた,胃の層構造をもとにしたより詳細な診断では,胃悪性リンパ腫は,①胃癌と同様の所見を呈するもの,②胃粘膜下腫瘍様の所見を呈するものなど,さまざまである.胃癌の鑑別に際して重要な所見は,肥厚した胃壁の内部エコーが,きわめて均一でかつ低エコーレベルを呈することである.これは,胃癌と異なり,悪性リンパ腫ではdesmoplastic reactionを生じないため,胃壁内の反射源が減少することによるものと考えられ,同様の所見は,悪性リンパ腫のリンパ節と腺癌のリンパ節転移とを比較した場合にも認められる重要な鑑別点である.

巨大皺襞

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.272 - P.272

経腹壁走査にて胃を捉える場合,巨大皺襞(giant fold)の有無を評価するには,胃体上部から窮隆部の超音波像が有用となる.同部位へのガス貯溜は胃壁の描出の妨げとなるため,そうした場合は左側臥位走査が有効となる.ガスが著明な場合には,飲水法が必要となる場合もある.巨大皺襞では,肥厚した皺襞が脳回様の構造として捉えられるため,比較的診断は容易である.わが国では,巨大皺襞が病的なものである確率は欧米に比して少ないが,胃癌(linitis plasticaなど),悪性リンパ腫,Ménétrier病(巨大肥厚性胃炎)などは同所見の鑑別診断として重要である.なお,肥厚した皺襞が十二指腸球部まで連続して認められた場合は,悪性リンパ腫を疑う.また,肥厚した脳回様の皺襞のエコーレベルがきわめて低い場合も悪性リンパ腫が示唆される(図1).

炎症性腸疾患

著者: 水城啓

ページ範囲:P.273 - P.273

大腸憩室炎では,超音波は診断に有用であるうえに,重症度判定も可能である.下腹部痛で来院し,憩室炎が疑われた場合には,至急血液検査,超音波検査をオーダーし,憩室炎の診断がつけば速やかに治療を開始する.また右下腹部痛では虫垂炎との鑑別が困難なこともあり,適宜CTを併用すべきである.

 Crohn病,潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の診断の基本は臨床症状,臨床所見であり,検査の基本は注腸検査,大腸ファイバーである.超音波は補助的な手段として用いられるべきである.時に非典型的な症状のスクリーニングでCrohn病が指摘されることがある.

虫垂炎

著者: 長瀬雅則

ページ範囲:P.274 - P.274

虫垂炎は急性腹症の代表的疾患の一つであり,小児の急性腹症では特に重要である.超音波検査は被曝がないことから,特に小児や妊婦における虫垂炎などの急性腹症の検査に重要である.超音波検査は通常腹部用プローブを使用するが,小児や痩せている人の場合には表在性プローブも併用することを勧める.

 所見としては,直接所見と間接所見に分けられる.直接所見は腫大した虫垂の描出であり(図1,2),正常の虫垂は描出されないのが一般的である.また,肥厚した虫垂は高エコーの層状に描出される.なお虫垂は,時に回盲部の背側を走行することがあり,この場合はガスのため描出できないことが多い.回腸末端との鑑別は,回腸が回盲部の途中(回盲弁)とつながっていることと,蠕動運動がみられることである.間接所見を以下に挙げる.①虫垂内に糞石を認める(壊死性の場合はその周囲に認めることがある).糞石はエコー上音響陰影を伴ったstrong echoとして描出される.②周囲の液体貯留やリンパ節腫大.③周囲の腸管の蠕動運動低下(麻痺性イレウス).④プローブによる虫垂部分に一致した圧痛.これらの所見から虫垂炎を診断するが,軽いものから順にカタル性,蜂窩織炎性,壊死性に分類されている.カタル性は軽度の虫垂腫大と同部の圧痛のみのことがほとんどであり,診断困難なことも多い.蜂窩織炎性では腫大した虫垂が描出され層構造が保たれており,ドプラ上かなりの血流増加が認められる.また各種の間接所見も伴っていることが多い.壊死性では腫大した虫垂の層構造が不明瞭化または虫垂自体が不明瞭化し,同部に膿瘍形成を認める.ドプラ上も虫垂自体の血流は不明瞭で,周囲には強い炎症による血流増加がみられる.また,かなり強い間接所見も伴っている.特に壊死性は腹膜炎になっていることも多く,緊急手術の適応である.

大腸癌

著者: 水城啓

ページ範囲:P.275 - P.275

大腸癌が疑われた場合の検査の基本は,注腸X線検査,大腸ファイバーである.また,進行度を評価するうえでCT検査を行う.超音波検査はあくまで補助的な役割として,例えば原因不明の大腸イレウスや下腹部痛の鑑別などに用いられる.またルチン検査のとき,大腸壁の肥厚を見逃さないようにすべきである.最近の報告で大腸癌の高度狭窄症例に,ニフレック®投与による穿孔などの合併症があり,大腸の狭窄とその口側の高度便秘が診断できれば,このような事態を回避できる可能性がある.

 大腸癌は低エコーの壁肥厚として描出される.内腔のガスが強エコー,さらにそれを取り囲むように低エコーの腫瘍が認められ,全体が腎の構造に類似するため,pseudokidney signと呼ばれる(図1).正常の腸管壁と連続することを確認する.部位的には,脾彎曲部は描出困難である.右側結腸では便通異常をきたしにくいので,偶然発見されることが多い.超音波検査でリンパ節転移,肝転移が先に発見され,同時に超音波検査で原発の検索を行い,大腸癌が発見できることがある(図2).

〈後腹膜〉

後腹膜

著者: 石田秀明 ,   小松田智也 ,   大場麗奈

ページ範囲:P.277 - P.277

後腹膜に関する迷信を2つ.

 (1) 後腹膜はかなり深部(背側)にある.

 (2) 後腹膜は固定されており,ほとんど移動しない.

