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雑誌目次

雑誌文献

medicina41巻9号

2004年09月発行

雑誌目次

今月の主題 内科レッド・フラッグサイン―よくある症候から危険を見抜く 全身性の疾患を示唆するレッド・フラッグサイン

「痴呆」と片付ける前に治療可能な疾患を考えよう

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.1438 - P.1441

ポイント

 痴呆では記憶障害とそれ以外の認知機能障害を認め,日常生活や社会生活に障害をもたらしている.

 治療可能な痴呆の原因には,呼吸循環異常,電解質異常,代謝性疾患,感染症,精神疾患,脳外科疾患などがある.

 原疾患を早期発見できた場合は,早期治療により症状の改善がみられる可能性がある.

 “治療可能な”痴呆症であっても,痴呆が完全に治癒する頻度は低い.

麻痺をみたら「脳卒中」と片付ける前に他の疾患も考えよう

著者: 竹村学

ページ範囲:P.1442 - P.1444

ポイント

 脳卒中と間違えやすい疾患には,てんかん,占拠性脳病変,代謝性・中毒性疾患,転換性障害などがある.

 鑑別のポイントとなるのは,麻痺の型と,麻痺以外の合併症状である.

めまいの患者では病歴・年齢・基礎疾患に注意

著者: 伊賀幹二

ページ範囲:P.1446 - P.1448

ポイント

 患者表現は多彩であり,軽度の失神をめまいと表現することもある.

 典型的な回転性めまいであれば,心疾患の可能性はきわめて少ない.

 回転性以外のめまいであれば,現在では心電図,胸部X線,一般採血に加えて心エコー図は必要である.

 ホルター心電図で不整脈がみつけられれば診断できるが,1回のホルター心電図が正常であっても症状があれば疾患がないとはいえない.

 頻発する心室性期外収縮をめまいの原因と考えたとき,みだりに抗不整脈薬を投与しない.

血管内容積減少を示唆するレッド・フラッグサイン―正常血圧でも安心してはいけない

著者: 金城紀与史

ページ範囲:P.1450 - P.1452

ポイント

 血管内容積の減少は出血のほか,嘔吐,下痢,利尿薬,熱傷などでも起こる.

 低血圧や頻脈を呈する場合は,相当量の血管内容積の低下がある.

 軽度の低下を見逃さないために,臥位と立位で血圧,脈を比べる.

 高血糖緊急症では補液を十分に行ってからインスリンを開始する.

 補液は血管内容積を回復することを最優先する.

帰してはいけない発熱患者

著者: 中村権一

ページ範囲:P.1454 - P.1457

ポイント

 発熱を主訴に救急外来を受診する患者は非常に多い.

 なかには一刻も早く適切な治療を要する疾患がある.

 感染症では敗血症,細菌性髄膜炎,膿瘍に注意し,どの臓器の感染症かを常に考え,血液培養など適切な検体採取を行う.

 それぞれの疾患でのレッド・フラッグサインに常に注意し,適切な対応を行う.

敗血症を示唆するレッド・フラッグサイン

著者: 五味晴美

ページ範囲:P.1458 - P.1460

ポイント

 敗血症を示唆するサインは,患者の免疫状態により,大きく異なる.正常な免疫反応(発熱,白血球増加など)を起こす患者と,免疫不全のため正常な免疫反応を起こさない患者がいる.できるだけ詳しい病歴とその病歴に基づいた身体検査を確実に行うことが,重症な感染症を見逃さないための必須事項である.

 代表的な免疫不全疾患である糖尿病,腎臓病,肝臓病などの既往がある場合には,感染症の起因菌を想定する際に,日和見感染を考慮する必要がある.

肺塞栓のレッド・フラッグサイン―典型的心電図は必発ではない

著者: 野口善令

ページ範囲:P.1461 - P.1463

ポイント

 肺塞栓の重要なレッド・フラッグサインとして,胸痛,血痰,咳,呼吸困難,失神などがある.

 これらレッド・フラッグサインがある場合には,肺塞栓以外に症状を説明できる診断の有無,リスクファクターの有無を加味して,肺塞栓の臨床的疑いの強さを推定できる.

