icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina42巻5号

2005年05月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医が診る関節リウマチ 関節リウマチをどう考えるか

関節リウマチの病因・病態

著者: 沢田哲治

ページ範囲:P.738 - P.739

ポイント

RAは遺伝素因を有する個体に環境因子が作用することで発症する.

RAの遺伝素因としてHLA-DR分子が重要であるが,PADI4などHLA-DR以外の疾患感受性遺伝子が報告されている.

RAの成因に関して「T細胞仮説」と「サイトカイン仮説」がある.

関節リウマチの疫学,自然歴

著者: 黒坂大太郎 ,   山田昭夫

ページ範囲:P.741 - P.743

ポイント

わが国では女性100人に1人の割合で関節リウマチに罹患する.決して稀な疾患ではない.

発症の型は緩徐発症型,急性発症型,中間型に分類できる.

経過は単周期型,多周期型,進行型に分類できる.

死因としては一般と比べて感染症が多い.

関節リウマチの診療ガイドライン

著者: 中山健夫

ページ範囲:P.745 - P.748

ポイント

厚生労働科学研究によって,EBM(根拠に基づく医療)の手法を用いた関節リウマチの診療ガイドラインが作成された.本稿ではその作成プロセスの概略を紹介する.

診療ガイドラインの目的は「適切な判断を行うための,臨床医と患者の支援」であり,個々の臨床的判断を拘束するものではない.

本ガイドラインが広く,適切に用いられることで,リウマチ臨床の向上が期待される.

リウマチ治療薬の経済評価

著者: 津谷喜一郎 ,   五十嵐中

ページ範囲:P.750 - P.754

ポイント

関節リウマチの年間コストは直接コストが約2,400億円,間接コストが約4,700億円,合わせて約7,100億円と推計される.

高価な生物学的製剤はRAの薬剤費を押し上げるが,その他のコストの削減によって全体の疾病コストの伸びを抑制できる可能性がある.

RA生物学的製剤については,有効性・安全性・経済性すべてを考慮に入れた薬剤経済評価が今後の課題である.

関節リウマチ患者の診かた

関節リウマチの診断

著者: 江口勝美

ページ範囲:P.755 - P.757

ポイント

ACR1987年改訂分類基準は,RAの早期診断には不適である.

RAを早期診断し,早期から積極的に治療することが推奨されている.

関節炎発症から関節破壊が出現するまでの期間を“window of therapeutic opportunity”と呼称されている.

抗CCP抗体はIgM-RFと比較してRAの特異度が高い.

関節MRI検査でみられる骨侵蝕像は,単純骨X線で検出される骨侵蝕像より数年先行してみられる.

関節の診かた(physical examination)

著者: 大村浩一郎 ,   高杉潔

ページ範囲:P.758 - P.760

ポイント

関節の診察技術を身につけることが,リウマチ早期診断の鍵である.

全身の関節をきちんと診察していくことが,患者の関節機能予後の好転につながりうる.

常に関節に触れ続ける姿勢を保つことが,診察技術を向上させる秘訣である.

関節の画像診断

著者: 佐川昭 ,   成田明宏 ,   辺見美穂子

ページ範囲:P.762 - P.765

ポイント

画像診断は,病態の把握に加え,近年は早期RA診断のためや,生物学的製剤による関節破壊進行の抑制や改善の所見を評価する手法へと変化してきている.

超音波機器は近年の進歩により軟部組織の詳細や血流の程度まで把握することが可能になり関節病変の分析に有用である.

MRI法の利点は,軟部組織,骨髄病変,組織の性状評価や,任意の断面の観察が可能で,X線被曝がないことであり,早期RA発見にも有用である.

関節リウマチの鑑別診断

著者: 簑田清次

ページ範囲:P.766 - P.768

ポイント

関節所見のみではなく,全身的症状を把握し鑑別するように心がける.

疾患に特徴的な自己抗体を測定し,鑑別に利用する.

CRPに代表される急性期蛋白や関節,脊椎,骨盤のX線を参考にする.

関節液を採取し,その内容物を調べる必要がある.

外来でのフォローのしかた

著者: 近藤啓文 ,   飯塚進子

ページ範囲:P.769 - P.771

ポイント

RAの早期診断が早期DMARDs治療を可能にする.