〈腹膜,大網,腸間膜〉

腹膜,大網,腸間膜

著者: 石田秀明 ,   小松田智也 ,   古川佳代子

ページ範囲:P.278 - P.278

腹膜,大網,腸間膜(以下集合的に用いる場合「これらの膜」と略す)はともに薄い線維性の膜で,病的肥厚がない限り,最近の高分解能装置でも超音波上一層の線状高エコーとしてのみ表現される程度で,詳細な観察は不可能である(図1).その結果,これらの膜は検査の際に無視されがちである.これらの膜の超音波診断能を向上させるためには,まずこれらの膜に興味をもつことから始まる.

 具体的には,腹水(+)例を対象に高周波プローブを用い,前腹壁-腹水境界部の線状高エコー(腹膜)の状態を腹部全体にかけて観察する.胆癌患者では,ここに癌性小結節(腹膜癌症)がみられることがある.腹水(+)例ではさらに,胃大彎を起点とし,それから尾側に伸びる線状高エコー(大網)が各呼吸相で胃と歩調を合わせた動きをするのが観察される.また,腹水の存在は腸間膜自体の観察も可能にする.通常では,内臓脂肪高度沈着例(この場合は腸間膜が折り畳んだ布団様に描出される)を除くと,観察困難な腸間膜が腹水(+)例ではそのひだまで観察可能である.一般的に良性(非癌性)腹水では,腸間膜は薄く漂うように自由に動くが,悪性(癌性)腹水では,腸間膜は肥厚し塊状で動きは乏しい(図2).なお,これらの膜自体の疾患は,低頻度ではあるが,炎症性疾患から悪性腫瘍まで多種多様で,術前の質的診断は一般に困難で,悪性疾患の可能性が高いため,これらの膜由来の病変に対しては原則として外科的治療が適応される.

〈腹部大動脈・その他〉

腹部大動脈瘤(解離性大動脈瘤を含む)

著者: 平井都始子 ,   大石元

ページ範囲:P.279 - P.279

大動脈が限局性に拡張した状態を動脈瘤といい,約3/4が腹部大動脈に発症する.このうち90%は腎動脈起始部より下から始まり,腸骨動脈に達する場合もある.原因の多くは高血圧,動脈硬化であり,瘤の血管壁構造から真性と仮性動脈瘤に,形状により紡錘状あるいは囊状に分類される.一般的な治療の適応は,最大瘤径が5cm以上とされている.大動脈内膜の亀裂から壁内に血液が流入し,中膜と外膜が剥離し2腔になった状態を大動脈解離といい,多くは緊急対応が必要であり,迅速かつ正確な診断が望まれる.本来の血管腔を「真腔」,解離により発症した腔を「偽腔」と称し,両者は再入口部(リエントリー)を介してさまざまな部位で交通する.偽腔の拡大や解離の進行により大動脈分枝の狭窄が生じ,支配臓器の血流障害など重篤な合併症をきたす場合もある.

 腹部大動脈瘤の超音波診断に際しては,瘤径,動脈瘤の範囲,壁在血栓の有無,動脈瘤周辺の血腫の有無,炎症の合併などの観察が重要である(図1).瘤の周辺に血腫形成が認められれば切迫破裂を示唆しており緊急対応を要する.大動脈解離の診断に際しては,解離の部位と範囲,エントリー・リエントリーの部位,解離腔内の血流状況,偽腔内血栓の有無,分枝動脈の血流状況に留意しながら観察する(図2).これらの観察にはカラードプラ法の併用が必須となる.真腔と偽腔の鑑別には,解離腔の形態,腔内の血栓の有無,収縮期での拡張状況が目安となる.すなわち,血管壁と解離内膜とのなす角度が鋭角である場合,腔内に血栓を認める場合は偽腔,収縮期に拡張傾向のみられる場合は真腔の可能性が高い.近年,ステントグラフト留置による治療が増加し,リークの有無の評価や瘤径の経過観察にも超音波検査が有用である.

静脈血栓・塞栓

著者: 平井都始子 ,   大石元

ページ範囲:P.280 - P.280

静脈血栓症は,凝固亢進,血流停滞,静脈壁障害などによって発症する.下肢深部静脈血栓症は手術後の発生率が25%との報告もみられ,骨盤内静脈まで及ぶ頻度が高く,下肢に限局するもの,大腿部まで血栓の及ぶものの順に頻度が低下する.下大静脈に及ぶことは稀である.肺梗塞例では,大腿静脈や下腿ヒラメ静脈の血栓症が原因となることが多く,血栓が血流によってゆらゆら動くfloating signを認めた場合は肺塞栓の発生率が高い.上肢深部静脈血栓症では,カテーテルなどが原因となる場合が多い.

 超音波検査では,血栓の範囲,性状,表在静脈の血流状態,肺塞栓の危険性などを評価する.静脈血栓症では,急性期には血栓の存在する部位は,存在しない部位の静脈に比較して拡張して描出される.静脈内に血栓が充実エコーとして捉えられる場合もあるが,全く無エコーであることもある.しかし,圧迫しても静脈がわずかにしか扁平化しないことや,末梢をミルキングしてもカラードプラ法でカラー表示の得られないことから,静脈血栓症と診断できる(図1).下肢全体の深部静脈に血栓を認める場合,皮下浮腫や表在静脈の拡張がみられる.血栓が消退してくると,血栓周囲に血流の再開がみられる.慢性期の血栓はBモードで輝度が高く,石灰化を伴う場合もある.

nutcracker syndrome

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.281 - P.281

nutcracker syndromeはleft renal vein entrapment syndromeとも呼ばれる.左腎静脈は通常腹部大動脈と上腸間膜動脈の間を走行し下大静脈へと還流するが,これらの動脈に挟まれた状態で腎静脈圧が上昇し,毛細血管の破綻を招き,血尿をきたす現象をいう.小児の無症候性血尿の原因の一つであるが,成長とともにその多くは改善する.思春期のやせ形体型に多い.

