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雑誌目次

雑誌文献

medicina41巻7号

2004年07月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床医のための呼吸調節と障害 Editorial

呼吸困難感と呼吸調節を理解するために

著者: 近藤哲理

ページ範囲:P.1090 - P.1092

ポイント

 呼吸困難感の発生には心理作用,血液ガス,神経反射などが関与する.

 呼吸調節障害の関与する疾患では,病因よりも病態の理解が重要である.

 気道や胸壁の受容体からの神経入力の関与は想像以上に強い.

呼吸調節障害の基礎知識

呼吸調節機能の概要

著者: 有田秀穂

ページ範囲:P.1093 - P.1095

ポイント

 脳全体からみた呼吸制御では,血液ガスの恒常性を維持する自律性換気調節が基本としてあって,そこに呼吸関連行動や上気道反射が一時的に割り込まれる.

 睡眠時無呼吸症候群の病態生理では,縫線核セロトニン神経から上気道運動ニューロンへの促通効果が重要である.

 呼吸と不安との関連では,脳幹・モノアミン神経系のCO2反応性が注目される.

 脳虚血をモニターするあくび中枢が視床下部の室傍核にある.

呼吸困難感と呼吸調節

著者: 岡田泰昌 ,   柏木政憲

ページ範囲:P.1096 - P.1101

ポイント

 呼吸困難感は,呼吸状態が不適切であることを知覚させるべく脳が発する警報であり,また呼吸状態を改善させるためのフィードバック機構を構成するものである.

 下部脳幹内で形成された呼吸神経出力は,脳神経を介し上気道の開存性を規定するとともに脊髄神経を介し呼吸筋を駆動するが,同時に呼吸神経出力・呼吸努力の程度を反映する感覚・motor command corollary dischargeとして高位中枢へ投射される.

 運動やさまざまな刺激に反応して呼吸神経出力と並行して増強し,高位中枢へ投射されたmotor command corollary dischargeと,実際に出力された機械的換気運動状態についての統合的モニター感覚・integrated mechanical respiratory sensationとが高位中枢において対比され,そのズレが大きくなると呼吸困難感が出現・増強する.

 体液酸素分圧低下や二酸化炭素分圧上昇などの呼吸化学刺激強度についての高位中枢における統合的モニター感覚・integrated chemical respiratory sensationの増大は呼吸困難感を増強させる.

呼吸調節障害がかかわる疾患と呼吸調節障害の症候

著者: 中村俊夫 ,   信岡祐彦

ページ範囲:P.1102 - P.1103

ポイント

 呼吸調節障害の症候は呼吸回数,換気量と呼吸リズムの異常として観察される.

 呼吸回数と換気量の変化は過換気あるいは低換気を生じ,血液ガス異常をもたらす.

 代表的な異常呼吸にCheyne-Stokes呼吸と不規則性呼吸(Biot呼吸や失調呼吸)がある.

しゃっくり

著者: 坂井邦彦 ,   佐藤誠

ページ範囲:P.1104 - P.1106

ポイント

 しゃっくり(吃逆)は,吸気筋の不随意的痙性収縮による短く強力な吸気努力と声門閉鎖からなる反復現象である.

 しゃっくりの役割は不明であるが,原始的反射の痕跡という考え方が有力である.

 慢性しゃっくりの原因は不明なことが多いが,時に悪性腫瘍が潜在していることがあり,原疾患の検索は必須である.

咳嗽

著者: 塩谷隆信

ページ範囲:P.1108 - P.1113

ポイント

 咳嗽は,呼吸器疾患の日常診療において最も多く遭遇する主訴である.

 咳嗽の末梢受容器としては,速順応性刺激受容器(irritant receptor)と気管支C-fiberがあり,機械的および化学的刺激に反応する.

 咳嗽は,症状発現から3週間以内の急性咳嗽,3週間以上継続する遷延性(亜急性)咳嗽,8週間以上持続する慢性咳嗽に分類される.

 湿性咳嗽は喀痰を喀出するための生体防御反応であり,気道の過分泌が治療対象となる.乾性咳嗽は病的咳嗽であるため,咳嗽そのものが治療対象となる.

 慢性咳嗽の3大原因疾患は咳喘息,アトピー咳嗽,副鼻腔気管支症候群である.

