icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina41巻4号

2004年04月発行

雑誌目次

今月の主題 内科コモンプロブレム

全身倦怠感

著者: 新保卓郎

ページ範囲:P.552 - P.555

ポイント

 患者の訴えが本当に全身倦怠感か確認する.

 うつ病,睡眠時無呼吸症候群,薬剤による影響,内分泌疾患を見落とさない.

 面接,診察,一般検査で多くの器質的疾患は除外できる.

 強い慢性疲労で基礎疾患が不明のときは,身体的アプローチに固執しない.

不眠

著者: 半田貴士

ページ範囲:P.557 - P.559

ポイント

 問診により,不眠のタイプを具体的に聴取することが診断,治療の第一歩となる.

 神経質性不眠が,一般臨床でしばしば遭遇するいわゆる「不眠症」の中核群である.

 不眠以外の精神症状や身体症状の有無,薬物の使用歴について十分に把握する.

 精神障害による不眠,特殊な睡眠障害は,早期に専門医にコンサルトすべきである.

食欲不振

著者: 小山茂

ページ範囲:P.560 - P.563

ポイント

 器質的原因で多いのは悪性腫瘍で,感染症,呼吸循環器疾患,代謝疾患と続く.

 高齢者の場合,他の症状に乏しい場合があり要注意である.

 精神疾患のうち,うつ病は自殺の可能性を念頭に迅速に対応する.

 細な問診と身体所見の把握が確定診断への近道である.

体重減少・体重増加

著者: 小山茂

ページ範囲:P.564 - P.567

ポイント

 有意な体重減少は6(~12)カ月以内に通常体重から5%以上の減少とされている.

 体重減少の原因疾患は多岐にわたるが,悪性疾患が最も頻度が高い.

 初期段階で診断がつかなくても,きめ細かく注意深いフォローが大切である.

 原発性肥満はそれに起因する併発症の評価が重要である.

 体重増加イコール肥満ではない.胸・腹水や浮腫による体液貯留例に要注意である.

浮腫

著者: 藤田芳郎 ,   伊藤恭彦

ページ範囲:P.568 - P.571

ポイント

 片側の下肢浮腫を見たら,まず第一に深部静脈血栓症を考える.

 両側下肢浮腫は全身性の浮腫と考え,まず頸静脈怒張と肺水腫の有無を見,次に中心静脈圧,肺動脈圧,肺毛細管圧,左室拡張終期圧,心拍出量はどうかと考える癖をつける.

 上記を考えたうえで利尿薬の適応も考慮するのであって,「浮腫=利尿薬投与」ではない.

 浮腫の原因疾患として,肺高血圧症を忘れない.

リンパ節腫脹

著者: 植村直樹 ,   鈴木憲史

ページ範囲:P.572 - P.574

ポイント

 初診外来で診るリンパ節腫脹の2/3以上は自然消退が期待できるものである.

 悪性リンパ腫によるリンパ節腫脹は一般に弾性硬で可動性があり圧痛を伴わない.

 転移性癌によるリンパ節腫脹は一般に石様硬で癒着することがあり圧痛を伴わない.

 リンパ節生検は一般に専門科に紹介後に行うべきで,限られた場合以外に針生検の有用性はない.

発疹

著者: 繁益弘志

ページ範囲:P.576 - P.578

ポイント

 発疹の性状をできるだけ正確に捉え,的確に表現することが基本である.

 患者年齢,家族歴,既往歴はもとより職場,家庭,趣味,習慣,嗜癖,心理まで幅広く背景を考える.

 発疹出現時期と薬剤投与期間との時間関係をできるだけ正確に把握する.

 早急に皮膚科専門医に紹介すべき疾患を知っておく.

黄疸

著者: 永田博司

ページ範囲:P.580 - P.583

ポイント

 皮膚が黄染するような顕性黄疸は入院の適応である.

 まず肝内胆汁うっ滞か肝外胆汁うっ滞かを考える.

 画像検査による胆管拡張の有無が両者の鑑別に有用であるが,肝外胆汁うっ滞でも30%以上に肝内胆管の拡張を認めない例があることに留意.年齢,病歴,身体所見と併せて総合的に診断するという姿勢が大切である.

