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雑誌目次

雑誌文献

medicina43巻11号

2006年11月発行

雑誌目次

今月の主題 頭痛治療の疑問を解決する 頭痛を眺める

頭痛医療の変貌(この10年を振り返って)―トリプタン登場のインパクト

著者: 岩田誠

ページ範囲:P.1800 - P.1802

ポイント

わが国における頭痛の医療は,この10年の間に大きな進歩を遂げた.その要因としては,日本頭痛学会が設立されたこと,わが国にもトリプタンが登場したこと,そして神経内科医が頭痛医療に関心をもつようになったことなどが挙げられる.

国際頭痛分類(第2版)の特徴と問題点―改訂版の実際の使用法と新たに指摘されている問題点とは?

著者: 荒木信夫

ページ範囲:P.1804 - P.1806

ポイント

ICHD-IIのappendixには,今後検討されるべき頭痛として,前兆のない純粋月経時片頭痛,前兆のない月経関連片頭痛などが挙げられている.

ICHD-IIの問題がある点として,慢性片頭痛,薬物乱用頭痛が再検討された.

本年,慢性片頭痛,薬物乱用頭痛の診断基準が改訂された.

頭痛の疫学―わが国とアジア各国,欧米との差は?

著者: 古和久典 ,   竹島多賀夫 ,   中島健二

ページ範囲:P.1807 - P.1811

ポイント

国際頭痛学会の診断基準に基づいた疫学調査により,頭痛の有病率の国際比較が可能となった.

日本における片頭痛の有病率は8%,緊張型頭痛の有病率は22%であった.

頭痛有病率の国際比較の際には,種々の背景因子を考慮した検討が必要である.

頭痛診療ガイドラインと活用法―厚生労働省班研究の成果は?

著者: 濱田潤一

ページ範囲:P.1812 - P.1814

ポイント

2006年,日本頭痛学会を中心とする厚生労働省の班研究において「慢性頭痛の診療ガイドライン」が作成された.

科学的根拠に基づき,頭痛診療の現場における疑問(クリニカルクエスチョン)に対する推奨(勧告)がまとめられている.

このガイドラインは片頭痛,群発頭痛,緊張型頭痛などの一次性頭痛を主な対象としているが,頭痛診療全般に対応できるよう配慮されている.

頭痛診療の実際

頭痛診療における問診の重要性と診療コミュニケーションツール―頭痛の確定診断への最短コースは?

著者: 平田幸一

ページ範囲:P.1816 - P.1819

ポイント

一次性頭痛の診断には,画像診断などによる二次性頭痛除外以外に問診しかない場合が多い.

診療待ちの間に「片頭痛スクリーナー」などの問診票を配り,患者自身にチェックしてもらう.

「頭痛ダイアリー」は頭痛についてのプロスペクティブかつ時間的な情報を得ることができる.また,これにより頭痛の性状,関連情報,薬剤の内服時期・治療効果が明らかになる.

確定診断にあたっては,「国際頭痛学会分類改訂版日本語版」に準拠する.

頭痛診察の実際―ベッドサイドでの診察および補助診断法とは?

著者: 永田栄一郎

ページ範囲:P.1821 - P.1823

ポイント

まず,一次性頭痛か二次性頭痛かを鑑別することが重要である.

二次性頭痛の場合には,早急に頭部CT検査などを行い処置が必要な場合が多い.

一次性頭痛の場合には,くわしい問診が診断の助けとなる.

頭痛の鑑別―外来での危険な頭痛の見分け方は?

著者: 寺本純

ページ範囲:P.1824 - P.1826

ポイント

二次性頭痛では,特に生命予後にかかわる頭痛を早く診断することが重要である.特に脳圧亢進症状と髄膜刺激症状についてはすぐに気づくことが大切である.以下の場合には二次性頭痛を念頭に置かなければならない.

頭痛が出現するようになって病歴が浅い.

経過とともに頭痛の程度が強まってくる.

持続性頭痛で受診時にも頭痛が確認できる.

発熱・意識障害・麻痺などの随伴症状がある.

頭痛のさまざま 【片頭痛】

病態・治療の最近のトピックス―Cortical spreading depressionは本当に片頭痛の原因か?

著者: 清水利彦

ページ範囲:P.1828 - P.1830

ポイント

Spreading depressionは脳局所の神経細胞やグリア細胞に起こる脱分極とその後の機能抑制で,約2~3mm/分の速さで周囲に伝播し,片頭痛の前兆に関与すると考えられている.

片頭痛の病態にspreading depressionの関与を考慮する説は神経説と呼ばれている.

