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雑誌目次

雑誌文献

medicina42巻6号

2005年06月発行

雑誌目次

今月の主題 内科emergency―爆弾を踏まない! 症候編

意識障害,片麻痺→即,CT!ちょっと待て!

著者: 金子高太郎

ページ範囲:P.930 - P.933

Do NO harm! Do KNOW harm!

意識障害,片麻痺では,脳血管障害を疑う前に,問診,身体所見,血液検査を行うべし!

意識障害患者では,ABC(気道,呼吸,循環)の安定化をまず図るべし!

「すぐ頭部CT」のオーダーは入れてもよいが,治療の緊急性がある「低血糖発作」を必ず疑うべし!

回転性めまいは圧倒的に末梢性が多いけど

著者: 箕輪良行

ページ範囲:P.934 - P.936

Do NO harm! Do KNOW harm!

小脳梗塞では,リスクファクターの存在をないがしろにしてはいけない!

めまいの持続,嘔吐や頭痛の随伴,症状の悪化があったら再診することを帰宅時に説明することが,稀な中枢性病変の発見につながる!

死んでしまう咽頭痛を見逃すな

著者: 林寛之

ページ範囲:P.938 - P.940

Do NO harm! Do KNOW harm!

つばも飲めないような咽頭痛は決して安易に帰宅させてはいけない!

のどの所見が軽いのに,非常に痛がる場合は,要注意!

基礎疾患をもつ患者の咽頭痛は要注意!

急性喉頭蓋炎を疑ったら安易に刺激(口腔内操作,仰臥位)を与えてはいけない!

失神のDo NO harm! Do KNOW harm!

著者: 一二三亨 ,   鈴木昌

ページ範囲:P.941 - P.943

Do NO harm! Do KNOW harm!

一過性意識障害の病歴を疑えば,失神か否かを診断する!

一過性意識障害患者の病歴は目撃情報が有用!

一過性意識障害では,病歴・身体所見のほかに心電図検査が必須!

心原性失神や器質的疾患が原因の失神を常に疑う!

TIA(一過性脳虚血発作)と失神は異なる!

心室細動のDo NO harm! Do KNOW harm!

著者: 岩田充永 ,   西川佳友

ページ範囲:P.944 - P.946

Do NO harm! Do KNOW harm!

心肺蘇生の基本はまずVF(心室細動)狩りから!

4~5分以上経過したVFには除細動の前に90秒のCPR(心肺蘇生法)を!

3連続除細動のみでVFを解除できない場合は,薬剤の使用を考慮するが,いずれの薬剤もエビデンスのレベルは高くない.薬剤準備のために除細動を遅らせるな!

薬剤を使用する際は注意点を考慮して!

胸部大動脈解離の爆弾

著者: 紙尾均

ページ範囲:P.948 - P.950

Do NO harm! Do KNOW harm!

4 “killer” chest painsを忘れるな!

心電図で下壁梗塞と診断したら,胸部X線と心エコーで急性大動脈解離をチェック!

急性大動脈解離は,胸痛・背部痛を訴えるとは限らない!

脳梗塞をみたら,原因の鑑別に急性大動脈解離も含める習慣を!

縦隔陰影が正常であっても,急性大動脈解離は否定できない!

たかが心窩部痛,されど心窩部痛

著者: 上山裕二 ,   箕輪良行

ページ範囲:P.951 - P.953

Do NO harm! Do KNOW harm!

心窩部の痛みに対し,消化器疾患だけを考えてはいけない.必ず急性冠動脈疾患を疑うこと!

基礎疾患をもつ患者の心窩部痛には要注意!

心電図をとる前に初療室から出してはいけない(画像検査やトイレに行く前に必ず心電図検査を行う)!

不定愁訴の頻回受診患者でも先入観を捨てて診ること!

喘鳴は必ずしも呼吸器疾患とは限らない

著者: 今明秀

ページ範囲:P.954 - P.956

Do NO harm! Do KNOW harm!

左心不全にはモルヒネ静注が行われるが,COPD(慢性閉塞性肺疾患)にモルヒネを投与すると重篤な呼吸抑制が出る!

COPDでは,SpO2を100%にするとCO2ナルコーシスになる.左心不全では,SpO2を高くしないと心停止する!

ショック状態では,仰臥位が原則.しかし起座呼吸状態を無理に水平にすると,心停止する!