起坐呼吸とorthodeoxia

著者: 小山田吉孝 ,   山口佳寿博

ページ範囲:P.1114 - P.1115

ポイント

 起坐呼吸は左心不全のみならずCOPD,気管支喘息,横隔神経麻痺といった呼吸器疾患でも認められる.

 orthodeoxiaは立位をとることで低酸素血症が増悪する現象を指す.

 orthodeoxiaを呈する疾患として,肺動静脈奇形,肝肺症候群などが挙げられる.

一般病院でできる呼吸調節障害の検査

著者: 鈴木俊介

ページ範囲:P.1116 - P.1118

ポイント

 動脈血ガス分析ではA-aDo2とPaco2とに注目する.呼吸調節障害単独ではガス交換障害がないので,A-aDo2は正常範囲である.

 酸塩基平衡をみて,代謝性によるpHの変化がないかを考慮し,必要に応じ電解質などの検査も行う.

 Paco2上昇の原因を確認する場合は,スパイロメトリーや呼吸筋力検査が有用である.

呼吸調節障害の精密検査

著者: 小川浩正

ページ範囲:P.1120 - P.1123

ポイント

 呼吸調節障害の精密検査は,化学的刺激(Po2,Pco2),機械的刺激に対する呼吸出力と呼吸感覚を調べるものである.

 化学的刺激に対する検査には,低酸素換気応答,高炭酸ガス換気応答がある.

 機械的刺激に対する検査は,呼吸抵抗負荷による検査が行われる.

 呼吸中枢ドライブの指標として,吸気開始0.1秒後の口腔閉鎖内圧(P0.1)が用いられる.

呼吸不全における呼吸調節

高CO2血症を伴わない呼吸不全と呼吸調節

著者: 柳生久永 ,   松岡健

ページ範囲:P.1124 - P.1125

ポイント

 室内気での血液ガス分析の結果がPao260Torr以下,Paco2が正常あるいは低下で1型呼吸不全と診断される.

 病態は低酸素血症による換気刺激の亢進で,身体所見で頻呼吸が認められる.

 低酸素血症の原因疾患を特定する検査と同時並行で酸素療法を開始する.

高CO2血症を伴う呼吸不全と呼吸調節

著者: 赤星俊樹 ,   赤柴恒人 ,   堀江孝至

ページ範囲:P.1126 - P.1129

ポイント

 換気における化学調節では,動脈血炭酸ガス分圧(Paco2),動脈血酸素分圧(Pao2)およびpHを感知して,延髄の呼吸中枢から呼吸筋への出力が行われる.

 炭酸ガス蓄積の要因として,2つの因子,①肺胞低換気,②換気/血流不均等が挙げられる.

 慢性の高炭酸ガス血症における換気刺激は,主に低酸素血症によるものである.不注意な酸素投与は,換気抑制と換気/血流不均等を悪化させ,高炭酸ガス血症を増悪させる.

CO2ナルコーシスと酸素療法

著者: 菊池喜博

ページ範囲:P.1130 - P.1132

ポイント

 CO2ナルコーシスの発症はpHの値およびその変化速度に関係する.

 高濃度酸素吸入時のCO2ナルコーシスの原因は,低酸素換気刺激の消失ではなく,換気血流比不均等の増大による死腔の増加である.

 低酸素血症は高炭酸ガス血症に比べ生命に対する危険は遥かに大きい.呼吸不全患者の治療にあたっては,CO2ナルコーシスの危険性より,酸素化を優先させる.

在宅酸素療法と呼吸調節―在宅酸素療法による身体効果と呼吸調節への影響

著者: 宮本顕二

ページ範囲:P.1133 - P.1135

在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)は1984年にその適応基準が発表され,その翌年に社会保険への適用が認められ,その後急速に普及した.現在は約10万人のHOT施行患者がいると推定され,HOTはわが国で最も成功した在宅医療の一つである.本稿では在宅酸素療法(長期酸素吸入)による身体効果と呼吸調節への作用を解説する.

長期酸素投与の身体効果

1. 運動耐容能の向上

 長期酸素吸入は慢性呼吸不全患者の歩行距離を延長させ,トレッドミルや自転車エルゴメータの運動持続時間を延長させる(図1).その機序について,下記の報告などがある.

