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文献詳細

雑誌文献

medicina41巻2号

2004年02月発行

文献概要

今月の主題 腹部疾患をエコーで診る 臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー 〈消化管〉

虫垂炎

著者: 長瀬雅則1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学放射線医学

ページ範囲:P.274 - P.274

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虫垂炎は急性腹症の代表的疾患の一つであり,小児の急性腹症では特に重要である.超音波検査は被曝がないことから,特に小児や妊婦における虫垂炎などの急性腹症の検査に重要である.超音波検査は通常腹部用プローブを使用するが,小児や痩せている人の場合には表在性プローブも併用することを勧める.

 所見としては,直接所見と間接所見に分けられる.直接所見は腫大した虫垂の描出であり(図1,2),正常の虫垂は描出されないのが一般的である.また,肥厚した虫垂は高エコーの層状に描出される.なお虫垂は,時に回盲部の背側を走行することがあり,この場合はガスのため描出できないことが多い.回腸末端との鑑別は,回腸が回盲部の途中(回盲弁)とつながっていることと,蠕動運動がみられることである.間接所見を以下に挙げる.①虫垂内に糞石を認める(壊死性の場合はその周囲に認めることがある).糞石はエコー上音響陰影を伴ったstrong echoとして描出される.②周囲の液体貯留やリンパ節腫大.③周囲の腸管の蠕動運動低下(麻痺性イレウス).④プローブによる虫垂部分に一致した圧痛.これらの所見から虫垂炎を診断するが,軽いものから順にカタル性,蜂窩織炎性,壊死性に分類されている.カタル性は軽度の虫垂腫大と同部の圧痛のみのことがほとんどであり,診断困難なことも多い.蜂窩織炎性では腫大した虫垂が描出され層構造が保たれており,ドプラ上かなりの血流増加が認められる.また各種の間接所見も伴っていることが多い.壊死性では腫大した虫垂の層構造が不明瞭化または虫垂自体が不明瞭化し,同部に膿瘍形成を認める.ドプラ上も虫垂自体の血流は不明瞭で,周囲には強い炎症による血流増加がみられる.また,かなり強い間接所見も伴っている.特に壊死性は腹膜炎になっていることも多く,緊急手術の適応である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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