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雑誌目次

雑誌文献

medicina42巻7号

2005年07月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床で出遭う内分泌疾患 症状・身体所見から疑う内分泌疾患

症候性の肥満

著者: 𠮷田俊秀

ページ範囲:P.1126 - P.1128

ポイント

・通常の診療現場で出遭う肥満者は,ほとんどが単純性肥満者である.

・一部に,内分泌性肥満や,遺伝性肥満,薬剤性肥満のような症候性肥満が含まれる.

・内分泌性肥満の鑑別のために,甲状腺ホルモン(TSH,FT3,FT4)とコルチゾールは必ず測定.

・無月経,多毛を認めるときは,E2,LH,FSH測定と腹部超音波にて多嚢胞性卵巣のチェック.

治る高血圧―内分泌性高血圧症の診断

著者: 田村尚久 ,   伊藤裕 ,   中尾一和

ページ範囲:P.1130 - P.1132

ポイント

・高血圧症例の最大1割は内分泌性高血圧であり,原因疾患の治療により治癒しうる.

・原発性アルドステロン症は比較的頻度が高いので,高血圧患者では血漿レニン活性と血漿アルドステロン濃度の測定を行う.

・耐糖能障害,肥満,高脂血症,骨粗鬆症,低カリウム血症を伴う高血圧ではCushing症候群を疑う.

・頭痛,発汗過多,高血糖などを伴う高血圧では褐色細胞腫を疑う.

口渇,多尿

著者: 村瀬孝司 ,   大磯ユタカ

ページ範囲:P.1133 - P.1135

ポイント

・まずスクリーニング検査で糖尿病や腎疾患を除外する.

・鑑別診断で問題となるのは中枢性尿崩症,腎性尿崩症,心因性多飲症である.

・血漿バゾプレシン値は血漿浸透圧との相対的関係で評価しなければならない.

・中枢性尿崩症の診断には頭部MRI T1強調画像が有用である.

・視床下部病変による中枢性尿崩症では口渇障害を伴うことがある.

動悸,頻脈

著者: 真尾泰生

ページ範囲:P.1136 - P.1138

ポイント

・動悸・頻脈をきたす病態は多岐にわたるが,内分泌疾患が原因であることも多い.

・動悸・頻脈の出現状況を詳しく問診し,それぞれの疾患にみられる随伴症状

・所見を確認することが診断への第一歩である.

・「内分泌疾患を疑って」所見をとり検査をすれば,その後の診断は容易であることが多い.特に甲状腺疾患の頻度は高いので,甲状腺の触診は欠かせない.

皮膚乾燥,湿潤,色素沈着,多毛

著者: 森山貴子 ,   須田俊宏

ページ範囲:P.1140 - P.1142

ポイント

・内分泌疾患ではホルモン動態を反映した皮膚所見を呈する.

・皮膚の乾燥・湿潤は汗腺,脂腺の活動を修飾するホルモンが影響する.

・内分泌疾患に伴う色素沈着にはACTHが関連する.

・多毛症はhirsutismとhypertrichosisを鑑別する.

全身倦怠,消化器症状,精神症状

著者: 高尾俊弘 ,   橋本浩三

ページ範囲:P.1145 - P.1147

ポイント

・全身倦怠,消化器症状,精神症状を呈す内分泌疾患としては甲状腺機能亢進症

・低下症,副甲状腺機能亢進症

・低下症,下垂体機能低下症,副腎機能異常,性腺機能低下症などがある.

・これらは甲状腺ホルモン異常,副腎皮質ホルモン異常,ナトリウム,カルシウムなどの電解質異常から生じることが多い.

・症状および一般検査にて内分泌疾患が疑われた場合,速やかに内分泌学的検査を行う.

一般検査から読みとる内分泌疾患

日常臨床でよくみかけられる電解質異常(内分泌異常を中心に)

著者: 米川忠人 ,   片上秀喜

ページ範囲:P.1148 - P.1151

ポイント

・低Na血症患者では,細胞外液における水過剰もしくは塩類喪失状態を見きわめ,Na補正速度には十分注意する.

・脱力発作などの神経,筋症状出現時には血清Kを測定し,鑑別を進める.

・高Ca血症の原因は,原発性副甲状腺機能亢進症と悪性新生物に関連する病態で大部分を占められる.

