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雑誌目次

雑誌文献

medicina43巻10号

2006年10月発行

雑誌目次

今月の主題 皮膚から見つける内科疾患 皮膚を診てわかる内科疾患

顔でわかる内科疾患

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.1640 - P.1642

ポイント

特有の顔貌を呈する内科疾患がある.

顔面の特徴的な発疹から診断に至る内科疾患がある.

顔色,表情,顔貌,顔面の発疹などを内科診断学の重要な画像情報として捉え,最終診断に至る次の検査の動機付けとすべきである.

爪でわかる内科疾患

著者: 東禹彦

ページ範囲:P.1645 - P.1647

ポイント

全身疾患に伴う爪変化はすべての指趾爪に変化を生じるのが原則.

急速に進行するばち指では原発性肺癌を考える.

突然爪囲紅斑を生じたときにはまず第一に皮膚筋炎を考える.

すべての爪甲が肥厚し,黄色調を帯びる黄色爪は薬剤でも生じる.

急に爪に着色を生じたときには原因として薬剤を考える.

毛でわかる内科疾患―多毛,脱毛,毛の形態

著者: 渡辺力夫

ページ範囲:P.1648 - P.1651

ポイント

多毛,脱毛をみたら,薬剤性かどうかに注意する.

多毛には,男性毛型多毛と無性毛型多毛がある.前者では多囊胞性卵巣症候群によるものが多い.後者では後天性症候性のものが多く,局所性のものもある.

内科疾患に伴う脱毛は,内分泌異常,代謝・栄養障害,膠原病,感染症などにより生じる.

皮膚病変を伴う内科疾患で,毛の形態異常をみることがある.

皮膚・粘膜色でわかる内科疾患

著者: 古村南夫

ページ範囲:P.1652 - P.1655

ポイント

全身にびまん性の色素沈着が認められる症例では,内科疾患を疑い,全身の皮膚・粘膜の色調や色素斑を確認し,スクリーニング検査にて原因疾患を鑑別する.

皮膚や粘膜の色素沈着の特徴から原因疾患が推測できる場合が多い.

色素沈着をきたしやすい薬剤が投与されている場合は,薬剤性の色素沈着の可能性も考える.

紫斑でわかる内科疾患

著者: 片山治子

ページ範囲:P.1657 - P.1659

ポイント

手に触れない点状紫斑・斑状紫斑はまず血小板・凝固系の異常を疑う.

手に触れる点状紫斑・斑状紫斑・炎症を伴う網状紫斑をみたら,免疫機序を介する血管炎を疑う.

手に触れない網状紫斑は血管の閉塞機序を考える.

発熱と皮疹でわかる内科疾患

著者: 日野治子

ページ範囲:P.1660 - P.1665

ポイント

紅斑・丘疹を呈する疾患の原因は非常に多い.

急性発疹症に分類される疾患の鑑別は難しい.熱型は疾患の診断に役立つ例が多い.

急性発疹症といえばウイルス・細菌に起因する病態が多いが,鑑別にSweet病,成人Still病も忘れてはならない.

薬疹を見逃さない

薬疹を見極めるコツ

著者: 塩原哲夫

ページ範囲:P.1666 - P.1668

ポイント

ウイルス性発疹と鑑別の難しい薬疹の多くは,基盤にウイルス感染を伴って出現したものが多い.

固定薬疹,Stevens-Johnson症候群など特徴的な臨床像を呈する薬疹以外には,一目で薬疹と診断することは不可能である.

皮疹の出現経過,分布などに加えて検査データを総合的に判断して鑑別することになる.

重症薬疹を見逃さない―重症化の最初の徴候は?

著者: 小野田雅仁 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.1670 - P.1672

ポイント

SJS,TENの初期症状の3主徴は,①発熱(多くの場合39℃以上),②皮膚粘膜移行部の粘膜疹,③皮膚に多発する多形紅斑様発疹(紅斑,水疱,びらん)である.