頭痛

帰してはいけない頭痛の患者は?

著者: 野中雅 ,   宝金清博

ページ範囲:P.1464 - P.1467

ポイント

 突然発症の頭痛は脳卒中に伴う頭痛の特徴として重要である.

 くも膜下出血では,予兆として軽度の出血が先行している場合がある.

 CT上,くも膜下出血を疑わせる間接所見を見逃さない.

 椎骨脳底動脈系の脳梗塞では,めまいなどの小脳症状のほかに,頭痛を伴うことがある.

 CTによる確認が必要であり,これらの疾患が疑われた場合には早急に脳卒中専門医に紹介すべきである.

労作で悪化,寝起きに最悪の頭痛

著者: 南田善弘 ,   宝金清博

ページ範囲:P.1468 - P.1470

ポイント

 脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの頭蓋内占拠性病変は高率に頭痛を伴い,発症形式は亜急性あるいは慢性である.

 早朝に強い頭痛,嘔気,嘔吐を伴う頭痛,視力障害を伴う頭痛は,頭蓋内圧亢進症が強く疑われる.

 頭蓋内圧亢進症は危険な状態で,治療を急がなければならない.

 頭蓋内圧亢進症の診断には,眼底検査によるうっ血乳頭の確認が必須である.

ミルクを飲まず,ぐったりした子ども―頭痛に伴う発熱・嘔気・嘔吐

著者: 高山ジョン一郎

ページ範囲:P.1472 - P.1475

ポイント

 「ミルクを飲まない」と「ぐったりした」との親の訴えは重視すべきもので,児が重病であるかもしれないと考え,現病歴を十分に聞き取り緻密な診察を行うべきである.

 いろいろな可能性を探り,一つの診断を即決するのではなく,複数の可能性を考えながら,問診,診察,検査を有効に行いながら診断をつける.

 頭痛に伴う発熱・嘔気・嘔吐がある場合は,髄膜炎を考えるが,1歳未満の児は,頭痛を訴えるのが難しいことも考慮すべきである.

嘔気・嘔吐を伴う頭痛,片眼性の赤い眼

著者: 大木孝太郎

ページ範囲:P.1476 - P.1478

ポイント

 比較的高齢者が多い.

 頭痛・嘔吐のため,眼科より先に内科受診.

 眼症状としてかすみ眼,虹輪視,視力低下.

 充血は片眼性.

 充血眼の中程度散瞳,瞳孔反応鈍化.

 治療は緊急を要し,手遅れは極度視機能障害.

 高浸透圧薬・炭酸脱水素酵素阻害薬の点滴静注が著効.

50歳以上の,発熱・疲労感・体重減少を伴う頭痛

著者: 金城光代

ページ範囲:P.1480 - P.1482

ポイント

 側頭動脈炎は50歳以上の患者における頭痛の鑑別として重要であり,最悪の場合,失明をきたす.

 倦怠感や発熱といった全身症状,複視や一過性黒内障などの眼症状,リウマチ性多発筋痛症との関連,さらに身体所見での側頭動脈の圧痛や脈の低下,炎症所見の高値は側頭動脈炎の診断を考えるうえで重要である.

 側頭動脈炎を疑ったら,側頭動脈生検と迅速なステロイドによる治療が視力予後の観点から必須である.

胸痛,息切れ

高齢者の突然の食欲不振

著者: 木村剛 ,   小笹寧子

ページ範囲:P.1483 - P.1485

ポイント

 高齢者の食欲不振には,さまざまな疾患や病態が隠れている.

 特に心不全は,一般血液検査では特徴的な異常は認めないことが多いため見逃しやすいが,治療法を誤ると急速に悪化することがあるため,はじめに鑑別しておく必要がある.

 心不全の診断には,血漿BNPの測定が有用である.

飲酒の翌朝の胸痛

著者: 杉山正悟 ,   古賀英信 ,   小川久雄

ページ範囲:P.1486 - P.1488

ポイント

 飲酒は冠攣縮性狭心症を誘発することが知られている.

 飲酒後,酔いが覚める頃(朝方)に冠攣縮性狭心症が起こる.

