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文献詳細

雑誌文献

medicina41巻2号

2004年02月発行

文献概要

今月の主題 腹部疾患をエコーで診る おわりに

本邦における超音波診療の問題点

著者: 宮本幸夫1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学放射線医学

ページ範囲:P.306 - P.306

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巻頭言で筆者は,“超音波診断が日本のお家芸であり,日本発・日本人発の超音波が世界中に普及し今日のような興盛を迎えたことは,まことに喜ばしい限りである”と述べたが,実は喜んでばかりもいられない状況がある.近年,本邦における超音波の機器メーカーがかつての勢いを失いつつあることであり,本邦では最高ランクの医療施設ですら,ハイエンドの超音波機器を十分に取り揃えることが不可能となりつつあるということである.

 この実態の背景には,昨今の日本経済の失速が大きく関与していることは自明であるが,本邦では諸外国とは逆に,治療に比してとかく診断を軽んずる不可思議な傾向が認められること,CTやMRIのような大型の機器のほうが小型の超音波機器よりも価値が高いと単純に錯覚する傾向があることなどが影響していると思われる.さらに,いまだに抜け切らぬ「欧米崇拝」という日本人の宿痾とでもいうべき精神構造と,超音波検査に対する日本人のある種の根本的誤解とが深く関与しているように思われる.あまり知られていない事実ではあるが,欧米はおろか,韓国や台湾などのアジアの国々に比しても,日本における超音波検査の保険点数は桁はずれに低い.したがって,高額の超音波機器を導入することは,本邦では,医療経営的側面のみに捉われると事実上不可能となる.こうした異様ともいうべき低い保険点数設定の背景には,お家芸ともいうべき同胞が作り上げた超音波技術や診断学をことさら低く評価するという,日本人独特の宿痾があるような気がする.「優秀な日本の技術を高く売ることで外国から利益を得,その分,同胞である日本人には廉価でその恩恵を享受してもらえればよいのではないか」とする考えを超音波に当てはめようとする方々もおられるが,日本の企業がすでに瀕死の状況を迎えつつある今,本邦の保険点数がグローバルスタンダードからかけ離れていることを放置して,結果的に本邦の企業の足を引っ張り,ひいては日本の超音波医学そのものの質の低下をきたし,国民にそのツケをまわすようでは本末転倒といえよう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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