TENは,①びまん性紅斑進展型TEN,②SJS進展型TEN,③特殊型(多発性固定薬疹進展型TENなど)の3病型に分類される.

SJS/SJS進展型TENでは,病理組織による至急診断が重要である.表皮細胞の好酸性壊死が多数認められる場合には,急激に症状が進行する可能性が高いため,ステロイドパルス療法などを検討する必要がある.

いま話題のDIHS(薬剤性過敏症症候群)とは

著者: 藤山幹子

ページ範囲:P.1674 - P.1676

ポイント

原因薬剤のほとんどは,抗痙攣薬,アロプリノール,メキシレチン,サラゾスルファピリジン,DDS,ミノサイクリンである.

発症までの内服期間が2~6週と長い.

発熱,肝障害,腎障害,リンパ節腫脹,血液学的異常を伴う薬疹である.

発症後10~28日の間にヒトヘルペスウイルス6の再活性化を伴い,経過が遷延する.

ステロイドの全身投与は有効であるが,減量は慎重に.

薬剤性光線過敏症を起こさない―自分で処方した薬剤で光線過敏症を起こさないために

著者: 川田暁

ページ範囲:P.1677 - P.1679

ポイント

機序として光毒性と光アレルギー性がある.

原因薬剤としてはニューキノロン系抗菌薬とピロキシカムが多い.

日光中の紫外線のUVAによる.

日光の当たる,顔面・頸部・項部・前腕伸側・手背に皮膚症状が限局する.

最近の薬疹の動向を知る

著者: 相原道子

ページ範囲:P.1680 - P.1682

ポイント

ゲフィチニブ,メシル酸イマチニブ,リバビリンの多彩な薬疹は,薬理作用に基づくものが大部分である.

これらは投与継続でも消褪することがある.

皮疹が著しいときには投与を中止し,消褪後に少量からの再投与を試みると皮疹の再発をみないことがある.

糖尿病と皮膚の密接な関係

この皮疹を見たら糖尿病を疑う

著者: 段野貴一郎

ページ範囲:P.1684 - P.1685

ポイント

糖尿病の細小血管障害または代謝障害と密接に関連して生じる皮膚病変(直接デルマドローム)を取り上げた.

汎発性環状肉芽腫,リポイド類壊死症,掌蹠膿疱症は糖尿病前症との関連が強い.

糖尿病性浮腫性硬化症,澄明細胞汗管腫,後天性穿孔性皮膚症は顕性糖尿病を高率に合併する.

糖尿病を疑うきっかけになる皮膚真菌症

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.1686 - P.1688

ポイント

皮膚真菌症の99%以上を占める白癬,カンジダ症,癜風が免疫不全を背景に発症することはない.

皮膚局所の温度・湿度といった局所要因がその発症に強く関与している.したがって通常は,皮膚真菌症から糖尿病を疑うことはない.

しかし広範囲に生じた場合や,治療に対する反応が悪い皮膚真菌症患者では,一応糖尿病を疑ったほうがよい.

足病変から見える糖尿病

著者: 十一英子

ページ範囲:P.1690 - P.1692

ポイント

糖尿病患者では胼胝(たこ)・鶏眼(うおのめ),足白癬(水虫)や軽微な外傷からも潰瘍を発症する.

潰瘍の創部の状態と重症度の適切な評価が,足趾切断も含めた治療の選択に必要である.

フットケアを行い,足病変の発症と再発を予防することが重要である.

皮膚で見つける膠原病

Raynaud症状をみたら

著者: 佐藤伸一

ページ範囲:P.1694 - P.1695

ポイント

まず,Raynaud症状の特徴を問診などで確認する.

次に,原発性か,膠原病に関連する二次性のRaynaud症状かの鑑別が重要である.

この鑑別には爪上皮出血点が有用である.

指先で見つける膠原病

著者: 石川治

ページ範囲:P.1696 - P.1698

ポイント

手指には膠原病を疑う契機となる多彩な皮膚症状が現れる.

症状には疾患特異性の高いものと,低いものとが存在する.