 エコー上では,心窩部横走査にて腹部大動脈と上腸間膜動脈の間を走行する左腎静脈が圧排され,左腎側の腎静脈が拡張していればnutcracker phenomenon陽性とする(図1,2).パルスドプラで狭窄部静脈血流がジェットとなっていることを確認する.腰静脈叢などへ向かう側副路が形成されることがあり,これもドプラにて確認する.側副路の形成とともに症状は改善するとされる.

腎血管性高血圧症

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.282 - P.282

腎血管性高血圧は,片側ないし両側の腎動脈およびその分枝の狭窄により腎灌流圧が低下し,レニン・アンギオテンシン系が賦活されることにより発症する.

 腎動脈狭窄の原因はさまざまで,粥状動脈硬化,線維筋性異形成,大動脈炎症候群,結節性多発動脈炎,解離性大動脈瘤,動脈瘤,腎動静脈瘻,腎外腫瘤による腎動脈圧排,外傷,腎下垂,先天性狭窄,術後吻合部狭窄,神経線維腫症,血栓,塞栓などが挙げられ,そのうち粥状動脈硬化(atherosclerosis:AS),線維筋性異形成(fibromuscular dysplasia:FMD)が大部分を占め,本邦では大動脈炎症候群の頻度も欧米に比して高い.

門脈圧亢進症

著者: 松谷正一 ,   丸山紀史 ,   税所宏光

ページ範囲:P.283 - P.283

門脈圧が持続的に上昇すると,脾腫や血球減少,腹水が出現する.さらに門脈系と大循環との間に短絡路が発達すると,消化管静脈瘤と出血,肝性脳症など多彩な臨床所見を呈する.

1. 門脈の変化

 肝外門脈閉塞症を除くと,門脈圧上昇に伴って門脈は拡張し,流速が低下する.また呼吸による径の変動が減少する.進行した例では,狭小化や逆流がみられることがある.門脈内に血栓が形成されると門脈圧亢進や増悪因子となる.血栓のエコー輝度や占拠部位はさまざまである.診断にはカラードプラを併用する.門脈閉塞が生じると,周囲に肝臓へ向かう側副血管が形成される.高度なものを,海綿状変化(cavernomatous transformation)と呼ぶ(図1).健常者の門脈径は9.3±1.1mm,平均血流速度は13.2±2.9cm/sec.

〈骨盤内臓器(子宮)〉

子宮筋腫

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.285 - P.285

子宮筋腫はその存在部位により,内膜下,筋層内,漿膜下に分類される.超音波検査上は子宮筋層内あるいは筋層に接して境界明瞭な類円形充実性腫瘤を呈する(図1).帯状の高輝度を示す子宮内膜は腫瘤により圧排扁平化している.輝度は筋層と同等かあるいは低輝度で,車軸状あるいは斑紋状を呈し,腫瘤による超音波の減衰が強いことから,腫瘤後方に音響陰影を伴うことが多い.

 診断上の注意点としては,以下が挙げられる.①子宮筋腫が,内部の変性状態により輝度や後方エコーが異なり,硝子様変性,石灰化変性では超音波の減衰が高度のため強い音響陰影を伴う.赤色変性や脂肪変性では,全体が中から高輝度を呈し,一部に低輝度域を伴い,水腫様変性では単房性あるいは多房性囊胞像を呈する.②有茎性の漿膜下筋腫は時に充実性の卵巣腫瘍との鑑別が困難な場合があり,正常卵巣の有無を確認することが必要となる.③時に重複子宮,双角子宮,あるいは後屈子宮が腫瘤状を呈する場合がある(図2).

子宮癌

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.286 - P.286

子宮体癌は,筋層内浸潤がない場合には,筋層よりも高輝度で,正常の子宮内膜に比較しやや低輝度を示す内膜領域の肥厚として描出される.筋層内浸潤が進むと不整な輪郭を呈するとともに,内膜周囲の低輝度の層が消失したり,不規則になる(図1).子宮内膜の肥厚像は内膜増殖症,内膜ポリープ,血腫,子宮留膿腫でも認められ,エストロゲン補充療法中にも厚くなるので注意が必要である.閉経後の場合,子宮内膜が10mmを超える場合には内膜増殖症あるいは内膜癌を疑い,子宮内膜組織診を考慮する必要がある.

 子宮頸癌は経腹超音波では頸部の不整な腫大として描出され,頸部の閉塞に伴い,子宮体部は子宮留水腫あるいは留膿腫を呈し,内膜領域の拡張が認められることが多い.したがって,逆にこれらの病態が認められたときには,頸部を観察し,腫瘤の有無を確認することが必要である.Nabothian cystは子宮頸部の感染後に形成される貯留囊胞であるが,時に著明に大きくなり腫瘍性病変と誤られることがあり,注意が必要である.

子宮内膜症

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.287 - P.287

子宮内膜症の初期病変や軽症のものは超音波検査では異常を認めることが少なく,特に子宮,卵巣に腫瘤性病変を形成した際の鑑別に用いられる.

 卵巣の内膜症性囊胞は,びまん性均一な淡い内部エコー,あるいは新たな出血や凝血塊による不均一な内部エコーを伴う単房性あるいは多房性の囊胞性腫瘤として描出され,壁がやや厚く,周囲組織との癒着のため不明瞭な辺縁を呈することが多い(図1).

絨毛性疾患

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.288 - P.288

絨毛性疾患は大きく胞状奇胎(図1)とそこから発生する絨毛癌とに分けられ,奇胎囊胞と呼ばれる数mm~数cm大の水腫様に腫大した絨毛が,ブドウの房状あるいは数珠状に子宮腔内を占拠する.①奇胎囊胞が全体に認められ,胎芽,胎児成分がない場合を全胞状奇胎,②正常絨毛,胎芽や胎児,臍帯や羊膜を伴う場合を部分胞状奇胎,③子宮筋層にまで病変が入り込んでいる場合を侵入胞状奇胎という.超音波検査では奇胎囊胞自体およびその囊胞壁が点状あるいは線状の高輝度エコーとして認められ,雪片像(snowflake pattern)と称されてきた.しかし現在の高解像度の超音波装置や経腟超音波では,大小の奇胎囊胞そのものがブドウの房状,数珠状の囊胞集簇像として描出されvesicle patternと呼ばれている.実際には全胞状奇胎と部分胞状奇胎との鑑別は容易ではなく,胎囊あるいは胎児が観察されるか否かが重要な鑑別点となる.

