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雑誌目次

雑誌文献

medicina42巻4号

2005年04月発行

雑誌目次

今月の主題 これだけは知っておきたい不整脈の診かたと治療のポイント 不整脈の扉

不整脈の分類と機序について

著者: 池田隆徳

ページ範囲:P.548 - P.552

ポイント

不整脈とは,正常洞調律以外の調律と定義される.

不整脈は徐脈性不整脈と頻脈性不整脈に大別され,頻脈性不整脈はさらに上室性不整脈と心室性不整脈に分けられる.

徐脈性不整脈の機序は,刺激生成能の低下あるいは伝導の途絶・遅延である.

頻脈性不整脈の機序には,リエントリ,異常自動能,激発活動があるが,不整脈が持続する場合の機序はリエントリである.

リエントリは解剖学的な基盤がなくても機能的に成立することは可能で,細動はこれによる代表的な頻脈である.

わが国における心臓突然死の実態

著者: 立花栄三 ,   長尾建

ページ範囲:P.554 - P.556

ポイント

わが国の院外心停止の患者は年々増加傾向にある.そのうち約60%は心原性によるものと推測されている.

心肺停止例の心電図所見は,①心室細動または無脈性心室頻拍,②無脈性電気活動,③心静止の3型に分類される.

心室細動の割合は目撃者ありかbystander CPRがある場合,高い.

心室細動または無脈性心室頻拍は,無脈性電気活動や心静止に比べその予後は良いと報告されている.

危険性の高い不整脈とは

著者: 相庭武司 ,   清水渉

ページ範囲:P.558 - P.562

ポイント

不整脈の危険性を判断するには,その基礎心疾患を知る必要がある.

心室頻拍では持続または繰り返し出現,レートが速い,多形性のものは危険性が高い.

心筋症や低心機能患者で偶然見つかった非持続性心室頻拍などは突然死リスクの判断に苦慮する場合が多い.

緊急に対応すべき不整脈とは

著者: 林明聡 ,   小林義典

ページ範囲:P.564 - P.568

ポイント

不整脈の発生に伴い意識障害,低血圧,心不全,狭心症をきたしている場合や,治療の遅れによりそのような状況に至る可能性が高いものは緊急治療の適応となる.

心室細動はできる限り早期の電気的除細動が必要であり,時間が経過して心静止となると心迫再開は困難である.

症状のある徐脈性不整脈では直ちにアトロピン投与や経皮的ペーシングで治療を開始し,引き続いて経静脈ペーシング治療を行う.

不整脈の診かた

患者から聴くべきポイント

著者: 杉薫

ページ範囲:P.569 - P.571

ポイント

不整脈の診断は心電図で行われるが,その重症度は自覚症状によって決まる.

発作性頻拍は突然始まり,しばらく持続して突然停止する.

徐脈によるめまいや失神は前駆症状を伴わずに急に生じる.

頻脈によるめまいや失神は直前に動悸や頻脈感を自覚していることが多い.

症状と身体所見からわかること

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.572 - P.575

ポイント

徐脈でも頻脈でも動悸を訴える.動悸時の鼓動が速いか遅いかで徐脈性不整脈と頻脈性不整脈の鑑別ができる.また,突然始まり持続する頻脈の場合は発作性頻拍症で,徐々に脈拍が速くなる場合は洞性の頻脈である可能性がある.

動悸発作が急に始まりValsalva法などの迷走神経緊張手技により突然停止する場合は,一般に房室結節の関与する上室性頻拍(房室結節リエントリ性頻拍あるいはWPW症候群などに伴う房室回帰性頻拍)の可能性が高い.

不整脈はしばしば全身疾患あるいは器質的心疾患の症状として現れることがある.また,薬剤の副作用として出現する場合もあるため,服薬状況も含めた詳細な病歴聴取が必要である.

失神などの重篤な症状をきたす場合は,QT延長症候群,肥大型心筋症,Brugada症候群など心室性不整脈の合併しやすい疾患の家族歴がないかどうかも重要である.