非特異症状には,手指の浮腫性腫脹,Raynaud現象,爪上皮の点状出血,凍瘡,爪周囲紅斑,アクロチアノーゼなどがある.

特異症状には,皮膚筋炎におけるGottron徴候および丘疹,全身性強皮症における強指症および指先潰瘍・瘢痕と屈曲拘縮などがある.

本当の蝶形紅斑とは

著者: 土田哲也

ページ範囲:P.1699 - P.1701

ポイント

本当の蝶形紅斑はSLEの蝶形紅斑を指す.

SLEの蝶形紅斑は診断基準項目のなかで感度,特異性の面から最も優れた診断項目である.

SLEの蝶形紅斑にも多様性がある.

他疾患の頰部紅斑とは臨床的に鑑別できる.

SLEと光線過敏

著者: 濱口儒人 ,   竹原和彦

ページ範囲:P.1702 - P.1703

ポイント

光線過敏はSLEの診断項目の一つであり,SLEの初発症状となることがある.

光線過敏によって誘発される代表的な皮疹として,蝶形紅斑,DLE型皮疹,亜急性型紅斑がある.

UVA,UVBとも光線過敏を誘発しうる.

光線過敏を診断する客観的な検査方法は確立されていない.

日常的には,遮光に留意することが重要である.

Sjögren症候群の環状紅斑

著者: 片山一朗

ページ範囲:P.1704 - P.1706

ポイント

Sjögren症候群にみられる環状紅斑は顔面に多く出現し,辺縁隆起性であり,表皮の変化に乏しい.

亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)との鑑別が問題となる.Sjögren症候群は組織学的には血管周囲性の密なリンパ球の浸潤が主体である.

環状紅斑の背景にSjögren症候群という病態が存在することを念頭において,日常診察を行っていくことが重要と考えられる.

診断基準にないが膠原病を疑う皮疹

著者: 衛藤光

ページ範囲:P.1708 - P.1710

ポイント

膠原病の早期診断には,診断基準にない皮膚病変を把握することが重要である.

膠原病の皮膚病変には,特異的皮膚病変と非特異的皮膚病変がある.

膠原病を疑う皮疹は自覚症を欠き,動きが少なく,顔面四肢に対称性に分布する.

膠原病を疑う皮疹は末梢循環障害に基づく皮疹が多い.

皮疹でわかる内科疾患

全身性アミロイドーシス

著者: 寺木祐一

ページ範囲:P.1712 - P.1713

ポイント

ALアミロイドーシスと透析アミロイドーシスでしばしば皮疹がみられる.

皮疹はアミロイドーシスの初発症状として出現することが少なくない.

ALアミロイドーシスでは紫斑,丘疹,結節,水疱がよくみられる.

透析アミロイドーシスでは丘疹,皮下結節がみられる.

診断には生検により真皮あるいは皮下織のアミロイドの沈着を証明する.

サルコイドーシス

著者: 岡本祐之

ページ範囲:P.1714 - P.1716

ポイント

結節性紅斑(肉芽腫陰性),瘢痕浸潤(肉芽腫+異物),皮膚サルコイド(肉芽腫陽性)に分類される.

典型疹は顔面を中心に発症する紅色隆起性病変(結節型)と環状病変(局面型),および外傷後の瘢痕部に生じる瘢痕浸潤である.

魚鱗癬や白斑などの非典型疹も報告されているので,確定診断のために皮膚生検が重要である.

グルカゴノーマ

著者: 堀尾武

ページ範囲:P.1717 - P.1719

ポイント

壊死性遊走性紅斑は,皮膚症状から内臓悪性腫瘍の発生部位まで特定できるデルマドロームである.

第一に膵臓グルカゴノーマ,第二に肝機能障害の有無と原因を検索する.

皮膚症状に対する対症療法は無意味で,基礎疾患の治療を優先する.