ショックをみたら,まずhypovolemic shockを疑うのは鉄則だが,左心不全に輸液負荷は有害!

β2刺激薬吸入はCOPDには第一選択だが,左心不全には有害!

腹膜刺激症状がなければ安心?

著者: 井清司

ページ範囲:P.957 - P.960

Do NO harm! Do KNOW harm!

腹部が軟らかく腹膜刺激症状がなくても,重症で緊急手術が必要な場合がある!

腹痛患者では,高齢,高血圧,心房細動,心不全,糖尿病,透析中のキーワードが並んだら要注意!

バイタルサイン,特に血圧,脈拍に注意.静脈確保を行い,ショックの対策を優先する!

ベッドサイドの超音波検査は腹痛鑑別の強い味方.確認できなければ造影CTを躊躇しない!

自己申告の下痢はただの下痢でないことも

著者: 崎原永作

ページ範囲:P.961 - P.963

Do NO harm! Do KNOW harm!

お年寄りの下痢は必ず性状を確かめろ!

血算が正常範囲でも出血がないと安心するな!

タール便で上部消化管出血あり,鮮血で下部消化管出血あり!

救急室ではバイタルや症状の変化を予測し早めの対応を!

女性の腹痛にだまされるな

著者: 伊藤雄二

ページ範囲:P.964 - P.967

Do NO harm! Do KNOW harm!

女性,特に生殖可能年齢(15~45歳くらい)の女性の診療においては,必ず“妊娠”を念頭に置くべし!

「妊娠はしていません」という患者の言葉ほどあてにならないものはない.また,この患者は妊娠はしていないだろうという勝手な判断も禁物!

女性の腹痛に対して,妊娠反応検査を躊躇してはいけない!

高齢女性は奥ゆかしい……(大腿ヘルニア)

著者: 河野寛幸

ページ範囲:P.968 - P.970

Do NO harm! Do KNOW harm!

腹痛部位が腹部全体の場合は,頻度的にも必ずイレウスを否定しなければならない!

発症直後の来院ではイレウスの所見に乏しい場合が少なくない!

イレウスの原因頻度は圧倒的に腸管癒着によるものが多いが,特に中年以降の女性の場合は大腿ヘルニア嵌頓による絞扼性イレウスを常に考え,鼠径部を含めた腹部全体の診察が必須である!

Focus不明の発熱を安易に風邪というなかれ

著者: 伊藤史生

ページ範囲:P.972 - P.978

Do NO harm! Do KNOW harm!

高齢者の発熱は中等度以上の疾患!

バイタルサインが悪ければ,治療が優先!

発熱の3大原因は肺,尿,皮膚!

IE(感染性心内膜炎)を考えたら血液培養!

激しい腹痛患者には血糖測定を忘れずに

著者: 田中拓

ページ範囲:P.979 - P.981

Do NO harm! Do KNOW harm!

消化器症状の鑑別に糖尿病を入れておく!

DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)とHHS(高浸透圧性高血糖症候群)を鑑別する!

治療にあたってはK(カリウム)に要注意!

高体温は感染症とは限らない

著者: 森野一真

ページ範囲:P.982 - P.986

Do NO harm! Do KNOW harm!

薬物は体温調節に影響を及ぼす.薬物治療歴は必ず聴取しよう!

解熱の基本は冷却!

ダントロレンとカルシウム拮抗薬との併用は心停止の原因!

横紋筋融解の治療はまず十分な生理食塩水の輸液!

疾患編

一筋縄ではいかない頭痛,あるいは脳虚血の症状

著者: 佐々木勝

ページ範囲:P.987 - P.991

くも膜下出血を思わせる頭痛があるが,頭部CTでは異常所見を認めない

Do NO harm! Do KNOW harm!

くも膜下出血を思わせる頭痛があり,頭部CTで異常所見を認めないときには解離性脳動脈瘤を疑うこと!

緊張性頭痛,前庭性めまいの経過が長い場合はMRA撮影を考える!

Wallenberg症候群,Horner症候群を見落とすな!

小児急性片麻痺を診察したら,まず考えよう!

くも膜下出血の爆弾:見逃し症例から学ぶ

著者: 大熊洋揮

ページ範囲:P.992 - P.994

Do NO harm! Do KNOW harm!

くも膜下出血は見逃せば,再出血=死につながる!

歩いて受診するくも膜下出血も少なくはない!

「突然の」「激しい」頭痛では,まずくも膜下出血を疑う!

