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雑誌目次

雑誌文献

medicina42巻3号

2005年03月発行

雑誌目次

今月の主題 Digital時代の脳神経画像診断 Editorial

Digital時代の脳神経画像診断

著者: 寺山靖夫

ページ範囲:P.346 - P.347

ポイント

画像情報のほとんどがdigital化され,異なった機種・機器による画像を誰でも簡単に一つのソフトウェア(viewer)で閲覧できるようになった.

PACS(picture archiving and communication)やRIS(radiology information system)などの画像転送処理システムの発達は,実質的な遠隔診断を可能にした.

しかし同時に,個人情報の管理・セキュリティ・画像のねつ造防止などに関するモラルと理解がすべての医師に求められる時代であることを認識しなければならない.

Digital時代の画像診断 【画像診断システムの進歩】

新しい画像システム―PACS(picture archiving and communication system)とRIS(radiology information system)

著者: 野崎博之 ,   一條真琴

ページ範囲:P.348 - P.350

ポイント

PACSとは医療画像診断装置(モダリティ)からの検査画像を電子的に保存,検索,解析する画像データベースシステムを指し,RISは放射線科部門内における診療予約,診断結果のレポート,実績管理,材料在庫管理などの情報管理を行うためのシステムのことである.

PACS導入によるフィルムレス運用は,電子カルテの普及とともに,現行のフィルム診断では得られなかったメリットがあり,今後の放射線診断に変革をもたらす可能性のある方法である.

共通画像フォーマットと画像の編集閲覧システム(viewer)

著者: 安藤裕

ページ範囲:P.352 - P.356

ポイント

医用画像のフォーマット(データ形式)は,DICOMが広く使用されている.

ファイルのヘッダーに患者情報や検査情報が含まれており,画像診断に適している.JPEGやGIFでは,これらの情報を保持することができない.

画像表示するには,ビューワ(viewer)と呼ばれるソフトを使用し,サーバーから画像転送と表示する機能をもっている.

画像をCRTや液晶表示装置(LCD)などモニターで表示するときには,シャーカステンに比べてモニター画面が暗いため,部屋の明るさを暗くする必要がある.

遠隔診断

著者: 加藤克彦 ,   石垣武男 ,   古賀佑彦

ページ範囲:P.357 - P.359

ポイント

遠隔医療とは,映像を含む患者情報の伝達に基づいて遠隔地から診断,指示などの医療行為および医療に関連した行為を行うことである.

遠隔診断とは,医療機関からX線CT,MRI,CR,SPECT, PETなどのデジタル画像を放射線専門医に伝送して,診断を行い,高度医療の要望に応えるものである.

【画像診断機器の進歩】

CTとMRI

著者: 百島祐貴 ,   藤原広和

ページ範囲:P.361 - P.363

ポイント

多列検出器型CTの登場,MRIにおけるパラレルイメージングの普及などに伴い,特にここ数年,CT,MRIの高速化が著しい.

その結果,検査時間の短縮はもとより,従来の装置では得られなかった精細な生体情報が得られるようになる一方,大量に発生するデジタルデータの扱いなど,新たな問題も生み出されている(表1).

核医学

著者: 松田博史

ページ範囲:P.365 - P.367

ポイント

PETでは,BGO(ビスマスゲルマニウムオキサイド)に代わって,高感度で高い信号対雑音比(SN比)を得られるLSO(ルテチウムシリコンオキサイド)やGSO(ガドリニウムシリコンオキサイド)シンチレータが導入された.

新しいシンチレータの導入により,スライス間にセプタを用いない高感度の三次元収集が低雑音で可能となった.

PETとCTを組み合わせた装置が開発され,CTによる吸収補正と解剖学的情報の同時取得が可能となった.

超音波機器

著者: 星野晴彦

ページ範囲:P.369 - P.371

ポイント

超音波により,断層法で形態的な変化と,ドプラ効果を利用した血流を検討することができる.

