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今月の主題 腹部疾患をエコーで診る 臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー 〈胆囊・胆道系〉
黄色肉芽腫性胆囊炎
著者: 仙谷和弘1 水口安則1
所属機関: 1国立がんセンター中央病院臨床検査部
ページ範囲:P.227 - P.227
文献購入ページに移動黄色肉芽腫性胆囊炎(xanthogranulomatous cholecystitis)は,稀な炎症性疾患である.本疾患を診断するうえで,常に胆囊癌との鑑別が問題となる.Rokitansky-Aschoff's sinus(RAS)の破綻または粘膜潰瘍などのため,胆囊壁内に内容物(胆汁,粘液)が流入することが原因となって引き起こされるとされている.病理組織学的には,それらの脂質成分(コレステロール,リン酸)を貪食しようと集簇した泡沫状の組織球が主体の,黄色を呈する肉芽腫性病変が観察される.本症は高齢者に多く,やや男性に多いとされている.臨床症状として初期に急性胆囊炎様の症状を呈することが多い.合併症として炎症による周囲臓器(肝臓,胃,十二指腸,横行結腸,大網)との癒着や,胆管や血管の巻き込み,リンパ節腫大,胆囊穿孔,胆囊周囲膿瘍,胆囊腸管瘻などを認めることがある.また本症はCA19-9が高値を示したり胆囊癌の合併例が知られているため,外科手術の適応となることが多い.
2. 超音波像
胆囊壁は,びまん性または限局性の壁肥厚像を呈する.壁肥厚は不整であり,肝実質エコーと比較して高エコーを示し,多くは境界明瞭である.また,肥厚した壁内に低エコー結節成分または帯状低エコー域を認めることが本疾患に特徴的であり1),これらは壁内膿瘍または黄色肉芽を反映しているとされている2)(図1).ほとんどすべての症例にて内腔に胆石またはsludgeを伴う.その他,肝または胆囊周囲の液体貯留,肝との境界不明瞭化,瘻孔形成による気腫像などを認めることがある.しかし,これらの所見はいずれも診断の助けとはなりうるも,診断を確定するものではなく,常に胆囊癌の可能性を念頭に置く必要がある.さらに,最大の特徴とされる壁内低エコー結節もさまざまな条件,すなわち壁内膿瘍,コレステローシス,胆囊腺筋症などでみられることもあるため,本症の術前診断に際しては,他のモダリティを組み合わせて慎重に判断する必要がある.
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