基礎疾患と不整脈との関連性

著者: 酒部宏一 ,   福田信夫 ,   田村禎通

ページ範囲:P.577 - P.579

ポイント

不整脈を診る場合は心電図診断のみならず,その基礎疾患の診断が重要である.

不整脈の発生には心疾患のみならず,電解質異常,内分泌疾患,薬剤,神経系の異常,ストレスなど,全身のさまざまな要因が関与している可能性がある.

放置してよい不整脈と治療を要する不整脈

著者: 池主雅臣 ,   阿原静枝 ,   伊藤正洋

ページ範囲:P.580 - P.582

ポイント

基礎心疾患がなく心機能が正常の症例の期外収縮は,症状がなければ治療を要さない.

非持続性心室頻拍の臨床的意義は症例の病態によって異なる.

洞不全症候群の治療は原則として有症候性例に対して行われる.

無症候性で慢性化した右脚ブロック,左脚ブロック,二枝ブロックは経過観察することができる.

検診時に見落としてはならない心電図異常

著者: 住友直方

ページ範囲:P.584 - P.588

ポイント

健診で見落としてはならない心電図は無症状の心電図異常である.房室ブロックを合併した心房頻拍,心室期外収縮,カテコラミン誘発性心室頻拍,心室頻拍,QT延長症候群,WPW症候群,完全右脚ブロック,完全左脚ブロック,高度および完全房室ブロック,洞不全症候群,Brugada症候群,肥大型心筋症,拡張型心筋症,不整脈源性右室心筋症,心房中隔欠損,原発性肺高血圧などの心電図の特徴を挙げ,診断のポイントを解説した.

不整脈診断の進め方

ホルター心電図の適応と判読するうえでのポイント

著者: 水牧功一

ページ範囲:P.590 - P.592

ポイント

ホルター心電図は,標準12誘導心電図では記録されにくい一過性の頻脈性および徐脈性不整脈の診断に有用である.

ホルター心電図は,不整脈に関連した症状の評価や無症状の器質的心疾患例における心事故のリスク評価を目的とする.

上室性不整脈の自動解析の精度は高くないため,心拍数トレンドグラムや実波形を参照して判読する必要がある.

運動負荷心電図の適応とその評価法

著者: 四倉正之

ページ範囲:P.594 - P.595

ポイント

運動は不整脈の発生機序に密接に関係しており,運動によりあらゆる不整脈が誘発されうる.

心室性期外収縮は運動時に最も多くみられる不整脈であり,健常人にもみられるが虚血性心疾患例に有意に多く,虚血性心疾患例では重症例により出現しやすい.

運動による心室性期外収縮の増減と虚血性心疾患の有無に関連性はない.

専門病院で行われる不整脈の検査法

著者: 丹野郁

ページ範囲:P.596 - P.598

ポイント

late potential(LP)は,伝導遅延となりうる不整脈基質の存在を示唆する.

T-wave alternans(TWA)は,再分極過程の不均一性の指標である.

heart rate variability(HRV)は,不整脈の調節因子である自律神経機能評価法のひとつである.

薬物負荷試験の適応とその意義

著者: 林英守 ,   住吉正孝

ページ範囲:P.600 - P.602

ポイント
Ⅱ度以上の潜在性房室ブロックの誘発に硫酸アトロピンやIa群抗不整脈薬が静注で用いられる.

房室ブロックの誘発では,薬物負荷(特にIa群抗不整脈薬)により心停止が誘発される危険があるため,心室ペーシングが行われる状況下で施行すべきである.

I群(IaまたはIc)抗不整脈薬の静注負荷によりBrugada症候群に特有の心電図所見(coved型ST上昇)が出現もしくは著明となり診断に有用である.

Brugada症候群のI群抗不整脈薬負荷では心室細動が誘発されることがあるため,電気的除細動器のスタンバイが必須である.

心臓電気生理学的検査でわかること

著者: 円城寺由久

ページ範囲:P.604 - P.606

ポイント

心臓電気生理学的検査は不整脈の診断,治療方針の決定に有用である.