発熱

著者: 草深裕光

ページ範囲:P.585 - P.591

ポイント

 発熱の原因は感染症,結合組織疾患,悪性腫瘍が代表的だが,感染症が大部分を占める.

 発熱を診た場合,まず随伴症状と所見からどの臓器に問題があるか考える.

 臓器特異的症状を伴う場合と,特異的症状がない,または絞り込めない場合は区別して検討する.

 原因不明熱(FUO)の診療原則は,詳細な病歴聴取と丁寧な診察を繰り返すことである.

頭痛

著者: 濱田潤一

ページ範囲:P.592 - P.596

ポイント

 病歴の正確な聴取と診察所見から,かなりの確率で診断を絞り込める.

 やみくもに検査をしても診断はつかないことが多い.

 life-threatening headacheを見逃さずに,迅速に診断することが最も重要である.

 明らかな神経学的異常所見がなくても,頭部CTを必ず一度は施行する.

 優先度の高い(重要な)検査から実施する.

めまい

著者: 亀井徹正

ページ範囲:P.598 - P.601

ポイント

 めまいは病歴から4つの型に分類される.回転型,失神型,動揺型,および非特異的めまいである.めまいの病巣診断,原因診断にも病歴が非常に有用である.

 まず最初に行うべきは,危険なめまいを見分けることで,失神型めまいのうち心原性のもの,回転型めまいのうち脳血管障害がそれにあたる.

 回転型めまいでは,頭位変換試験が良性発作性頭位めまいの診断に有用であり,失神型のうち頻度の高い起立性低血圧,血管迷走神経反射の診断には起立試験がスクリーニングとして用いられる.

 動揺型めまいでは家族歴,アルコール歴,薬剤歴と神経学的所見が重要である.非特異的めまいでは精神科的疾患の可能性を念頭に置く.

失神

著者: 池田隆徳

ページ範囲:P.602 - P.605

ポイント

 失神の原因で最も頻度が高いのは血管迷走神経反射(神経調節性失神)である.

 神経調節性失神が疑われるか,非心原性でかつ原因不明の場合はhead-up tilt試験を考慮する.

 心原性失神,特に不整脈性失神の予後は他に比べて不良である.

 失神の原因が不明の場合は,心原性失神の除外を行うことを基本とする.

痙攣発作

著者: 三井純 ,   宇川義一

ページ範囲:P.606 - P.609

ポイント

 痙攣発作は一過性でその多くは直接観察できないため,患者や目撃者などからの病歴聴取が重要である.痙攣発作と類似する症候との鑑別がまず必要である.

 てんかんの既往があり抗てんかん薬を内服中である場合は,抗てんかん薬の血中濃度が治療域以下であることが多い.服薬コンプライアンスや併用薬に注意する.

 成人発症の痙攣発作の原因は,アルコール離脱,脳血管障害,代謝性・低酸素性,感染症,腫瘍性病変,頭部外傷,薬剤性,自己免疫疾患など多岐にわたる.

 高齢者の初発痙攣発作や大量飲酒の既往がある痙攣発作には注意する.

視力障害・視野狭窄

著者: 平田絢子 ,   栗原照幸

ページ範囲:P.610 - P.613

ポイント

 視力障害は透光系(角膜,前房,水晶体,硝子体)の異常,感光系(網膜)の異常,伝達系(視神経,視交叉部,視索,外側膝状体,視放線)の異常,認知系(大脳皮質)の異常によって起こり,内科,神経内科,眼科的疾患が含まれる.

 ペンライト,眼底鏡,および対座法による視野検査をすれば,一般内科医も視力・視野障害をきたす多くの疾患の診断への糸口をつかむことができ,早期治療へとつながる.

 視野障害では,後頭葉に近いほど,左右の視野欠損が合同性となる.

 成人発症の失明で最も多い原因は糖尿病性網膜症:内科医が眼底をもっと見ていれば,失明になる前に手を打てる.眼は命だと思って診察する.