Spreading depressionは三叉神経系を活性化し頭痛発作に関与するともいわれているが,まだ結論は得られていない.

片頭痛急性期治療の実際―急性期治療にベストはあるのか?

著者: 竹島多賀夫 ,   今村恵子 ,   中島健二

ページ範囲:P.1831 - P.1833

ポイント

片頭痛の治療薬には,セロトニン作動薬,トリプタンや鎮痛薬が用いられる.

鎮痛薬は軽度~中等度の片頭痛に有用.中等度以上の片頭痛にはトリプタンが推奨.

トリプタンは頭痛発作が進展してからでも効果が期待できるが,頭痛がひどくなるまで使用を待つ必要はなく,むしろ早期,十分量の使用が推奨される.

トリプタン系薬剤の特徴とその使い分け―4種類のトリプタン系薬剤の使い分けにポイントはあるのか?

著者: 清水俊彦

ページ範囲:P.1835 - P.1837

ポイント

トリプタン製剤はスマトリプタンを皮切りに,欧米では7種類が存在し,本邦ではこのうちスマトリプタン,ゾルミトリプタン,エレトリプタンそしてリザトリプタンの4種類のトリプタン製剤が上市されており,さらに5番目のトリプタン製剤として,ナラトリプタンが承認申請段階にある.

過去に欧米で大規模なメタアナリシスが行われたが,これは個々のトリプタン製剤の有効性を比較したものであり,それぞれの使い分けに関しては言及していない.

また近年,中枢性感作(central sensitization)に基づいたアロディニアがトリプタン製剤の効果をより確実に発揮する早期服薬のひとつの基準として,盛んに論じられている1,2)が,このメタアナリシスの時代にはまだこのような早期服薬も徹底されておらず,このメタアナリシスに関しては疑問視する声も多い.

片頭痛予防治療の実際―その実践とノウハウは?

著者: 立岡良久

ページ範囲:P.1838 - P.1840

ポイント

頭痛発作の頻度が高い場合,急性期治療薬の効果が不十分か,有害事象や禁忌で使用できない場合が予防療法の適応となる.

頻用される薬剤は,塩酸ロメリジン,アミトリプチリン,プロプラノロール,バルプロ酸である.

いずれの薬剤も少量より開始し有害事象がないことを確認しながら効果発現まで増量する.

いずれの予防薬も効果発現に1~2カ月を要する.

今後期待される片頭痛治療―トリプタン後の片頭痛治療の展望は?

著者: 北川泰久

ページ範囲:P.1842 - P.1845

ポイント

トリプタンはいままでの片頭痛治療の歴史のなかでは最も有効性の高い薬剤である.

トリプタン以後に期待される新しい治療としては,急性期においてはドパミン受容体拮抗薬,カルシトニン遺伝子関連ペプチド拮抗薬,一酸化窒素合成酵素抑制薬,予防療法としてはトピラメート,ギャバペンチン,ARB,将来的には皮質拡延性抑制阻害薬などが期待される.

これら治療薬はトリプタンを上回るほどの効果を期待できるか疑問はあるが,併用療法としての効果を期待したい.

【緊張型頭痛】

緊張型頭痛の病態・治療の最近のトピックス―治療の実際とノウハウは?

著者: 立花久大

ページ範囲:P.1846 - P.1848

ポイント

緊張型頭痛の病態として,反復性緊張型頭痛については末梢性疼痛メカニズムが,慢性緊張型頭痛については中枢型疼痛メカニズムが役割を果たしていると考えられている.

急性期療法としては鎮痛薬,非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAID)が,予防的投薬としては三環系抗うつ薬が有効とされている.

筋弛緩薬,抗不安薬,抗うつ薬は急性期,慢性期ともに用いられる.

非薬物療法としてはバイオフィードバック(認知行動療法),頭痛体操などがある.

【群発頭痛】

群発頭痛の病態・治療の最近のトピックス―治療の実際とノウハウは?

著者: 今井昇

ページ範囲:P.1850 - P.1852

ポイント

急性期治療(とん挫療法)は,スマトリプタン皮下注か純酸素吸入を行う.

スマトリプタン点鼻やトリプタン内服も効果があり,即効性という点で点鼻薬は内服薬より優れている.

予防療法は,ベラパミル内服とステロイド内服の併用を行う.

ベラパミルは群発期間服用し,ステロイドは1~2週間で漸減,中止する.

三叉神経・自律神経性頭痛とは―その特徴と鑑別のポイントは?

著者: 山口啓二

ページ範囲:P.1854 - P.1857

ポイント

三叉神経・自律神経性頭痛は頭部の自律神経症状を伴う非持続性の頭痛である.