低血糖

著者: 石川三衛

ページ範囲:P.1152 - P.1153

ポイント

・低血糖は,インスリン分泌過剰か,抗インスリンホルモンの分泌低下による.

・低血糖時,カテコラミン分泌過剰に伴う自律神経症状が出現する.

・意識障害患者では,最初にまず低血糖の有無を調べることが必須である.

内分泌疾患に伴う耐糖能異常

著者: 本田宗宏 ,   森保道 ,   石橋みゆき

ページ範囲:P.1155 - P.1157

ポイント

・内分泌疾患に特徴的な検査値異常や身体所見を見逃さない.

・2次性糖尿病を疑ったら,適切な検査を行い,速やかに確定診断をつける.

検血,血液・生化学検査

著者: 菅原明

ページ範囲:P.1158 - P.1160

ポイント

・原因不明の貧血では,内分泌疾患が潜んでいることがあるので注意が必要である.

・肝機能異常や脂質代謝異常では,甲状腺機能異常の有無の確認が重要である.

・内分泌疾患では電解質異常を伴うことが多く,電解質はNa,K,ClのみならずCa,P,Mgまでのチェックが必須である.

内分泌検査の選択と結果をどう読むか?

内分泌機能検査の基本

著者: 島津章

ページ範囲:P.1163 - P.1165

ポイント

・病歴や身体所見から内分泌機能障害を疑い,まず該当するホルモンの基礎分泌量を評価する.

・基礎分泌が増加している場合は分泌抑制試験を行って生理的分泌調節の有無を調べ,低下している場合や基準範囲にあっても機能低下が強く疑われる場合は分泌刺激試験を行って分泌予備能を調べ,内分泌機能を的確に評価する.

甲状腺機能検査

著者: 西川光重 ,   豊田長興 ,   天野佐織

ページ範囲:P.1166 - P.1169

ポイント

・最も鋭敏な甲状腺機能検査は血中TSH濃度測定である.

・甲状腺機能のスクリーニングには血中TSHとFT4濃度の測定を行う.

・甲状腺機能低下症と低T3症候群の鑑別は治療方針を決定するうえで重要である.

・Basedow病と無痛性甲状腺炎の鑑別には,抗TSH受容体抗体と甲状腺シンチグラフィが重要である.

・結節性甲状腺腫には甲状腺エコーと穿刺細胞診を行う.

副腎皮質・髄質機能検査

著者: 西川哲男 ,   齋藤淳

ページ範囲:P.1170 - P.1176

ポイント

・副腎皮質機能を検査するうえでACTH,コルチゾールは日内変動してるので採血時間を考慮するとよい.

・高血圧患者では血漿レニン活性とアルドステロン濃度,カテコラミン測定を行い2次高血圧を鑑別する.

・一般臨床検査で診断が難しい副腎不全はうつや痴呆に混じっていることがある.

男性性腺機能検査

著者: 伊藤直樹 ,   塚本泰司

ページ範囲:P.1178 - P.1179

ポイント

・精巣機能評価には血中総testosterone値,遊離testosterone値を測定する.

・加齢に伴い,遊離testosteroneは低下するため,男性更年期障害の診断には遊離testosterone値の評価が必要である.

・HCG testによる精巣でのtestosterone産生予備能検査により,HCG治療の適応を判定できる.

女性性腺機能検査

著者: 苛原稔

ページ範囲:P.1180 - P.1182

ポイント

・女性性腺機能検査は主として視床下部-下垂体-卵巣系の機能を調べることにあり,それらのどのレベルに障害があっても排卵機構は正常に働かないので,検査を行う際には,まず基本的ルチーン検査を確実に行って,おおまかに異常の有無をチェックし,その結果に応じて必要な詳細な検査を行う二段階検査が勧められる.

下垂体機能検査

著者: 飯田啓二 ,   千原和夫

ページ範囲:P.1184 - P.1187

ポイント

・下垂体機能検査は,下垂体ホルモン分泌能を調べる検査と下垂体ホルモン分泌機構が正常であるか否かを調べる検査に大別される.

・下垂体機能評価には,下垂体ホルモンおよびその標的ホルモンあるいはマーカーを同時に測定し,フィードバック機構を含めてシステムとして捉えることが重要である.

・下垂体機能検査は,視床下部,下垂体領域の疾患のみならず標的臓器の疾病を診断するうえでも有用である.