子宮留膿腫,卵管留膿腫など

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.288 - P.288

骨盤内の感染は子宮頸部に初発し,子宮内膜,卵管に進展し,骨盤腔内に波及する.卵管,卵巣に達した炎症は,卵管の閉塞から卵管・卵巣膿瘍を経て,卵管留水腫が形成され,子宮においては内膜,頸管の癒着をきたし,子宮留膿腫となる.また腫瘤性病変により,子宮頸部の閉塞をきたした場合にも子宮留膿腫,子宮留水腫をきたすことがあり,これらの超音波像がみられた場合には頸部腫瘤性病変の否定が必要である.

 超音波像では子宮留膿腫は拡張した子宮内腔に無エコー域として描出され,留水腫と留膿腫の鑑別は内容液の輝度を参考にする.卵管留膿腫は拡張,屈曲した卵管が,多房性囊胞性病変として観察される(図1).卵巣の腫瘍性病変との鑑別が困難な場合も少なくないが,ソーセージ状の長くくびれを有する囊胞や,不均一で比較的厚い壁,一部不連続となる隔壁を描出することにより鑑別が可能である.

妊娠

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.289 - P.289

妊娠初期の超音波検査によるチェック項目は胎囊(gestational sac:GS)の確認,胎芽および付属物の評価,胎児心拍(fetal heart movement: FHM),多胎妊娠,妊娠週数,子宮,付属器の評価が挙げられる.妊娠成立後最初に確認されるのが胎囊である.肥厚した内膜内に直径2~4mm大の囊胞が確認される.通常妊娠では4週頃より胎囊,妊娠6週頃より胎芽像が確認される.胎児心拍は遅くとも妊娠8週には全例検出され,胎児心拍の確認により妊娠が成立したと判定される.無症状のまま死児が子宮内にとどまっている状態が稽留流産であるが,そのうち胎芽が描出されない場合を枯死卵(図1),胎芽が描出される場合を狭義の稽留流産として分類している.

 胎児死亡は以下の基準により判定される.①経腟走査において妊娠7週,経腹走査では8週を過ぎている時期に胎囊内の胎芽に心拍が認められない,あるいは胎芽自身が認められない.②経腟走査の場合,胎囊径が3cm以上,経腹走査の場合4cm以上あるにもかかわらず胎芽が認められない.③胎囊内に胎芽が認められるのに心拍が認められない.④胎囊内に胎芽・心拍が認められず,1週間以上の経過で胎囊の増大がない.ただし尿妊娠反応が陽性(50IU/l)で子宮内の胎囊が確認されれば妊娠4週以降であり,それから3週以上経過していることが必要.

〈骨盤内臓器(卵巣・卵管)〉

卵巣腫瘍の超音波診断―卵管腫瘍も含めて

著者: 秦幸吉 ,   宮﨑康二

ページ範囲:P.290 - P.293

卵巣腫瘍は,術前に細胞診・組織診を行うことが困難であるため,その確定診断は,通常,開腹術による摘出標本の組織学的検討により行われている.したがって,術前の超音波診断による卵巣腫瘍の良悪性診断は興味ある領域の一つである.1980年代の後半から産婦人科領域に経腟走査法が導入されるようになり,従来の経腹走査法に比べはるかに解像力の高い鮮明な超音波画像を描写することができるようになった.そのため,現在では卵巣腫瘍の診断に関しては経腟走査法を中心として行い,その距離分解能を越えて存在する大きな腫瘍の場合には,経腹走査法を併用する.

 本稿では,卵巣腫瘍の超音波診断に関して,卵管病変も含めて解説する.

健診におけるポイント

上腹部超音波健診のコツ

著者: 小川眞広

ページ範囲:P.294 - P.295

超音波検査と他のCT,MRI検査との大きな違いは,一度に観察できる範囲が限られるため,ある程度の走査時間とテクニックが必要となり,検者により精度も異なるため,正しい技術や知識を身につける必要がある点である.また,超音波画像は任意断層像であり,客観性に乏しい欠点をもっており,スクリーニング検査においては同じ走査手順で観察することが望まれる1)

 われわれの施設では,検査効率も考え,右側臥位から検査を開始し,左腎,脾臓→背臥位にして膵臓→胆囊→肝臓→右腎の順に撮影を行い,膵臓や総胆管などが十分に観察ができない症例では左側臥位や半座位を追加して走査を行っている.左腎・脾臓を先に走査するのは,脾腫の有無を先に観察し門脈圧亢進症の有無を判定して,後の肝臓の走査に役立てるためであり,またゼリーを拭く面積が少なく時間の短縮にもつながるためである.膵臓,胆囊の観察が肝臓より先にくるのは,消化管ガスの影響を受けやすいので,数回の深呼吸により蠕動運動が激しくならないうちに走査を先にすませるためである.次に各臓器の走査のポイントを述べる.

最新超音波技術のトピック

パワードプラとPFD(pulsatile flow detection)

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.297 - P.297

カラードプラ法は速度モードとパワーモードとに区分され,後者は一般にパワードプラ法として知られている.前者が,時々刻々と変化する血流速度分布をカラー血流マッピングとして表示する方法であるのに対し,パワードプラ法は,ドプラ信号のパワーをカラー表示する方法であるため,同法では血管造影像のような血流分布像として表示される.同法は,①角度依存性がないため蛇行した血管であっても一本の血管として描出される,②averagingが可能であるため血流描出感度に優れる,③ランダムノイズにマスクされにくいため,低流速表示に優れる,④折り返しによるアーチファクトがない,など数多くの利点を有する.PFD (pulsatile flow detection:拍動流表示法)は,超音波ドプラ法により各フレーム間における速度変化や分散の変化を捉えることで,拍動性の有無を評価してカラー表示する方法であり,動静脈をリアルタイムに識別して表示可能とする新しい血流表示法である(図1).同法はカラーフローマッピングのある意味で究極の表示法であり,今後の展開が期待されている.