悪性リンパ腫―眼瞼の浮腫から見つかるリンパ腫

著者: 大野貴司 ,   山田晶子 ,   岩月啓氏

ページ範囲:P.1720 - P.1722

ポイント

眼瞼浮腫をみた場合,皮膚筋炎,Sjögren症候群,甲状腺機能異常などの鑑別が必要である.

眼瞼浮腫はEBウイルス関連リンパ増殖性疾患,リンパ腫の初発症状として生じる場合もある.

Behçet病―Behçet病を疑う皮疹とは?

著者: 金子史男 ,   尾山徳孝

ページ範囲:P.1724 - P.1727

ポイント

再発性アフタと結節性紅斑様発疹をきたしたら,Behçet病(BD)を疑う有力な情報として経過を観察することが大切である.

BD患者の血栓性静脈炎の皮膚症状は血管型BDを発症する徴候である.

男性BD患者の活動期には眼症状をきたす頻度が高い.

内科医が気づくべき皮膚症状

結節性紅斑をみたら

著者: 妹尾明美

ページ範囲:P.1728 - P.1730

ポイント

下腿の有痛性皮下結節:発熱や関節痛など全身症状を合併することが多い.

組織は皮下脂肪織炎.

病因:感染アレルギーもしくは全身性疾患(Behçet病,サルコイドーシス,Crohn病,Sweet病および膠原病など)の一症状として出現.

治療は安静,消炎鎮痛薬,副腎ホルモン薬.

Blue toe syndromeをみたら

著者: 松村由美

ページ範囲:P.1732 - P.1733

ポイント

blue toe syndromeの本態はコレステロール結晶塞栓症のことである.

動脈硬化の粥状硬化巣より剝離したコレステロール結晶が血管内を流れて,末梢の細い動脈で塞栓を生じることにより発症する.

治療のポイントは,①血管を拡張させ血液供給量を増やすこと,②壊死組織を除去すること,③疼痛コントロールの3点である.

C型肝炎患者でみられる皮膚疾患

著者: 落合豊子

ページ範囲:P.1734 - P.1736

ポイント

C型肝炎ではC型肝炎ウイルス(HCV)の感染に伴う免疫学的な機序により特徴的な皮膚病変を生ずる.

HCVの関連する皮膚症状として,混合型クリオグロブリン血症,蕁麻疹様紅斑,晩発性皮膚ポルフィリン症,口腔粘膜扁平苔癬などが挙げられる.

インターフェロン療法を行っている患者では,脱毛が高頻度にみられる.

関節リウマチ,痛風でみられる皮膚症状

著者: 檜垣祐子

ページ範囲:P.1737 - P.1739

ポイント

リウマトイド結節はRA患者の20%に認められ,RAの診断にも有用である.

RAにみられる皮膚症状として血管炎と肉芽腫性変化によるものが重要である.

Rheumatoid neutrophilic dermatitisは重症のRAに多く,四肢,臀部に紫紅色局面,膿疱を生じる.

痛風結節は尿酸塩を中心とした肉芽腫で,耳介にみられることが多い.

透析患者と皮膚症状

著者: 服部瑛

ページ範囲:P.1740 - P.1742

ポイント

透析患者では多種・多彩な皮膚病変を生じる.

そのなかで,乾燥性皮膚が最も多く,痒みが患者を最も悩ませている.

痒みは,①乾燥皮膚に基づく外からの痒み刺激,②痒みメディエーターなどを介した内からの痒み刺激,そして③中枢における痒み刺激の3つの因子が想定されている.

最近,色素沈着の程度は減じている.

皮膚角化症,水疱性皮膚疾患,透析アミロイドーシス,あるいは石灰化など特殊な皮膚病変もみられる.

Calcifylaxisは血管内の石灰化で,予後不良のことが多いので注意を要する.

理解のための30題

ページ範囲:P.1744 - P.1749

連載

目でみるトレーニング

著者: 譲尾昌太 ,   長沼文雄 ,   山下友子

ページ範囲:P.1751 - P.1758

問題 457

 症例:77歳,男性.