画像検査の選択と結果をどう読むか?

甲状腺の画像検査

著者: 森典子 ,   貴田岡正史

ページ範囲:P.1188 - P.1192

ポイント

・びまん性甲状腺疾患の場合,血流評価・硬さ,123I摂取率により鑑別を行える.

・腺腫様甲状腺腫とAFTNの鑑別には123Iシンチグラフィが有用である.

・悪性疾患に関しては,境界不明瞭さや周囲への浸潤,石灰化などの所見が悪性を示唆するが,画像上鑑別困難な癌もあり,吸引細胞診やfollowが必要である.

副腎の画像診断

著者: 対馬義人 ,   遠藤啓吾

ページ範囲:P.1194 - P.1196

ポイント

・副腎腫瘤の鑑別診断には,皮質腺腫(機能性,無機能性),褐色細胞腫のほかに,転移性腫瘍を忘れない.。副腎腫瘤の存在診断にはCTが,鑑別診断にはMRIが役立つ.いずれも撮像方法に注意が必要.

・褐色細胞腫の10%は副腎外発生(特に傍大動脈領域),多発性,あるいは悪性のことがあるので,検索方法に注意する.

下垂体の画像診断(MRI)

著者: 藤澤一朗

ページ範囲:P.1198 - P.1200

ポイント

・下垂体疾患の画像診断の第一選択はMRIである.

・正常下垂体後葉は,TI強調画像で,特徴的な高信号を呈する.尿崩症で高信号は消失する.

・下垂体微小腺腫の抽出には,造影後のTI強調画像が有用である.

内分泌疾患―救急への対応

甲状腺の救急―診断と治療

著者: 石原隆

ページ範囲:P.1201 - P.1203

ポイント

・120/分以上の頻脈,38℃以上の発熱,著しい発汗過多と脱水をみたらBasedow病クリーゼを疑う.

・超音波検査で高拍出性の活発な心筋運動を確認する.

・FT4,FT3,TSHを測定する.

・十分な輸液.多量のβ-ブロッカー・ハイドロコーチゾン・プロピルチオウラシル・ルゴールを投与する.

急性副腎不全―診断と治療

著者: 佐田晶 ,   肥塚直美

ページ範囲:P.1204 - P.1205

ポイント

・副腎機能低下症で補充療法中,あるいはその他の疾患で副腎皮質ステロイドの薬物療法を受けている患者で,低血圧を伴い,全身状態が不良の場合は本症を疑う.

・原因不明の意識障害,ショック,低Na血症,低血糖をみた際は本症を疑う.

・本症を疑った際は確定診断を待たず,速やかに治療を開始する.

高カルシウム血症―診断と治療

著者: 橋本年弘 ,   松本俊夫

ページ範囲:P.1207 - P.1209

ポイント

・血清アルブミン濃度で補正した血清カルシウム(Ca)濃度が10.2mg/dlを超えるものを高Ca血症とする.

・高Ca血症の原因は,90%以上が原発性副甲状腺機能亢進症または悪性腫瘍に伴うものである.

・高Ca血症クリーゼに対しては,大量の補液およびループ利尿薬や骨吸収抑制薬の投与などを行う.

内分泌腺腫瘍の取り扱い

甲状腺腫瘍

著者: 宮章博 ,   宮内昭

ページ範囲:P.1210 - P.1212

ポイント

・甲状腺結節の鑑別診断の目標は,良性・悪性の区分のみではなく組織型診断をつけ,それに応じた治療を行うことである.

・診断の手順は問診・触診,甲状腺機能を含んだ血液検査,超音波検査,穿刺吸引細胞診までが最初に行う必須の検査である.TSH低下の場合は123I甲状腺シンチを追加する.CT,MRI,腫瘍シンチなどはこの段階では不要である.

副腎腫瘍

著者: 松田公志 ,   室田卓之 ,   木下秀文

ページ範囲:P.1214 - P.1216

ポイント

・副腎偶発腫瘍の過半数は内分泌非活性腺腫で,他にはpre-clinical Cushing症候群,無症候性褐色細胞腫,骨髄脂肪腫が多い.

・副腎偶発腫瘍のうち,内分泌活性腫瘍,4cm以上の腫瘍,急速に発育する腫瘍などが手術適応となる.

・5cm以下の副腎腫瘍に対する第一選択治療法は腹腔鏡下副腎摘除術である.

