icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina43巻1号

2006年01月発行

雑誌目次

今月の主題 糖尿病の臨床―基礎知識を実践に生かす 糖尿病の基礎知識

糖尿病の自然経過と日本人糖尿病の疫学

著者: 松平透 ,   西村理明 ,   田嶼尚子

ページ範囲:P.6 - P.8

ポイント

・耐糖能異常から2型糖尿病への移行の危険因子は,初診時の高血糖,肥満,家族歴である.

・特に初診時のOGTT 2時間値が170mg/dl以上と高い群では,糖尿病への移行率が有意に高い.

・わが国の2型糖尿病の頻度は増加している.

・2型糖尿病では一般人口と比較して予後は不良である.

糖尿病の分類と診断基準

著者: 松津詩子 ,   寺内康夫

ページ範囲:P.10 - P.12

ポイント

・糖尿病は成因により1型糖尿病,2型糖尿病,その他の特定の機序・疾患によるもの,妊娠糖尿病に大別されている.

・糖尿病の病態による分類では,糖代謝の状態を正常血糖から高血糖へと連続的に表現し,治療や自然経過での変動を示す.

・合併症の発症,進展を阻止するために耐糖能異常の早期発見が重要である.

・糖尿病の診断は慢性高血糖を確認し,さらに症状,臨床所見,家族歴,体重歴などを参考として総合的に判断する.

2型糖尿病の成因・病態と治療のエビデンス

著者: 野田光彦

ページ範囲:P.14 - P.19

ポイント

・2型糖尿病ではインスリン分泌の低下とインスリン感受性の低下の双方が発症にかかわっており,両因子の関与の割合は症例によって異なる.

・2型糖尿病患者では特に糖負荷後早期のインスリン分泌が病初期から特異的に低下している.

・2型糖尿病患者では肝臓における空腹時の糖新生の抑制が不十分である.

・2型糖尿病患者では,摂食後の骨格筋へのグルコースの取り込みが低下し,骨格筋でのグリコーゲンへの転換が障害されている.

・脂肪細胞に発現するアディポネクチンはインスリン感受性促進因子である.

・レプチンは摂食行動を抑制し,交感神経系の活性化によりエネルギー消費の亢進を司るが,多くの肥満者ではレプチンの作用障害が存在する.

・Kumamotoスタディでは,頻回注射法による良好な血糖コントロールが糖尿病細小血管症を抑制しうることが示された.

・UKPDSでは血糖と血圧の良好なコントロールが糖尿病合併症を抑制しうることが示された.

1型糖尿病の成因・病態と治療のエビデンス

著者: 及川洋一 ,   島田朗

ページ範囲:P.21 - P.24

ポイント

・1型糖尿病の多くは,疾患感受性を呈する遺伝的素因に環境要因が加わることによって,膵島炎などによる膵β細胞の破壊が生じ,インスリン欠乏状態に至って発症する.

・細小血管合併症の発症・進展を防止するためには,1型糖尿病の発症早期から強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールを行うことが重要である.

糖尿病治療の基礎知識

糖尿病食事療法の基本原理と注意点

著者: 津田謹輔

ページ範囲:P.26 - P.28

ポイント

・患者さんに食事療法の重要性と有用性を納得してもらう.

・患者さんの食習慣,ライフスタイルを把握して個別の指導を行う.

・指示エネルギー量の算出方法,三大栄養素の配分をマスターする.

・食品交換表の基本を理解する.

・スタートした食事療法は血糖や体重の推移をみながら適時見直す.

糖尿病運動療法の基本原理と注意点

著者: 押田芳治

ページ範囲:P.30 - P.31

ポイント

・糖尿病治療上,運動療法は食事療法とともに「車の両輪」にたとえられる.

・糖尿病運動療法の目的は,インスリン抵抗性を改善し血糖値の是正を通して,合併症の発症・進展防止にある.

・運動療法前には,メディカルチェックを行い,血糖などの代謝状態や潜在する合併症の把握に努める.

・1日10~30分,週3日以上の有酸素運動の継続が必要である.

・息堪えをしない,低強度のレジスタンス運動の併用も効果的である.