Permissive hypercapnia

著者: 坪井知正

ページ範囲:P.1136 - P.1138

ポイント

 ARDSには,低一回換気量での人工呼吸をすることで人工呼吸惹起性肺障害を軽減する戦略がとられる.

 侵襲的人工呼吸下の高CO2血症はそれほど危険ではない.

 hypercapnic acidosis自体にARDSの進展を抑制する効果がある.

 hypercapnic acidosisを積極的にARDSの治療に導入する日が来るかもしれない(permissive hypercapniaからtherapeutic hypercapniaへ).

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群の疫学

著者: 榊原博樹 ,   齊藤八千代 ,   茂谷真一

ページ範囲:P.1140 - P.1142

ポイント

 症状の有無にかかわらず,無呼吸・低呼吸指数(AHI)が5/h以上は病的な睡眠呼吸障害(SDB)とされ,30歳以上の男性の24%,女性の9%を占める.

 SDBに日中の眠気などの自覚症状をもつと睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され,その有病率は30歳以上の男性の4%,女性の2%である.

 SASは言うに及ばず,病的なSDBは放置されると高血圧の発症因子となり,冠動脈疾患や脳血管障害の発症にも関与する.

 SASのほとんどは,舌や咽頭軟部組織,顎顔面形態などの異常による上気道(咽頭腔)の狭小化に基づいて発症する.肥満はSASの発症にとって十分条件でも必要条件でもない.

閉塞型睡眠時無呼吸低呼吸症候群

著者: 岡村城志 ,   谷口充孝 ,   大井元晴

ページ範囲:P.1144 - P.1147

ポイント

 閉塞型睡眠時無呼吸低呼吸症候群(OSAHS)の上気道閉塞は,上気道開大筋の張力と吸気陰圧のアンバランスによって引き起こされる.

 肥満低換気症候群は,OSAHSのうち低酸素・高炭酸ガス換気応答の低下した重症例であると考えられる.

 経鼻的持続陽圧呼吸(nasal CPAP)療法は,OSAHS患者に対する第一選択の治療法であるが,正しい診断,導入,トラブルへの対処が必要である.

中枢性睡眠時無呼吸症候群・原発性肺胞低換気症候群

著者: 安間文彦

ページ範囲:P.1148 - P.1150

ポイント

 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は,中枢型無呼吸・低呼吸が1時間の睡眠当たり5回(一晩に30回)以上で診断され,持続気道陽圧により治療されることもある.

 中枢化学受容器か呼吸中枢の機能異常が原因の原発性肺胞低換気症候群(PAHS)は稀な疾患で,睡眠中の著しい低換気は陽圧人工呼吸により治療される.

睡眠時無呼吸症候群と就業

著者: 飛田渉

ページ範囲:P.1151 - P.1153

ポイント

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠の質の低下により過度の眠気を伴う.

 SASでは居眠りによるニアミス,事故のリスクが高い.

 居眠りによるニアミス,事故はSASばかりでない.

 SASによる過眠はCPAP療法で改善する.

慢性呼吸不全における睡眠時無呼吸症候群

著者: 髙井雄二郎 ,   山城義広

ページ範囲:P.1154 - P.1156

ポイント

 慢性呼吸不全患者は睡眠時,特にREM睡眠時は呼吸状態が悪化する.

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)と閉塞型睡眠時無呼吸低呼吸症候群(OSAHS)の合併はオーバーラップ症候群といわれ,診断には終夜睡眠ポリグラフ検査が必要になる.

 治療として酸素療法に加え,経鼻的持続陽圧呼吸(nCPAP)療法や非侵襲的陽圧換気(NPPV)療法が有効である.

循環器疾患と睡眠時無呼吸症候群

著者: 坂巻文雄

ページ範囲:P.1157 - P.1159

ポイント

 閉塞型睡眠時無呼吸は循環器疾患の危険因子となるばかりでなく,左心機能障害の悪化因子となりうる.

 重症の慢性心不全には中枢型睡眠時無呼吸(CSA)が併発しやすく,併発するCSAがさらに心不全の予後を悪化させる.

 これらの“悪循環”を夜間の酸素療法やCPAPなどの呼吸補助療法により改善できる可能性がある.

睡眠時無呼吸症・肥満・高血圧の関連性

著者: 弓野大 ,   成井浩司

ページ範囲:P.1160 - P.1164

ポイント

 睡眠時無呼吸症は肥満と高血圧との間に介在する重要な病態である.