 飲酒後の冠攣縮性狭心症は,失神や急性心筋梗塞の原因ともなる.

 冠攣縮性狭心症は突然死をきたす可能性のある疾患である.

呼吸困難の程度のわりに静かな肺

著者: 佐藤晋

ページ範囲:P.1490 - P.1492

ポイント

 気管支喘息重積発作の際,強度の呼吸困難のわりに喘鳴・呼吸音が減弱しているのはsilent chestと呼ばれ,重篤な発作状態(near fatal asthma)であり,緊急処置を要する状態である.

 気管支喘息重積発作以外にも気胸や肺梗塞,COPD急性悪化など,聴診所見と症状が乖離する疾患を常に念頭に置く必要がある.

吸気性の喘鳴

著者: 松本強

ページ範囲:P.1494 - P.1497

ポイント

 通常治療に反応が乏しい喘息(難治性喘息)では,上気道狭窄は常に鑑別すべき疾患の一つである.

 吸気時のみ喘鳴(stridor)は気管支喘息ではない.stridorを考慮して,発声部位,時相を同定する注意深い聴診を行う.

 急性の吸気性喘鳴は上気道閉塞の救急(medical emergency)である.診断の遅れは,致死的窒息発作となる危険があり,迅速な診断と気道確保が必要となる.

 慢性の吸気性喘鳴は気管内腫瘍,vocal cord dysfunctionなどとの鑑別が必要で,flow-volume loopは有用である.

 喉頭ファイバースコープ,気管支鏡,肺CTは確定診断に有用である.

腹痛

腹痛の程度のわりに軽微な診察所見

著者: 林寛之

ページ範囲:P.1498 - P.1500

ポイント

 突然の激しい腹痛のわりに腹膜刺激症状がない場合は,腸管虚血,腹部大動脈瘤を疑う.

 高齢者(男性)で心房細動・弁膜症などを認めたら,腸管虚血を疑う.

 単純CT+造影CTが1st choice.しかし血管造影がgold standard.

生殖年齢の女性の腹痛

著者: 金森崇修 ,   福原健 ,   藤井信吾

ページ範囲:P.1502 - P.1505

ポイント

 子宮外妊娠の大多数は卵管で起こり,破裂すると腹腔内で大出血を生じる.時にはショック状態となり,生命の危機に至ることもある.

 最近では超音波検査が普及してきたため,卵管破裂を起こす前に診断がつくようになってきている.

 妊娠を自覚していない場合もよくあるので,問診を注意深く行い,妊娠の可能性を否定できないならば,尿妊娠反応を必ず行うべきである.

疼痛を伴う陰囊の腫脹

著者: 木下秀文

ページ範囲:P.1506 - P.1508

ポイント

 疼痛を伴う陰囊の腫脹を主訴とする疾患のなかには,精索捻転症という緊急疾患を含んでいる.

 精巣上体炎との鑑別が難しいことも多い.

 緊急性の認識が薄いため,専門医を受診した際には精巣の温存が困難となっている例も散見する.本疾患の緊急性について再認識していただくとともに,鑑別診断のポイントについて述べる.

急性腹症・腹部症状

著者: 石丸裕康

ページ範囲:P.1510 - P.1512

ポイント

 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は意識障害のほか,不定な消化器症状を訴えて来院することも多い.

 時に急性腹症で来院する.重篤な代謝性アシドーシスの症例に多い.

 糖尿病の既往なく,DKAで発症するタイプがあり,誤診しやすい.

強くない腹痛

著者: 六倉俊哉

ページ範囲:P.1514 - P.1516

ポイント

 肝硬変の患者で発熱,腹水貯留,腹部鈍痛を認めたら,特発性細菌性腹膜炎を強く疑う.

 腹水穿刺が診断に重要で,腹水中の好中球が250/mm3以上のときは可能性が高い.

 腹水中の蛋白濃度は低く,1g/dl以下の時に生じやすい.

 二次性細菌性腹膜炎との鑑別を注意深く行う.

 治療前に血液および腹水の培養を行う.

 抗生物質(第三世代セファロスポリン)の早期投与により,予後は大幅に改善する.