群発頭痛以外はきわめて稀である.

自律神経症状の有無と頭痛の持続時間が鑑別上特に重要である.

器質的疾患でも同様の頭痛をきたすことがあるので注意する.

【薬物乱用頭痛】

薬物乱用頭痛とは―どのように診断し治療するか?

著者: 五十嵐久佳

ページ範囲:P.1858 - P.1860

ポイント

頭痛が頻回の場合は頭痛薬の使用状況を確認する.

毎週2日以上,頭痛薬を服用していれば薬物乱用頭痛を疑う.

問診により,もとの頭痛が何かを知る.

頭痛ダイアリーを用いて,頭痛日数と薬物使用日数を確認しながら経過をみる.

治療は原因となった急性期治療薬の中止と予防療法である.

【見逃してはならない危険な頭痛】

救急医学における頭痛―脳血管障害,中枢神経感染症による頭痛を見逃さないためには?

著者: 木田耕太 ,   船曳知弘 ,   藤島清太郎

ページ範囲:P.1862 - P.1865

ポイント

頭痛の診断にあたっては“Assume the worst”の原則に基づき,脳血管障害(特にくも膜下出血),中枢神経系感染症の鑑別に注意する.

CTはくも膜下出血をはじめとする脳血管障害,脳腫瘍,副鼻腔炎の診断に有用である.

臨床的にくも膜下出血が疑われるが,CT所見が陰性の場合,さらに腰椎穿刺を行い血性髄液の有無を確認する.

MRIは,ほとんどの脳腫瘍,等吸収の硬膜下血種などにおいてCTより感度がよいとされるが,急性期のくも膜下出血については,CTを上回るものではない.

【さまざまな原因による頭痛】

頭蓋内圧と頭痛―内圧亢進・低下による頭痛の特徴は?

著者: 中里良彦 ,   荒木信夫

ページ範囲:P.1866 - P.1868

ポイント

特発性頭蓋内圧亢進症の頭痛の特徴は,頭部全体の割れるような頭痛で,嘔吐,うっ血乳頭,外転神経麻痺を伴うことがある.

低髄圧症候群(特発性低髄液圧性頭痛)の特徴は,座位または起立後15分以内に生じる頭痛である.突然の激痛で発症し,項部硬直を認め,くも膜下出血との鑑別を要することがある.

頭蓋・頸椎異常と頭痛―頸椎疾患の訴えとしての頭痛のポイントは?

著者: 松本守雄 ,   千葉一裕 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.1870 - P.1873

ポイント

頸椎疾患由来の頭痛の頻度は比較的高い.

頸椎の器質的疾患によるものと,後頸部筋のスパスムによるものに大別される.

器質的疾患としては,加齢疾患,腫瘍,関節リウマチ,外傷,先天奇形などがある.

眼科疾患と頭痛―眼球疾患か眼球外疾患か?

著者: 根木昭

ページ範囲:P.1874 - P.1875

ポイント

急性緑内障発作は中年以降の女性に多く,ストレスや暗所が誘因になる.

片眼の眼痛,頭痛,充血,角膜混濁,瞳孔散大,対光反射消失を示す.

マンニトール点滴,アセタゾラミド静注,ピロカルピン,β遮断薬点眼で眼圧を低下させたあと,レーザー虹彩切開で瞳孔ブロックを解消する.

耳鼻科疾患と頭痛―副鼻腔炎に伴う頭痛の特徴は?

著者: 石井正則

ページ範囲:P.1876 - P.1878

ポイント

副鼻腔は狭い開口部で副鼻腔の含気腔と外界と継がっている.そのため,この狭い交通路が炎症や腫瘍などでふさがると,頭痛が出現しやすくなる.

最近は,細菌性の慢性副鼻腔炎は減ってきており,アレルギー性鼻炎に関連した慢性副鼻腔炎が増加している.

治療は,マクロライド系抗生物質の長期内服療法が多いが,症状の改善が得られない場合は,内視鏡下鼻内手術の適応となる.

顎関節症と頭痛―顎関節症は頭痛とどんな関係があるのか?

著者: 和嶋浩一

ページ範囲:P.1881 - P.1883

ポイント

顎関節症の病態は顎関節の炎症と咀嚼筋の痛みからなり,それぞれ頭痛と感じられる場合がある.

国際頭痛分類第2版1)では,顎関節の痛みによる頭痛を第2部二次性頭痛の「11.7 顎関節症による頭痛または顔面痛」と分類している.

咀嚼筋の痛みによる頭痛は,頭痛分類第1部緊張型頭痛「頭蓋周囲の圧痛を伴う緊張型頭痛」に含まれている.

