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雑誌目次

雑誌文献

medicina42巻8号

2005年08月発行

雑誌目次

今月の主題 胆膵疾患はこう診る―緊急処置からフォローアップまで Editorial

胆膵疾患患者の早期診断と治療について

著者: 峯徹哉

ページ範囲:P.1312 - P.1314

ポイント

胆膵の悪性疾患の早期診断は不十分である.

良性の胆膵疾患で診断の迅速性が求められるものがある.

胆膵疾患で悪性のhigh risk群が存在する.

疫学

良性胆道疾患の疫学

著者: 佐々木秀雄 ,   杉山政則 ,   跡見裕

ページ範囲:P.1316 - P.1319

ポイント

胆石症は最も一般的な胆道系疾患であり,現在わが国での胆石保有率は10~15%と推測されている.また,従来から,中年の肥満女性に多い疾患とされてきたが,男女比1:1.3~1.5とわが国の罹患率は欧米と比較して男女差は少ない.

わが国の全胆石症に占める肝内結石症の割合は,1997年の調査結果で1.7%と減少傾向にある.また従来,肝内結石の大部分はビリルビンカルシウム石であったが,1990年代以降の調査によると,コレステロール石が肝内結石の8.5~13.1%を占め相対的な増加傾向にある.

急性胆囊炎の原因の90~95%は胆囊結石で,次いで無石胆囊炎,胆囊癌である.

胆囊ポリープの95%以上は良性の胆囊コレステロールポリープで,保有率は成人の5~10%,好発年齢40~50歳代,男女差はない.

悪性胆道疾患の疫学

著者: 阿部秀樹 ,   幕内雅敏

ページ範囲:P.1320 - P.1323

ポイント

鑑別診断が困難な胆道では,良性疾患診断の既往歴とともに,鑑別診断された良性疾患の診断自体が,悪性疾患のリスクファクターである.

悪性胆道疾患のリスクファクターには,胆囊結石,胆囊ポリープ,胆囊壁肥厚,膵管胆道合流異常,胆囊アデノミオマトーシス,原発性硬化性胆管炎,肝吸虫症,肝内結石,トロトラスト被曝などが挙げられる.

膵石と膵炎の疫学

著者: 清水京子 ,   白鳥敬子

ページ範囲:P.1325 - P.1327

ポイント

急性膵炎の原因としてアルコール性,胆石性,特発性が多い.

重症急性膵炎は重症度のstageが高くなるにつれて死亡率が増加する.

重症急性膵炎の死亡原因は早期では多臓器不全,後期では感染症が多い.

慢性膵炎の成因はアルコール性が最も多く,積算飲酒量が増加するほど,リスクが上がる.

慢性膵炎の発症には膵炎関連遺伝子の変異が関与している可能性がある.

慢性膵炎の死亡原因は悪性腫瘍が半数を占め,そのうちで膵癌が最も多い.

膵腫瘍の分類と疫学

著者: 山本隆 ,   木村理

ページ範囲:P.1328 - P.1332

ポイント

多くを占める通常型膵癌の予後はいまだ不良である.
囊胞性腫瘍(SCT,MCT,IPMT,solid-pseudopapillary tumor)の鑑別は重要で,MCTは診断がつき次第,すべて手術適応である.

内分泌腫瘍は症候群ごとに特徴があり,それぞれに対処が必要である.

SPTと膵芽腫は小児期膵腫瘍の代表である.

基本的診察法・検査法

問診のとり方

著者: 肱岡範 ,   猪狩功遺 ,   藤田力也

ページ範囲:P.1334 - P.1335

ポイント

問診は経験を要するものであるが,トレーニングによっても身につけることができる.

先入観にとらわれないためには,問診から鑑別診断を羅列して,病気の絞り込みを行う内科診断学の基本に戻り,専門外の疾患をも視野に入れた診療態度が重要である.

黄疸,腹痛は膵癌の初発症状でもあることを常に忘れない.

問診と身体所見の観察をないがしろにして,不要な検査を行うべきではない.