DMARDsの治療効果判定は3カ月後に客観的に行う.

副作用のモニタリングは治療開始早期に重点的に行う.

妊娠,感染症の早期発見に努める.

関節リウマチの疾患活動性の評価 予後,経過をいかに予測するか

著者: 松田剛正

ページ範囲:P.772 - P.774

ポイント

体重減少,発熱,朝のこわばり時間,易疲労感は疾患活動性の指標となり,関節炎の程度と分布は薬物治療の選択と身体機能予後の指標となる.

関節外症状をもつRAは生命予後が悪いので,専門医にコンサルトする.

血液検査としてのCRP,赤沈,SAAで炎症度を評価し,MMP-3は6~12カ月後の骨破壊予測因子である.

関節リウマチ患者の生活の質(Quality of Life)評価

著者: 佐藤元

ページ範囲:P.777 - P.779

ポイント

従来,疾患管理に用いられてきた臨床症状や検査所見は,患者の日常的身体機能やQOLと時に乖離する.

関節炎/RAに特化したQOL評価尺度としてはAIMSあるいはHAQが広く用いられている.

AIMS/HAQを用いたADL/QOL評価はアメリカリウマチ学会のRA活動性評価のためのコアセット項目の一つに取り入れられ,またOMERACT/ILARもQOLを判定基準とした治療/介入を推奨している.

関節リウマチの治療 【総論】

最近の関節リウマチ治療の考え方

著者: 宮坂信之

ページ範囲:P.780 - P.782

ポイント

関節リウマチの治療目標は,QOLの向上から関節破壊の防止へと変わりつつある.

NSAIDsの役割はDMARDsを使うまでの「橋渡し」である.

治療当初より積極的にDMARDsを使用することで,関節破壊の進行を遅延させることができる.

活動性の高い症例には,積極的にメトトレキサート(MTX)の使用を考慮する.

MTX抵抗性の場合には,生物学的製剤の使用を考慮する.

関節リウマチ患者に病気をどのように説明するか

著者: 織部元廣

ページ範囲:P.783 - P.785

ポイント

関節リウマチの受容は若年者ほど期間を要す.

初診医師の告知のいかんで,その後の心の推移が決まる.

生涯を見据えた治療説明が必要.

生涯にわたる治療説明に必ず希望を盛り込む.

【薬物療法】

抗リウマチ薬総論

著者: 川端大介 ,   三森経世

ページ範囲:P.786 - P.788

ポイント

抗リウマチ薬はRAの診断より3カ月以内の使用開始が推奨される.

抗リウマチ薬の特徴は有効性や副作用の個人差,遅延性の効果発現,二次無効である.

抗リウマチ薬選択の際は疾患活動性,臓器障害,合併症を考慮する.

抗リウマチ薬のなかでメトトレキサート,サラゾスルファピリジン,レフルノミドは国際的エビデンスが明確である.

非ステロイド抗炎症薬と関節リウマチ

著者: 高崎芳成

ページ範囲:P.790 - P.792

ポイント

NSAIDsはシクロオキシゲナーゼの阻害によりプロスタグランジンの産生を抑制し,鎮痛,解熱,消炎症作用をもたらす.

関節破壊を防止する作用はないが,患者のADLやQOLを改善するのに有用で,今日でも最初に使用される第一選択薬とされている.

薬剤の特性に基づき,一連の副作用の軽減を目指した適切な使用を行う.

メトトレキサートをいかに上手に使用するか

著者: 鈴木康夫

ページ範囲:P.793 - P.795

ポイント

活動性の高い若年例では第一選択DMARDとして使用する.

葉酸を適宜併用すれば高用量まで使用でき,有効率が上昇し,著効例が増加する.

致死的副作用である骨髄障害,間質性肺炎,感染症の予防には禁忌や危険因子の認識とモニタリングが重要である.

抗リウマチ薬と副作用

著者: 広畑俊成

ページ範囲:P.796 - P.799

ポイント

ブシラミンの主な副作用は,ネフローゼ症候群,白血球減少,間質性肺炎である.

メトトレキサートの主な副作用は,骨髄抑制,肝障害,胃腸障害,間質性肺炎である.