歩いて受診するくも膜下出血では,項部硬直の診断的意義は大きい!

軽症例のCT診断では,くも膜下腔の正常像を把握しておくことが重要!

軽症例では,CTで診断不能な症例も稀にある!

たかがTIA,されどTIA

著者: 太田凡

ページ範囲:P.995 - P.997

Do NO harm! Do KNOW harm!

高リスクのTIA(一過性脳虚血発作)を帰宅させてはいけない!

posterior circulationのTIAは脳幹梗塞に進展すると予後は悪い!

稀ではあるが失神の原因にTIAがあることを知り,その病態の特徴を知っておかなければならない!

髄膜炎?首が柔らかいけどねぇ……

著者: 山畑佳篤

ページ範囲:P.998 - P.1000

Do NO harm! Do KNOW harm!

診断が遅れたり治療が遅れたりすると,生命予後や機能予後にかかわる頭蓋内感染症は,細菌性髄膜炎,ヘルペス脳炎,そして脳膿瘍である!

細菌性髄膜炎,ヘルペス脳炎は疑ったらすぐに治療を開始する必要があり,脳膿瘍は原因としての感染性心内膜炎の検索が重要である!

いずれも初療医の対応が予後を左右するため,常に疑いをもって診察にあたる!

激しい頭痛の忘れ物:CO中毒

著者: 前田重信

ページ範囲:P.1001 - P.1003

Do NO harm! Do KNOW harm!

頭痛の原因の一つにCO中毒があることを忘れてはいけない!

疑わなければCO中毒は見逃す.CO中毒を念頭に置いた病歴聴取が必要!

CO中毒による遅発性精神神経障害の怖さを知っていないといけない!

高気圧酸素治療の適応を知る!

心筋梗塞には本当にMONA?

著者: 松尾仁司 ,   渡辺佐知郎

ページ範囲:P.1005 - P.1008

Do NO harm! Do KNOW harm!

下壁梗塞と診断がついたら右室梗塞の合併を考慮,右側胸部誘導をとる!

右室梗塞合併は予後不良因子!

右室梗塞および血圧が低い心筋梗塞ではニトログリセリンは要注意!

肺塞栓は難しい……

著者: 大庭正敏

ページ範囲:P.1010 - P.1013

Do NO harm! Do KNOW harm!

妊娠中や産褥期の患者が息切れを訴えるときは,常に肺塞栓を念頭に置く!

説明のつかない頻拍が続いている患者を帰宅させてはいけない!

心電図は非特異検査だが,V1~V3におけるT波の逆転は肺塞栓を示唆する所見!

胸部CTでは肺塞栓の所見がなくても,中~高危険群を帰宅させてはならない!

CO2ナルコーシスに気を付けていると,はまる爆弾

著者: 児玉貴光

ページ範囲:P.1014 - P.1016

Do NO harm! Do KNOW harm!

PaCO2の上昇よりもPaO2の低下が命取りになる!

PaO2の上昇が得られない場合は,迷わず補助換気を実施する!

急性呼吸不全ではCO2ナルコーシスは起こしえない!

CO2ナルコーシスの患者に対しては,原因や誘因の除去も同時に行う!

肺炎は適当に治療しても治らない

著者: 野﨑裕広

ページ範囲:P.1017 - P.1019

Do NO harm! Do KNOW harm!

非定型肺炎は若年者とは限らない!

神経症状・腹部症状が主訴の場合もある!

急速に状態悪化,多臓器不全に至ることがある!

現病歴が大切!

非定型肺炎を疑ったらマクロライド・テトラサイクリン・フルオロキノロンの投与を検討!

胃腸炎は難しい

著者: 藤田芳郎

ページ範囲:P.1020 - P.1023

Do NO harm! Do KNOW harm!

救急室の医師は「胃腸炎」と診断を下すことに不安を感じるべきである!

嘔吐や下痢を呈する疾患には,消化管以外の思いがけない疾患もある!

抗菌薬は気軽に投与すべきではない.投与前には,①炎症臓器の想定,②原因微生物の想定,③血液培養をはじめとする微生物検査の3つをやったかどうか確認する!

感染性胃腸炎の多くは,抗菌薬が投与されなくても自然に治癒する!

腎不全患者救急の透析までにすべきこと

著者: 福田拓也 ,   武田一人

ページ範囲:P.1024 - P.1026

Do NO harm! Do KNOW harm!