身体所見のとり方

著者: 露口利夫 ,   山口武人 ,   税所宏光

ページ範囲:P.1336 - P.1338

ポイント

急性胆管炎の古典的臨床徴候であるCharcot 3徴(腹痛,発熱,黄疸)の感度は50~70%程度であり,胆管炎の診断は身体所見のみでは困難である.

sonographic Murphy signとは,急性胆囊炎患者において超音波映像下に胆囊を探触子で圧迫した際に圧痛がみられる所見であり,正診率の高い所見として知られる.

急性膵炎の臨床徴候に特異的な所見はないが,腹痛,背部への放散痛,食欲不振,嘔気・嘔吐,腸雑音減弱などが頻度の高い徴候である.

血液検査結果の読み方

著者: 角みどり ,   大槻眞

ページ範囲:P.1340 - P.1343

ポイント

ALPはアイソザイムを調べることで由来臓器や疾患を特定できる.

また,臨床症状や他の胆道系酵素の測定,画像診断の併用で診断精度が上がる.

アミラーゼ測定は簡便で頻用されるが,リパーゼのほうが急性膵炎に特異度が高い.

膵酵素の上昇は膵炎の重症度や予後を反映しない.

遷延する膵酵素値の異常は膵癌を否定できない.

胆膵疾患に必要な画像診断法

内視鏡的膵胆管造影法(ERCP)

著者: 大井至

ページ範囲:P.1344 - P.1346

ポイント

側視式の内視鏡を用いるので一般の直視式の内視鏡検査とは検査手技に違いがある.

盲目的内視鏡操作を必要とするので,十分な熟練が必要である.

膵管像は分枝まで造影されているX線写真で判読する.

体位変換を用いて病変を立体的に把握するようにする.

治療内視鏡も基本的な内視鏡的膵胆管造影手技に依存している.

X線像の読影は病態の詳細な理解に有用である.

MRCP(磁気共鳴膵胆管造影)

著者: 新後閑弘章 ,   崔仁煥 ,   須山正文

ページ範囲:P.1348 - P.1350

ポイント

MRCP(磁気共鳴膵胆管造影)は胆膵領域の画像診断法として有用である.

胆道の解剖学的異常や膵胆管合流異常,膵管非融合などを描出できる.

胆石症,胆囊腺筋腫症,急性胆囊炎,胆管狭窄などの胆道系疾患や,慢性膵炎,急性膵炎,膵囊胞,膵管内腫瘍,通常型膵管癌などの膵疾患を描出できる.

セクレチン負荷によって膵液の分泌動態を観察できる.

EUS・IDUS(内視鏡的超音波断層法・管腔内超音波断層法)

著者: 宇野耕治 ,   安田健治朗

ページ範囲:P.1351 - P.1353

ポイント

EUS専用機のうちラジアル走査方式は,広い範囲の超音波像を得ることができるため他臓器との関係や膵胆道系の解剖を捉えやすく,膵胆道疾患に幅広く使用される.

コンベックス走査方式のEUS専用機は血流診断やEUS下穿刺に用いられる.

細径超音波プローブは胆膵管近傍や十二指腸乳頭部の病変の診断に用いられる.

体外式超音波(US)―ドプラ検査,造影超音波検査を含めて

著者: 堀口祐爾

ページ範囲:P.1354 - P.1357

ポイント

体外式超音波には,スクリーニング検査,存在診断,精密検査としての役割がある.

特に胆膵疾患においては,急性腹症の緊急検査として,また腫瘍性病変の精査法としての役割が重要で,診断能を高めるためにはカラードプラ検査や造影超音波検査も積極的に行うべきであろう.

MDCT(multidetector-row CT)

著者: 佐藤大志 ,   小井戸一光 ,   廣川直樹

ページ範囲:P.1358 - P.1360

ポイント

MDCTの出現により,胆膵疾患におけるCT診断は2Dに加えて3D画像が重要となってきている.