 睡眠時無呼吸症が高血圧を導くことは多くの研究により明らかとなった.

 肥満が睡眠時無呼吸症のリスクを増加させ,逆に睡眠時無呼吸症の存在自体も体重増加を引き起こす.

 睡眠時無呼吸症は,今まで肥満だけが原因とされていたいくつかの病態生理(交感神経活性・腎機能・レプチン,インスリン抵抗性・酸化ストレス・レニン-アンジオテンシン系・炎症など)の過程に関与している.

経鼻的持続陽圧呼吸(n-CPAP)以外の治療法

著者: 千葉伸太郎

ページ範囲:P.1166 - P.1168

ポイント

 わが国の睡眠呼吸障害は,肥満,顎顔面形態,上気道疾患,年齢などさまざまな要因が関与する.n-CPAP以外の治療として口腔内装置やUPPPをはじめとする耳鼻咽喉科的手術がある.原因となっている要因を正確に診断し,重症度や合併症を考慮したうえで,適切な治療法を選択することにより高い治療効果が期待できる.

睡眠時無呼吸症候群への一般医のかかわり

著者: 櫻井滋 ,   高橋進 ,   笠井良彦

ページ範囲:P.1169 - P.1172

ポイント

 本症候群の潜在患者に,適切な医療の機会を与えることができるのは睡眠医療を専門としない一般医である.

 本症候群の患者は肥満を呈するとは限らず,診察や簡易検査のみで除外診断することは専門医であってもきわめて困難である.

 薬物療法に抵抗する生活習慣病や頻尿,胸やけ,口渇など睡眠時に悪化する症状,抑うつ傾向などに着目し,本症候群の存在を疑うことが重要である.

 第一選択である持続陽圧呼吸(CPAP)療法は典型的在宅医療であり,一般医も主体的にかかわることが可能な医療である.

 多くの睡眠検査施設が一般医の見学を歓迎しており,検査・診療の実際を知ることが睡眠医療に対する理解を深める早道である.

神経機能と呼吸

中枢神経疾患による呼吸調節障害

著者: 亀井徹正

ページ範囲:P.1175 - P.1177

ポイント

 呼吸中枢が延髄にあり,呼吸の調節にかかわる神経解剖学的構造が脳幹部に集中していることから,脳幹部に障害を生じる疾患では,疾患の種類にかかわらず呼吸調節の障害が発生する.

 てんかんや神経変性疾患において,睡眠時呼吸調節障害を合併することが最近明らかとなりつつあるが,今のところ詳細は不明である.

脳血管障害による呼吸調節障害

著者: 関沢清久 ,   森島祐子

ページ範囲:P.1178 - P.1180

ポイント

 脳血管障害による呼吸パターンの異常には,睡眠時無呼吸,Cheyne-Stokes呼吸,中枢性過換気,失調性呼吸,群発性呼吸,持続性吸息呼吸,respiratory apraxia,しゃっくりなどさまざまなものがあり,特に急性期において頻度が高い.

 その他,脳血管障害患者では嚥下反射および咳反射の低下がみられ,誤嚥性肺炎のリスクが高いので注意する.

鎮静・鎮痛薬投与による呼吸抑制

著者: 金沢賢也 ,   棟方充

ページ範囲:P.1181 - P.1183

ポイント

 鎮静・鎮痛薬使用中は呼吸回数や呼吸深度の変化など,患者状態の観察を大切にする.

 鎮静・鎮痛薬の使用時は呼吸抑制の可能性を常に念頭に置き,万が一の対策準備を怠らない.

 高齢者や閉塞性肺疾患などの呼吸機能低下患者では鎮静・鎮痛薬で呼吸抑制が出やすい.

 鎮静・鎮痛薬を複数併用する場合には,それらの相乗効果による過度の呼吸抑制に注意する.

呼吸刺激薬

著者: 冨岡洋海

ページ範囲:P.1185 - P.1187

ポイント

 呼吸刺激薬はあくまで補助的な薬剤であり,睡眠薬や鎮静薬,過剰酸素投与などによる一時的な呼吸中枢抑制に限定して使用すべきである.