造影超音波

著者: 松谷正一 ,   丸山紀史 ,   税所宏光

ページ範囲:P.298 - P.298

1. 造影超音波とは?

 生体と音響特性の異なる物質を用い,エコー輝度の増強を図る方法である.微小気泡を用いて,血管内のエコー輝度を上昇させる方法が試みられている.広義には,気泡を含まない液体(陰性造影剤)を消化管などに注入する手法も含まれる.

2. 超音波造影剤とは?

 赤血球以下の大きさの微小気泡を用いる.末梢静脈から注入すると,肺を通過して全身に分布し,血管内エコー輝度の上昇をきたす.レボビスト®は気体として空気を用いる.デフィニティ®などの次世代造影剤では難溶性ガス(フッ化プロパンなど)を用い,リン脂質などの薄膜を有する.気体は血液や肺胞への拡散により消失する.

B-flowとcoded excitation

著者: 平井都始子 ,   大石元

ページ範囲:P.299 - P.299

1. B-flowの原理

 B-flowはBモードで血流を表示する新しい血流表示法で,超音波造影剤を使わなくても血流があたかも超音波造影剤を使用したように高エコーに描出される.従来のBモード法では血球からの信号は非常に微細であるため,ノイズに埋もれて血流信号は表示することはできず,血管内腔は無エコー域として描出されていた.B-flowはコード化されたパルスを送受信するcoded excitationと呼ばれる技術を応用し,赤血球のように微小な反射体からの小さな反射信号を効率良く,ノイズに埋もれることなく取り出し,かつ,静止している周囲組織からの信号を抑制することにより,Bモードにより血流の可視化を実現している(図1).

2. B-flowの特徴と臨床上の意義

 B-flowは基本的にBモード画像であるために,カラードプラ法に比べて空間分解能に優れ,リアルタイム性の良い画像が得られる.また,超音波ビームと血流方向のなす角度に影響されないため,プローブと平行に走行する血流も良好に表示できる.したがって,血管壁と血流が高フレームレイトの画像で正確に描出でき,重度の狭窄性病変や1mm程度の内膜肥厚も捉えることができる.また,比較的速い血流から遅い血流まで同時に血管からはみ出しなく良好に描出できるので,動静脈奇形などの複雑な血管性病変の診断にも有用である(図2).

ハーモニックイメージング

著者: 飯島尋子

ページ範囲:P.300 - P.300

日常臨床的に必要と思われるハーモニックイメージングについて概説する.

1. ティシュハーモニックイメージング

 造影剤を用いないときのハーモニックイメージングのことを,一般的にはティシュハーモニックイメージングという.超音波を生体に照射すると組織内で非線形伝搬を生じる結果(海のサーフィンの波を思い浮かべるとよい),組織から散乱する,特に二次高調波を利用した超音波画像である.これは,従来の基本波の画像と比較してサイドローブなどのアーチファクトが低減し分解能が向上するため,特に胆囊などの内腔や腫瘍の境界が鮮明に見えるなどの利点がある.しかし,体表ではティシュハーモニックの成分が少なく,また肝臓の深部,脂肪肝などの場合には高調波が減衰するなどの弱点もあり,診断にはこれらを考慮して行う必要がある(図1a, b).

Sono CT & XRES

著者: 北井里実

ページ範囲:P.301 - P.301

Sono CTやXRESといった,ノイズやアーチファクトの低減を目的とした超音波画像処理が最近話題となっている.Sono CTとは,超音波ビームを最大9方向に走査しリアルタイムに空間合成をすることにより多くの情報を得ると同時に,ノイズの低減を行う技術である.一方,XRESとはMRIで使用するadaptive filterの超音波画像への応用であり,画素の信号に差がある境界部分は明瞭に保ちつつ,内部エコーが不均一なスペックルパターンなどのノイズを目立たなくさせることを目的とした技法である.肝転移の症例では腫瘍の辺縁が明瞭になり,スペックルの軽減も得られている(図1).real time性には通常のBモードに劣るが実際の組織に近い画像が得られることにより,初心者にもわかりやすい画像が得られる.しかしながら,超音波画像診断ではアーチファクトの低減により診断の一助を失う可能性もある.

US extended field of view

著者: 白川崇子 ,   宮本幸夫 ,   福田国彦

ページ範囲:P.301 - P.301

リニア・アレイ・プローブのfield of view(FOV)は,プローブ幅以内で,3~5cmである(図1).MRIやCTなどの他の画像診断装置と比較して,画像の範囲が小さいことが欠点となっている.US extended field of viewでは,一つ前の画像につながる次の画像を次々につなぎ合わせていき,プローブ幅を超えた画像を得ることができ,パノラマビューを得ることができる.検査対象がプローブよりも大きい場合や,乳癌とnippleとの距離の測定に応用している.

三次元超音波

著者: 尾本きよか ,   谷口信行

ページ範囲:P.302 - P.302

1. 三次元超音波画像作製の手順

 まず,探触子を手動走査または機械的にスキャンして多数の断層画像を取得する.同時にこの走査によって移動した空間的な位置角度情報を,磁場などを利用して収集する.これらの情報をコンピュータを利用して三次元座標変換し,ボリュームデータを作製する.そして,おのおのの表示法に従い,この三次元データを処理・加工して三次元画像を構築する.