MDCTでは,臓器をvolume dataとして取得し,いろいろな高分解能再構成画像へ出力可能になった.

MPRとCPRを組み合わせたCT診断は,膵胆道悪性腫瘍のstagingにおける最も重要な画像診断の一つとなった.

MDCTでは,Dicom viewerによるモニター診断が必須である.

どのようにこれらの画像診断を組み合わせるか

著者: 辻野武 ,   伊佐山浩通 ,   小俣政男

ページ範囲:P.1362 - P.1365

ポイント

胆囊癌の局所進展度診断には超音波内視鏡(EUS),MDCTが有用である.

総胆管結石の診断に最も有用性が高いのはEUSである.

MRCPは胆管,膵管を非侵襲的に撮像できスクリーニングとしては有用であるが,空間分解能はERCPに比べ劣る.

膵管内乳頭腫瘍診断において,囊胞自体の描出はMRCPが最も優れ,壁在結節の描出はEUS/IDUSが最も優れている.

緊急処置が必要な胆膵疾患

緊急処置が必要な胆道疾患

著者: 松下光伸 ,   島谷昌明 ,   岡崎和一

ページ範囲:P.1367 - P.1370

ポイント

急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)は急速に全身状態が悪化して死に至る.

AOSCの原因として十二指腸乳頭部への結石の嵌頓が最も多い.

Charcot三徴と肝胆道系酵素上昇があればAOSCを疑い緊急胆道ドレナージを行う.

結石膵炎を併発していてもまず経乳頭的治療を試みる.

AOSCでも迅速に胆道ドレナージができれば劇的に状態が改善する.

緊急処置が必要な膵疾患

著者: 朴沢重成

ページ範囲:P.1371 - P.1373

ポイント

緊急処置が必要な膵疾患の合併症は,閉塞性黄疸,重症急性膵炎,感染性膵壊死,膵石嵌頓,感染・出血や仮性動脈瘤を合併した膵仮性囊胞,胃静脈瘤などである.

その多くは内視鏡,穿刺術,血管造影を介した治療手技で緊急対応が可能である.

感染性膵壊死と仮性動脈瘤合併膵仮性囊胞は外科的手術が行われる.

急性胆膵疾患の診断・治療 【胆】

急性胆管炎の診断と治療―結石が存在する場合

著者: 小林毅一郎 ,   許斐裕之 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.1374 - P.1377

ポイント

胆管結石症に伴う急性胆管炎は,放置すると急性化膿性閉塞性胆管炎となり敗血症へ移行し死亡に至る病態であり,迅速な診断と治療が必要である.

Charcot三徴やReynolds五徴に代表される症状や血液検査,画像診断の所見から重症度を的確に判断する.

治療は胆道ドレナージおよび結石の除去であり,経乳頭的アプローチと経皮経肝的アプローチがある.それぞれの特徴を踏まえて迅速かつ確実に効果の得られる方法を選択することが重要である.

腫瘍性病変による急性胆管炎に対する内視鏡的胆道ドレナージ術

著者: 伊藤啓 ,   藤田直孝

ページ範囲:P.1378 - P.1382

ポイント

急性胆管炎例では胆道ドレナージ術が必要である.

胆道ドレナージ術には,非観血的方法として経乳頭的アプローチと経皮的アプローチがある.

基礎疾患が切除不能悪性胆道狭窄の場合には,開存期間や費用対効果の観点からmetal stentの留置が推奨される.

術前減黄や予想生存期間の短い例ではplastic stentの留置が妥当である.

腫瘍などによる急性胆管炎に対する胆道ドレナージ(PTBD)

著者: 江畑智希 ,   梛野正人 ,   二村雄次

ページ範囲:P.1383 - P.1385

ポイント

PTBDには癌の進展度診断と減黄・胆管炎の治療の二面性がある.

PTBDには超音波ガイドと影像下直達式があり,肝門部胆管狭窄には影像下直達式が望ましい.

肝門部胆管癌に対するPTBDは残肝側への片葉ドレナージを基本とする.