血流情報を同時に描出できるカラーフローイメージングが,現在一般的に用いられている.

超音波は頸動脈の狭窄病変,プラーク,内膜中膜肥厚などの検討以外に,心臓,大動脈病変,頭蓋内血管病変にも臨床応用されている.

【Digital時代の画像検査に必要なもの】

病診連携,院内連携の重要性

著者: 橋本洋一郎 ,   米村公伸 ,   内野誠

ページ範囲:P.372 - P.375

ポイント

急性期病院では各種画像診断,特にMRI(拡散強調画像を含む)がスムーズに,かつ24時間稼働できなければならない.

かかりつけ医にとっては,画像+専門医の診察の2つが必要である.

急性期病院の脳神経画像診断が地域全体で活用できる病診連携の構築が必要である.

医療経済と画像診断検査―DPC対応と正統な医療

著者: 岡田靖

ページ範囲:P.376 - P.378

ポイント

DPCでは画像検査は包括評価されるため,入院検査から外来検査へシフトする傾向がある.しかし急性期脳梗塞などでは,病態に応じた入院画像検査が求められる.

クリティカルパス導入の徹底と病院施設基準の向上により,必要に応じて画像検査を施行する正統な急性期医療を目指すべきである.

内科医として知っておきたい画像診断法 【画像診断の基礎知識と進歩】

単純X線検査(嚥下造影検査を含めて)

著者: 町田徹

ページ範囲:P.379 - P.382

ポイント

頭部単純X線撮影もデジタル化の波に乗り,CR化,DR化が図られた.特にFPDでは動画も撮影可能である.

頭部単純X線撮影はMDCTに取って代わられつつあり,その役割は減少しているが,頭蓋骨病変の診断や術前後の評価に一定の役割を果たしている.

3D-angiographyなどの三次元画像は,患者への説明や手術のシミュレーション,教育などに非常に重要である.

CT

著者: 那須政司

ページ範囲:P.383 - P.385

ポイント

MDCT(multi-ditector row CT)では薄いスライスを作成可能なため,高精密な画像を短い検査時間で撮影可能である.

造影剤を使用することで血管造影なみの画像が作成できるが,投与法にも新しいアプローチが必要である.

検査時間が短くなるが被曝は増加する傾向にあり,注意が必要である.

MRI

著者: 柳町徳春

ページ範囲:P.387 - P.389

ポイント

MRIは生体の水素原子から得られる,T1(縦緩和時間),T2(横緩和時間),プロトン密度,流れ,拡散の情報をもとにして画像を作成する.

MRIは濃度分解能に優れ,放射線被曝もない検査であり,脳神経疾患では第一選択の画像検査である.しかし,心臓ペースメーカーや人工内耳など検査禁忌の場合もある.

MRI用のGd造影剤は,同製剤に対するアレルギーの既往は絶対禁忌,気管支喘息は原則禁忌である.

Functional MRI

著者: 小林正人

ページ範囲:P.390 - P.392

ポイント

functional MRIは運動,言語活動,感覚認知などを行う際の脳の活動部位を画像化し,脳の機能局在を明らかにする検査法である.

造影剤や核種を投与する必要はなく,放射線も使用しないため非侵襲的な検査法である.

本法では神経細胞群の興奮に伴う血流変化を検出するため,脳の活動を間接的に観察している.

拡散テンソル tractgraphy

著者: 青木茂樹 ,   増谷佳孝 ,   阿部修

ページ範囲:P.394 - P.397

ポイント

MRIの拡散テンソル画像により,脳白質の方向および障害の程度が解析できる.

拡散テンソルtractographyでは,特定の白質路の描出が可能となる.

さらに,描出(抽出)した特定の白質路の障害の程度を定量的に評価できる.

錐体路などでは,梗塞の予後予想,脳腫瘍手術の際のナビゲーション上での描出など,臨床応用も始まっている.