2. 表示法の種類

 医療分野で利用されているものは,サーフェスレンダリング法(図1)やボリュームレンダリング法などがあり,前者は取得した画像データのなかから,対象とする物体の表面を輪郭抽出し,二次元平面に投影して濃淡をつけた立体画像を表示する方法である.視覚的にも理解しやすいリアルな画像であるが,輪郭抽出などの処理が煩雑で画像構築に時間がかかる.後者は,取得したすべての内部の情報を加味して処理する表示法であり,対象物と背景とに輝度差がない場合には,漠然とした,めりはりのないぼやけた画像になってしまう.輝度閾値など,さまざまなパラメータを調整することで,サーフェスレンダリング法に近い立体感のある画像表示も可能であることから,近年比較的多く用いられている.

超音波遠隔診断

著者: 谷口信行 ,   小野倫子

ページ範囲:P.303 - P.303

これまで,検査・記録した超音波画像を他の医療機関の医師に見てもらいたいときには,写真を直接持参または送付していた.しかし,最近のデジタル技術の進歩により,他の画像と同様に超音波画像のデジタル保存が可能となり,必要な写真をそのまま画像の劣化なく取り出せるようになってきた.これを使えば,相談したい医師は,その写真と患者情報をメールに添付する形で受信側の医師に送ることができ,受信側の医師は診断およびコメントをメールで送信者に送り返すことで,遠隔診療に有用となる(図1).

 相互で画像を見るためには,送信側と受信側とのアプリケーションの互換性が必要で,最近では放射線画像から始まった記録様式のDICOM(digital imaging and communications in medicine)formatに統一化されつつある.さらに,データ送信時には一般的に利用されているJPEG(joint photographic coding expert group)画像に圧縮することで,小さいデータファイルとして送りやすくなっている.

超音波内視鏡

著者: 山中桓夫

ページ範囲:P.304 - P.305

1. 超音波内視鏡とは

 超音波内視鏡(ultrasonic endoscope)は,内視鏡下超音波検査(endoscopic ultrasonography:EUS)を行うための臨床機器である.EUSとは,内視鏡を用いて超音波探触子を目的部に誘導し,当該部の超音波断層像を得,その評価を行う臨床検査法である.最近では,超音波内視鏡の能力を活かして,局所の穿刺操作を可能にした穿刺用超音波内視鏡も登場し,治療にも応用されている.

2. 主な機種と特徴

1) 通常型超音波内視鏡

 ①機械式ラジアル走査型超音波内視鏡:内視鏡軸を中心に360度の断層像を得る.上部消化管用,下部消化管用などの専用機が開発されている.

 ②電子リニア(またはコンベックス)走査型超音波内視鏡:内視鏡軸方向に画像が得られる.内視鏡走査に若干の習熟を要するが,画像は鮮明であり,ドプラ機能が利用できる.また,穿刺機器への応用にも適している.

おわりに

本邦における超音波診療の問題点

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.306 - P.306

巻頭言で筆者は,“超音波診断が日本のお家芸であり,日本発・日本人発の超音波が世界中に普及し今日のような興盛を迎えたことは,まことに喜ばしい限りである”と述べたが,実は喜んでばかりもいられない状況がある.近年,本邦における超音波の機器メーカーがかつての勢いを失いつつあることであり,本邦では最高ランクの医療施設ですら,ハイエンドの超音波機器を十分に取り揃えることが不可能となりつつあるということである.

 この実態の背景には,昨今の日本経済の失速が大きく関与していることは自明であるが,本邦では諸外国とは逆に,治療に比してとかく診断を軽んずる不可思議な傾向が認められること,CTやMRIのような大型の機器のほうが小型の超音波機器よりも価値が高いと単純に錯覚する傾向があることなどが影響していると思われる.さらに,いまだに抜け切らぬ「欧米崇拝」という日本人の宿痾とでもいうべき精神構造と,超音波検査に対する日本人のある種の根本的誤解とが深く関与しているように思われる.あまり知られていない事実ではあるが,欧米はおろか,韓国や台湾などのアジアの国々に比しても,日本における超音波検査の保険点数は桁はずれに低い.したがって,高額の超音波機器を導入することは,本邦では,医療経営的側面のみに捉われると事実上不可能となる.こうした異様ともいうべき低い保険点数設定の背景には,お家芸ともいうべき同胞が作り上げた超音波技術や診断学をことさら低く評価するという,日本人独特の宿痾があるような気がする.「優秀な日本の技術を高く売ることで外国から利益を得,その分,同胞である日本人には廉価でその恩恵を享受してもらえればよいのではないか」とする考えを超音波に当てはめようとする方々もおられるが,日本の企業がすでに瀕死の状況を迎えつつある今,本邦の保険点数がグローバルスタンダードからかけ離れていることを放置して,結果的に本邦の企業の足を引っ張り,ひいては日本の超音波医学そのものの質の低下をきたし,国民にそのツケをまわすようでは本末転倒といえよう.

column 臓器抽出のコツ

総胆管

著者: 入江健夫 ,   宮本幸夫

ページ範囲:P.210 - P.210

 総胆管は,胆囊管が肝外胆管(総肝管)に合流する部分(3管合流部)より下部の胆管を示す.ただし,超音波上は3管合流部の同定は困難である.長さは10cm前後で内径は6~8mmほどであり,内径が10mm以上を異常とする.総肝管は門脈の右腹側を走行するが,総胆管は外側から背側寄りを走行し,膵内(膵頭部)に移行する.膵内では門脈から上腸間膜静脈に対して外側下方に位置し,門脈から離れ,下大静脈の腹側で先細りして描出される.したがって,右季肋部縦走査において門脈本幹に併走する総肝管を同定して,逆「く」の字を描くように探触子を尾側に移動しながら,総胆管を3管合流部付近から膵内(膵頭部)まで確認する.右季肋部横走査では,総肝管の横断像を門脈本幹の右側腹側に確認し,尾側に探触子を移動しながら膵内(膵頭部)に至る総胆管の横断像を描出する.横断像ではやや楕円形を示す胆管が描出され,厳密には,総胆管の内径は縦断像より横断像で計測するほうが正確であるが,臨床的に問題となることはほとんどない.肥満・消化管ガスが多いなどの被検者の状態によっては,総肝管レベルの確認は可能であっても,総胆管レベルでの描出は困難なことも多い.その場合には,左側臥位や立位で施行したり,吸気の程度を変えて走査することにより描出できることもある.