観血的検査であり,適応を十分踏まえたうえで手技に望むべきである.

本法による不整脈の正確な診断は,根治療法としてのカテーテルアブレーションを行ううえで重要である.

薬物治療の実際

抗不整脈薬の使い方と注意点

著者: 村川裕二

ページ範囲:P.607 - P.609

ポイント

I群抗不整脈薬とはNa+チャネル遮断作用に付随的な作用を組み合わせたもの.

純粋なNa+チャネル遮断薬はピルジカイニド,純粋なK+チャネル遮断薬はニフェカラント.

房室結節伝導の抑制はまずベラパミルかβ遮断薬を選択する.

催不整脈作用としてK+チャネル遮断はtorsades de pointesを,Na+チャネル遮断は心房粗動と関連する.

不整脈治療におけるβ遮断薬の適応とその意義

著者: 難波経豊

ページ範囲:P.610 - P.612

ポイント

β遮断薬は,心拍数コントロールと,交感神経緊張が関与する頻脈性不整脈の予防に使用される.

高齢者や徐脈傾向・気管支喘息などを認める患者にはISA(+)やβ1選択性のβ遮断薬を選択する.

β遮断薬の投薬中止は,数日かけて漸減のうえ中止する.

先天性QT延長症候群へのβ遮断薬投与は必須であり,後天性への投与は禁忌である.

異型狭心症へのβ遮断薬投与は禁忌である.

発作性心房細動・上室性頻拍に対する薬物選択

著者: 福田有希子 ,   高月誠司

ページ範囲:P.613 - P.615

ポイント

発作性心房細動の治療は,個々の患者背景によって判断する.

発作性上室性頻拍の予防には,カテーテルアブレーション術が第一選択である.

致死性ではない不整脈に,むやみに薬剤を投与することは,重篤な副作用を発現させたり,逆に生命予後を悪化させうることを忘れてはならない.

心房細動の心拍数調節療法の適応とその方法

著者: 品川香

ページ範囲:P.616 - P.618

ポイント

ジギタリスは左室機能低下例の心房細動では第一選択となる.

交感神経が緊張した状態では,ジギタリスの心拍数調節効果には限界があり,Ca拮抗薬,β遮断薬の併用が必要である.

基礎心疾患のない場合にはCa拮抗薬,β遮断薬が第一選択となる.

Ca拮抗薬,β遮断薬では心不全や低血圧の発生に注意が必要である.

不整脈と抗凝固薬:その適応と管理

著者: 清水宏紀

ページ範囲:P.620 - P.623

ポイント

心房細動の治療のなかで抗凝固療法は重要であり,リスクを評価し治療戦略を立てる必要がある.

TIA(transient ischemic attack,一過性脳虚血発作)や脳梗塞の既往,高血圧,糖尿病,冠動脈疾患,うっ血性心不全があればワルファリンの内服が必要である.

PT-INRを指標にワーファリゼーションを行うが,食事,薬物の影響を受けやすく患者教育が重要である.

高齢者,腎・肝不全例,妊娠例での薬物選択のコツ

著者: 山根禎一

ページ範囲:P.624 - P.627

ポイント

高齢者の抗不整脈治療では,背景となる成因,刺激伝導系の退行変性などを広く考慮に入れて治療を行う必要がある.肝・腎機能障害時には抗不整脈薬の使用量の調節が必要であり,各薬剤の代謝排泄パターンを把握したうえで使用する.腎機能障害例では血清クレアチニン値を指標とし,肝機能障害例では主に血清ビリルビン値を指標として投与量を調節する.原則としてすべての抗不整脈薬は妊婦と胎児に対して毒性をもつと考えなければならない.