種々の疾患において,従来の画像法で検出困難であった脳白質路の障害が検出可能となる.

脳卒中診療における神経超音波検査

著者: 古井英介 ,   山田正仁

ページ範囲:P.398 - P.401

ポイント

神経超音波検査の主目的は,動脈硬化の評価,動脈の狭窄・閉塞診断,塞栓源検索,微小栓子シグナルの検出,深部静脈血栓の検出にある.

超音波診断装置のフルデジタル化による画質向上にとどまらず,神経超音波の分野にもさまざまな新技術が加わっている.

脳血流代謝測定検査(Xe-CT)

著者: 傳法倫久 ,   野川茂 ,   大木宏一

ページ範囲:P.402 - P.406

ポイント

Xe-CTは装置が比較的安価で,CTがあればどの施設でも施行可能な,診療報酬に収載された検査法である.

Xe-CTは,脳血流量を定量的に測定でき,基底核,白質など脳深部の血流評価も可能なうえ,空間分解能と解剖学的部位との対応が良好でくり返し測定が行える.さらに,Xeの血液脳分配係数(λ)も測定できる検査法である.

Xe-CTは,救急患者からさまざまな脳神経外科・神経内科的疾患患者への応用が利く検査法であり,今後ともますますの発展が期待される.

CT灌流画像とMR灌流画像

著者: 佐々木真理 ,   及川博文

ページ範囲:P.407 - P.409

ポイント

CT灌流画像,MR灌流画像は,CT/MRI造影剤を用いる即時性に優れた脳循環検査である.

両者は原理,検査法,解析法に共通点が多いが,相違点も少なくない.

diffusion-perfusion mismatchは簡便な指標だが,課題も多い.

いずれも施設間,装置間の格差が大きく,標準化が急務である.

脳血管造影検査

著者: 近藤竜史

ページ範囲:P.410 - P.412

ポイント

脳血管造影は,頸部血管にカテーテルを挿入して行う選択的造影検査法である.

脳血管造影の合併症は,塞栓症,造影剤アレルギー,穿刺部皮下血腫などである.

脳血管造影は,非侵襲的検査で診断や治療方針決定が可能な場合は施行すべきではない.

脳血管造影は診断技術としては非侵襲的検査にその座を譲りつつあるが,治療技術への応用で急速な進歩を遂げている.

CTAと3D angiography

著者: 平井俊範 ,   山下康行

ページ範囲:P.415 - P.417

ポイント

一般に,MR angiography (MRA)が脳血管障害のスクリーニング,CT angiography (CTA)がその次の精査法として日常臨床に多く用いられている.

CTA,3D angiographyは脳動脈瘤の治療前評価において瘤および親動脈の三次元的な観察ができ有用である.

CTA,3D angiographyの読影には撮像法,表示法,臨床応用での利点・欠点をよく理解することが必要である.

【神経学的緊急症に対する画像診断の進め方】

意識障害

著者: 田村乾一 ,   小泉大造 ,   寺山靖夫

ページ範囲:P.418 - P.420

ポイント

意識障害例における来院時の画像検査の第一選択は頭部CTであり,頭部外傷や出血性脳血管障害では頭部CTが確定診断となる.

MRI拡散強調画像は撮像時間が約5分と短く,意識障害例にも安全に行える.

意識障害例への対応では,画像診断のみならず多方面から総合的に診断する必要がある.

麻 痺

著者: 齊藤博彦 ,   長田乾

ページ範囲:P.421 - P.427

ポイント

病歴聴取・神経学的所見(麻痺の型,合併症状)から診断に必要な画像検査を考える.

超急性期虚血性病変の検出には,MRI拡散強調画像(DWI)が有用である.

脳卒中と間違いやすい疾患には,てんかん,占拠性脳病変,代謝性・中毒性疾患などがある.

失語,構音障害

著者: 高嶋修太郎

ページ範囲:P.428 - P.430

ポイント

優位半球前頭葉のBroca野が障害されると,言語による表現ができない運動性失語になる.