緊張型頭痛の一部は筋性顎関節症と同じ病態であるといえる.

精神疾患と頭痛―うつ,ストレスと頭痛の関係は?

著者: 三村將

ページ範囲:P.1884 - P.1888

ポイント

精神疾患による頭痛は,精神病性障害による頭痛と,身体化障害による頭痛の2つに大きく区分される.

精神病性障害による頭痛の中核はうつ病によるものであり,身体化障害による頭痛は疼痛性障害と診断される場合が多い.

緊張型頭痛や片頭痛などの慢性頭痛はうつ病や不安障害との併存率が高い.

慢性頭痛においては,基盤にある精神疾患の適切な治療を早期から行っていくことが重要である.

三叉神経痛と顔面痛―多様な顔面痛をいかに鑑別するか?

著者: 根来清

ページ範囲:P.1889 - P.1891

ポイント

三叉神経痛は,そのほとんどが,蛇行または迷走する血管による三叉神経根圧迫が原因である典型的三叉神経痛と,血管圧迫以外の原因病変が証明される症候性三叉神経痛に分類される.

典型的三叉神経痛は,通常片側性で三叉神経第2枝,第3枝領域に突然に生じ,持続は数分の1秒から2分で終わる電撃痛である.

三叉神経痛が,若年者に生じた場合,両側性にみられた場合,発作間歇期に他覚的感覚障害がみられた場合には,血管圧迫以外の器質的疾患を考慮すべきである.

高血圧と頭痛―高血圧は頭痛の原因か,結果か?

著者: 柴田護

ページ範囲:P.1892 - P.1893

ポイント

高血圧性脳症において頭痛は中核的な症状である.

高血圧性脳症では脳血流の自動調節能が破綻し,MRI画像などで後頭葉を中心に浮腫性変化を認める.

中等症までの高血圧が,頭痛の原因となることを示すエビデンスは少ない.

頭痛患者に高血圧を認めた場合は,頭痛の増悪因子になっている可能性もあり,適切な降圧を行うべきである.

頭痛をめぐるトピックス

アロディニア―片頭痛発作中の病態はトリプタン治療とどのように関連するのか?

著者: 竹島多賀夫 ,   房安恵美 ,   中島健二

ページ範囲:P.1894 - P.1896

ポイント

本来,痛みを感じない刺激によって痛いと感じる状態をアロディニアという.痛くて髪をさわれない,手がしびれるなどの症状がある.

片頭痛発作は,三叉神経血管系の神経原性炎症から末梢感作,三叉神経尾側核の中枢感作,より高位の視床感作と進展する.アロディニアが出現するとトリプタンの効果が得られにくいので,頭痛発作早期,すなわち痛みが軽度な段階での治療が推奨される.

片頭痛関連脳血管障害―片頭痛は脳梗塞の危険因子か?

著者: 鈴木則宏

ページ範囲:P.1897 - P.1899

ポイント

片頭痛と関連する脳血管障害は「1.5.4片頭痛性脳梗塞」として片頭痛の合併症として分類され,1つ以上の片頭痛前兆があり神経画像検査によって責任領域に虚血性梗塞巣が証明されるものとされている.

そのほかに,最近「脳血管障害の危険因子としての片頭痛」が話題になっている.片頭痛患者の脳梗塞の発生危険度の分析では,相対危険度は片頭痛全体で2.16,前兆のある片頭痛で2.27,前兆のない片頭痛で1.83,さらに片頭痛で経口避妊薬使用者は8.72と報告されている.

片頭痛と卵円孔開存(PFO)との共存が注目されている.PFOの合併も片頭痛患者における虚血性脳血管障害の発症に寄与している可能性があるが,さらに興味深いのは,PFOの閉鎖は片頭痛を改善するとの報告がある.

小児の頭痛―トリプタンは小児片頭痛にも有効か?

著者: 藤田光江

ページ範囲:P.1900 - P.1902

ポイント

小児片頭痛の診断は, 国際頭痛分類第2版(ICHD-II)による.

エビデンスが確立している小児片頭痛の急性期治療薬は,イブプロフェン,アセトアミノフェン,スマトリプタンの点鼻液(12歳以上)である.

妊娠・授乳期と頭痛―安全な頭痛治療はあるのか?

著者: 牧田和也 ,   堀口文 ,   青木大輔

ページ範囲:P.1904 - P.1906

ポイント

妊娠している女性の薬物療法を考える際には,まずその時点における正確な妊娠週数を把握することが必須である.

妊娠4カ月末までは催奇形性に,5カ月以降は胎児の機能的発育への影響に留意する.