レフルノミドの間質性肺炎は致死率が高いことから,十分注意する必要がある.

ステロイド薬は関節リウマチに使用すべきか

著者: 大島久二 ,   田中郁子

ページ範囲:P.800 - P.802

ポイント

ステロイド薬には,強力な抗炎症・鎮痛効果のほか,骨関節破壊の抑制効果がある.その一方,少量でも長期投与による重篤な副作用がみられる.

関節リウマチの治療にステロイド薬は欠かせないが,常に最小限の使用量と副作用に対する予防・対処が必要である.

生物学的製剤の現状

著者: 関口直哉 ,   竹内勤

ページ範囲:P.803 - P.805

ポイント

生物学的製剤導入により高い臨床効果,関節破壊抑制効果が得られることが報告されている.

MTXと併用すると,よりいっそう高い臨床効果,関節破壊抑制効果を示すことが実証されている.

生物学的製剤使用ガイドラインに則る使用が重要である.

関節リウマチの薬効評価

著者: 川合眞一

ページ範囲:P.806 - P.808

ポイント

関節リウマチ(RA)の薬効評価には,RA炎症の評価と結果としての関節破壊の評価がある.

RA炎症の評価としては,アメリカリウマチ学会の基準(ACR20など)とヨーロッパリウマチ学会の基準(DAS28など)が汎用されている.

関節破壊の評価は,最近ではSharpスコア変法が用いられることが多い.

【専門医へのコンサルトが必要な病変・病態】

関節リウマチの肺病変

著者: 田中良一

ページ範囲:P.810 - P.813

ポイント

RAに伴う肺病変は多彩であり,また薬剤性肺炎や肺感染症の鑑別も必要である.

RAに伴う肺病変では各種検査とその経過より,活動性を把握する.活動性があり,病変が進行性なら治療を行うが,副作用に常に留意する.特に圧迫骨折,日和見感染が重要である.

関節リウマチの眼病変

著者: 高村悦子

ページ範囲:P.814 - P.815

ポイント

眼合併症の症状として,充血,眼痛を伴うものが多い.

軽度の充血や眼の不快感が慢性的に続くドライアイでは,防腐剤無添加人工涙液を開始し,症状の改善がなければ眼科受診を勧める.

著明な充血や眼痛や視力低下を伴う場合は,強膜炎や角膜潰瘍を疑い,眼科での診察が必要となる.

関節リウマチの皮膚病変

著者: 滝脇弘嗣

ページ範囲:P.816 - P.818

ポイント

リウマトイド結節は肘~前腕伸側面に好発するドーム状の硬い皮下結節である.

リウマトイド血管炎は紫斑,潰瘍,網状皮斑などを呈する壊死性血管炎である.

そのほかに知られている特異疹の臨床像は多彩で疾患特異性に乏しい.

組織像のキーポイントは血管炎,好中球浸潤,膠原線維変性,肉芽腫形成である.

関節リウマチの腎病変

著者: 三村俊英

ページ範囲:P.819 - P.821

ポイント

血清クレアチニン値正常でもRA患者は腎機能低下している可能性がある.

蛋白尿を呈するRA患者の生命予後は不良の可能性がある.

RA患者の腎障害は複雑で多彩である.

薬剤中止しても改善しない腎障害は専門医にコンサルトする.

潜在的腎機能低下患者に対するメトトレキサート処方は慎重に行う.

悪性関節リウマチとは

著者: 保田晋助 ,   小池隆夫

ページ範囲:P.822 - P.825

ポイント

悪性関節リウマチとは,血管炎をはじめとする関節外症状を伴う活動性が高く難治性の関節リウマチである.

さまざまな症状,重症度を呈し,強力な免疫抑制療法や集学的治療を必要とする場合がある.

診断の時点で専門家にコンサルトすることが望ましい.

Felty症候群

著者: 岩崎剛 ,   佐野統

ページ範囲:P.826 - P.828

ポイント

Felty症候群は関節リウマチ,脾腫,白血球減少を3主徴とする疾患で,好中球減少による感染症を合併し予後不良である.

下腿潰瘍,肺線維症,リウマチ結節などの血管炎による関節外症状が強い.

治療は副腎皮質ステロイドが中心である.摘脾,免疫抑制剤,G-CSFなどの治療法も試みられているがいまだ確定的なものはない.