血糖降下作用のある薬剤の使い分け(経口薬を中心に)

著者: 山内恵史 ,   相澤徹

ページ範囲:P.32 - P.35

ポイント

・経口血糖降下薬はインスリン分泌促進薬(SU薬,グリニド薬),インスリン抵抗性改善薬(ビグアナイド薬,チアゾリジン誘導体),その他(αGI薬),に大別される.

・インスリン分泌促進薬は低血糖に注意.

・大原則:肥満患者ではインスリン抵抗性改善薬,非肥満患者ではインスリン分泌促進薬,痩せ患者ではインスリン注射.

・経口薬の併用,かつ最大量でも目標とする血糖コントロールが得られなければインスリン注射が必要.

インスリン製剤の多様性―新しい製剤を含めて

著者: 中西幸二

ページ範囲:P.36 - P.38

ポイント

・「追加分泌」補充用として速効型,超速効型インスリン,「基礎分泌」補充用として,持続型,中間型インスリンの使用が可能である.

・超速効型インスリン(インスリンリスプロ,インスリンアスパルト),持続型インスリン(インスリングラルギン)は,ヒトインスリンのアミノ酸を置換あるいは付加することで,皮下よりの吸収速度を調節したものである.

血糖降下療法 【経口血糖降下薬の特徴と使い方】

スルホニル尿素薬

著者: 梶尾裕

ページ範囲:P.40 - P.43

ポイント

・SU薬は膵β細胞に残存機能がある場合に用いるが,GAD抗体陽性の緩徐進行1型糖尿病では禁忌である.

・SU薬の構造の違いによって血糖降下作用の時間や強さが異なる.持続時間の長いものは低血糖の遷延化に注意が必要である.

・急激な血糖降下によって低血糖や合併症の悪化を誘発しないよう薬剤の使用には注意する.

・コントロールが不十分な場合には基本的な治療の再確認,再教育が必要である.

・十分な効果が得られない場合,病態を検討し,それに応じて他剤の併用も含めた対応を考慮する.

速効型インスリン分泌促進薬

著者: 石原寿光

ページ範囲:P.45 - P.47

ポイント

・速効型であるとともに,短時間作用型であることが特徴であり,2型糖尿病の異常なインスリン分泌パターンを正常パターンに変えることが期待される.

・運動療法,食事療法,αグルコシダーゼ阻害薬でコントロールが不十分な,内因性インスリン分泌が保たれている患者が良い適応である.

・食事時間が不規則な患者や高齢の患者(注意して用いる)にも使いやすい.

αグルコシダーゼ阻害薬

著者: 五十川陽洋

ページ範囲:P.48 - P.50

ポイント

・食後高血糖を呈している患者が良い適応である.

・必ず食直前に内服する.

・単剤では低血糖を起こすことはまずない.

・他剤との併用で低血糖を起こした際はブドウ糖の内服が必要である.

・腹部手術歴を有する患者ではイレウスの原因となりうるため要注意である.

・食後高血糖を抑制することによる抗動脈硬化作用が期待される.

ビグアナイド薬

著者: 高橋義彦

ページ範囲:P.52 - P.54

ポイント

・ビグアナイド薬はインスリン抵抗性を改善しインスリン分泌に影響を与えない.

・基本的に肥満を助長しない.

・重大な副作用として乳酸アシドーシスがあり,乳酸アシドーシスのハイリスク患者には禁忌である.

・糖代謝以外の面にも有益な効果があるとされ,特に大血管障害の予防効果が期待される.

ピオグリタゾン(チアゾリジン薬)の使用法

著者: 為本浩至

ページ範囲:P.56 - P.58

ポイント

・ピオグリタゾンの効果はBMI 22以上の例で大きいが,ばらつきも大きい.

・女性で効果が大きいが浮腫の頻度も高い.

・体重増加が2~3kgを超える場合は浮腫,食事管理に注意する.

・心不全の既往,心房細動のある患者では使用を避ける.