結膜の充血

著者: 内尾英一

ページ範囲:P.615 - P.617

ポイント

 結膜充血の主たる原因は感染性と非感染性の結膜炎であり,全身症状を伴うことは少ない.

 結膜炎以外でも,結膜充血を示す疾患は多く,全身症状の病歴聴取や発症時期は重要である.

 特に頭痛,悪心,嘔吐を伴う急性緑内障発作,眩しさ,光に対する眼痛を示す急性ぶどう膜炎などは,救急外来を受診することが多い疾患である.

聴覚障害

著者: 水野正浩

ページ範囲:P.618 - P.620

ポイント

 聴覚障害には難聴,聴覚過敏,耳鳴などがある.

 難聴には伝音難聴,感音難聴,混合難聴がある.

 難聴患者には耳鏡検査とオージオメータによる聴力検査が必要である.

 急性難聴の一部には緊急に専門的治療・手術を要するものがある.

鼻出血

著者: 熊川孝三

ページ範囲:P.621 - P.623

ポイント

 鼻出血は日常的な疾患であるが,腫瘍,動脈瘤,循環器疾患,血液疾患,肝疾患,抗凝固薬の服用に起因するものもあり,原因疾患の鑑別が重要である.

 鼻出血の75%は鼻中隔のKiesselbach部位からであり,適切な処置で止血可能である.

 しかし,疾患によっては出血性ショックや気道閉塞の可能性もあるので,コンサルテーションのタイミングを逸してはならない.

嗄声

著者: 佐藤公則

ページ範囲:P.624 - P.626

ポイント

 嗄声の原因で最も頻度が高いのは,咽喉頭炎である.

 咽頭痛,嚥下痛,嚥下困難,息苦しさなどの随伴症状が強く,ふくみ声を伴った嗄声は,咽喉頭の重篤な炎症性疾患(急性喉頭蓋炎など)の可能性がある.

 2週間以上の消炎治療で改善しない粗そう性嗄声は,声帯の器質的病変を疑う.

 40歳以上の特に男性で,2週間以上の粗そう性嗄声が続く場合は喉頭癌も疑う.

 気息性嗄声をきたす声帯麻痺では,喉頭外の他臓器疾患の存在を疑う.

胸痛

著者: 前原晶子

ページ範囲:P.629 - P.632

ポイント

 胸痛はemergencyであることが多い.急性期に突然死の可能性のある心筋梗塞,大動脈解離,肺血栓塞栓症を疑い見逃さない1).確定診断前の検査進行中に治療(大動脈解離の際の降圧など)を同時進行させなければならないことも多い.これらが否定できれば時間に余裕をもって診断することができる.

動悸

著者: 杉薫 ,   森山明義

ページ範囲:P.633 - P.636

ポイント

 心臓が拍動していると感じるときに動悸と表現されることが多い.

 動悸の原因の大半は心臓性,特に不整脈によることが多い.重症度は随伴症状による.

 動悸を訴えているときの脈拍が不規則か,規則正しいか,さらに動悸が一過性か間歇性か持続性かを見きわめる.

 不整脈は一過性で間歇性のことが多いので,ホルター心電図やイベントレコーダーを駆使して動悸の原因を探るべきである.

呼吸困難

著者: 柚木由浩

ページ範囲:P.637 - P.641

ポイント

 病歴と身体所見と簡単な検査だけで,診断のつく疾患は多い.

 呼吸困難の原因として呼吸器系,心血管系,その2つの混合,あるいは他の原因のいずれかであるかを考える.

 意識障害,失調呼吸,徐呼吸,頻呼吸,徐脈,血圧低下,低酸素血症,上気道閉塞などの症状が出たときは,急いで処置を考慮する.

 患者の状態が急に変化することがありうるので,意識状態,呼吸状態,バイタルサインを中心に患者の観察を怠らない.

 呼吸困難に胸痛を伴ったものは緊急の対応を要するものが多い.

咳・痰

著者: 松村理司

ページ範囲:P.642 - P.644

ポイント

 咳・痰は,呼吸器系以外の疾患でも薬剤でも起こる.原因不明の場合は,広範な咳受容体の存在場所を考えながら,詳細に病歴をとる.