Sjögren症候群

著者: 住田孝之

ページ範囲:P.830 - P.832

ポイント

Sjögren症候群は自己免疫疾患の一つであり,全身の多彩な症状を呈する.

関節の疼痛,腫脹をきたす疾患であり,関節リウマチとの鑑別が大切である.

診断には内科的検査,眼科的検査,耳鼻口腔外科的検査が必要となるので,リウマチ専門医への紹介が必要な疾患である.

関節リウマチの手術とタイミング

著者: 斎藤修 ,   龍順之助

ページ範囲:P.833 - P.835

ポイント

関節リウマチに対する手術法を理解する.

罹患部位によって推奨される術式が異なることを理解する.

手術適応とタイミングを理解する.

関節リウマチ患者のリハビリテーション

著者: 村田紀和

ページ範囲:P.836 - P.838

ポイント

RAに対するリハビリテーションの主な目的は,疼痛の緩和,障害された機能の回復・保持・補助,変形の予防・矯正を通して,生活活動を維持・改善することである.

日常的に関節を見て触る習慣を身につけることが大切である.

RAでは初期から末期まで疼痛,関節拘縮,筋力低下,関節の変形に対して各患者に即したきめ細かいリハ指示,指導が必要である.

緊急を要する状況への対応

関節リウマチ患者が咳,呼吸困難を訴えて来院したら

著者: 東浩平 ,   山田秀裕 ,   尾崎承一

ページ範囲:P.840 - P.842

ポイント

DMARDsやステロイドの使用により易感染性が最も重要な問題である.

薬剤性肺障害の可能性を考え,DMARDsやNSAIDsの使用を中止する.

時に致命的な経過をとる症例があるため,速やかに必要な画像的,組織学的,血清学的検索を行い,迅速に治療を開始する必要がある.

関節リウマチ患者が発熱,腹痛,下痢,血圧低下を訴えて来院したら

著者: 古形芳則 ,   中澤隆 ,   熊谷俊一

ページ範囲:P.843 - P.845

ポイント

まずは一般的な疾患を念頭に置き,対処すべきである.

次に関節リウマチに頻度の高い合併症を考える.

ステロイド薬使用中の患者では副腎不全を念頭に置くべきである.

副腎不全を疑った場合は治療を優先する.

関節リウマチ患者が急速に進行する痙性麻痺を呈したら

著者: 星地亜都司

ページ範囲:P.846 - P.848

ポイント

頸椎病変による脊髄性麻痺か脳血管障害をまず疑う.・頸部安静を指示し速やかに専門医にコンサルトする.

トピックス

関節リウマチの新しい血清マーカー

著者: 中島亜矢子 ,   山中寿

ページ範囲:P.850 - P.851

ポイント

関節リウマチの診断には,臨床経過や臨床所見を正確に把握することが第一である.

関節リウマチの診断には,いくつかの検査所見を総合して検討する必要がある.

関節リウマチの活動性の病勢把握に赤沈,CRPとともにMMP-3は有用である.

関節リウマチの診断には抗CCP抗体は有用である.

介護保険,支援費,公的補助

著者: 山口昌夫

ページ範囲:P.852 - P.854

ポイント

身体障害者福祉法の福祉サービスの一部が高齢者の介護保険制度と障害者の支援費制度に移行された.

介護保険が優先されるが,障害の質・量によっては他の制度を使用できる.

介護保険の見直しで介護予防事業と施設の自己負担増が計画されている.

早くも支援費制度の財源不足が生じている.

RA患者の福祉サービスの利用が少ない.

理解のための34題

ページ範囲:P.856 - P.862

しりあす・とーく 第5回テーマ

終末期医療と医師の倫理―(前編)

著者: 尾藤誠司 ,   田中まゆみ

ページ範囲:P.864 - P.874

いわゆる「終末期医療」における,判断や医療行為には,医師の間にも「コンセンサス」と呼べるものが存在するとは言えず,医療現場の医師たちが,激しい葛藤と苦悩にさらされることも少なくない.また,「延命治療」や「延命治療の中止」に関する一般市民,メディアの関心は高まっており,医療界としても何らかの対応が求められている.