経口血糖降下薬間の併用とインスリンとの併用

著者: 佐倉宏

ページ範囲:P.59 - P.61

ポイント

・いきなり経口血糖降下薬間の併用療法を行うのは好ましくなく,単剤療法の効果が不十分になったときにはじめて併用療法を考慮する.

・患者病態と薬物の作用機序から適切と考えられる組み合わせの併用療法を行う.

・ほとんどの組み合わせの併用療法で血糖コントロールは改善する.インスリンと経口血糖降下薬の併用療法もよく行われている.

【血糖降下の具体策】

インスリン抵抗性指標・インスリン分泌指標をどう用いるか

著者: 長坂昌一郎

ページ範囲:P.62 - P.64

ポイント

・HOMA-R≧2.5の場合,ほぼ確実にインスリン抵抗性があるが,HOMA-R低値でも直ちにインスリン抵抗性なしとはいえない.内臓肥満,脂質代謝異常などの臨床指標も参考にインスリン抵抗性を診断する.

・HOMA-R高値は,チアゾリジン薬の有効性予測の一つの指標になる.

・血中・尿中Cペプチドの測定,HOMA-βはインスリン必要性の一つの指標になる.

病棟・外来におけるインスリン導入の実際

著者: 細川和広

ページ範囲:P.65 - P.67

ポイント

・インスリン導入の適応になる患者かを判断する.

・外来でインスリンが導入できる患者か,入院のうえでインスリンを導入すべき患者かを検討する.

・原則1型,2型を問わず強化インスリン療法を勧めていく.

・責任インスリンは,どのインスリンかを判断する.

・低血糖時の対応,自己インスリン調節法を指導していく.

手術前後の血糖コントロールをどのように行うか

著者: 下川耕太郎 ,   松本雅子

ページ範囲:P.68 - P.70

ポイント

・手術前は空腹時血糖値140mg/dl以下,尿ケトン体陰性であることが望ましい.

・周術期はインスリンを積極的に使用し,随時血糖値150mg/dl前後を目標に血糖値を安定させる.

・輸液施行時はブドウ糖投与速度を一定とし,ブドウ糖5~15gに速効型インスリン1単位(U)を輸液中に添加する.

糖尿病の諸病態への対応

劇症1型糖尿病・緩徐進行1型糖尿病をどう診断・治療するか

著者: 今川彰久 ,   花房俊昭

ページ範囲:P.72 - P.74

ポイント

・診断が1日遅れると生命予後に影響することがある「劇症1型糖尿病」が存在する.

・劇症1型糖尿病では発症時より内因性インスリン分泌が枯渇している.

・GAD抗体が陰性でも1型糖尿病であることを否定できない.

・2型糖尿病のなかにGAD抗体陽性例が存在し,インスリン分泌能が低下しやすい.

糖尿病患者のエマージェンシーにどう対応するか―糖尿病昏睡・低血糖とシックデイ

著者: 山下滋雄

ページ範囲:P.76 - P.81

ポイント

・糖尿病治療中の患者には,シックデイとそのルールを説明しておく.

・高血糖緊急時における治療の基本は,脱水の改善・インスリン作用不足の改善・pH,および電解質異常の改善・原因疾患の治療である.

・低血糖昏睡の患者は,対症療法のみで帰宅させず,原因精査のため入院させることが望ましい.

高齢糖尿病患者における注意点

著者: 駒津光久

ページ範囲:P.82 - P.84

ポイント

・高齢者糖尿病治療の基本は若壮年者と変わらないが,高齢者ではさまざまな面で個体差が大きいのでより個別化した対応が必要である.

・罹病歴の長い高齢糖尿病患者では,そのときのコントロールがよくても進行した合併症を有することがあるので注意する.

・身体機能,精神状態を詳細に把握し,必要であればキーパーソンを見つけ治療環境をサポートする.

・生命予後やQOLを考慮し,現実的な治療計画を立てる.

・高齢者の低血糖は言語緩慢,行動異常などの非定型的な症状として現れやすく,その特徴を周囲の人にも理解してもらい,対策を立てておく.

計画妊娠と妊娠時の糖尿病管理のポイント

著者: 佐中眞由実

ページ範囲:P.86 - P.87

ポイント

・妊娠時の高血糖や生理的な変化は母体のみでなく胎児にも影響を及ぼす.