下垂体腫瘍

著者: 阿部肇 ,   山田正三

ページ範囲:P.1218 - P.1220

ポイント

・下垂体腺腫は内分泌腫瘍の側面をもち,機能性,非機能性とに大別される.

・治療方針は症例ごとに異なるが,通常は経蝶形骨洞的手術を第1選択とする.

・経蝶形骨洞的手術は侵襲の少ない手術であり,高齢者でも安全にできる手術方法である.

副甲状腺腫瘍

著者: 伊藤悠基夫

ページ範囲:P.1221 - P.1223

ポイント

・原発性副甲状腺機能亢進症は大部分が良性腺腫によって起こる.癌の頻度は約2%であり,さらに多発性内分泌腺腫瘍症1型(MEN-1)の副甲状腺過形成がある.いずれも高カルシウム血症とPTHの抑制されない分泌を示す.

・骨病変や腎結石は典型的だが,症状がないか,不定愁訴を有する例が偶発的に高カルシウム血症で発見される.現在は病変のある1腺を摘除する術式が多く,成績も良い.

膵十二指腸内分泌腫瘍の取扱い

著者: 土井隆一郎 ,   藤本康二 ,   今村正之 ,   塚田俊彦

ページ範囲:P.1224 - P.1229

ポイント

・膵十二指腸内分泌腫瘍は稀な疾患ではあるが悪性度は高く,特にガストリノーマは肝転移,リンパ節転移をきたし,治療上の注意が必要である.

・ガストリノーマは多発,異所性,悪性の場合に治療上の問題点がある.

・手術切除療法を第一に考慮する必要があるが,その前提として正確な術前局在診断が必須である.

内分泌疾患の内科的マネジメント

手術や検査,他疾患に罹ったときの対処法

著者: 沖隆

ページ範囲:P.1230 - P.1232

ポイント

・内分泌疾患で治療中の患者において,重症疾患や他の疾患による手術療法に際しては,治療を継続すべき内分泌疾患であるか,治療を休止してもかまわない内分泌疾患であるかを判断する必要がある.

・グルココルチコイド(glucocorticoid)および抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone)は,その補充を中止することができないため,厳重な内科的管理が必要である.特に,電解質や循環状態に留意する必要がある.

内分泌に関連した注目すべき病態

メタボリックシンドローム

著者: 岡内幸義 ,   船橋徹

ページ範囲:P.1234 - P.1236

ポイント

・メタボリックシンドロームのprimary outcomeは心血管疾患であり,その診断は動脈硬化性疾患のハイリスク群を抽出し,予防介入を行うためのものである.

・メタボリックシンドロームの上流には,運動不足や過栄養による腹腔内脂肪蓄積が存在する.

・アディポサイトカイン分泌異常はさまざまなリスク発症や動脈硬化そのものに関与する.

・ライフスタイルの改善,腹腔内脂肪の減少が治療の基本である.

Nonthyroidal illness

著者: 渋沢信行 ,   森昌朋

ページ範囲:P.1238 - P.1240

ポイント

・血中甲状腺ホルモン値が異常値を示した場合も,早急には甲状腺疾患と診断しない.

・NTIはほとんどすべての重症な内科的,外科的疾患で起こりうる病態である.

・NTIでの甲状腺ホルモン値は基礎疾患の予後,重症度の指標になりうる.

・NTIでは,原疾患の治療が重要である.原疾患が改善すれば,甲状腺ホルモン異常は是正される.

男性更年期

著者: 奥野博

ページ範囲:P.1241 - P.1247

ポイント

・男性更年期障害は加齢に伴うアンドロゲンの低下に起因する.

・アンドロゲンの変化は 生理的活性のある free testosterone でみられる.

・診断治療には泌尿器科・心療内科・精神科・整形外科などが連携することが大切である.

ステロイド性骨粗鬆症

著者: 大中佳三 ,   高柳涼一

ページ範囲:P.1249 - P.1251

ポイント

・ステロイド性骨粗鬆症は従来有効な治療法に乏しかったが,近年ビスホスフォネートに代表される骨折リスクを減少するエビデンスをもつ新しい薬剤が登場した.

・日本でもステロイド骨粗鬆症の管理と治療のガイドラインが発表された.

・ステロイド投与を行う患者において,骨粗鬆症発症に伴う骨折の予防対策は臨床医にとって必須となっている.