肝(死角をなくすためには)

著者: 森秀明

ページ範囲:P.215 - P.215

 肝臓は腹部領域のなかで最も大きな臓器であり,モニター上で一度に全体を描出することはできない.このため心窩部~右側腹部縦走査,心窩部横走査,右肋骨弓下走査,右肋間走査を行い,肝臓をいくつかのブロックに分けて観察する必要がある.特に横隔膜直下の右葉,右葉下縁,左葉外側区域の辺縁は超音波検査上死角になりやすい部位であり,検査を行ううえで注意する必要がある(図1).また,被検者を仰臥位だけでなく左側臥位にして観察することや,観察しやすいように被検者に呼吸の調節をしていただくことが,見落としをなくすために大切である.呼吸は必ずしも深吸気の状態が見やすいとは限らないため,描出したい部位をモニター画面で見ながら被検者に自由に呼吸をさせ,呼気と吸気のどちらの状態が観察しやすいかを確認する.右肋間走査ではセクタ型探触子を用いると肺のガスの影響を軽減することができ,コンベックス型探触子と比べてより広い範囲を観察することができる.

腹腔内リンパ節

著者: 石田秀明 ,   小松田智也 ,   古川佳代子

ページ範囲:P.220 - P.220

 腫大した腹腔内リンパ節描出のコツは,①(腹腔内リンパ節は位置が決まっているため)リンパ節周囲の腹腔内臓器全体を系統立てて描出すること,②視野(画像)内のリンパ節をリンパ節として認識できる目を養うこと,に尽きる.具体的には,慢性肝炎患者を対象にした,膵頭部近傍の8番のリンパ節(図1)の拾い上げトレーニングがこの目的に最適である.以下にチェックポイントを述べる.

 (1) 膵頭部を囲む胃十二指腸は経時的にその形態を変え,内容物の流れも超音波で詳細に観察可能である.まず,この胃十二指腸をリンパ節と誤診しないように自己訓練する.

著者: 唐澤英偉

ページ範囲:P.238 - P.238

 肝胆囊と比較すると膵の描出は難しく,しばしば「超音波による膵描出の極意」は何かと聞かれる.特に極意といわれるほどのものはない.まず膵臓の解剖学的位置をよく理解していることが基本である.特に脾静脈・門脈をはじめとする膵の血管系の把握が大事である.膵の描出が困難な理由は,肝臓に比較し小さな臓器であることに加え,膵周囲には胃・腸管が取り囲んでいることにより,腸管ガスの影響を受けることによる.したがって,膵のなかで胃・腸管ガスの影響を受けやすいところを心得,検査・読影することが大切である.すなわち,膵頭部の十二指腸側,膵尾部側である.膵臓の超音波検査は,午前中で食事前にすることが望ましい.必要に応じ,脱気水を飲用してもらい,検査する.また,体位は,仰臥位のみでなく,半座位など体位変換して,よい音響の窓を作る.(経済的に可能であれば,座位と仰臥位のとれる椅子を用意するのも一法である.)

卵巣

著者: 佐久間亨

ページ範囲:P.284 - P.284

 卵巣の位置は子宮の位置によりさまざまに変化するが,通常は子宮底部の外側,外腸骨動静脈の内側に認められることが多い.経腹超音波では,描出の妨げとなる腸管ガスを下部骨盤腔から排除し,膀胱を音響窓として用いるために,検査1時間前に1~1.5lの水分を摂取し,尿を溜めておくことが必要である.

 卵巣は年齢,月経周期により描出像が異なる.年齢による変化では思春期前にはまだ小さく,また閉経後には萎縮し同定できないことが多い.思春期以降においては5~10mm大の数個の無エコー域(卵胞)を内包する長径4cm以下の腫瘤として描出される.そのうち排卵卵胞は1日に1~2mmずつ増大し,排卵直前には18~22mm前後にまで達するが,通常は径3cm以下である.

副腎

著者: 宮本幸夫

ページ範囲:P.297 - P.297

 右副腎は,右季肋部肋骨弓下走査にて,右腎の内頭側,肝右葉の背側,下大静脈の外背側に描出される.消化管ガスが多いときは,左側臥位にて,深吸気下に走査することで描出が容易となることが多い.副腎は低エコーの“人字”あるいはλ状構造体として描出される.右副腎の外側は肝内に食い込んでいるため,描出が困難となることがある.一方,左副腎は傍腹部大動脈域で,かつ左腎上極の腹側内方に位置するため,経腹壁走査では,消化管ガスにより描出しえないことが多い.呼気時での走査が有効となることもある.左背部から左腎を通して腹部大動脈を捉え,その後探触子を傾けて腹部大動脈の外側に捉えることで,左腎上極のレベルに左副腎を捉えられることが多い.同法では正常の左副腎を捉えることはあまりないが,副腎の腫瘤性病変の描出には有効となることが少なくない.なお,いわゆる飲水法は膵体尾部の描出に有効な手段であるが,同法が左副腎の描出に有効となることは,筆者の経験上あまりない.

著者: 大杉圭 ,   大熊潔

ページ範囲:P.303 - P.303

 腎の観察には,必ず横断・縦断の2方向にて行うことにより死角をなくすように心がける.腎門に近い背側部は占拠性病変の発見が困難なことは,覚えておいたほうがよい.

 右腎は肝を音響窓として,基本的には深吸気にて行う.左下側臥位で肝を音響窓として右肋骨弓下に横断像を観察する.そして肋弓下縦走査により観察し,肝腎コントラストが良好に認識できる写真を残すようにする.次に縦断像にて観察し,必要なら腎の長径を計測する.下極が腸管ガスに重なることが多いので,吸気時のみではなく,呼気時での観察も有効なことがある.