 主訴:6年前からの咳嗽.

 既往歴:55歳 塵肺,76歳 高血圧症.

 生活歴:喫煙歴なし.

 職業歴:溶接工40年,船の溶接の検査2年.

 現病歴:6年前から湿性咳嗽があり,1年前からの高血圧症を加療中の病院で胸部X線写真に異常がみられたために,精査目的で紹介となった.

病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 9

神経・筋

著者: 鈴木博義

ページ範囲:P.1760 - P.1764

 神経・筋疾患を扱う病理学の領域を神経病理学(neuropathology)とよび,米国では病理学の中のsubspecialityとして神経病理医を認定する制度が設けられている.神経系や筋組織を侵す病態のなかには,全身性の疾患が神経,筋系へ影響を及ぼし障害が起こっているものも多い.神経・筋疾患に関して病理医とうまく付き合って最大限のよい結果を得るためにはまず,担当の病理医と緊密な情報交換を行うことから始まるといえよう.筆者が神経病理の本格的な勉強を始めた当時,師から「neurologyのないところにはneuropathologyは存在しない」という言葉を教えられた.どの臓器の病理でもそうであるが,臨床神経学においては,神経症候を発現している病変部位とその病態の2者が決定されて初めて,リハビリテーションも含めた治療方針の決定に有用な診断につながることになる.病理診断に関しても,病理学的に見いだされた病変が,どのような臨床症状につながっているのかがわからなければ,神経病理学的な検索を行う意義がなくなってしまう.よって,神経病理学には詳しい診察とよく吟味をされた検査による臨床情報が必須なのである.読者諸君には主治医として神経疾患を担当する際には,ぜひ,内科診断学の神経疾患診察法に再度目を通し,病歴を詳細にとり,意識レベルや精神症状および高次機能障害から始まる系統的な神経学的所見をきちんと記録することを行ってほしい.その記録が病理検査依頼書,剖検申込書に記載されることにより,臨床医と病理医との間に理想的な連携が生まれるのである.

中枢神経疾患

 1. 髄液検査の有用性

 髄液検査は生化学的検査,いわゆる一般検査の範疇に入るものと思われがちであるが,実際は病理学的検査の一つでもあり,髄液細胞を塗抹し,Giemsa染色を行うことにより,簡単に髄液の細胞診を行うことが可能である.塗抹は病理検査室で機械的にも行うことが多いが,簡単な器具を用いて病棟でも行うことができる.Giemsa染色やGiemsa染色と同等の染色を迅速に行えるディフ・クイック染色液を用いれば,もっと短時間で顕微鏡的観察が可能になる.髄液細胞診検査も神経病理学においては大切な検査の一つであること理解していただきたい.

研修おたく海を渡る 10

チーフレジデントとソーシャルチーフ―昼のチーフと夜のチーフ

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1767 - P.1767

 みなさん「チーフレジデント」というのはどこかで聞かれたことがあると思います.レジデンシー修了後に,モーニングレポートと呼ばれる毎朝の症例検討会の司会をしたり,当直のスケジュールを決めたりするレジデントのお兄さん,お姉さん的な存在です.医学の知識のみならず,信頼のおける人格者がリーダーとして選ばれます.僕の直接の友人だけでもチーフをやった日本人が4人もいます.すごいものです.レジデントのみならず医学部生を引き連れてHistory TakingやPhysical Examの指導もします.またミドルマンとも呼ばれ,指導医とレジデントの板挟みになることも任務の一つです.

 モーニングレポートをいかに仕切るかが,チーフのもっとも華々しい一面です.事前に発表するケースをレジデントから教えてもらうかわりに,ていねいな準備をして配付資料まで用意してくれるチーフもいれば,予備知識なしにその場で自分の経験,知識だけで鮮やかにまとめ上げるチーフもいました.病院中のshareする価値のある症例がチーフのところに集まってくるので,臨床経験の幅を広げられるという利点もあるようです.