 肝不全兆候に注意し,肝不全対策を行う.

腰痛,下肢のしびれ

安静でも軽快しない腰痛―いかなるposition/activityでも持続するとき

著者: 関口美穂 ,   紺野慎一

ページ範囲:P.1518 - P.1521

ポイント

 痛みの特徴から原因疾患を推定できる.

 特に安静時痛や夜間痛など動作に伴わない疼痛は,脊椎炎や脊椎腫瘍の重篤な脊椎疾患と,内臓由来の疾患を念頭におく.

 脊椎への転移から原発巣が明らかになる症例がある.

突然のしびれ,背部痛

著者: 吉場史朗 ,   安藤潔

ページ範囲:P.1522 - P.1526

ポイント

 脊髄圧迫症候群(cord compression syndrome:CCS)は全悪性腫瘍の5%で起こり,肺癌・乳癌・前立腺癌・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫などが原因となる.

 機能予後を決定する因子は,診断時の神経障害の程度に左右されることから,早期発見が重要である.

 病歴では,悪性腫瘍の既往とリスクファクターを見いだすことが重要である.

 診断には,MRIが感度・特異度・非侵襲性・経済面いずれの面からも有用である.

 CCSを疑った場合,速やかに専門医への相談・高次施設への搬送が重要である.

殿部周囲の知覚減少,急性の膀胱直腸障害

著者: 関口美穂 ,   紺野慎一

ページ範囲:P.1527 - P.1529

ポイント

 姿勢の変化によって症状が軽快する姿勢性要素(postural factor)の有無が,神経性間欠跛行と血管性間欠跛行の重要な鑑別ポイントである.

 膀胱直腸障害を伴う間欠跛行は,馬尾障害の可能性が高く重症である.

 末梢動脈拍動や腰痛の有無は,脊柱管狭窄と閉塞性動脈硬化症の鑑別に重要な指標であるが,絶対的なものではない.

皮膚

蜂窩織炎のレッド・フラッグサイン

著者: 松村由美 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.1530 - P.1532

ポイント

 蜂窩織炎はありふれた疾患であるが,時に別の疾患との鑑別が難しいことがある.

 鑑別を要する疾患として壊死性筋膜炎,骨髄炎,深部静脈血栓症を挙げた.それぞれ,紫斑・血疱,膿,局所熱感の欠如が鑑別のポイント(レッド・フラッグサイン)となる.

 しかし,時にこれらの疾患が互いに合併することもあり,注意を要する.

発熱を伴う皮膚潰瘍

著者: 藤澤章弘 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.1533 - P.1535

ポイント

 糖尿病性壊疽や褥瘡は,日常遭遇することの多い皮膚潰瘍であるが,時に発熱の原因となり重篤な病態へと発展しうる.

 注意すべき皮膚症状として,潰瘍周囲の皮膚の発赤,熱感,疼痛,膿,膿瘍,悪臭,握雪感がある.

 患者は常に自分から症状を訴えるとは限らない.

発熱を伴う水疱

著者: 加藤真弓 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.1536 - P.1539

ポイント

 本稿で取り上げる疾患は,中毒性表皮壊死症,水痘,カポジ水痘様発疹症,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群で,いずれも重症化する危険性のあるものである.

 重症化させないために早期の治療開始が重要だが,それぞれ,臨床症状の特徴を見逃さず,皮膚科医との連絡を緊密に取ることで早期診断から治療開始することが可能と考えられる.

外眼運動の制限

著者: 竹村学

ページ範囲:P.1540 - P.1542

ポイント

 外眼運動の制限は,脳幹の血管障害,脳動脈瘤,神経難病など重大な疾患が原因となることが多い.

 意識レベルの低下,瞳孔反応の異常を合併している場合は緊急性が高い.

眼底の出血斑,出血点をみたら

著者: 矢野尊啓

ページ範囲:P.1543 - P.1546

ポイント

 眼底出血の原因疾患として,高血圧,糖尿病の頻度が高いが,血液疾患,感染症,膠原病も稀ならずみられ,診療上重要である.