 痰を伴わない咳を乾性咳,伴う咳を湿性咳,3週間以内に軽快する咳を急性咳,3週間以上持続する咳を慢性咳として区別する.

 急性咳の大部分は,かぜ症候群による.慢性咳は,かぜ症候群後慢性咳,後鼻漏症候群,気管支喘息や胃食道逆流症などで起こる.

 呼吸数測定や喀痰グラム染色を励行する.

嘔気・嘔吐

著者: 遠藤徹

ページ範囲:P.646 - P.649

ポイント

 嘔吐は腹腔臓器由来の疾患以外に,脳圧亢進,脳循環障害,前庭機能障害,薬物,代謝・内分泌異常,エンドトキシン,緑内障,心筋梗塞,神経性要因などで生じる.

 嘔吐はその発症機序から反射性嘔吐と中枢性嘔吐に分類される.

 正確な診断・治療には,発症機序の理解と詳細な病歴聴取,的確な身体所見の把握が重要である.

胸やけ

著者: 小山茂樹

ページ範囲:P.650 - P.653

ポイント

 胸やけは胃食道逆流症に特異的な症状であるが,腹部不定愁訴の一つでもある.

 患者は胸やけ症状をさまざまな表現で訴える.

 プロトンポンプ阻害薬テストは胃食道逆流症の診断に有用である.

 器質的疾患の鑑別のため上部消化管検査を必要とする.

嚥下困難

著者: 数森秀章 ,   木下芳一

ページ範囲:P.654 - P.656

ポイント

 嚥下困難は口腔から胃まで,さらにその周辺臓器が対象となり,精神的なもの,炎症によるもの,悪性腫瘍によるものなど,その原因が多岐にわたるため,病歴による絞り込みが重要である.

 嚥下困難の原因を考えるには,まず狭窄などの器質的な原因による通過障害によるものか,嚥下機能の低下による機能的障害によるものかを考える必要がある.

腹痛

著者: 小林健二

ページ範囲:P.657 - P.661

ポイント

 腹痛の診断において最も重要なことは病歴聴取と診察である.検査は病歴と診察から疑われた疾患をrule inまたはrule outするために行う.

 腹部臓器以外の疾患でも腹痛をきたすことを忘れずに精査を進める.

 高齢者の場合,重篤な疾患であっても腹部所見に乏しいことや血液検査で大きな異常を認めないことがあるので注意を要する.

便通異常(下痢と便秘)

著者: 星野惠津夫 ,   小泉浩一 ,   浦上尚之

ページ範囲:P.662 - P.664

ポイント

 便通異常の患者では,まず緊急の対応を要するか否かを判断することが重要である.

 高齢者・幼小児・基礎疾患のある患者では,重大な疾患の可能性がある.

 突然発症した便秘の場合は,重大な疾患の可能性が大きい.

 機能性便通異常の診断では,大腸内視鏡検査よりも注腸造影検査のほうが得られる情報量が多い.

腰痛

著者: 紺野愼一

ページ範囲:P.665 - P.669

ポイント

 腰痛は明らかな原因がなくとも起こりうる.これを非特異的腰痛といい,腰痛全体の70%を占める.非特異的腰痛の90%は6週以内に自然治癒する.

 重篤な脊椎病変の可能性はないかを鑑別するのが重要である.

 画像上の異常所見のみで,それが症状の原因疾患であると断定することはできない.

 膀胱機能障害やサドル麻痺を伴う下肢筋力の低下は馬尾障害の徴候であり,放置すると非可逆的な重症神経障害をきたす.

 腰痛の程度や腰痛によるQOL低下は,心理社会的要因と深く関連している.

関節痛

著者: 上野征夫

ページ範囲:P.670 - P.672

ポイント

 関節痛を主訴に外来を訪れる患者は多く,内科医も診察に習熟することが期待される.

 最も重要な点は,関節炎があるかどうかを見極めることにある.

 そして,それが急性か慢性か,単発性か多発性かを分類し,性,年齢,疾患の頻度を考慮すれば,正しい診断に導かれる.