 いま,医師は「終末期医療」について何を考え,何をしなければならないのか? 診療・研修指導の第一線で活躍する2人の医師に,「終末期医療と医師の倫理」をテーマに語っていただいた.

延命治療―臨床現場からの問い

■尾藤 私は,研修医時代を長崎で過ごしました.普賢岳の噴火があったころで,まさに救命救急の火事場の中いるような感じでした.そこで,生命ということについて考えるところがあり,ジェネラリストを目指そうと思い,後期研修で東京の病院へ来ました.

危険がいっぱい―ケーススタディ・医療事故と研修医教育 第5回

不妊治療後に腹部膨満と腹痛をきたした32歳女性

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.876 - P.880

今回の症例は、不妊治療を受けてほどなく腹部膨満と腹痛をきたし、産婦人科主治医の指示で救急受信した32歳の女性である。

 アリス(司会役) 本日の症例は,不妊治療後,腹部膨満と腹痛をきたした32歳女性です.

 ダン(症例提示役) 生来健康な32歳の女性が,不妊治療を受けてほどなく,腹部膨満と腹痛をきたし,産婦人科主治医の指示で救急受診しました.

東大病院内科研修医セミナー 2

骨形成不全症の一例

著者: 浦野友彦 ,   大内尉義

ページ範囲:P.882 - P.886

Introduction

骨形成不全症とは,どんな病気でどんなときに疑うか?

骨形成不全症に対する薬剤の効果をどのように評価するか?

「デキル!」と言わせるコンサルテーション 第5回

最終的に決めるのは主治医!

著者: 川畑雅照

ページ範囲:P.888 - P.890

初期研修の病棟でのコンサルテーションの一場面

(進行肺癌末期の77歳の患者さんが,痛みと左片麻痺を主訴に入院しました.これまでの数々の失敗からコンサルテーションの要領を得た研修医は矢継ぎ早にコンサルテーション依頼を書き始めました)

■指導医:「昨日の肺癌の患者さんの治療方針だが……」

●研修医:「麻酔科にコンサルテーションしたら,まず神経ブロックを行うようにとの返事でした」

■指導医:「うむ……」

●研修医:「臨床腫瘍科に相談した結果,今日からイレッサ®を開始しました」

■指導医:「えっ?」

●研修医:「あと,昨日の頭部CTで脳転移が見つかったので,脳外科にコンサルトしたところ,可能なら手術したほうがいいとのコメントで,手術の予定を組んでもらいました」

■指導医:「何!?」

●研修医:「それから,小球性の貧血がありましたので,消化器内科の先生に聞いたら,消化管出血を否定するなら内視鏡が必要とのことで,今週末に上部,来週に下部の内視鏡をお願いしてあります」

■指導医:「本当か!?」

●研修医:「あと,少し目が見にくいとのことで,この後,眼科の受診も……」

■指導医:「バカヤロウ! 何でもコンサルトして,その通りにやればいいってもんじゃないだろ! 患者さんの話をちゃんと聞いたのか!? 患者さんは,安らかな最期を迎えたいという希望で入院されたんだ! 手術や内視鏡は即刻キャンセルだ!」

 コンサルテーションでも何度となく怒鳴られた“ダメ・レジ”君も,ようやく病棟業務に慣れてきました.確かに,速やかに問題点を抽出し,タイミングを逃さず,スムーズなコンサルテーションができていたはずだった(?)のですが,また,指導医に怒鳴られてしまいました.今回はどんなところに失敗の原因があったのでしょうか?

病理との付き合い方 病理医からのメッセージ(2)