非薬物治療の適応

ペースメーカの適応となる徐脈性不整脈

著者: 山之内良雄

ページ範囲:P.628 - P.630

ポイント

ペースメーカの適応疾患:臨床症状を有する洞不全症候群・徐脈性心房細動,第2度,高度または第3度房室ブロック.症状との関連が明らかでない場合は,心停止3.0秒以上または補充調律の心拍数が40 bpm未満が目安.失神が回避不能もしくは著しく生活を規制する心臓抑制型の頸動脈洞症候群と血管迷走神経性失神.著しい心室内伝導障害を伴う薬剤抵抗性の難治性心不全に,両心室ペーシングが有効.

徐脈性不整脈に対する薬物治療:アトロピン,イソプロテレノールおよび交感神経作働薬テオフィリン,シロスタゾールなど.

カテーテルアブレーションで根治可能な不整脈

著者: 鵜野起久也 ,   宮本憲次郎

ページ範囲:P.632 - P.638

ポイント

カテーテルアブレーションは房室結節を回路に有する上室性頻拍ではほとんどの症例で根治可能である.

多源性心房頻拍では根治成績はやや低く,アブレーション部位が房室結節にきわめて近い場合は禁忌となる.

心室性頻拍では,特発性心室頻拍の根治成績はきわめて高いが,心臓疾患に合併する心室頻拍では種々の理由で根治成績はやや低い.

ICD(植込み型除細動器)の適応

著者: 安藤献児 ,   延吉正清

ページ範囲:P.639 - P.642

ポイント

ICDは致死的心室性不整脈に対する最も確実な治療法である.

ICDの適応となる不整脈は,血行動態の破綻する心室細動・持続性心室頻拍や心機能低下を伴う非持続性心室頻拍の一部である.

現在,欧米では不整脈の有無をICDの適応に問わない大規模臨床試験の結果が発表され,ICDの適応拡大が行われている.

AED(自動体外式除細動器)とACLS(advanced cardiovascular life support)

著者: 角地祐幸 ,   栗田隆志

ページ範囲:P.643 - P.645

ポイント

心室細動・無脈性心室頻拍では早期除細動が必須である.

AEDは機械が不整脈を自動解析することで,誰でも簡単に操作ができるように開発された除細動器である.

AEDは循環のサインのない心室細動・無脈性心室頻拍の脳蘇生を実現するにはきわめて重要な装置で誰もが使用できる体制が必要である.

AED使用の際の特殊な状況に対応する知識が必要である.

不整脈診療のQ&A

期外収縮はどのような場合に治療すべきか

著者: 松井由美恵

ページ範囲:P.646 - P.648

ポイント

基礎心疾患・心機能低下の有無を確認する.

健常人にみられる期外収縮の予後は良好であり,薬物治療は症状が強い場合のみに行う.

期外収縮を起こす誘因があれば除去する.

基礎心疾患,心機能低下例では致死的不整脈への移行,心機能・血行動態への悪影響があれば薬物治療の適応.

心機能低下例では抗不整脈薬による心機能抑制と催不整脈性が問題になる.

心筋梗塞急性期に出現する心室性期外収縮(PVC)は心室頻拍や心室細動へ移行しやすいので治療が必要.

陳旧性心筋梗塞例のPVCに対してはCASTの報告から,Ⅰa,Ⅰc群抗不整脈薬の投与は一般的に禁忌.

持続性心房細動の除細動の適応について

著者: 熊谷浩一郎

ページ範囲:P.649 - P.650

ポイント

持続性心房細動の除細動の適応は,①心房細動の心拍数が100/分以上で,ショックなど緊急を要する場合,②心拍数が99/分以下で,発症後48時間以内の場合,③発症後48時間以上で,左心耳内血栓がない場合,④心房細動の持続が1年以上,左房径が5cm以上,過去の除細動歴が2回以上,という条件をもたない場合である.

抗不整脈薬の中止は可能か,そのタイミングは

著者: 加藤武史 ,   山下武志

ページ範囲:P.651 - P.652

ポイント

不整脈の原因が除去できれば,抗不整脈薬を中止して様子をみることが望ましい.

発作性心房細動の慢性化を完全に抑制することは現状では難しく,無効となった抗不整脈薬の投与を漫然と続けることは,予後の悪化につながる可能性がある.