優位半球側頭葉のWernicke野が障害されると,言語や文字を理解できない感覚性失語になる.

構音障害は,口唇,舌,咽頭などの筋肉やそれを支配する神経の障害で起こる.

ラクナ梗塞では,pure dysarthria syndromeやdysarthria clumsy hand syndromeを呈する場合があり,診断にはMRIの拡散強調画像(diffusion weighted imaging:DWI)が有用である.

痙 攣

著者: 石橋靖宏 ,   寺山靖夫

ページ範囲:P.432 - P.434

ポイント

痙攣はconvulsion,spasm,cramp,myoclonusに分類される.

脳腫瘍によるてんかんはoligodendroglioma(乏突起細胞膠腫)やastrocytoma(星状細胞腫)に多く,むしろglioblastoma(膠芽腫)に少ない.

内側側頭葉硬化(MTS)はMRIでは主として海馬の萎縮と,T2強調像,FLAIR像の高信号として捉えられる.

皮質形成異常のMRI所見として皮質白質間の境界不明瞭化,皮質の肥厚,隣接する白質高信号が見られる.

複 視

著者: 小原克之

ページ範囲:P.436 - P.438

ポイント

動眼神経麻痺で瞳孔散大を伴っている場合には,内頸動脈後交通動脈分岐部動脈瘤を考える.

外転神経麻痺に三叉神経痛を伴う場合は,錐体尖端部が病巣である.

海綿静脈洞病変では動眼神経,滑車神経,外転神経,三叉神経第1枝が障害される.

核間性眼筋麻痺は脳血管障害または多発性硬化症が原因である.

めまい

著者: 服部学 ,   山脇健盛

ページ範囲:P.440 - P.442

ポイント

めまいの鑑別にあたっては,耳科的あるいは神経学的所見が最も重要であり,画像診断はあくまで補助的検査であることを念頭に置く.

テント下病変を中心に検索するため,スクリーニングには頭部MRI検査が有用である.

症候的に末梢性めまいが考えられる場合でも脳血管障害のことがあり,拡散強調画像を含めたMRIを施行する.

脳実質だけでなく,内耳道や前庭神経にも注意する.

頭 痛

著者: 三原正敏

ページ範囲:P.443 - P.446

ポイント

頭痛診療のポイントは,早急な治療が必要な二次性頭痛をいかに見逃さないかという点にある.

くも膜下出血などの脳内病変を有する二次性頭痛の診断にはCT,MRIなどの画像診断がきわめて有用である.

脳病変がない二次性頭痛に画像診断は有用ではなく,問診などの詳細な診察が重要である.

頭部外傷

著者: 鈴木範行 ,   横山高玲 ,   間中浩

ページ範囲:P.448 - P.450

ポイント

受傷直後は頭部単純X線,頭部単純CTが有用であり,次いで可能な範囲で早期に頭部MRIを行う.

頭部単純X線撮影では,正面・側面・Towne法(および顔面外傷にはWaters法)を行う.

頭部単純CTは通常のプリントに加え,頭蓋骨条件のプリントが有用である.

頭部MRIは,CTでは捉えにくい損傷や微細な損傷の検査として,可能な限り行う.

痴呆,高次脳機能障害―『急にぼけた』ときの画像診断

著者: 高橋智 ,   寺山靖夫

ページ範囲:P.451 - P.454

ポイント

痴呆か否かは認知機能障害の程度と社会生活および日常生活への適合性をもとに診断する.そのうえで,鑑別すべき疾患および病態を考えて画像診断を組む.

原因疾患鑑別の補助診断法として,画像診断の有用性が蓄積しつつある.特に,画像統計解析は,痴呆性疾患の病初期の鑑別に有用な場合がある.