 緊急性のある原因疾患として,細菌性心内膜炎,敗血症,播種性血管内凝固症,血小板減少性紫斑病,過粘稠度症候群,後天性免疫不全症候群のサイトメガロウイルス網膜炎がある.

 発熱,意識障害,全身性出血傾向の有無に注意し,白血球数高値,血小板数低値,凝固系異常,血清蛋白高値を見逃さぬようにする.

鼎談

Why did I miss the diagnosis ?

著者: ,   野口善令 ,   福原俊一 ,   島田利彦

ページ範囲:P.1547 - P.1557

福原(司会) 本日は,イリノイ大学医学教育科のボルダージュ教授をお招きし,藤田保健衛生大学の野口善令先生と福原で鼎談を行いたいと思います.ボルダージュ教授は現在,東京大学の客員教授で日本にご滞在中です(編集部注:2004年2月1日~7月31日まで).ご専門は医学教育で,特に診断推論に関心をおもちです.

 今月号の特集は“レッド・フラッグサイン”ですが,今日はアメリカから臨床問題解決と医学教育の権威をお招きしておりますので,もう少し話題を広げたいと思います.どうしてわれわれは診断を誤るのか? 診断推論におけるエラーの原因は何か? どのようにすればエラーを改善できるのか? また,医学生や研修医がよりよい問題解決の方法を身につけ診断エラーを減らすように,効果的に教えることができるのか?,といったテーマで話を進めたいと思います.

理解のための29題

ページ範囲:P.1558 - P.1563

輸血のきほん(10)【最終回】

血液凝固因子製剤

著者: 高松純樹

ページ範囲:P.1564 - P.1569

血液凝固に関する因子の先天的もしくは後天的な欠乏,機能異常により出血症状,血栓症状の改善を目的として血漿から分画された凝固因子が使用されている.これらは赤血球,血小板などと同様に輸血製剤ではあるが,わが国のほとんどの医療機関では薬剤部がその取り扱いを行っていることなどから,一般薬品と考えられがちでその使用は必ずしも適正とはいえないことがある.

血液凝固因子製剤の種類

 現在,わが国において使用されている血液凝固因子製剤を表1に示す.これらは大きく分けて血友病製剤(第VIII,IX因子製剤),第XIII因子製剤,濃縮フィブリノゲン製剤に分類される.これらのうち,使用される大部分は血友病製剤であり,次いで後天性の第XIII因子低下に伴う瘻孔治療用として第XIII因子製剤がある.

カラーグラフ 足で診る糖尿病(9)

ASO,blue toe症候群

著者: 新城孝道

ページ範囲:P.1570 - P.1571

下肢末梢循環障害は,閉塞性血栓性血管炎(thromboangiitis obliterans:TAO)と閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)に大別される.前者は血管の炎症病であるBuerger病が代表的で,後者は動脈硬化症を背景とした病態である.現在ではBuerger病は減少し,ASOの占める頻度が高い.

 ASO:肥満,高血圧,高脂血症,高尿酸血症,耐糖能異常などのmetabolic syndromeでは動脈硬化症が進行する.また耐糖能異常例や軽症糖尿病患者でも,虚血性心疾患の頻度が非糖尿病患者に比して高値を示す.加齢と糖尿病の経過年数に依存して動脈硬化症が全身に及ぶ.中でも脳血管障害,虚血性心疾患とASOは3大閉塞性動脈疾患と称され,生活面でのQOLに大きな影響を及ぼす.

連載

目でみるトレーニング

著者: 井上篤 ,   藤田浩之 ,   久保かなえ

ページ範囲:P.1573 - P.1579

問題 382

 症 例:23歳,女性.

 既往歴:小児期に気管支喘息.

 現病歴:2002年5月17日,咽頭痛あり,近医受診し感冒の診断で風邪薬を処方された.2002年5月24日から発熱と前頸部痛が出現し,5月26日から38℃以上の発熱が持続するため,5月29日当院受診した.

 初診時現症:特に甲状腺左葉に強く圧痛を認め,甲状腺は両側腫大していた.その他,咽頭粘膜の軽度発赤を認める以外,肺音,心音に異常なく特記すべき所見なし.体温37.8℃,血圧102/68mmHg,脈拍78/分・整.