高カリウム血症は意識しないと発見が遅れる! リスクファクターを確認する!

緊急透析は準備に1時間以上かかる! 早期に適応を判断し,腎臓内科医への連絡を急ぐ!

末期腎不全患者の突然の肺水腫はvolume overとは限らない! 必ず急性心筋梗塞を除外する!

虫垂炎に始まり虫垂炎に終わる

著者: 谷口淳朗

ページ範囲:P.1029 - P.1031

Do NO harm! Do KNOW harm!

典型的な症状(腹痛,嘔吐,発熱は虫垂炎の古典的三徴)を呈する急性虫垂炎は30%程度である!

虫垂の位置異常があると,McBurney’s pointの圧痛は認められない(盲腸背側,妊婦)!

女性の腹痛では,産婦人科疾患とともに急性虫垂炎を鑑別疾患に入れること!

小児や高齢者では,典型的な症状を呈さないことが多く,穿孔するまで診断されないこともある!

超音波で描出されず,白血球の増加がないからといって急性虫垂炎は否定できない!

アナフィラキシーをまずステロイドで戦うと……

著者: 森下由香

ページ範囲:P.1032 - P.1035

Do NO harm! Do KNOW harm!

アナフィラキシー治療の薬物治療といえばエピネフリン.でも投与法を誤ると,致死的な合併症が……!

初期治療で軽快しても,1~3時間後に症状が再燃することがある!

ステロイドは急性期症状には効果がない!

βブロッカー服用中では症状が重篤化しやすい!

ステロイド製剤でアナフィラキシーを起こす患者もいる!

痙攣をただの痙攣と考えるな!

著者: 谷口巧

ページ範囲:P.1036 - P.1039

Do NO harm! Do KNOW harm!

痙攣発作の鑑別には医療面接が重要である!

痙攣発作の治療の際,呼吸・循環状態に気をつける!

低ナトリウム血症の鑑別には注意せよ!

低ナトリウム血症の補正は急がない!

敗血症アップデート

著者: 小倉真治

ページ範囲:P.1040 - P.1042

Do NO harm! Do KNOW harm!

敗血症性ショックの治療で最も大事なのは,循環動態を維持することである!

培養結果を鵜呑みにしてはならない!

敗血症のときに副腎機能不全が高頻度でみられる!

低用量のステロイドが副腎機能不全の改善に奏効し,敗血症の予後を良くする!

検査・薬剤編

急性腹症に痛み止めは禁忌?

著者: 伊藤敏孝 ,   清住哲郎 ,   岡田芳明

ページ範囲:P.1044 - P.1046

Do NO harm! Do KNOW harm!

発症早期には腹膜刺激症状を示さない急性腹症には,以下の爆弾がある!

爆弾:上腸間膜動脈血栓症,腹部大動脈破裂,絞扼性イレウス,卵巣囊腫茎捻転,子宮外妊娠破裂.

ST上昇は心筋梗塞とは限らない

著者: 淺井精一

ページ範囲:P.1048 - P.1051

Do NO harm! Do KNOW harm!

胸痛でST上昇を認めれば,急性心筋梗塞(AMI)を疑う!

AMI以外に胸痛とST上昇をきたす疾患(急性心膜炎,心筋炎,急性大動脈解離,肺塞栓など)がある.いずれにしろ,循環器科コンサルトは不可欠である!

ST上昇は正常心電図でもみられる.非典型的胸痛の患者で正常パターンのST上昇を認めたときは,病歴や心エコー検査などと併せて,AMIを除外する!

循環器疾患以外にもST上昇を認める重篤な疾患(くも膜下出血,急性胆囊炎,高カリウム血症,低体温症など)があり,症状によってはAMIとの鑑別が必要になる!

DICの爆弾

著者: 長田薫

ページ範囲:P.1053 - P.1056

Do NO harm! Do KNOW harm!

DIC(播種性血管内凝固症候群)にもかかわらず重症感に乏しいことがある.出血斑を見落とさずに!

高齢者の紫斑を単なる老人性紫斑と思い込まず,血液検査で確認が必要!

単に軽度の血小板減少と思い,観血処置をして止血困難であわてることがある!

DICに気づかずに血小板輸血を実施して,DICを悪化させることがある!

薬剤同士の仲が悪いとき……

著者: 小野宏 ,   岡田定

ページ範囲:P.1058 - P.1061

Do NO harm! Do KNOW harm!

