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今月の主題 腹部疾患をエコーで診る 臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー 〈膀胱〉
膀胱炎・神経因性膀胱
著者: 宮本幸夫1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学放射線医学
ページ範囲:P.262 - P.262
文献購入ページに移動膀胱は,筋性の中空臓器であり,膀胱壁は外層から順に,外膜,平滑筋層,移行上皮の3層より構成される.左右の尿管口と内尿道口とを結ぶいわゆる三角部以外は周囲に固定されていないため,尿量に応じて変形し,膀胱壁厚も2~5mmと著明に変化する.なお,膀胱の天蓋部(上壁)は腹膜に覆われているが,底部(後壁)は上部のみ腹膜に覆われている.経腹壁的な超音波像にて,正常膀胱壁のzonal anatomyを明瞭に捉えることは困難であるが,膀胱壁の肥厚例においては,各層が捉えられることもある.なお,膀胱前壁は腹壁の多重反射によりマスクされ,明瞭に捉えられないことがあるため,初学者は注意を要する.膀胱炎はその成因などにより,bacterial cystitis(細菌性膀胱炎),cystitis colli(膀胱頸部炎),cystitis cystica(囊胞性膀胱炎),emphysematous cystitis(気腫性膀胱炎),cystitis glandularis(腺性膀胱炎),hemorrhagic cystitis(出血性膀胱炎,図1),incrusted cystitis(痂皮性膀胱炎),interstitial cystitis(間質性膀胱炎),viral cystitis(ウイルス性膀胱炎),radiation cystitis(放射線性膀胱炎)などに区分される.細菌性膀胱炎などの急性炎症では,超音波像にて膀胱粘膜の肥厚が低エコー層として捉えられ,筋層の肥厚もしばしば描出される.また,神経因性膀胱など排尿障害に基づく慢性の膀胱炎では,筋層が肥厚し著明な壁の凹凸(肉柱形成:trabeculation)が認められる.近年のTHI(tissue harmonic imaging)法の開発により,多重反射やサイドローブによるアーチファクトが軽減されたため,膀胱壁もより明瞭に描出され,尿中の出血などによる微細点状エコーなども鮮明に捉えることが可能となった.
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