医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために(最終回)

医療事故と医学教育について

著者: 本村和久

ページ範囲:P.1768 - P.1770

 医療事故に関して9回の連載を続けてきた.今回で最終回である.医療事故防止の最も効果的な手段は教育と考えている.医療事故と医学教育について述べたい

医療事故の多様性,不確実性

 医療事故に関する情報は驚くほど多い.原因分析もいろいろな方法でなされている.原因としては,医師個人の資質に問題がある,医学的に問題がある,コミュニケーションに問題がある,組織として事故対策に取り組んでいない,対策を取る人的・時間的余裕がないなど,多様である.個人の問題から組織の問題まで,技術的な問題から資源の問題まで,その問題の範囲は広い.その問題の範囲の広さゆえ,医療事故からみえることは,多岐にわたる.また,当たり前のことだが,いつ,どんな事故が起こるか,予測することはきわめて困難であり,不確実性の高い問題でもある.

できる医師のプレゼンテーション―臨床能力を倍増するために 7

「伝える」ことのコツ─声・姿勢・目線・時間

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.1772 - P.1778

例 便秘がちで動脈硬化性病変のリスクの少ない65歳女性が,下血を主訴に憩室からの出血疑いで入院した時のプレゼンテーションで

研修医:(現病歴の中で)夜間就寝中,えーっと2時30分ごろだったそうですが,突然便意を催して,1階のトイレに行かれ,最初は普通便が出たそうです.その後,下痢みたいな水が出ていたそうです.次は4時ごろ,時計を見ていたそうですが,座った瞬間にシャーッと水様便が出たそうで,見てみると真っ赤だったそうです.結果的には血液が出てたということだと思います.えーっと,その次は6時をちょっと回った時に…….

指導医:とにかく,突然の便意があって,最初に便が混じった血液を頻回に排泄したんだね.

研修医:えーっと,まとめるとそうです.すみません.

 (検査結果まで進んで)血液検査ですが,Hb/Hctが12.3で,36.7でした.アレ,36.9だったような…….

指導医:比較できる以前のHb/Hctはありますか?

研修医:データを確認しようとしたんですけど,コンピュータに取り込まれていなくて,いろいろと聴きにいったんですが…….開業医の先生にも連絡しようかと思ったんですが,かけようとした時に別の用事で呼ばれて…….

指導医:あ,じゃあ比較のデータはないんだね.

研修医:はい,ありません.すみません.

指導医:凝固系は異常なかった?

研修医:凝固系ですか…….えーっと.(パラパラ)やっているとは思うんですけどぉ…….ちょっと待って下さい.(パラパラ)えーっと.PTは97%で,aPTTは35.2秒だった~と(ゴモゴモ).

指導医:じゃぁ,異常ないんだね.

研修医:す,すみません.ありません.(その後,最後までようやく到達し)以上です.

指導医:ハイハイ.これで終わりですね.

研修医:あの……次の症例にいっていいですか?

指導医:まだあるのか……(周りを見ると,数人が眠っている).フゥー.

 症例プレゼンテーションは,症例の把握をする部分とそれを伝える部分に分かれます.前回までの話は,情報をいかに集めるか,いかに整理するか,と症例把握=内容の部分を話してきました(一部,それぞれの箇所での伝え方のコツもありましたが).今回は「伝える」ことのコツを全般的に話します.

 症例提示のプレゼンテーションに限りませんが,プレゼンテーションをするときのポイントには,内容・声・姿勢・目線・時間が大切になってきます.聴衆を飽きさせることなく,集中力を落とさず,イライラさせることなく,気持ちよく聞いてもらうか,ということを意識しましょう.

東大病院内科研修医セミナー 15

関節リウマチ治療中に発症したニューモシスチス肺炎の一例

著者: 北川洋 ,   佐野仁美 ,   河原崎秀一

ページ範囲:P.1780 - P.1785

Introduction

関節リウマチ治療中に出現する肺炎の原因は何か?

ニューモシスチス肺炎治療におけるステロイド療法の位置付けは?

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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