区域性胆管炎は抗菌療法だけでなく,全肝ドレナージを行う.

排泄される胆汁は内服するべきである.

胆囊炎

著者: 五十嵐良典 ,   岡野直樹 ,   三浦富広 ,   三木一正

ページ範囲:P.1386 - P.1387

ポイント

急性胆囊炎は,右季肋部周辺に圧痛を認め,Murphy徴候などを伴う.

血液検査で白血球やCRPの上昇を認め,腹部超音波検査やCT検査で,胆囊炎の原因,状態,周囲臓器への影響を診断する.

治療は,大部分は抗生物質投与により軽快するが,高度炎症例や遷延例ではPTGBAが第一選択である.PTGBA無効例や急性気腫性胆囊炎などはPTGBDの適応である.結石が原因の場合にはLCを考慮する.

【膵】

急性膵炎

著者: 下瀬川徹

ページ範囲:P.1388 - P.1390

ポイント

腹痛患者を診療する場合,急性膵炎の可能性を念頭に置き,診断後は適切な初期治療を速やかに開始する.

発症後48時間以内の重症度は,急性膵炎の生命予後をよく反映する.

Stage2(重症度スコア2点以上)以上の急性膵炎患者は,消化器内科,外科医が常勤する高次医療施設での治療を原則とする.

膵仮性囊胞ドレナージ

著者: 内田博起 ,   廣岡芳樹 ,   後藤秀実

ページ範囲:P.1392 - P.1394

ポイント

膵仮性囊胞ドレナージ術としては,外科的,経皮的および内視鏡的ドレナージが行われている.とりわけ近年では,経乳頭的または超音波内視鏡画像下での囊胞ドレナージが,限られた施設ではあるが行われるようになってきた.

ドレナージ方法の適応は成因や病態をふまえたうえで選択すべきで,今後は,超音波内視鏡画像下での囊胞ドレナージが治療方法としての選択肢の一つになりうると考えている.

胆膵疾患の診断とフォローアップ 【胆】

胆囊結石症

著者: 安部井誠人 ,   田中直見

ページ範囲:P.1396 - P.1397

ポイント

胆囊結石症では,まず詳細な問診により胆道痛の既往を,検査により合併症と発癌リスクを評価する.

有症状胆石(胆道痛の既往有)では,発作の予防を希望すれば治療を勧める.標準治療は腹腔鏡胆摘術であるが,経口胆汁酸療法も発作を予防するため高齢・他疾患合併例,手術拒否例では考慮する.

無症状胆石(胆道痛の既往無)では,胆囊癌高危険群以外は治療を要しない.

胆囊癌高危険群では胆摘術を勧める.

胆囊ポリープ

著者: 畑中恒 ,   玉田喜一 ,   菅野健太郎

ページ範囲:P.1398 - P.1400

ポイント

胆囊ポリープは腹部超音波検査における胆囊異常所見のなかで最多である.

胆囊ポリープのほとんどを占めるコレステロールポリープは,良性疾患であり無処置で経過観察してよい.

ポリープ径10mm以上,広基性,増大傾向を示すもの,あるいは典型的コレステロールポリープでないものは悪性も考慮に入れ専門医へ紹介したり,超音波内視鏡,MRCP,ERCPなどの精査を勧める.

胆囊腺筋腫症

著者: 糸井隆夫 ,   祖父尼淳 ,   森安史典

ページ範囲:P.1401 - P.1405

ポイント

胆囊腺筋腫症は,組織学的にRASおよび周囲の平滑筋細胞の壁内増生による胆囊壁の肥厚を主体とする病変である.

びまん型(G型),分節型(S型),限局型(F型)に大別され,S型が最も多い.

胆囊腺筋腫症は時に胆囊癌や膵・胆管合流異常症を併存することがある.

慢性胆囊炎

著者: 松尾憲一 ,   遠藤格 ,   嶋田紘

ページ範囲:P.1406 - P.1409

ポイント

慢性胆囊炎は,胆囊癌との鑑別が重要である.