使用頻度の高い薬は,その薬だけでなく相互作用を起こしやすい薬についての知識も必要!

新しい薬を追加したときは,その薬の副作用だけでなく,他の薬との相互作用にも注意が必要!

この患者にこの薬は禁忌!

著者: 真弓俊彦 ,   武澤純

ページ範囲:P.1062 - P.1065

Do NO harm! Do KNOW harm!

薬剤は効果とともに副作用も生じうる.疾患に対する標準的治療はほぼ定まっているが,標準的な薬剤でも併存疾患によっては害を生じる場合もある!

他の薬剤や食品などとの併用によって薬剤の血中濃度が増減し,副作用が生じることもある!

上記を認識し薬剤を使用することが大切である!

理解のための35題

ページ範囲:P.1067 - P.1474

しりあす・とーく 第6回テーマ

終末期医療と医師の倫理―(後編)

著者: 尾藤誠司 ,   田中まゆみ

ページ範囲:P.1076 - P.1083

「終末期医療」をめぐる医師たちの苦悩は,「医療行為を開始するか?」あるいは「医療行為を中止するか?」という判断において頂点に達する.そこで,医師がすべきこととは何か? あるいは,医師がしてはいけないこととは何か? 

 前回に引き続き,「終末期医療と医師の倫理」をテーマに2人の医師に語っていただいた今回は,「医療の差し控え」と「医療の中止」という究極の臨床判断を出発点に医療のあり方をめぐる深い問題提起が行われた.

 (前号よりつづく)

■尾藤 ここからは,延命のための医療行為を開始しないということ,つまり「医療の差し控え」ということと,延命のための医療行為を中止すること,つまり「医療の中止」といこうことについて話をしたいと思います.

危険がいっぱい―ケーススタディ・医療事故と研修医教育 第6回

胸痛をきたした黒人男性

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.1084 - P.1088

今回の症例は,高速道路を運転中,突然胸痛で失神しそうになり,救急車で来院した48歳の黒人男性である.

 アリス(司会役) 本日の症例は,胸痛発作の48歳男性,アフリカ系アメリカ人(注1)です.

 ベティ(症例提示役) 生来健康な48歳の黒人男性が,突然の胸痛で救急車で来院しました.フィラデルフィアからボストンの親戚を訪問するために高速道路を運転中,突然胸痛で失神しそうになり,車を退避帯に停めてしばらく休んでいると痛みは和らいだのですが,運転を続けるのが怖くなりSOSサインを出して,止まってくれた善意の通行車から救急車に連絡を取ってもらい来院しました.救急車でのバイタルは,意識清明GCS15,脈拍114/分,呼吸数24/分,血圧122/68,酸素飽和度94%でした.

東大病院内科研修医セミナー 3

診断するまでに時間を要したHIV感染症の症例

著者: 龍野桂太 ,   奥川周 ,   塚田訓久 ,   太田康男 ,   小池和彦

ページ範囲:P.1090 - P.1093

Introduction

感染症の専門医以外がHIV感染症の治療を行うことはあまりないが,日常診療でHIV感染症患者に遭遇する機会はしばしばある.

どのような症状・臨床経過の場合にHIV感染症を疑い,HIV抗体検査を行う必要があるか?

「デキル!」と言わせるコンサルテーション 第6回

手術のためのコンサルテーション

著者: 上野正紀

ページ範囲:P.1094 - P.1098

急患室でのコンサルテーションの一場面

(深夜の急患室の研修医から外科オンコールの専門医に電話があった)

●研修医:「夜分遅くにすいません.急性腹症の患者さんがいます.診ていただきたいのですが」

■専門医:「じゃあ,今から行くよ」

(急患室で)

●研修医:「患者さんは25歳独身女性で,本日夕方6時ころから心窩部痛が出現し…….体温は……,白血球は……,CRPは…….レントゲンは…….合併症は…….」

■専門医:「月経は? 直腸診は?」

●研修医:「月経は問診してません.直腸診はまだ……」

■専門医:「では診断は?」

●研修医:「……急性腹症……で・す」

■専門医:「……具体的に何の疾患を疑いますか? 鑑別疾患は? 手術適応ですか?」

●研修医:「……」

■専門医:「……,ありがとう.あとは外科でやるから大丈夫」

●研修医:「はい.お願いします」

(淡々と専門医の診察が進み,手術の準備,当日手術となった.ほっとして研修医は忙しい当直業務に戻っていった)

 考えてくれない人,答えてくれない人には何も教えられません.