・妊娠中の治療・管理のみでなく,妊娠前の治療・管理も重要である.

・妊娠初期にはインスリン感受性,妊娠中期以後にはインスリン抵抗性,分娩後にはインスリン抵抗性の改善となるため,時期に応じた対応が必要となる.

高血糖をきたす内分泌疾患

著者: 宮川めぐみ

ページ範囲:P.88 - P.91

ポイント

・糖尿病をきたす頻度の高い内分泌疾患には,Cushing症候群,先端巨大症,褐色細胞腫,Basedow病などがある.

・各疾患の特徴的身体所見やホルモン検査,画像検査から,高血糖を引き起こす内分泌疾患を見逃さず早期診断していくことが望まれる.

糖尿病合併症抑制への基礎知識

糖尿病に合併した高血圧の治療

著者: 片山茂裕

ページ範囲:P.92 - P.94

ポイント

・高血圧を合併する糖尿病患者は,脳・心疾患の高リスク群であり,また糖尿病性腎症の進行が早い.

・したがって,130/80mmHg未満を目指した厳格な血圧コントロールが必要となる.

・蛋白尿が1g/日以上の糖尿病性腎症例では,さらに低い125/75mmHg未満を目標とする.

・糖尿病患者における第一選択薬として,臓器障害を改善しインスリン抵抗性を改善するACE阻害薬・ARB・長時間作用型Ca拮抗薬が推奨される.

・単剤で降圧目標値を達成できない症例では,複数の降圧薬を併用する.

糖尿病に合併した高脂血症の治療

著者: 大久保実

ページ範囲:P.96 - P.98

ポイント

・糖尿病患者の高脂血症は動脈硬化性疾患を予防するために積極的に治療する.

・LDLコレステロールが高いときには,スタチンを第一選択薬として用いる.

・現在の治療目標は,LDL-C<120mg/dl,TG<150mg/dl,HDL-C≧40mg/dl.

・冠動脈疾患のある糖尿病患者ではLDL-C<100mg/dlに下げる.

・高中性脂肪血症には,フィブラート薬を用いる.

糖尿病に合併した肥満への対応

著者: 吉田俊秀

ページ範囲:P.100 - P.102

ポイント

・インスリン抵抗性状態の糖尿病は5~10%の減量にて治る可能性がある.

・インスリン抵抗性の判定にはHOMA-Rやブドウ糖負荷試験時のインスリン反応,24時間尿中C-ペプチド測定が有効.

・減量成功の秘訣は患者にやる気を起こさせることである.

・5~10%の減量なら3カ月で達成できる.

・血糖値が高値の場合はメトホルミン製剤を使用することが多い.

糖尿病の合併症をどうシステマティックにモニターするか―その方法と頻度は

著者: 北里博仁

ページ範囲:P.103 - P.106

ポイント

・糖尿病診療のアウトカムである合併症発症・進展抑止を常に意識して診療を行う.

・病期に応じてモニター間隔を調整する.

・誕生日を目安にしたり会社や地域の健診も活用して悪性疾患も含めて診る.

糖尿病合併症への具体策

糖尿病腎症の食事・薬物療法の実際

著者: 安孫子亜津子 ,   羽田勝計

ページ範囲:P.107 - P.110

ポイント

・糖尿病腎症の治療は血糖と血圧コントロールを中心とした集学的治療が必要である.

・血圧コントロールが腎症各病期の進展抑制するというEBMがある.

・腎症の食事療法には蛋白制限食が勧められている.

糖尿病網膜症治療で内科に求められること―眼科の立場から

著者: 佐藤幸裕

ページ範囲:P.112 - P.113

ポイント

・成人の失明原因の第一位が糖尿病網膜症.情報の80%以上は目から得られる.

・一次予防は網膜症発生の予防,二次予防は既存の網膜症進行の予防.

・一次・二次予防とも厳格な血糖コントロールが重要.

・急激な血糖コントロールは網膜症を悪化させることがある.

・6カ月以内にHbA1C3.0%以上(1カ月に0.5%以上)の是正は避ける.