胆囊結石のあるところに,慢性胆囊炎が存在し胆囊癌を見逃さないことがフォローアップのポイントである.

診断に難渋する慢性胆囊炎は,漫然とフォローせず,十分なインフォームドコンセントを行ったうえで外科的切除も考慮する必要がある.

【膵】

慢性膵炎

著者: 柳町幸 ,   丹藤雄介 ,   中村光男

ページ範囲:P.1411 - P.1413

ポイント

高脂肪・高蛋白食や低脂肪・低蛋白食にアルコール摂取が加わることで慢性膵炎発症リスクは増加する.

慢性膵炎患者の食事療法ではアルコール摂取を禁止とし,急性増悪時以外は十分なカロリーと脂肪量の摂取を指導する.

非代償期患者の治療は消化酵素補充療法の効果をモニタリングしながら行う必要がある.

膵囊胞性疾患

著者: 高橋邦幸 ,   真口宏介

ページ範囲:P.1414 - P.1419

ポイント

膵囊胞は上皮の有無により真性と仮性に分けられ,それぞれ非腫瘍性と腫瘍性に分類される.

膵囊胞性病変の画像診断のポイントとしては,病変の形態,内部構造,血流評価,主膵管の拡張の有無と交通の有無があり,これらに着目して診断を進める.

腫瘍性膵囊胞は漿液性囊胞腫瘍,粘液性囊胞腫瘍,膵管内乳頭粘液性腫瘍,および,solid-pseudopapillary tumorや内分泌腫瘍などの充実性腫瘍の出血,壊死が含まれる.

自己免疫性膵炎

著者: 中沢貴宏 ,   佐野仁 ,   大原弘隆

ページ範囲:P.1420 - P.1423

ポイント

自己免疫性膵炎は膵のびまん性の腫大と膵管狭細像を特徴とする.

高γグロブリン血症,高IgG血症を呈したり,各種の自己抗体が存在する.

血中IgG4の測定が診断に有効である.

膵にリンパ球,形質細胞を主とする著明な細胞浸潤と線維化を認める.

ステロイド治療が有効である.

全身にさまざまな合併症が出現する.

膵胆管合流異常

著者: 野村幸伸 ,   乾和郎 ,   芳野純治

ページ範囲:P.1424 - P.1427

ポイント

先天性胆道拡張症のⅠ,Ⅳ-A型の100%に膵胆管合流異常を合併する.

胆道拡張を伴わない膵胆管合流異常は,胆囊壁肥厚所見が特徴的である.

膵胆管合流異常の描出には,EUS,ERCPが効率的であるが,USで描出できる症例もある.

膵胆管合流異常には,高率に胆道癌を併発する.

先天性胆道拡張症は,早期に外科手術が実施される.

胆管拡張のない膵胆管合流異常は,胆囊切除術が実施される.

胆膵の悪性疾患の治療

胆道癌に対する外科的治療

著者: 山川達郎

ページ範囲:P.1428 - P.1430

ポイント

胆道癌の外科治療法としては癌進行度により各種の術式が選択される.

1)胆囊癌:胆囊全層摘出術兼リンパ節郭清,胆囊床に接する肝実質切除とリンパ節郭清(拡大胆囊摘出術).

2)胆管癌:中下部胆管癌;リンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除術または幽門輪温存膵頭十二指腸切除術,上部胆管癌;周囲リンパ節郭清術と病変部兼癌の進展に応じた肝区域切除術.

3)乳頭部癌;リンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除術,乳頭部切除術,膵頭十二指腸切除術.

膵癌に対する外科手術療法

著者: 今泉俊秀 ,   飛田浩輔 ,   堂脇昌一

ページ範囲:P.1431 - P.1433

ポイント

難治性の通常型膵癌(浸潤性膵管癌)が膵癌全体の90%を占め,その90%は局所進行膵癌である.

RCTでは,リンパ節・神経叢広範郭清を伴う拡大手術は予後に寄与しないとの報告がある.