【脳神経疾患を疑ったとき行うべき画像診断】

脳梗塞を疑ったとき

著者: 髙尾昌樹

ページ範囲:P.455 - P.458

ポイント

最も大事なことは,脳梗塞を疑うこと.

バイタルサインの確認などに加え,きちんと神経所見をとり,病巣を絞り込むこと.

頭部CTは短時間で施行でき,出血との鑑別を容易に行える.

MRIは早期から虚血病巣を描出できる.しかし専門家による画像読影が必要になることも多い.

脳血流をみる画像検査も有効と思われるが,専門的施設に限られる.

一般臨床の場ではCT,可能であればMRIを施行し,治療を開始するべきである.さまざまな検査に追われて治療開始が遅れたり,患者の状態を見失ってはならない.

脳出血を疑ったとき

著者: 黒田清司

ページ範囲:P.460 - P.463

ポイント

脳出血ではCT scanが診断上最も有用であり,CTでは高吸収域を呈し,血腫量,進展部位など容易に診断可能である.

出血原因の検索には,MR血管撮影やCT血管撮影が有用である.

若年者の脳出血では,脳動静脈奇形を疑い血管撮影を進める.

MRIを用いて神経線維の走行と連続性を評価する3DAC法がある.

くも膜下出血・未破裂動脈瘤を疑ったとき

著者: 小笠原邦昭

ページ範囲:P.464 - P.465

ポイント

臨床症状からくも膜下出血が疑われたなら,緊急でCTを行う.

CTでくも膜下出血が確定診断ができない場合には,MRIにてFLAIR像を撮像する.

無症候性未破裂動脈瘤がMRAなどにて偶然に発見されたならば,次にCTAを行い,診断を確定する.

脳腫瘍を疑ったとき

著者: 岡本浩一郎 ,   古澤哲哉 ,   石川和宏

ページ範囲:P.466 - P.468

ポイント

臨床的に脳腫瘍が疑われる場合や,脳腫瘍の有無を調べるためには,組織コントラスト分解能のよいMRIを撮像する.

X線CTや MRIを撮像する場合,造影を行うことで診断精度が大きく向上する.

MRIを撮像する場合,可能であれば拡散強調像を追加する.

MRIで病変を認めた場合には,横断像に加え冠状断像や矢状断像を撮像する.

脊髄・脊椎疾患を疑ったとき

著者: 石井賢 ,   千葉一裕 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.470 - P.473

ポイント

脊椎・脊髄疾患の診断にMRIの有用性は高いが,骨性変化を捉えるには単純X線やCTが優れている.

退行変性疾患の場合,画像所見と症状は必ずしも相関しない.

急性麻痺を生じた症例では,特に転移性腫瘍の可能性を念頭に置き,至急MRIやCTを施行し,手術を含めた適切な処置を行う.

脳炎・髄膜炎を疑ったとき

著者: 米澤久司 ,   寺山靖夫

ページ範囲:P.474 - P.477

ポイント

髄膜炎・脳炎は画像診断のみでは診断できないが,さまざまな感染症で特徴的な画像を呈する.特徴を知ることで早期診断に結びつく可能性がある.

膿瘍はMRIの拡散強調像で高信号を呈する.

真菌類では血管周囲に病巣を形成しやすい.

単純ヘルペス脳炎では側頭葉が好発部位であり,SPECTでは高集積を呈する.

脱髄疾患を疑ったとき(多発性硬化症,ADEMなど)

著者: 深浦彦彰

ページ範囲:P.478 - P.480

ポイント

中枢神経の白質に多発して出現する病変だが,時として灰白質に及ぶことがある.

診断にはMRIが用いられ,CTでは脱髄病変の十分な鑑別は困難である.

MRIのT2強調画像,FLAIRにて高信号領域として描出され,急性期にはGd-DTPAにて造影される.

画像上は病変として存在するが,臨床症状を認めないsubclinicalな病変が存在する.