糖尿病性神経障害の検査と治療

著者: 中村二郎

ページ範囲:P.114 - P.116

ポイント

・アキレス腱反射および振動覚検査が神経障害の診断検査として最も汎用されている.

・神経伝導検査は神経障害の診断検査として最も客観的かつ定量的である.

・神経障害の基本治療は厳格な血糖コントロールにある.

・発症機序に則った治療薬としてアルドース還元酵素阻害薬が有用である.

・神経障害の対症療法薬として三環系抗うつ薬と抗痙攣薬が有効である.

糖尿病足病変への対応策

著者: 河野茂夫

ページ範囲:P.118 - P.120

ポイント

・神経障害や血流障害を有する足に,靴擦れや低温熱傷などの外因が加わると発症する.

・足の定期的チェックとフットケアによる発症予防が重要である.

・発症後は成因と重症度の診断および治療計画の立案を迅速に行う.

・血液所見より創部の局所所見を重視する.

・治癒後は再発予防のためのフットケア指導と外来フォローを行う.

大血管症抑制の視点からの糖尿病治療のエビデンス

著者: 鈴木浩明

ページ範囲:P.122 - P.125

ポイント

・血糖コントロールだけでは,糖尿病大血管症を予防できない.また,インスリン抵抗性や食後高血糖に配慮した血糖コントロールが重要である.

・糖尿病大血管症の予防のためには,高血糖だけではなく,高血圧や脂質代謝異常の是正を含めた包括的な治療が必要である.

理解のための30題

ページ範囲:P.126 - P.132

問題1 2型糖尿病について正しい組み合わせはどれか.
① 2型糖尿病の発症には家族歴が関与する.
② 近年,2型糖尿病の頻度は減少している.
③ 境界型(IGT,IFG)から2型糖尿病への移行率に肥満は関与しない.
④ 日本人の糖尿病の多くは2型糖尿病である.
⑤ 2型糖尿病では一般人口と比較して予後は不良である.

A:①,②,③

B:②,③,④

C:③,④,⑤

D:②,④,⑤

E:①,④,⑤

問題2 糖尿病の分類と診断について正しい組み合わせはどれか.
① 1型糖尿病は自己免疫性と特発性に分類される.
② Cushing 症候群に伴う糖尿病は2型糖尿病に分類される.
③ 早朝空腹時血糖値が110mg/dl 未満であれば糖尿病は否定できる.
④ HbA1Cが6.5%未満であれば糖尿病は否定できる.
⑤ 最初の検査で糖尿病型を示し,かつ確実な糖尿病網膜症が認められた場合,糖尿病と診断できる.

A:①,②

B:②,③

C:③,④

D:④,⑤

E:①,⑤

研修おたく海を渡る 1(新連載)

プレゼン,プレゼン,プレゼン

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.135 - P.135

 アメリカでの研修も3年が過ぎ,今回,光栄にも散文を連載させてだくことになりました.内科研修3年間の振り返りと,はじまったばかりの腫瘍内科研修での日常を織り交ぜながら,小話に使ってもらえるような話題を提供できればと考えています.毎回おちがつくといいのですが.どうかよろしくお願いします.

 第一回目は,「プレゼン,プレゼン,プレゼン」です.

連載 Case Study 診断に至る過程・1(新連載)

2つの入り口

著者: 松村正巳

ページ範囲:P.136 - P.139

 本シリーズではCase Studyを通じて鑑別診断を挙げ,診断に至る過程を解説してみたいと思います.どこに着目して鑑別診断を挙げるか,次に必要な情報は何か,一緒に考えてみませんか.

 さて,今回の患者さんです.

目でみるトレーニング

著者: 片野健一 ,   浅井泰雅 ,   倉澤美和

ページ範囲:P.167 - P.173

問題 430

 症 例:81歳,女性.

 主 訴:腎不全の精査希望.

 既往歴・家族歴:50歳頃に右乳腺腫瘍手術,父が脳卒中,弟が高血圧.