歩行障害

著者: 田代邦雄

ページ範囲:P.674 - P.677

ポイント

 歩行障害は診察室のドアを開けて入ってきたときがベストの観察時である.

 脳,脊髄,末梢神経,筋のどこが侵されても歩行障害が起こりうる.

 歩行障害が主訴であれば,眼底検査を含めた脳神経系,運動系,反射,感覚系,小脳機能をすべて診ること.

 歩行障害では姿勢異常の有無にも注目すること.

 経過の長いもの,家族歴のあるもの,本人の主訴ではない歩行異常については,患者とのコンタクトを十分にとって神経内科へのコンサルトを勧める.

四肢のしびれ

著者: 成田有吾

ページ範囲:P.678 - P.681

ポイント

 「しびれ」という訴えは,感覚障害ばかりでなく,運動障害(筋力低下や無動,すくみ現象,痙性など)の意味で用いられることもある.問診で「しびれ」の内容を明らかにすることが必要.

 教科書の症状分布模式図,末梢神経・デルマトームの図も利用して診断を進める.

血尿

著者: 賀本敏行

ページ範囲:P.682 - P.685

ポイント

 血尿を診たときには,その程度や随伴症状,さらに年齢なども考慮し十分な問診を行う.特に中・高年の無症候性の肉眼的血尿の場合には泌尿器科受診が勧められる.

排尿障害(尿失禁・排尿困難)

著者: 村雲雅志 ,   小柳知彦

ページ範囲:P.687 - P.691

ポイント

 排尿障害は蓄尿障害と排出障害とに分けられる.自覚症状は蓄尿症状・排尿症状・排尿後症状に分けられ,下部尿路症状と総称される.

 男女とも若年期には急性感染症が,中年以降には慢性疾患が多い.加齢とともに糖尿病や神経疾患・脳血管障害によるものが増加する.男性では前立腺疾患が圧倒的に多く,女性では尿失禁が特徴的である.

 感染尿に対しては抗生物質を投与してよいが,症状が取れない場合や血尿を伴う場合は必ず専門医に相談する.

尿量異常

著者: 井岡崇 ,   草野英二

ページ範囲:P.692 - P.694

ポイント

 多尿の原因として多いのは糖尿病や慢性腎不全である.

 尿量が5~10l/日を超えるときは尿崩症や心因性多飲を疑う.

 尿量減少の原因としては腎前性が多いが,病態により治療法が全く変わってくるので,安易に補液や利尿薬を投与せず原疾患を鑑別することが大切である.

不安と抑うつ

著者: 菅ヶ谷純一 ,   前野哲博

ページ範囲:P.695 - P.698

ポイント

 パニック障害やうつ病はcommon diseaseの一つであり,症状が身体疾患で説明のつかない場合,鑑別診断として常に念頭に置いておくべきである.

 パニック障害は,パニック発作が繰り返し起こり,それに対する予期不安の存在することが特徴である.

 「抑うつ気分」と「興味・喜びの消失」を質問し,どちらも「いいえ」であれば,うつ病はほぼ除外できる(感度98%).

理解のための34題

ページ範囲:P.701 - P.707

カラーグラフ 足で診る糖尿病(4)

皮膚疾患(2)

著者: 新城孝道

ページ範囲:P.710 - P.711

糖尿病患者の日常診療のなかで見過ごしてはならない足病変の一つが蜂窩織炎である(図1,2).足背,下腿,大腿,手,腕,その他にみられる.なかでも下肢での検出率が高い.糖尿病性神経障害が背景にあることが多く,皮膚の浮腫を合併していることが少なくない.蜂窩織炎は感染症を併発した場合と非感染例がある.原因は種々で,微細な皮膚の損傷からの感染が多い.歩行の際の履物による皮膚の機械的刺激,夜間の無意識な下肢の擦過や,入浴時のナイロンタオルなどでの摩擦で形成されることが少なくない.下肢でも片側性と両側性病変を示す例があり,まちまちである.皮膚表面が発赤し,腫脹を伴う(図1).糖尿病コントロール不良な例が蜂窩織炎より足壊疽へ進行悪化し,やむなく足切断に至った例があるため注意が必要である(図2).また心不全や腎障害を合併する例では滲出液が多く,局所の清潔維持が肝要である.