Parkinson病を疑ったとき

著者: 佐藤千久美

ページ範囲:P.481 - P.483

ポイント

Parkinson病の診断は,①振戦,②筋固縮,③無動,④姿勢・歩行障害などの特徴的な臨床症状の組み合わせと進行性の経過,L-DOPAへの反応性をもとに行う.

画像検査は,振戦が目立たない例やL-DOPAに対する反応性が乏しい例など,非定型的なパーキンソニズムを呈する例で,パーキンソニズムを呈する他疾患との鑑別の補助診断として有用である.

代謝性脳症を疑ったとき

著者: 野川茂

ページ範囲:P.484 - P.488

ポイント

Wernicke脳症では,頭部MRI T2強調あるいはFLAIR画像で,乳頭体,視床背内側核,中脳水道周囲の灰白質に高信号域を認める.

肝性脳症では,頭部MRI T1強調画像で淡蒼球に高信号域を認める.門脈-大循環性脳症の診断に,腹部MRAや造影CTが有用である.

糖尿病性舞踏病では,頭部MRI T1強調画像で対側の被殻に高信号域を認める.

理解のための37題

ページ範囲:P.489 - P.496

聖路加国際病院内科グランドカンファレンス(9)

発熱と咳嗽,黄疸を主訴とする45歳女性

著者: 古川恵一 ,   川口武彦 ,   湧田健一郎 ,   真下陽子 ,   町田弘子 ,   平林真介 ,   冨本彩子 ,   小野宏 ,   飛田拓哉 ,   松迫正樹 ,   出雲博子 ,   岡田定 ,   蝶名林直彦 ,   松井征男 ,   西村直樹

ページ範囲:P.497 - P.506

川口(司会) それでは本日のグランドカンファレンスを始めます.湧田先生,プレゼンテーションをお願いします.

症例呈示

 湧田(担当医) 症例は45歳の女性.翻訳家で,米国と日本を行ったり来たりしているということです.主訴は発熱と咳嗽,黄疸です.

 現病歴,既往歴などを以下に示します.

演習・小児外来

〔Case16〕 浮腫と乏尿を主訴として来院し,高度蛋白尿を指摘された3歳男児 〔Case17〕遷延する発熱と歯肉の腫脹が認められた2歳男児

著者: 亀井宏一 ,   飯島一誠 ,   横田俊一郎

ページ範囲:P.508 - P.511

 症 例:3歳,男児.

 主 訴:眼瞼浮腫,乏尿.

 既往歴・家族歴:特記すべきことなし.

 現病歴:2004年11月9日,眼瞼浮腫と乏尿に気づいた.10日,近医にて蛋白尿と血尿を指摘され,当科へ紹介入院となった.先行感染などは認めていない.

 身体所見:身長93cm,体重15.5kg(+2.5kg),血圧106/60mmHg,体温36.5℃.活気はまずまずだが,食欲なく,やや嘔気を認める.眼瞼と下腿に浮腫著明.

連載

目でみるトレーニング

著者: 峠岡康幸 ,   小出隆司 ,   渡辺慎太郎

ページ範囲:P.514 - P.521

問題 400

 症 例:74歳,女性.

 主 訴:発熱,血痰.

 既往歴:特記事項なし.

 家族歴:特記事項なし.

 生活歴:喫煙歴なし,ペットの飼育なし.

 現病歴:数週間前から,37℃台の微熱と黄色粘性痰を伴う湿性咳嗽が持続していたが放置していた.当科受診の3日前から38℃前後の発熱が出現し,数回にわたり血痰を認めたことから,当科を受診し入院した.

危険がいっぱい―ケーススタディ・医療事故と研修医教育 第3回

金曜日の夜の酔客

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.522 - P.525

今回の症例は,金曜日の夜に病院の救急入口にうずくまっているところを発見され,病院に運び込まれた,52歳の男性である.

 アリス(司会役) では今日の症例を始めます.エディ先生,お願いします.