 現病歴:70歳頃より,近医にて高血圧・高コレステロール血症の加療を受けていた.2003年10月21日,冠動脈バイパス術が施行され,術後ワーファリンコントロールされていた.直径5cmの腹部大動脈瘤も発見された.術前の血清Cr値は0.71mg/dlであったが,その後徐々に上昇し,同年12月15日には3.05mg/dlとなった.腎不全進行の精査加療目的にて同年12月19日当科を紹介初診し,同日,転入院となった.

医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために 1(新連載)

誰が見てもわかる指示書きを目指して

著者: 本村和久

ページ範囲:P.140 - P.143

研修現場と医療事故

解決する方法はあるか?

 新医師臨床研修が始まって,もうすぐ2年である.未熟な研修医ゆえ(そうでなくても事故はいつでも起こりえるが)の間違い,失敗はある.私自身,多くの間違い,失敗を経験しながら,学んできた.

 診療・手技に関して,研修医にお任せの「放置系」研修,研修医がお客さん扱いの「見学系」研修,どちらも患者さんの利益にはならない.きちんとした教育の下,研修医が診療・手技を行う環境が理想である.

しりあす・とーく 第13回

初期研修から後期研修へ―医師研修の「はざま」を語る(前編)

著者: 陳若富 ,   岩田健太郎 ,   吉津みさき

ページ範囲:P.144 - P.155

2004年にスタートした新しい医師臨床研修制度の一期生が,まもなく初期研修を終えようとしている.しかし,この初期研修制度の是非を検証する間もなく,すでに研修医や指導医,臨床研修施設の関心は,次に来る後期研修に移りつつあるようにも見える.

 日本の医師研修は,いまどのような位置に立ち,そして,どこに向かおうとしているのか.初期・後期両方の研修に深くかかわる3人の内科医に,初期と後期の「はざま」に垣間見える日本の医師研修の問題点とその解決法を語っていただいた.

「デキル!」と言わせるコンサルテーション 第13回

<番外編>プライマリケア医(一般開業医)からみたデキル病院勤務医(専門医)とは

著者: 横田雅史

ページ範囲:P.156 - P.160

ある日,地域の中核病院の外来診療室で

〔専門医(病院勤務医)が開業医からの紹介状,X線写真を見ながら患者に向かって……〕

・専門医:「何でもっと早く来れなかったんですか!」

▲患 者:「……すみません……」

・専門医:「何で診断つかなかったんだろうなあ? こんなの簡単なのに! とにかくすぐに入院です! 早く処置しないと手遅れになりますよ!」

▲患 者:「えっ!?」

東大病院内科研修医セミナー 9

短期間に皮質下出血を繰り返した脳アミロイド・アンギオパチーと考えられる75歳女性

著者: 新井憲俊 ,   田島拓 ,   清水潤

ページ範囲:P.162 - P.166

Introduction

・頭蓋内出血の原因は何か?

・どのような場合に脳アミロイド・アンギオパチーを疑うか?

病理との付き合い方 病理医からのメッセージ(10)

医療関連死―病理と法医の狭間で,どう対処するか

著者: 鬼島宏

ページ範囲:P.174 - P.178

医学において,病理学と法医学は比較的近い学問領域と位置づけられている感がある.また実際に,病理学のトレーニングを受けた後に法医学に進むなど,病理学・法医学の両領域に詳しい医師も少なからずいる.しかし,病理学・法医学おのおのの業務内容は,従来は比較的容易に区別できるものであり,(社)日本病理学会ならびに日本法医学会による定義に鑑みる限り,それは明らかのようである(表1).一言でいえば,病気を扱うのが病理学で,法律にかかわる医学を扱うのが法医学である.しかし,近年,医療関連死(診療行為に関連した死亡)の問題が注目されるようになり,病理学・法医学双方にまたがる症例が増加してきており,この点について概説したい.

書評

《シリーズ ケアをひらく》ALS不動の身体と息する機械

著者: 内藤いづみ

ページ範囲:P.25 - P.25

 医療倫理とは何だろう,といのちの現場でいつも考えさせられる.

 立岩がこの本の序章で述べているように,いろいろな場面で同じ言葉が取り上げられると,なんだかもうわかっているような既視感をもつようになるらしい.