門脈系静脈合併切除はR0を追求するために選択されるが,膵全摘術の適応は少ない.

術前進展度診断による切除適応症例に対してはR0を追求するが,高度進展例は切除対象から除外する.

膵癌の内科的治療

著者: 伊藤鉄英 ,   河辺顕 ,   久野聖晃

ページ範囲:P.1434 - P.1436

ポイント

膵癌は消化器癌のなかで最も予後不良であり,80%以上は診断時にStage IVの切除不能症例である.

近年,Gemcitabine(GEM)の登場により切除不能膵癌に対する治療は向上しており,遠隔転移例ではGEMによる全身化学療法が標準的治療である.

切除不能膵癌に対しては集学的治療が必要で,今後GEMを中心とした多剤併用療法,分子標的治療,免疫療法などの有効な治療法の確立が期待される.

トピックス

遺伝性膵炎とは?―当院における遺伝性膵炎・膵石症とそれに対するESWL+内視鏡治療の経験

著者: 辻忠男 ,   加藤まゆみ ,   山藤和夫

ページ範囲:P.1438 - P.1441

ポイント

原因不明の慢性膵炎・膵石症例のなかに遺伝性膵炎が含まれている可能性がある.

本症診断のきっかけは,家族歴の聴取である.

葉巻状・蜘蛛の巣状の膵管像を見たら本症を想起すべきである.

60~70歳で膵癌を発症する可能性が高い.

PETと膵癌

著者: 安田聖栄 ,   今泉俊秀 ,   幕内博康

ページ範囲:P.1442 - P.1444

ポイント

膵腫瘍の良悪性鑑別では,腫瘍細胞密度と炎症の有無を考慮する.

PETにより予期せぬ病巣が発見される場合がある.

膵癌PETの保険適用は,2005年6月現在,慢性膵炎との鑑別診断に限られている.

PET CTによるanatometabolical imagingが今後PET以上に普及する.

座談会

胆膵疾患患者への対応の現状

著者: 髙清水眞二 ,   木田光広 ,   今陽一 ,   窪田敬一 ,   峯徹哉

ページ範囲:P.1446 - P.1458

峯 本日は,お集まりいただきありがとうございます.『medicina』誌の「胆膵疾患はこう診る」という特集で座談会を組ませていただきました.先生方には,胆膵疾患患者への対応の現状について,具体的なお話をいただければと思います.

●胆膵疾患をどのように見つけるか

峯 まず,胆膵疾患患者をどのように見つけるか,外来でのポイントについて,髙清水先生に口火を切っていただきます.

理解のための35題

ページ範囲:P.1459 - P.1466

しりあす・とーく 第8回テーマ

感情と医師研修―(後編)

著者: 宮崎仁 ,   木村琢磨 ,   児玉知之

ページ範囲:P.1468 - P.1475

プロとしても,また,人間としても未熟な研修医が背負うには,「医師」という仕事の責任は,あまりにも重い.研修医や,研修医とともに仕事をする若い先輩医師の抱えるストレスには,相当なものがあると言われているが,その対策は,これまでほとんど検討されてこなかった.引き続き「感情と医師研修」をテーマを取り上げた今回は,「医師のメンタルヘルス対策」を中心に「感情」の問題をお話しいただいた.

 (前号よりつづく)

■宮崎 いろいろお話が出まして,医師もやはり感情労働者であるということが確認できました.抑圧された感情を抱えて仕事を続けなければならないわれわれとしては,自らのメンタルヘルスを守ることを,積極的に考えていかねばならない時期に来ていると思います.しかし,いざ具体的な対策を立てるとなると,なかなか難しいところがあります.そこで,日本の研修医が抱えているストレスの問題について調査された木村先生からお話しいただけますか.

危険がいっぱい―ケーススタディ・医療事故と研修医教育 第8回

複視とふらつきで救急外来受診した42歳の女性

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.1476 - P.1479

今回の症例は,いつも通りの朝食後,物が二重に見えだし,さらにふらつきと寒気を覚えたため救急外来を受診した42歳の女性である.