演習・小児外来

〔Case6〕嘔吐と傾眠傾向を主訴とする10カ月女児

著者: 寺川敏郎

ページ範囲:P.1581 - P.1583

症 例:10カ月女児.

 主 訴:嘔吐,傾眠傾向.

 家族歴・既往歴:特記すべきことなし.

 現病歴:昼寝より起きた後5~6回嘔吐した.近医受診し,急性胃腸炎の診断で輸液が行われた.嘔吐は治まったが,点滴中ほとんど眠っているため,意識障害の可能性もあり紹介受診となった.来院時ややボーとした感じがあり,刺激がなくなると入眠してしまう状態だった.母に詳しく話を聞くと,点滴中寝ているのに,体をわずかに反らせる動作があり,なんとなくおなかが痛そうな感じがしたという.

 現 症:意識は傾眠傾向.項部硬直なし.胸部所見はラ音なし,心雑音なし,不整脈なし.腹部所見は平坦,軟で腫瘤触知せず.

 検査および治療:腹部エコー(図1)を施行して診断確定し,その後注腸整復(X線透視下高圧浣腸.図2)を施行した.

新薬情報(43)

ミチグリニドカルシウム水和物(グルファスト®錠5mg,10mg) Mitiglinide calcium hydrate

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1584 - P.1586

適応■2型糖尿病における食後血糖推移〔通常,食後高血糖(postprandial hyperglycemia)と呼ばれる〕の改善(ただし,食事療法や運動療法施行により十分な効果が得られない場合に限る).

用法・用量■通常,成人にはミチグリニドカルシウム水和物(以下,ミチグリニド)として1回10mgを1日3回毎食直前(5分以内)に経口投与する.

書評

あなたとともに よい医療を

著者: 岡田定

ページ範囲:P.1453 - P.1453

 この本は,「日本の医療と教育をいかに変革すべきか」の提言書です.ご存じ日野原先生と,日野原先生の愛弟子福井先生との対談です.日野原先生はどうしていつもあんなにバイタリティにあふれているのだろう? 新臨床研修制度が開始されたが,どうすれば本物の教育ができるのだろう? 日本の医療はこんなままでいいはずはない.今後どうすればいいのだろう? このようなあなたの疑問に答えるメッセージ集です.

 医療に携わって70年,しかもその1日1日に圧倒的な密度がある人生.その日野原先生のメッセージを受け止め,切り返すことは尋常な技ではありません.総合診療・EBMの推進者で医学教育の改革者でもある福井先生という稀有な対談者を得て,日野原先生はまさに水を得た魚です.革新的なメッセージが次々と飛び出します.

こどもの検査値ノート 第2版

著者: 濱崎直孝

ページ範囲:P.1580 - P.1580

 「こどもの検査値ノート」が7年ぶりに改訂された.臨床検査の領域で働いていて感じさせられることは,医療のさまざまな領域で新生児,小児に関する部分への配慮が,一般的に足りない点である.例えば,近年,発達著しい臨床検査分析機器についても,小児専用機器の開発は皆無であるといっても過言ではない.また,検査項目についても,現行の医療保険制度のなかで保険適用として収載されている臨床検査項目を概観してみると,新生児の遺伝性疾患に必須な検査項目が収載されていなかったりする.一方で,代表的な生活習慣病である糖尿病などについては,手厚くさまざまな角度から検討できるように検査項目が充実している.さらに,第2版の序文に編集者が書いておられるが,日本人小児の臨床検査に関する専門書がほとんどないのも,新生児,小児医療への関心の薄さを示している1つの反映であるのだろう.そのようななかで小児医療に長年携わってこられた戸谷,宮坂,白幡の諸先生方が編纂されている「こどもの検査値ノート」は非常に貴重なものである.

 この本はポケットサイズで小児医療にかかわっている方々の白衣のポケットに収められるもので,常時携帯可能であること,また検査項目が臨床化学,内分泌,免疫,血液,凝固項目などについてはもちろんのこと,尿,髄液についても,さらには生理検査までも含んでいることから,この1冊があれば,日常の新生児,小児の診療には不自由はしないはずである.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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