昔から抗不整脈薬を投与されている症例のなかには,最近のエビデンスでは投与の適応ではなくなっている場合がある.

薬剤によって出現する不整脈とその治療

著者: 庭野慎一 ,   佐々木紗栄

ページ範囲:P.653 - P.656

ポイント

薬剤投与によって不整脈が引き起こされる現象を催不整脈作用と呼ぶ.

催不整脈作用は,すべての抗不整脈薬,抗うつ薬,マクロライド系抗菌薬などによって出現する可能性がある.

催不整脈作用の予測には定期的な心電図記録が有用である.

催不整脈作用出現時は,原因薬剤を中止し,増悪因子を補正する.

食生活,飲酒,喫煙,運動などの生活指導をどうすべきか

著者: 髙橋尚彦

ページ範囲:P.657 - P.659

ポイント

睡眠時無呼吸症候群には頻脈性(心房細動,心室頻拍)および徐脈性不整脈(洞性徐脈,洞停止,房室ブロック)が合併しやすい.

少量から中等量の適度な飲酒はむしろ好ましいが喫煙は避けるべきである.

心不全患者では,適度な運動は心不全を改善しQOLを向上させる.

心身ストレスを蓄積させないことが重要である.

ペースメーカ・ICD患者の日常生活と診療上の注意点

著者: 奥山裕司

ページ範囲:P.660 - P.662

ポイント

デバイスへの影響が懸念される機器・環境に近づかないという指導が重要である.

デバイス植込み後間もない時期には局所感染に注意する.

ICDではデバイス内に記録されている不整脈および治療履歴を検討し,適切に修正を加える.

ICDに対する誤解や知識不足は精神的ストレスを増大させる原因となるため,適切な情報提供を行う.

専門医にコンサルトすべき不整脈とは

著者: 出口喜昭

ページ範囲:P.663 - P.665

ポイント

不整脈の治療は突然死の予防とQOL(生活の質)改善にある.

突然死予防という意味で心室細動・心室頻拍・心停止の予防が重要で,これら致死性不整脈への移行を,いかにして予知し,治療,予防するかが重要である.

疑いがあれば,速やかに専門医にコンサルトするべきである.

突然死を予測することは可能か

著者: 渡辺淳

ページ範囲:P.666 - P.668

ポイント

心臓性急死には急性疾患に伴うものと既存心疾患を背景とするものがある.

突然死リスクのある病態を理解し,リスクが最小となる治療を考慮する.

慢性心不全や陳旧性心筋梗塞などでは常に突然死のリスクを考慮し,失神などの前兆を見逃さないようにする.

座談会

心臓突然死をどのようにして防ぐか

著者: 松田直樹 ,   五十嵐正樹 ,   笠巻祐二 ,   池田隆徳

ページ範囲:P.671 - P.680

池田 本日は,「心臓突然死をどのようにして防ぐか」というテーマで,ディスカッションをしたいと思います.

最近の循環器系学会の多くの企画セッションで取り上げられておりますように,心臓突然死は現代医学における最も重要なテーマの1つとなっています.心臓突然死は,心臓に何らかの器質的心疾患を有する患者で発現しやすいといわれておりますが,そうではない病態においても発現することが知られています.

理解のための32題

ページ範囲:P.681 - P.688

東大病院内科研修医セミナー 1

ネフローゼ症候群をきたしたALアミロイドーシスの症例

著者: 橋本彩 ,   伊豆津宏二

ページ範囲:P.690 - P.693

Introduction

ALアミロイドーシスとはどのような病気で,どのような際に疑うか?

ALアミロイドーシスによる症状の改善,予後の改善を目指すにはどのような治療が適切か?

しりあす・とーく 第4回テーマ

内科医とプロフェッショナリズム―(後編)

著者: 大生定義 ,   金城紀与史 ,   野村英樹 ,   大野博司

ページ範囲:P.694 - P.702

前回に続き,「プロフェッショナリズム」をめぐって行われた本企画では,医師と社会とのかかわりがクローズアップされた.