高尿酸血症

著者: 中島弘

ページ範囲:P.1252 - P.1254

ポイント

・痛風の前段階としての高尿酸血症の扱いから,生活習慣病として高尿酸血症を直接扱う時代となった.

・生活習慣の改善で尿酸値が低下する場合は,薬物による尿酸降下療法は不要である

・尿酸降下療法で薬物療法にエビデンスがあるのは,痛風発作の予防と腎障害・尿路結石予防のみ.

・尿酸値が動脈硬化性疾患のリスクファクターとなるという疫学結果が増加している.

・ただし,肥満者における尿酸のリスクは内臓脂肪の軽減なくしては低下しない.

理解のための31題

ページ範囲:P.1255 - P.1261

連載

目でみるトレーニング

著者: 水野史朗 ,   渡辺慎太郎 ,   高田浩史 ,   土山芳徳

ページ範囲:P.1263 - P.1268

病理との付き合い方 病理医からのメッセージ(4)

細胞診

著者: 村田哲也

ページ範囲:P.1269 - P.1273

細胞診とは

 1. 細胞診とは

 細胞診(cytology)とは,細胞を顕微鏡で観察し,病態の診断を行うことである.病理組織診断と同じ目的であり,ともに顕微鏡を用いて細胞を観察することからしばしば混同されるが,検体採取や標本作製などの点でいくつかの違いがある.本稿では細胞診の実際や注意点,細胞診における医師と臨床検査技師とのコラボレーションなどについて述べる.

 2. 細胞診の歴史

 細胞診はパパニコロウ(Papanicolaou)らによる婦人科領域における子宮頸癌の診断に用いられてから,主として婦人科医の間で広まっていき,次いで肺癌診断のための喀痰細胞診や胃癌診断のための胃洗浄液細胞診など内科医や外科医にも広まっていった(column参照).わが国においても細胞診を扱う学会である日本臨床細胞学会は婦人科細胞研究会を母体とし,婦人科や内科・外科など臨床系の医師が細胞診専門医(指導医)を取得する例が多かった.近年では病理医も積極的に細胞診業務に参画するようになり,病理医の細胞診専門医(指導医)取得も増加してきている.

演習・小児外来

〔Case22〕 数日間の発熱後,不機嫌になって発疹が出現した10ヵ月の女児 〔Case23〕 発熱,頸部痛,発疹,眼球充血と多彩な症状をきたした6歳女児

著者: 崎山弘 ,   野間清司

ページ範囲:P.1274 - P.1279

症 例:10カ月,女児.

 主 訴:発熱,不機嫌,発疹.

 家族歴:両親との3人家族.両親はともに健康.

 既往歴:いままで38°C以上の発熱の既往はない.

 現病歴:10月22日,日中は元気に遊んでいた.食欲も良好.夜になって母親が体熱感に気づいて体温測定したところ,39.7°Cであった.わずかに鼻汁を認める程度で咳嗽ならびに嘔吐・下痢はなく,そのまま入眠した.

しりあす・とーく 第7回テーマ

感情と医師研修―(前編)

著者: 宮崎仁 ,   木村琢磨 ,   児玉知之

ページ範囲:P.1280 - P.1289

 医師は成長過程でさまざまな「感情体験」に遭遇する.そのなかには,患者や同僚との間に生じるネガティブな感情も決して少なくない.「診療現場」という,張りつめた場所で,医師はみずからの「感情」とどう折り合いをつけていけばよいのだろうか?

 シリーズ「しりあす・とーく」では,これまで,ほとんど語られることがなかった「感情と医師研修」をテーマに,診療・研修の最前線にいる3人の医師たちにお話いただいた.

「デキル!」と言わせるコンサルテーション 第7回

ERにおけるコンサルテーション

著者: 箕輪良行

ページ範囲:P.1290 - P.1293

ERでの一場面

(救急車で胸痛で冷汗をかいた56歳の男性が搬送され,直ちに酸素投与,静脈路確保,心電図検査が施行された)

●研修医:「V2~5でST上昇してます.前壁の心筋梗塞と思います.バイタルは血圧82,脈68,SpO292%なので,とりあえずアスピリンとレペタン始めます.」

■救急医:「発症から45分は経っているから,ポータブルで胸部とって,すぐに循環器に電話して」

     (研修医が電話でプレゼンテーションして患者は不安定と報告したが,CCUで処置中のため10分ほど行くのが遅れるとのこと.そのうちに……)