 アリス(司会役) 本日の症例は,「物が二重に見える」と救急外来を受診した特に既往のない42歳の女性です.

 ベティ(症例提示役) その日,いつものように朝食を取ったあと,教会で座っていたら物が二重に見えたのだそうです.しばらく様子を見ていたのですが,自宅に帰るときにふらつき,寒気もしたので,心配する夫に付き添われてERにやってきました.ふだん診てもらっている開業医に電話をしたところ,すぐに神経内科医にERに来てもらうように手配するとのことで,それまで待つように言われたそうです.トリアージで血圧が80/54しかなく,脈も112と頻脈が認められたため,安定するまでは蘇生室でモニターをつけながら観察することになりました.体温は35.8℃.頭痛嘔気嘔吐はなく,下痢もなく,咽頭痛もなし.咳は昨日ぐらいから出ているが,特に気にも留めていなかったそうで,痰は飲み込んでしまうとのことでした.家族に病気の者はなく,旅行歴もありません. 既往歴も アレルギーも 服薬歴も 家族歴も特にありません. 社会歴は,タバコは20本/日吸うがアルコールはつきあい程度.麻薬歴は大学生のときマリファナをやっただけだそうです.夫と二人の高校生の子どもと住んでいる主婦です. ROS(review of systems)では,昨日からの軽い咳と今朝からの複視以外は特に変わったことはないとのことでした.

「デキル!」と言わせるコンサルテーション 第8回

デキレジのコンサルテーション①呼吸器系

著者: 川畑雅照

ページ範囲:P.1480 - P.1483

初期研修の病棟でのコンサルテーションの一場面

(午後の気管支鏡が終わった専門医に研修医からコールがあった)

●研修医:「虫垂炎で入院中の患者さんの件で,コンサルテーションの依頼をお書きしましたので,お手すきのときにご高診下さい」

■専門医:「わかった.夕方,病棟に行くから」

(そして…夕方の病棟で……)

●研修医:「患者さんは生来健康な24歳の女性で喫煙歴はありません.今回,虫垂炎の手術前の胸部X線で結節影を認め精査しました」

(プレゼンも立板に水のごとく滑らかに進んだ)

●研修医:「胸部CTでは右S6に結節が存在しており,悪性の可能性も考え全身の精査をしました.頭部CT,骨シンチ,腹部CTでは転移の所見はなかったのですが,念のために明日院外でPETの予定も……」

■専門医:「たった5mmの結節で石灰化もあるしどうみても炎症性じゃないか! こんな若い女性の肺癌なんてきわめて稀だぞ! どうして無駄な検査の前にコンサルテーションしないんだ!!」

 緊急性の有無も踏まえて,専門医にも気を使って,ダメレジの汚名返上にと,気合いを入れてプレゼンしたのですが,結果は…また,叱られてしまったようです.今回は少しやり過ぎのようです.どこまで検査するかについては,診療科によっても異なり簡単な問題ではないようですね.

東大病院内科研修医セミナー 5

明らかな誘因なく発症した劇症1型糖尿病の症例

著者: 纐纈優子 ,   大須賀淳一 ,   門脇孝

ページ範囲:P.1484 - P.1487

Introduction

1型糖尿病は,2型糖尿病とどのような点で異なるか?

劇症1型糖尿病はどのようなときに疑うか?

病理との付き合い方 病理医からのメッセージ(5)

病理組織検査・細胞診のピットフォール

著者: 村田哲也

ページ範囲:P.1488 - P.1492

ピットフォール(pitfall)とは「落とし穴」ということである.臨床検査領域では,ある目的をもって検査がオーダーされるが,目的外,あるいは予想外の思わぬ結果に遭遇してしまうことがある.多くの場合「期待はずれ」の結果であり,このような状況に嵌ることをpitfallと呼ぶ.pitfallに落ちた場合,主治医はもとより患者に迷惑がかかる危険性もある.pitfallの存在とその原因を理解し,pitfallに嵌ることが極力なくなるように,今回は病理検査領域におけるpitfallについて説明する.