 医師は社会とどうコミュニケーションしていったらよいのか? 社会に対してプロフェッショナルとしての責任をどう果たしていくのか? 社会状況の変化,医学の進歩により,医療そのものも大きく変容していくなか,これらの難問にどう答えるか,その糸口を探っていただいた.

職能団体の役割

医学会と社会とのコミュニケーション

■大生 社会の中での医療ですから,いろいろなところで社会との連携も葛藤もあると思います.いまも,ピアレビューの話が出ましたが,社会との関係を解決していくにあたって,社会が医師側にどのようなことを望むか,あるいは医師側が社会に対して何を望むかということを踏まえながら,どのようなことが必要か,考えていかなくてはならないと思います.

危険がいっぱい―ケーススタディ・医療事故と研修医教育 第4回

外来検査中に呼吸困難をきたした老婦人

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.704 - P.708

今回の症例は,軽い糖尿病以外特に既往なく,血尿の精査のための膀胱鏡施行中に突然呼吸困難をきたした78歳女性である.

 ジニー(症例提示役) 本日の症例は,軽い糖尿病以外特に既往なく,血尿の精査のための膀胱鏡施行中に突然呼吸困難をきたした78歳女性です.

 アリス(司会役) 外来手術センター(注1)は病院に隣接してるんですが,ある日の午後,そこから循環器のフェロー(後期研修医)に緊急呼び出しがかかりました.CCU研修医も一緒に駆けつけました.血尿精査のための膀胱鏡を受けていた78歳の女性が,手技を開始して間もなく,突然呼吸困難を起こしたのです.

「デキル!」と言わせるコンサルテーション 第4回

コンサルテーションのピットフォール

著者: 川畑雅照

ページ範囲:P.710 - P.712

お昼の職員食堂でそれは始まった

(お昼の職員食堂.食事中の研修医の横に専門医が座って会話が始まりました.)

■専門医:「久しりぶりだな.総合内科は忙しいか?」

●研修医:「ええ,相変わらずで……ところで,先生,酸素を吸入しても呼吸が苦しいって訴えるときは,どうすればいいんですか?」

■専門医:「PaCO2は? 精神的なものでも苦しくなることはあるから,外来の神経質な患者さんにはマイナー・トランキライザーを出すこともあるね……」

(と言いかけて,彼は向いに座った別のドクターに話しかけられて「いやぁ,そうなんだよ.うちの科も最近急患が多くって…」と別な話題となりました.)

(そして,その日の深夜,専門医の自宅の電話が鳴りました.)

●研修医:「先生,お昼にコンサルテーションした患者さんですが,深夜から急に呼吸状態が悪くなって……」

■専門医:「なに? そんなコンサルテーション受けた覚えないぞ!しょうがない,とりあえず行くから」

(そして,患者さんを診た専門医は仰天しました.高炭酸ガス血症をきたしたCOPDに呼吸抑制の強い抗不安薬と高濃度酸素が投与されて下顎呼吸になっていたのです.)

■専門医:「バカ野郎! こんな患者に酸素10l吸わせたうえに,セルシンなんか点滴するやつがいるか! すぐ,挿管の準備だ!」

●研修医:「え,えーっ……」

“昼飯コンサルト”をしない

 別名“食堂コンサルト”,私たちの病院では“虎亭コンサルト”とも言われていますが,昼飯を食べながら研修医が上級医あるいは専門医にコンサルテーションすることです.

病理との付き合い方 病理医からのメッセージ(1)

医療のなかの病理学

著者: 下正宗

ページ範囲:P.714 - P.718

診断学の要としての病理学

 日本人の死因統計が厚生労働省から毎年発表されるが,その第一位は悪性新生物,すなわち「がん」である.がんの診療がどのように組み立てられているかを考えてみよう.

 がん発見の契機は,症状を自覚しての受診と健康診断がある.自覚症状のある場合には進行がんの場合が少なくない.一方,健康診断は早期がんの発見,それに続く治療が目的である.