●研修医:「先生,VT(心室頻拍)です.脈は触れますが,患者さんのレベルはダウンしています.」

■救急医:「パッドを貼ってカルディオバージョンの用意をして.それからヘパリン5000単位ボーラスとtPA(血栓溶解薬)を生食100mlに溶解して静注するよ」

     (150Jで洞調律に戻り,血圧は70台,呼吸数28でSpO290台のため気管挿管の適応と判断してバックバルブマスクをあてているところに循環器専門医がやってきた)

▲循環器専門医:「ええっ,挿管するほど悪い状態なら,一言そう言ってくれれば,処置は中止してすぐに来れたのに!!」

     (研修医をにらみつけて,呼吸管理している救急医を無視するように「CV入れるから」とナースに指示して上肢を駆血した)

危険がいっぱい―ケーススタディ・医療事故と研修医教育 第7回

譫妄をきたした老婦人

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.1294 - P.1298

 アリス(司会役) 本日の症例は,COPD(慢性閉塞性肺疾患)増悪のためICUに入室後,譫妄をきたした76歳白人女性です.譫妄を起こすまでの経過を手短かに提示してください.

 ダン(症例提示役) COPDで在宅酸素療法中の76歳白人女性が,呼吸困難で救急を受診しました.3日前から発熱と咳嗽があり,主治医から抗生物質と経口ステロイドを処方されましたが,入院となった夜は吸入薬を使っても呼吸困難が改善せず,普段2l/分の酸素を4l/分まで上げても息苦しかったため救急受診.

東大病院内科研修医セミナー 4

腎不全・高血圧を合併する腎動脈狭窄症の症例

著者: 代田悠一郎 ,   柴垣有吾

ページ範囲:P.1300 - P.1303

Introduction

・腎不全における腎動脈狭窄症の疫学・病態生理はどのようなものか?

・腎不全における腎動脈狭窄症の診断はどうするか?

・腎不全における腎動脈狭窄症の予後から治療をどう考えるのか?

書評

新医学教育学入門―教育者中心から学習者中心へ

著者: 岩田健太郎

ページ範囲:P.1299 - P.1299

 「君は,前期48点,後期49点だった.平均50点ない者は不合格にしたんだ.でも,前期30点,後期60点だった者は,努力の跡が見られたから合格にした.まっ,もう1年やってくれ」

 こう言い捨てられ,本書の筆者である大西弘高氏は留年の憂き目にあう.挫折を,それも理不尽な挫折を味わった経験を持つ者なら,これが若い心にどのくらい深い傷跡を残すか容易に想像できるだろう.もちろん,当時は「理不尽な世界」は「大人の世界」であり,「おまえも早く大人になれよ」と諭されるのであるが,これが「まやかし」や「ごまかし」とほぼ同義語であることを知るのに,そう時間はかからない.

トピックス

世界中の一般医・家庭医が初夏の京都に参集

ページ範囲:P.1254 - P.1254

世界一般医・家庭医学会2005年アジア太平洋学術会議開催

 世界一般医・家庭医学会2005年アジア太平洋学術会議(WONCA Asia Pacific Regional Conference 2005,主催:日本学術会議・日本プライマリ・ケア学会)が,さる5月28~30日の3日間にわたり,京都市の国立京都国際会館で開催された.同会議は,主にアジア太平洋地域の一般医・家庭医を対象に毎年開催されているが,日本での開催となった今回は,日本プライマリ・ケア学会,日本家庭医療学会,および日本総合診療医学会の三学会が合同の組織委員会を設置し,開催の準備を進めてきた.また,この三学会それぞれの学術集会も5月28~29日の両日に同時開催されたため,日本全国および世界各地から,一般医・家庭医が集う一大イベントとなった.

 本会議では,黒川清氏(日本学術会議会長),Jonathan Rodnick氏(UCSF),尾身茂氏(WHO西太平洋地区事務局長)らによる講演の他,「グローバル・スタンダードとしての家庭医療・一般医療」などをテーマにしたシンポジウム,「研究」,「教育」をテーマにした多数のワークショップが企画され,盛会となった.特に2日目の夜に開催された「カルチャーナイト・パーティ」では,世界中から参集した医師が一堂に会し,交流の輪を広げた.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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