ピットフォールはなぜ起きるのか

 誰しも落とし穴に嵌りたがるわけではなく,予測した結果が出ることを求めて検査をオーダーするのであるが,それにもかかわらず,結果的に落とし穴に嵌ってしまうことがある.pitfallが起きる原因はさまざまである.検体採取から結果報告,結果の解釈に至るまでの各段階すべてでpitfallの芽があるといってよい.pitfallに嵌らないように各段階での手順を理解し,正確な手技を行うことは,医療の安全性(安全管理,セーフティ・マネジメント)の視点からも重要である.

聖路加国際病院内科グランドカンファレンス(11)

乏尿・下腿浮腫を主訴とし,透析後意識障害が生じた67歳男性

著者: 和田匡史 ,   小松康宏 ,   兼元みずき ,   正本庸介 ,   梅根和歌子 ,   石山光富 ,   増田慶太 ,   堀之内秀仁 ,   飛田拓哉 ,   内山伸 ,   岡田定 ,   林田憲明 ,   安齋均 ,   小林信雄 ,   福井次矢 ,   田中まゆみ ,   岡安裕之 ,   竹見敏彦

ページ範囲:P.1494 - P.1503

和田(司会) グランドカンファレンスを始めます.プレゼンテーションをお願いします.

症例呈示

 兼元(担当医) 患者は67歳男性です.妻とは死別し,現在は長女と二人暮し.入院時の主訴は乏尿と下腿浮腫です.既往歴,現病歴などを以下に示します.

演習・小児外来

〔Case24〕 発熱,咳,嘔吐で紹介された1歳5カ月男児 〔Case25〕顔色不良を主訴に救急車で来院した3カ月女児

著者: 香川二郎 ,   中村元

ページ範囲:P.1504 - P.1507

症 例:1歳5カ月,男子.

 主 訴:発熱,咳,嘔吐.

 家族歴:母が本児の妊娠中に妊娠糖尿病であったが,出産後は軽快している.

 既往歴:7カ月時に気管支肺炎で入院.

 現病歴:8月頃より多飲傾向.10月10日頃より食欲低下,嘔吐傾向.10月14日38℃の発熱にて近医受診し投薬を受け,翌日には解熱した.10月18日嘔吐が頻回となり,近医にて輸液施行.その後も嘔吐が反復し,食事の摂取ができないため連日輸液を受けた.10月22日38℃の発熱と咳嗽が出現し,咳込み嘔吐も認められ一般状態悪化のため,当科に入院依頼となった.

連載

目でみるトレーニング

著者: 高橋裕一 ,   田中徳子 ,   岩崎靖

ページ範囲:P.1511 - P.1516

問題 415

 症 例:43歳,女性.

 主 訴:口渇,四肢脱力感,しびれ.

 既往歴:腎結石,尿管結石.

 現病歴:1998年3月,全身倦怠感,物の飲み込みにくさあり近医受診.このときTSH361.1μIU/ml,freeT30.8pg/ml,freeT40.4ng/dlと甲状腺機能低下症を指摘され,チラージンS®投与開始となる.その後,再度尿管結石の排出があり泌尿器科を受診.このとき腎結石の増加,低カリウム血症が認められ,口渇もあるためリウマチ膠原病科紹介となる.外来精査中,4月14日起床時より四肢の脱力感出現,翌15日には体動困難となり緊急入院となる.

 入院時現症:身長153cm,体重41.9kg,脈拍70/分,呼吸数20/分,体温 36.9℃,血圧114/80mmHg,意識清明,甲状腺;goiterなし.胸部;心・肺異常なし.腹部;肝・脾触知せず.神経学的所見;手指以外,顔面を含む軀幹,四肢の筋力低下あり(2~3/5).四肢腱反射;低下.右半身のしびれ,知覚過敏あり.Babinski反射;右 陽性.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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