演習・小児外来

〔Case18〕間歇的な心窩部痛と嘔吐が認められた7歳男子

著者: 小鍛治雅之

ページ範囲:P.719 - P.722

症 例:7歳7カ月,男子.

 主 訴:腹痛・嘔吐.

 現病歴:8月23日昼食に唐揚げ・ハンバーグを食べた.夕食前より腹痛が出現,夕食は少し食べられたが,その後嘔吐が出現し頻回のため,夜,当院救急外来を受診した.また,下痢はなかった.

 現 症:体温36.7℃.直立姿勢で歩行し入室.顔色やや蒼白.心肺の異常なし.発疹なし.診察中も胃液様の嘔吐あり.腹部:軟・平坦・腸雑音亢進・腫瘤触知せず・心窩部に圧痛および自発痛.

連載

目でみるトレーニング

著者: 渡邊正司 ,   水野史朗 ,   岩崎靖

ページ範囲:P.723 - P.729

問題 403

 症 例:84歳,女性.

 主 訴:左半身のしびれ感,口唇のしびれ感.

 既往歴:脳血管性痴呆,脳梗塞.

 現病歴:養護老人施設入居中,朝から左半身のしびれ感,口唇のしびれ感出現し,怒りっぽくなり,施設の介護職員が普段と様子が違うことに気付き本人と一緒に受診.歩行で外来診察室へ入る.

 現 症:血圧92/60mmHg,脈拍84/分・整.冷汗,不穏状態あり,側胸部から左腋窩に漸減性の収縮期心雑音およびⅢ音が聴かれる.肺野にラ音なく,下腿浮腫を認めない.神経学的異常所見を認めない.

書評

標準感染症学 第2版

著者: 山口惠三

ページ範囲:P.619 - P.619

 21世紀に入り,地球環境の変化はさらに加速されてきているように思える.経済先進諸国のみならず,中国,ASEANなどにおける近年の急速な国土開発や経済発展は,大気や海洋汚染を生み出し,地球温暖化の1つの大きな要因ともなっている.一方,世界人口の対数的増加傾向は依然としてとどまるところを知らず,必然的に弱小国においては貧困と飢饉の問題に直面し,衛生状態の悪化を招いている.また,交通網の充実や東西冷戦構造の崩壊は,世界のグローバル化を生み,モノやヒトの大規模な流通や交流が活発となっている.

 このような社会的背景の変化が感染症の世界にも大きな影響を与えつつある.SARS,AIDS,エボラ出血熱のように忽然として出現した新しいウイルス性感染症,忘れ去られた感染症の再燃,そして感染性蛋白“プリオン”による感染症─狂牛病(BSE;牛海綿状脳症)など,20世紀後半からみられるようになったいわゆる新興再興感染症の出現は,まさに社会的要因の投影であると言っても過言ではない.21世紀に入ると,これまで存在した薬剤耐性菌はさらに多剤高度耐性を獲得し,世界中に蔓延している.そして,これらの病原体に起因した院内感染症は抗菌薬療法に抵抗性を示し,臨床上大きな問題となり,抗菌薬の適正使用が叫ばれている.

糖尿病診療事典 第2版

著者: 立川倶子

ページ範囲:P.631 - P.631

 今般,『糖尿病診療事典(第2版)』が医学書院から出版された.本書は1996年初版以来,糖尿病診療にかかわるすべての医療スタッフに重宝された『糖尿病治療事典』の改訂第2版である.

 今回,「診断基準」,「病型分類」を時代に即したものに一新し,「経口薬療法」を全面改訂,「インスリン療法」,「食事療法」の章をはじめ160名の執筆者による最新の情報が記載されている.編集代表者の繁田幸男先生(滋賀医科大学名誉教授)の第2版の序によると「糖尿病に関する考えられる限り広範にわたる項目を再検討し,最新の知識を提供した」とある.書名も「糖尿病診療事典」に改題したものである.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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