 エディ(症例提示役) 患者は既往歴不明の52歳男性,主訴は意識障害です.警備員が,救急入口にうずくまっているのに気付きました.その前に,酔っ払いのような声を聞いたそうですが,金曜日の夜でもあり,特に気に留めなかったとのことです.自力では立てず,仕方なく,皆でベッドに運びました.バイタルは,GCS(Glasgow Coma Scale)10,脈拍102,呼吸数18,血圧114/66,酸素飽和度98%と安定していたので,ポケットにあった銀行のキャッシュカードの名前でカルテを作り,バイタルと基本的血液検査だけして生食点滴で様子を観察していました.以下,救急のカルテの記述をもとに述べます.僕はその場にいなかったので.

「デキル!」と言わせるコンサルテーション 第3回

コンサルテーションは真剣勝負

著者: 川畑雅照

ページ範囲:P.526 - P.529

初期研修の病棟でのコンサルテーションの一場面

(水曜日の夕方6時,外科病棟のナースステーションを訪れた呼吸器内科医と外科の研修医の会話)

■専門医:「コンサルテーションの出ていた患者さん診に来たんだけど」

●研修医:「ありがとうございます.術前の患者が呼吸困難を訴えておりまして,対処法についてご意見をお聞きしたくてお願いしました.患者さんは,72歳の男性で……」

(今回は要領よくプレゼンを始めたが……)

■専門医:「で,喫煙歴は?」

●研修医:「聞いていません」

■専門医:「なに? じゃ,聴診所見は?」

●研修医:「えーっと入院時に聞いたはずだけど……あれっカルテに書いてないな……」

(大汗かきながら,汚い字で書きなぐられたカルテをめくりますが,見つかりません)

■専門医:「酸素飽和度か血液ガスのチェックはしたのか?」

●研修医:「いや,まだ……」

■専門医:(少しあきれ顔で)「それで,ちゃんとCOPDを鑑別したのか?」

●研修医:「いえ,腎機能は正常で,腹膜透析はしていません」

■専門医:「バカヤロウ! CAPDじゃなくてCOPDだ! 少しは考えてコンサルトしろ!」

 専門医に診てくださいと,お願いすることが,コンサルテーションではないことは,これまで解説したとおりです.単なる診療依頼なら医師でなくてもできます.知識と経験のある医師が行うコンサルテーションは,ただの診療依頼とは違ったものでなければならないはずです.

 この“ダメ・レジ”君も,今回は少し要領を得てプレゼンは上手にできたようでしたが,後はボロボロ…….また専門医の先生に叱られていましたね.そこで,今回は,実際にコンサルテーションは周到な準備を要することと,研修医にとって大変教育的な場面なので心して臨まなければならないことについて少し解説します.

しりあす・とーく 第3回テーマ

内科医とプロフェッショナリズム―(前編)

著者: 大生定義 ,   大野博司 ,   金城紀与史 ,   野村英樹

ページ範囲:P.530 - P.538

社会状況の変化に伴い,医療を取り囲む環境は厳しさを増している.また,医療の進歩・複雑化により,患者・家族,そして医師が,治療の選択・実施の場面で,困難な決断を迫られる場面も増えてきた.医療が法廷で争われるケースも増え,医療と社会の関係にゆがみが生じている.いま,医師は何を考え,何をなすべきなのか? 診療と研修の最前線を担う4人の医師たちに,「プロフェッショナリズム」をキイワードに語っていただいた.

■大生 本日は,「内科医とプロフェッショナリズム」というテーマでディスカッションをしたいと思います.私は,大学を卒業後,聖路加国際病院で臨床研修を行い,さらに内科医としての研鑽と研修医教育を十数年行った後,4年間,産業医をしながら臨床疫学を勉強した時期を経て,現在,横浜市立市民病院で研修医のプログラム責任者をしておりますが,日々の診療や研修医の指導を行うなかで,やはり,プロフェッショナリズムということを考えざるを得ないと感じています.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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