 これまで慢性呼吸不全の急性増悪時に使用されてきたドキサプラムは,非侵襲的陽圧人工呼吸(NPPV)の有効性がほぼ確立した現在,その使用は限られ,より確実に効果が期待できるNPPVなどの人工呼吸管理へ踏み切るタイミングを逃さないことが重要である.

過換気症候群およびパニック障害

著者: 小林一郎 ,   西谷憲三

ページ範囲:P.1188 - P.1192

ポイント

 器質的な疾患による過呼吸状態と過換気症候群を区別する必要がある.

 過換気症候群の症状は,低炭酸ガス血症による呼吸性アルカローシスに惹起されたものと考えられていたが,最近必ずしも関連しないとの報告もある.

 心理的要因が病因に関与し過呼吸を引き起こすことがあるパニック障害や中枢性横隔膜粗動なども過換気症候群との鑑別を必要とする.

代謝と呼吸

肥満と呼吸調節障害

著者: 巽浩一郎

ページ範囲:P.1194 - P.1196

ポイント

 肥満者では,特に仰臥位において肺・胸郭系のコンプライアンスが低下する.

 肥満者では,呼気予備量が低下する.

 肥満者では,呼吸中枢からの神経活動が横隔膜筋力として伝わりにくい.

 肥満者では,横隔膜神経および横隔膜筋活動が実際の換気として伝わりにくい.

 肥満低換気症候群(OHS)では,換気応答は著明に低下している.

 減量により,肥満者では換気応答は低下するが,OHSでは増加する.

妊娠と呼吸

著者: 黒澤一

ページ範囲:P.1198 - P.1200

ポイント

 肺活量,一秒量は妊娠後期まで正常に保たれる.

 機能的残気量は子宮の増大に伴った胸郭変形および横隔膜挙上とともに低下する.

 一回換気量および分時換気量は妊娠早期から増大し,Paco2は低下する.

 妊娠早期から生理的に呼吸困難を伴う場合がある.

 条件によっては妊娠中に睡眠時呼吸障害を合併することもあるが,多くは見過ごされている可能性が高い.

利尿薬(アセタゾラミド・フロセミド)による呼吸調節機能の変化

著者: 林正道 ,   岡澤光芝

ページ範囲:P.1201 - P.1203

ポイント

 中枢化学受容体と末梢化学受容体の働き.

 高炭酸ガス血症および低酸素血症による換気応答.

 睡眠時無呼吸症候群の換気応答.

 慢性閉塞性肺疾患の酸塩基平衡と換気応答.

 急性心不全の浅く速い換気の原因.

 炭酸脱水素酵素阻害薬アセタゾラミドによる代謝性アシドーシス.

 ループ利尿薬フロセミドに起因する低カリウム血症と低換気の可能性.

内分泌障害による呼吸調節障害

著者: 小野宏 ,   蝶名林直彦

ページ範囲:P.1204 - P.1206

ポイント

 呼吸筋をはじめ,骨格筋の収縮は非常に複雑な機構で行われている.

 骨格筋収縮過程には神経・筋接続,十分なエネルギー供給・細胞内伝達,代謝と細胞内外の電解質などが関与し,それらの大半はホルモンにより調節されている.

 主な内分泌異常に伴う呼吸筋障害は,①収縮機構への影響,②エネルギー供給・代謝経路への影響,③膜透過性への影響,④蛋白質代謝経路への影響,⑤閉塞型睡眠時無呼吸症候群との関連,などが挙げられる.

 呼吸器疾患患者へのコルチコステロイド使用には注意するべきである.

座談会

睡眠時無呼吸症候群のグランドデザイン

著者: 塩見利明 ,   高崎雄司 ,   陳和夫 ,   近藤哲理

ページ範囲:P.1210 - P.1219

近藤 本日は,SAS(睡眠時無呼吸症候群)について中心的に活動されている先生方にお集まりいただき,SASの現在と将来についてお話しいただこうと思います.まず,先生方の施設についてお聞かせください.


施設の規模と診療圏

 塩見 愛知医科大学では,1998年に睡眠外来を立ち上げ,2000年に睡眠医療センターを開設しましたが,診療科の標榜がまだできないので,現在も中央診療部の中にあります.私のほかに内科医が7人いますが,全員兼務です.ベッド数は5ベッドで,週4日のPSG(睡眠ポリグラフ)を行っています.診療圏は,最初はかなり広かったのですが,最近では愛知,岐阜,静岡,長野あたりまでです.