連載

目でみるトレーニング

著者: 本城聡 ,   横手幸太郎 ,   岩崎靖 ,   日比野真吾

ページ範囲:P.1099 - P.1106

問題 409

 症 例:46歳,男性.

 主 訴:胸痛.

 既往歴:特記すべきことなし.

 現病歴:20歳時に献血をした際,高コレステロール血症を指摘されたが放置していた.33歳頃,黒目(くろめ)の外縁に“白い輪”があることに気付き,眼科を受診したところ,高コレステロール血症によるものといわれた.40歳頃より労作時に前胸部不快感を自覚するようになった.45歳時に近医を受診したところ,血清総コレステロール(TC)値が404mg/dlと高値であり,シンバスタチン5mg/日の投与を開始された.その後,労作時の胸部症状に増悪がみられたため,当院を受診し,検査目的に入院となった.

 入院時現症:身長170cm,体重68kg.両眼に角膜輪を認める.両側手背,肘部伸側,膝蓋骨遠位部,足背にそれぞれ5mm~3cmの皮下腫瘤を認める.

病理との付き合い方 病理医からのメッセージ(3)

病理組織診断―正確な診断結果を得るための検体提出方法

著者: 森谷卓也 ,   石田和之 ,   赤平純一

ページ範囲:P.1107 - P.1111

いったん,患者の体から離れた組織や細胞は,検体と総称される.このなかには病理検査(病理組織検査)に供されるもの以外にも,血液検査(血算など),尿検査,細菌培養検査などの目的で採取されるものがある.これら検体検査のなかでも,病理組織検査は細胞診検査とともに,報告書のなかに具体的な診断名,あるいは腫瘍の良悪性判定などが記載されることが特徴であり,その診断は専門医(病理専門医,口腔病理専門医,細胞診指導医など)によって行われるのが常である.

 病理組織診断は,病理医が主に顕微鏡を用いて観察し,診断を行うものである.このなかには生検から手術標本まで,さまざまな大きさの検体や組織・臓器が含まれる.本稿では,主治医(担当医)の方々がそれら種々の検体を提出する際に知っておいてほしいこと,注意すべきことについて,総論的に述べてみたい.

演習・小児外来

〔Case20〕 発熱と痙攣重積を主訴に来院した5歳女児 〔Case21〕血便を繰り返す4歳女児

著者: 水口雅 ,   幡谷浩史 ,   本田雅敬

ページ範囲:P.1112 - P.1115

 症 例:5歳,女児.

 主 訴:発熱,痙攣.

 既往歴:成長・発達は正常.痙攣の既往なし.

 現病歴:1月15日の日中,38.9℃の発熱があり,近医を受診した.インフルエンザ抗原迅速検査を受けたが陰性で,アセトアミノフェン坐薬を処方された.帰宅後,同坐薬を使ったあと,入眠した.同日の深夜,体温が41.5℃に上昇した.翌16日早朝,全身性強直痙攣が1時間続いたため,救急外来を受診した.

 身体所見:体温38.8℃,脈拍132/分,呼吸44/分,血圧 128/68mmHg.昏睡〔JCS(Japan coma scale)Ⅲ-200〕.胸部では心音は純,心雑音はないが,上肺野に喘鳴が聴取された.腹部は平坦・軟で,肝脾は触知されなかった.四肢は除脳硬直位であった.瞳孔は左右同大,径2mmに縮瞳しており,対光反射はなかった.

書評

病院感染 こんな時どうする!? 中小病院/診療所編

著者: 木村哲

ページ範囲:P.1089 - P.1089

 病院感染はcompromised hostの多い大きな病院に多く,大病院ほど注意が必要と考えられているが,実際には病院の規模に関係なく中小病院・診療所でも,しばしば深刻な病院感染のアウトブレイクが起こっている.そのような事例を眺めてみると,中小病院・診療所では病院感染は少ないから大丈夫との安心感からか,対策が不十分と思われる場合が少なくない.

 医療機関の規模にかかわらず,病院感染対策は医療の質にかかわる重要な要素であり,患者さんに安全で安心な医療を提供するためには不可欠な要素でもある.中小病院・診療所ではいったん,病院感染のアウトブレイクが起こると,その打撃は甚大であり,病院・診療所の経営そのものを揺るがすことになりかねない.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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