 末期糖尿病腎症で血液透析療法例は皮膚病変の注意が重要である.皮膚の乾燥・亀裂形成,そう痒症および擦過傷は,よく目につく病変である.後天性穿孔性皮膚疾患は,真皮における膠原線維の圧出様病理所見を示す(図3).下肢に,散在性かつ反復性の丘状の発疹で中心部に栓様なものがみられる.小児に稀にみられる疾患とされていたが,網膜症や末期腎症患者でみられることが少なくない.腎不全に伴う高リン血症,その他に関与する後天性穿孔性皮膚疾患は,注意すると判別できる皮膚疾患である.末期腎症例で後天性穿孔性皮膚疾患合併例が皮膚そう痒症の擦過傷を合併し,感染症合併より壊疽へ進行した例もあるため注意が必要である.

連載

目でみるトレーニング

著者: 藍沢隆雄 ,   正木康史 ,   金子佳賢

ページ範囲:P.713 - P.718

問題 367
 症 例:64歳,男性.

 主 訴:発熱,黄疸,下血.

 既往歴:海外渡航歴なし.

 現病歴:2週間前より右季肋部痛と39℃の発熱が出現し,A病院受診.血液検査にてWBC 17,600/μl,CRP 29.9mg/dlと著明な炎症と,腹部CTにて盲腸から上行結腸壁の肥厚と肝両葉に複数の占拠性病変を認め,入院.注腸造影,肝生検などの検査が行われたが,1週間前より黄疸を認め,断続的に新鮮血の下血が続いた.昨日,右下腹部の激痛とともに,ショックとなり当院へ転院となった.

 身体所見:意識JCSⅡ-10,体温39.2℃,血圧112/60mmHg,脈拍130/min・整.結膜;貧血様.黄疸あり.胸部;心肺に異常なし.腹部触診にて肝を右季肋下2横指触知する.右下腹部に圧痛あり.腸雑音減弱.四肢に浮腫なし.

輸血のきほん(5)

血小板濃厚液

著者: 石田明 ,   半田誠

ページ範囲:P.719 - P.723

血小板製剤の使用量は過去10年間で増加傾向にあり,その対象は血小板減少や機能異常を有する血液疾患患者,造血器腫瘍や固形腫瘍患者の強力化学療法後や造血幹細胞移植後,手術や外傷による大量出血時など,多岐にわたっている.このように,血小板輸血はわが国で広く普及し,その効果は臨床医にも十分認識されたといえる.しかし,製剤の適応や投与方法,投与効果の評価方法,副作用などの実践的な面については,必ずしも正しく理解されてるとはいえず,この不適切な使用や誤った投与方法は,輸血製剤の浪費や輸血合併症を招く危険を持ち合わせている.以上の点を踏まえ,本稿では,血小板濃厚液に関する臨床医に必要な実践的知識を概説していく.

血小板製剤の性状とその特徴1)

 わが国の医療機関で使用される血小板濃厚液(血小板製剤)は,日本赤十字社由来の濃厚血小板と濃厚血小板HLA(HLA適合血小板)の2種類であり,いずれも1単位当たり2×1010個以上の血小板を血漿中に含んでいる(図1).濃厚血小板は単位数によって6種類の製剤があり,1,2単位製剤はそれぞれ全血200ml,400ml由来,5,10,15,20単位製剤はアフェレーシス由来の成分製剤である.わが国ではその99.6%が成分製剤である.製剤の単価は1単位当たり7,546円であり,成人患者に最も使用されている10単位製剤(2×1011個以上の血小板を含む)の薬価は約75,460円である.HLA適合血小板の適応は,抗ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)抗体陽性で,輸血合併症の既往がある患者に限られている.