著者: 小川眞広

ページ範囲:P.305 - P.305

 脾臓を撮影する際には,施設により右側を頭側とし脾臓を画面の右側に描出する場合と,他の肋間走査と同様に画面の左側を頭側とする場合があるので注意が必要である.観察は,右側臥位でやや前方より見上げるように描出するか,背臥位にし左の肋間から描出する.前者では吸気で圧迫し消化管ガスを圧排すること,後者では呼気で肺の多重反射を少なくすることがポイントとなるが,いずれの場合でも探触子のtiltingを利用し広い範囲の観察を心がける.

 脾腫の判定はいくつかあるが,大藤らの方法によるものが簡便であり,脾門部を描出し,下極までの距離(cm)と直角の方向の距離(cm)の積をSI(spleen index)とし,SI<15を正常,SI ≧ 20を脾腫として用いている.

理解のための30題

ページ範囲:P.307 - P.312

連載

目でみるトレーニング

著者: 青島正大 ,   佐藤智彦 ,   河合盛光

ページ範囲:P.313 - P.320

問題 361

 症例:45歳,女性.
 現病歴:1年前に多発性骨髄腫(IgG κ型)の診断を受け,当初外来でメルファラン+プレドニンの投与を受けたが,コントロール不良となったため当科に入院し,化学療法(VAD療法:ビンクリスチン+アドリアマイシン+デキサメタゾンを4日投与,4日休薬後,4日間のデキサメタゾン単独投与)を受けていた.3コース目のVAD療法開始後10日目の夕方から,38℃台の発熱と息苦しさを自覚.翌日には乾性咳嗽が加わり,息苦しさが増強した.

 身体所見:意識清明,体温38.2℃,脈拍108/分・整,呼吸数26/分・整,血圧114/60mmHg.胸部聴診にて,第3肋間胸骨右縁Levine3/6度の収縮期駆出性雑音を聴取.呼吸音に異常なし.末梢性チアノーゼを認めるが,ばち指なし.表在リンパ節を触知せず.

カラーグラフ 足で診る糖尿病(2)

足の角質異常

著者: 新城孝道

ページ範囲:P.322 - P.323

人が立位で歩行すると,重力の影響が足に及ぶ.歩行速度が上がるにつれ荷重負荷が倍加する.足は関節での緩衝作用を有し,前方への移動をスムーズにする作用を有し,足はアーチ構造でさらに圧力の分散と前進への機能を有している.足は,皮膚,軟部組織,筋肉,腱,骨や関節よりなり,皮膚が外地との接点となる.皮膚に対する機械的刺激が加わると,防御反応で皮膚の肥厚,膠原線維の増加をもたらす.日常生活での足への機械的刺激で,足の種々の部位に角質増殖をきたす.皮膚の角質増殖には胼胝(中央部は平坦で芯がない),鶏眼(中央部に丸い塊があり,目玉の様相を呈する)と疣贅(中央部に小さな黒い点が散在し,毛細血管よりなる.出血を伴う)に大別される.日常臨床でよく遭遇するこの角質異常に関して,発生機序とその後の進展などに関し述べることとする.

 肥満があり体重が多くても,足の軟部組織が多いと角質異常の形成は少ない.逆に高齢者で低体重例でも,足の軟部組織の萎縮と前屈姿勢などが相互作用すると顕著な角質異常を生ずることがよくみられる.また素足での生活では,足の角質異常は足底に生じることがほとんどであるが,履物を使用する現在では角質異常は足の種々の部位に形成される.

輸血のきほん(3)

赤血球製剤

著者: 奧山美樹

ページ範囲:P.325 - P.329

 赤血球製剤の輸血は,出血や貧血に対して行われる補充療法である.効果的な治療法の一つではあるが,正しい根拠に基づかずに慣習的な使用法が行われる場合も依然として多く,使用量が過剰になりやすい側面をもっている.今後,少子高齢化社会に伴う輸血使用患者の増加と献血者の減少で,輸血用血液が不足することが危惧されている.限りある血液をより有効に利用するためには適正な使用が必要である.

 また,近年新しい検査法(NAT:核酸増幅検査)の導入により,日本赤十字社(日赤)血液センターから供給される血液の輸血関連感染症に対する安全性は,以前に比べ飛躍的に向上した.しかし,どんなに検出感度を高めた検査を行っても,輸血による感染を皆無にすることは困難である.最近でも,輸血による感染症に関する記事が頻繁に新聞などに取り上げられている.患者の安全のためにも不必要な輸血は絶対に行ってはいけない.

院内感染コントロールABC(2)

アウトブレイクの感知と予防

著者: 佐竹幸子

ページ範囲:P.330 - P.332

アウトブレイクとは何か

 ある疾病が一定の地域(例えば,ある病院やある病棟)において一定の率で発生し続けているとき,これをエンデミック(endemic:局地的流行,地方病的流行)という.一定の地域において同じ疾患が明らかに普通以上に多発し,しかもそれが共通の原因によって起こっているとき,これをエピデミック(epidemic:流行)またはアウトブレイク(outbreak)という.この「普通以上に」が重要であり,何を「普通」というのかは閾値(ベースライン)の項で説明する.

1. エンデミックとエピデミック(アウトブレイク)の区別

 院内感染発生率を求めるために日常のサーベイランス業務で分子としてカウントしている術後創感染や中心血管ラインに関連した菌血症などの院内感染の大部分は,散発的に起こっている出来事であり,エンデミックである.エンデミックの場合,病棟,診療科,感染部位,患者のリスク因子などを一定にした分母で院内感染の月間あるいは年間発生率を比較するとほぼ一定した値を示し,統計学的有意差はみられない.

新薬情報(37)

ペグインターフェロン-α-2a製剤(ペガシス®皮下注90μgおよび180μg) Peginterferon alfa-2a

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.334 - P.336

適応■6分C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善.

禁忌■小柴胡湯を服用中の患者,自己免疫性肝炎の患者(肝炎の重症化の可能性のため),インターフェロンに過敏症のある患者,3歳未満の小児.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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