病理医とは

著者: 立山義朗

ページ範囲:P.892 - P.896

森永正二郎氏(元 東京都済生会中央病院病理科,現 北里研究所病院病理科)が大衆月刊誌に『誰も知らない「病理医」の話』を発表して以来,もう10年以上になるが,いまだに病理医と聞いても料理(?)医と首をかしげたり,病院で何をしている医師(?科)なのかについて知らない人が多いことを実感する.ところが50年近く前にすでに,病理医(病理学者)を主人公としたアーサー・ヘイリー作の小説『最後の診断』(永井 淳訳,新潮文庫,1975年,残念ながら絶版)が発表されている.あらためて読み返してみると,日本の病理医を取り巻く現状とほとんど変わっていないことに気づく.前回の『医療のなかの病理学』で説明されたように,病理医は患者の病理診断を下すことが最も重要な務めである.そして,多くの病理医は組織標本を見ながらいつも患者のことを思い浮かべつつ診断している.ところが,目の前にその患者がいないので,患者のために病理診断を行ったと言っていても,本当は実感が乏しいことも否定はできない.もしも,患者から病理診断の説明を病理医に求められることが一般化すれば,「われわれ病理医は患者のためにいったい何ができるのか」を今以上に親身になって考えるのではなかろうか.それがひいては病理部門が臨床標榜科につながっていくものと信じている.本稿では,他の執筆者の内容とあまり重複しないように,日常の一般病院での病理医の姿を通して病理医の現状を説明し,病理と病理医の魅力について述べてみたい.

病理医の定義と現状

1. 病理医とは

 病理医(pathologist)とはその名の通り,「病理学」を専門にする医師である.病理医も大学の医学部を卒業し,医師国家試験に合格して医師免許証をもち,患者に医療行為を施すことが法的に許されている.一方,病理学(pathology)とは,「病気で異常になったところ(病変部という)を目で見て(肉眼的観察),顕微鏡でさらに詳しく見て(顕微鏡的観察),どういう状態なのかを論理的に記述する学問」である.この手法を形態学(morphology)ともいう.つまり,病理医は病変部の形態学的異常を見つけて,病気の診断(病理診断)をする医師である.もしも何科の医師かと聞かれれば,内科や外科といったおなじみの科ではないけれども,近い将来「病理診断科(仮)」と胸を張っていえるときが来ることを心待ちにしている.

連載

目でみるトレーニング

著者: 龍瀧憲治 ,   小出隆司 ,   黒瀬祐子 ,   土山芳徳

ページ範囲:P.897 - P.903

問題 406

 症 例:70歳,男性.

 主 訴:心窩部痛.

 既往歴:30歳代;虫垂炎手術.

 現病歴:2003年12月28日夕方,気分不良あり吐血した.その後,心窩部痛が増悪したため救急車で前医に搬送されたが,当院救命救急センターに紹介,搬送された.

 現 症:意識清明,体温36.3℃,脈拍69回/分,血圧93/39mmHg.結膜貧血・黄疸(-).腹部板状硬,上腹部に圧痛(+)・反跳痛(-),腸雑音減弱.

聖路加国際病院内科グランドカンファレンス(10)

四肢の関節痛を主訴とした39歳独身のミャンマー人男性

著者: 岡田定 ,   和田匡史 ,   平林真介 ,   山本博之 ,   内山伸 ,   児玉知之 ,   松井征男 ,   林田憲明 ,   西村直樹 ,   古川恵一 ,   出雲博子 ,   衛藤光 ,   辻荘市 ,   蝶名林直彦 ,   藤田善幸 ,   西崎統 ,   山田美貴 ,   氣比恵 ,   有馬慶太郎 ,   兼元みずき

ページ範囲:P.904 - P.915

岡田(総司会) 今週のグランドカンファレンスを始めます.プレゼンテーションをお願いします.

症例呈示

 平林(担当医) 症例は独身の39歳男性,ADL(日常生活動作)は自立,ミャンマー国籍ですが日本在住6年のキリスト教会牧師です.主訴は四肢の関節痛.現病歴,既往歴を以下に示します.

演習・小児外来

〔Case19〕 頻回の下痢で脱水症状をきたした10カ月男児

著者: 渡辺克也

ページ範囲:P.917 - P.919

症 例:生後10カ月男児.

 主 訴:下痢.

 家族歴・既往歴:特になし.

 現病歴:12月20日より咳嗽,鼻汁がみられ,近医にて感冒の薬が処方された.12月23日悪心,嘔吐に続いて水様の下痢が始まった.24日には白色の水様便が10回みられ,近医にて止痢剤の投与をうけたが,うけつけず,機嫌悪く,ぐずってばかりいた.25日には水分摂取するごとに大量の下痢となり,1日水分摂取量は300ml程度であった.徐々にあまり泣かないようになり,寝てばかりいるようになったため,当科外来を紹介された.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?