院内感染コントロールABC(4)

院内感染肺炎への対応

著者: 藤本卓司

ページ範囲:P.724 - P.726

定 義

 院内肺炎は「入院後48~72時間以降に発症した肺炎で,かつ入院時に潜伏期になかったもの」と定義される.これは適正なサーベイランスを行うための定義である.48時間,72時間,いずれにするかは各施設で決めればよい.当然,市中肺炎と院内肺炎の境界が厳密に48~72時間に存在するわけではない.例えば入院当日の気管挿管が誘因となって早期に発症する肺炎もあり,これらの時間による定義は無意味だとの考えもある.定義に基づく区分は必ずしも個々の症例の医学的事実を反映しないが,サーベイランスにおいては集計されたデータが全体として疫学的に正しければよい.

危険因子と発症メカニズム

 院内肺炎の危険因子は多岐にわたる(表1).

 発症のメカニズムは,①口腔咽頭や胃に定着した細菌の誤嚥,②下気道に定着していた細菌からの発症,③医療器具を介した伝播,④他臓器感染症に伴う菌血症,腸管壁からのbacterial translocationに伴う菌血症に由来する塞栓肺炎,の4つである.

 ①が最も多く,特に睡眠時の不顕性誤嚥(micro-aspiration)が主な原因である.単に高齢というだけでは咽頭反射や咳嗽反射の低下は生じないという.誤嚥性肺炎の発症には大脳基底核の脳血管障害など危険因子が関与する.

新薬情報(39)

テリスロマイシン(ケテック®錠 300mg) Telithromycin

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.727 - P.730

適応■本剤に感受性のあるブドウ球菌属,連鎖球菌属,肺炎球菌〔ペニシリンおよびマクロライド耐性菌(PRSP)を含む〕,モラクセラ・カタラーリス,インフルエンザ菌,ペプトストレプトコッカス属,プレボテラ属,肺炎クラミジア,肺炎マイコプラズマ,レジオネラ属による,扁桃炎,咽喉頭炎,急性気管支炎,慢性呼吸器疾患二次感染(慢性気管支炎,びまん性汎細気管支炎,気管支拡張症,肺気腫),肺炎,副鼻腔炎,歯周組織炎,歯冠周囲炎,顎炎.

用法・用量■通常,成人にはテリスロマイシンとして600mg(力価)を1日1回,5日間経口投与する.なお,歯周組織炎,歯冠周囲炎,顎炎には,1日1回,3日間の経口投与とし,肺炎に対しては症状により1日1回,最大7日まで投与できる.

書評

臨床遺伝学のすすめ―映画にみる遺伝子,遺伝性疾患

著者: 雨宮浩

ページ範囲:P.627 - P.627

 今までにない,ついつい引き込まれて読んでしまう医学書である.専門医が読んでよし素人が読んでよしの書である.専門的な情報を楽しくインプットしてくれる.

 ところで国境を越えた人畜共通感染症の話題が絶えない.このところだけでも狂牛病,新型肺炎,鶏インフルエンザと続き,あわれなことに世界中で無数の家畜が処分された.それにしてもわれわれが日常目にしている食肉やペットが,そのほとんどが輸入に頼っていたとは知らなかった.世の中から牛丼が消えうせるとか,どこぞの国では流行の情報を役所が握りつぶしたとか騒いでいるが,グローバル化した現代の防疫がいかに難しく影響の大きいものかがわかる.素人の私にも,正確でリアルタイムの情報が防疫にとっていかに大事か理解できる.

日常診療でみる人格障害―分類・診断・治療とその対応

著者: 小野繁

ページ範囲:P.708 - P.708

 人格障害という言葉は知っていても,実際にこの領域の人が患者さんとして,あるいは日常生活のなかで遭遇していることがあっても,実際はっきりと精神医学的な人格障害として受け止めることは少ないと思われる.近年,この言葉が医療のなかで問題を起こすことで,意識せざるを得ない状況にあるのではないだろうか.

 私自身,長年にわたり身体医学を実践してきたが,故小此木啓吾先生の精神分析ゼミナールへの参加を契機に,初めて人格障害なるものを意識するようになった.身体医学に携わる医師にとっては,精神的な問題を背景にもっている患者さんは苦手である.患者さんのなかにこの領域の人がいると,その対処法に苦慮するのみならず,これが医療問題に発展することもある.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?