理解のための31題

ページ範囲:P.1220 - P.1226

輸血のきほん(8)

アルブミン製剤

著者: 比留間潔

ページ範囲:P.1230 - P.1234

アルブミン製剤は,ヒトの血漿から精製分離されて製造される血漿分画製剤であり,薬事法では輸血用血液と同様に「特定生物由来製品」に指定されている.

 特にわが国ではアルブミン製剤が使われ過ぎといわれ,世界のアルブミン製剤の1/3が日本で消費されたこともあった.その後,減少したものの,現在でも60%以上を輸入に依存している.血液製剤は国内で自給自足すべきという観点からも,真に必要なときに限って用いるべきである.

演習・小児外来

〔Case4〕 浮腫・尿量減少を認めた7歳男児

著者: 高橋英彦

ページ範囲:P.1235 - P.1237

症 例:7歳男児.

 主 訴:浮腫,尿量減少.

 既往歴:これまで尿異常を指摘されたり肉眼的血尿がみられたことはない.

 家族歴:下痢・扁桃炎・腎疾患・難聴のある者はいない.

 現病歴:咽頭痛が2~3日あり,その2週間後に眼瞼浮腫が出現,3kgの体重増加があった.翌日元気がなくなり,翌々日尿の色が濃く1日に500ml程度しか出なかったため近医を受診.蛋白尿・血尿を指摘され,当院を紹介された.薬剤は使用されておらず,筋肉痛・関節痛・排尿痛・頻尿もみられない.

 現 症:血圧は120/76mmHg,眼瞼・下肢に浮腫あり,顔面に紅斑はなく,心雑音・肝腫大は認めない.

カラーグラフ 足で診る糖尿病(7)

足の潰瘍・壊疽

著者: 新城孝道

ページ範囲:P.1238 - P.1239

糖尿病患者の足病変のなかで潰瘍の発症はよくみられ(図1a),治療が不十分であったり手遅れであったりすると,壊疽に進展することが少なくない(図2a,b).足潰瘍は外的な要因での発症が多い.靴擦れ,熱傷,機械的刺激による角質異常,落下物や家庭内家具での外傷などと多種である.靴擦れについては,窮屈な靴の使用以外に,靴と足が適合していても,長時間の歩行での軽微な機械的刺激が続くことにより足の損傷が起こる.靴が大きすぎても,靴内での足の遊びが大きく,移動が大きいため靴内での衝突を受ける.

 糖尿病神経障害例は足の冷えや足の防御感覚の障害があるため,機械的損傷がある程度大きくないと認知できないという問題点がある.また足の冷えが強く,家庭用の暖房器具での熱傷に罹患しやすい.高度の神経障害例は熱源に接触しても反射がなく,高度の熱傷を受ける.

連載

目でみるトレーニング

著者: 長嶋孝夫 ,   小野敏嗣 ,   中島敏明 ,   正木康史

ページ範囲:P.1240 - P.1245

問題 376

 症 例:30歳,男性.

 主 訴:全身倦 怠感,四肢のしびれ.

 既往歴:特記事項なし.

 家族歴:特記事項なし.

 職業歴:高校卒業後,自動車製造業に勤務.

 現病歴:入院4カ月前ぐらいから全身倦怠感を自覚.また同時期より,手足のしびれも感じるようになった.定期検診にてAST,ALT,LDHの肝機能異常を指摘され,近医受診.AST117U/l,ALT63U/l,LDH1,047U/l,CPK3,540U/lと高値を認め,当院アレルギーリウマチ科紹介受診,入院となった.

 身体所見:身長170cm,体重57.7kg,体温37.2℃,脈拍96/分・整,血圧134/84mmHg.知能検査も正常で,皮膚,頭髪,手指,爪,歯,眼の異常は認められない.左下腿に軽度の筋萎縮,筋力低下が認められたが,その部位以外に筋力低下,筋把握痛は認めなかった.診察中,図1のような反応が上肢にみられた.

新薬情報(41)

塩酸ラロキシフェン(エビスタ®錠60m) Raloxifene hydrochloride

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1246 - P.1248

適応■閉経後骨粗鬆症

用法・用量■通常,塩酸ラロキシフェンとして,1日1回60mgを経口投与する.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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