診療所マニュアル[ハイブリッドCD-ROM付]第2版

著者: 川井啓市

ページ範囲:P.55 - P.55

 専門志向,大病院志向の時代にあって,医療過疎の地域が少なくありません.本書は近隣に病院がない僻地で孤軍奮闘する医師のために自治医大の卒業生よりなる地域医療振興協会が編集した本ですが,骨格である目的の取り扱い方に医学教育の本来の姿がみられます.

 私事で恐縮ですが,昭和33年に京都府立医科大学を卒業後,第三内科を経て,昭和48年に新設された公衆衛生学教室の教授に就任しました.疫学,基礎研究から臨床まで広く人材を集め,マクロの目から医学を見直そうという趣旨のもとに発足した教室でした.しかし,当時,大学は研究至上主義で,医療の現場でも稀な病気,新しい検査法や治療技術に関心が集まり,救急医学やcommon diseaseに対する関心は低かったと思います.現状でもこの傾向は残っていると言えるでしょう.毎年8,000人の若い医師が巣立って行きますが,彼らに望まれていることは社会のニーズを理解して医療にあたることです.私が本書に関心をもったのは,地域医療を充実させようという自治医大創設の目的と私達の教室が目指したものがだぶって見えるからです.

心電図を学ぶ人のために第4版

著者: 木野昌也

ページ範囲:P.99 - P.99

 本書は1979年の初版発行以来版を重ね,多くの読者から大変高い評価を受けている.初版以来,実に25年の歴史を重ねている,わが国の医学書のなかでも希有な存在である.この本を入門書として愛読され,現在は内科医,循環器専門医,あるいは専門ナースとして臨床の第一線で活躍している方もたくさんおられることであろう.第4版では図版が全面改訂され,新知見が追加されている.

 なぜ,この書がこれほどまでに,多くの方に長く読み継がれているのであろうか.心電図の学習を困難にさせている理由は,人の目には見ることのできないきわめて微量の電気現象を三次元的に理解しなければならないからである.心筋細胞の電気現象が,心臓の働きとどのように関係しているのか.病気の心臓では,電気現象はどのように変化するのか.あるいは人の体に異常が発生したときに,心電図にはどのような変化が起こるのか.心電図だけを勉強しても,これらの疑問には答えることができない.解剖学,生理学,生化学,病理学,ひいては臨床の豊富な知識があって,初めて理解できるのである.この本は初心者のために書かれた心電図の入門書ではあるが,心臓病学についての入門書としてもお勧めの書である.

感染症レジデントマニュアル

著者: 武田裕子

ページ範囲:P.121 - P.121

 基礎医学では細菌学を学んだし,抗菌薬についても薬理学で教わった.実習した病棟には抗菌薬を投与されている患者さんもいらした.それなのに,いざ主治医として抗菌薬をオーダーしようとしてハタと困った研修医は少なくないのではないだろうか.どの抗菌薬を選べばよいのか,他の抗菌薬ではなぜダメなのか.投与量と投与間隔は本に書いてあるとおりでよいのか….研修医としてそれぞれの診療科で各臓器の感染症治療を教わっても,異なる起因菌,異なる部位の感染症にはすぐ応用できない気がする.患者さんが高齢であったり,腎機能が低下しているとか妊娠中であるとか,考えなければならない要素が増えて途方に暮れた経験のある研修医もいるのではないだろうか.

 「感染症」のマネジメントには,細菌に関する知識,抗菌薬への理解,感染部位や可能性のある起因菌など疾患に特徴的な事柄の3つの軸に沿って立体的に考えることが求められる.そのうえで年齢や基礎疾患の有無など個々の患者さんの状況にあわせた治療法を選択しなくてはならない.これらを体系的に教えられたことがないと,いつまでたっても知識は点と点のままにとどまり,新たな患者さんの治療を求められたときにアプローチできず悩んでしまうことになる.藤本卓司著『感染症レジデントマニュアル』は,そのような研修医のために書かれた教科書である.著者の言葉を借りると,“感染症の「地図」を持たずに迷子になって右往左往している医学生・研修医”を対象としている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?