妊娠・授乳期の頭痛治療に比較的安全に用いることが可能とされている薬剤は,アセトアミノフェン,プロプラノロール,呉茱萸湯などごくわずかである.

睡眠と頭痛―睡眠と頭痛は関係あるのか?

著者: 穂積昭則 ,   平田幸一 ,   宮本雅之

ページ範囲:P.1907 - P.1909

ポイント

一次性,二次性を問わず,頭痛の性状のみならず,睡眠との関係を詳細な問診により得ることは重要である.

特に片頭痛発作は睡眠と関連が深く,睡眠過剰・不足は発作の誘引にもなる.

頭痛の増悪因子となりうる睡眠の問題を排除する目的で,適切な睡眠衛生指導や頭痛の誘引などを避けさせるとともに,原因の存在する二次性頭痛は,原疾患の治療を行う.

産業医学と頭痛―産業医の現場では?

著者: 横山雅子

ページ範囲:P.1910 - P.1912

ポイント

16,290人の健康診断の問診票の自覚症状で『頭痛がある』は『腰痛』『疲れやすい』に次いで3番目に多い自覚症状であった.

職場での頭痛教育は重要である.

勤務時間中に起きた頭痛に対する適切な処置は,生産性の向上の点からも重要である.

頭痛外来と病診連携―頭痛外来の実際とその必要性とは?

著者: 間中信也

ページ範囲:P.1913 - P.1915

ポイント

慢性頭痛患者に頭痛診療の場を推奨するために頭痛外来が必要である.

慢性頭痛患者の日常生活支障度を改善するために,専門医による診断と治療が必要である.

一般医が頭痛診療に苦慮する場合,頭痛専門医への紹介が勧められる.

一次性頭痛の病診連携は,頭痛患者の満足度とQOLを高めるので,連携が勧められる.

理解のための30題

ページ範囲:P.1916 - P.1921

連載

目でみるトレーニング

著者: 南留美 ,   岩崎靖 ,   小田口尚幸

ページ範囲:P.1923 - P.1928

問題 460

 症例:66歳,男性.

 主訴:咳嗽,胸痛.

 生活歴:海外渡航歴あり.

 家族歴および既往歴:特記事項なし.

 現病歴:1年前より体重減少(1年で11kg減)あり,近医受診.食道カンジダ症,ニューモシスチス肺炎および右肺結節影を認め,抗HIV-1抗体陽性であったことよりAIDSと診断された.ST合剤(バクタ®)による加療により,胸部CT上,ニューモシスチス肺炎に伴うスリガラス陰影は改善したが,初診時より認められていた右肺の結節影が徐々に増大.咳嗽,胸痛を伴うようになり,精査加療のため当院転院となった.

Case Study 診断に至る過程・3

理論的アプローチ

著者: 松村正巳

ページ範囲:P.1948 - P.1955

 本シリーズではCase Studyを通じて鑑別診断を挙げ,診断に至る過程を解説してみたいと思います.どこに着目して鑑別診断を挙げるか,次に必要な情報は何か,一緒に考えてみませんか.

 さて,今回の患者さんです.

病歴&身体所見

65歳,男性

主訴:手足に力が入らない

現病歴:生来健康であった.1カ月前に右足の脱力を感じたことがあったが,1日で回復した.2日前の午後から,足がもたつく感じが出現した.1日前には足がもたつきながらも,朝から農作業を行った.午後になると手にも脱力感があり,過労と思い,近医で点滴を受けた.しかし,食欲はなく,夕食はほとんど食べられなかった.翌日は朝から立てなくなり受診となった.この1カ月間に感冒様症状,消化器症状はなく,排尿,排便にも問題はない.この3カ月はとても多忙で,食欲もなく,体重が10kg減ったという.

病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 10

甲状腺

著者: 前田環

ページ範囲:P.1930 - P.1934

 内分泌疾患は,ホルモン動態によって複雑な症状を示すという特徴がある.しかし,病理診断においては,他の器官系と同じく,触診や画像診断で発見された腫瘤が「良性か悪性か」という点が重視される.免疫染色による産生ホルモンの特定も行われるが,このシリーズでは「良性か悪性か」の判定が問題となる頻度が高い甲状腺を取り上げた.

 甲状腺疾患は,びまん性甲状腺腫(diffuse goiter)と結節性甲状腺腫(modular goiter)に大別される.病理診断で重要なのは結節性病変の鑑別で,ここに腺腫と癌,およびそれらとの鑑別を要する腺腫様甲状腺腫,囊胞(甲状腺舌管囊胞など)が含まれる.しかし,教科書的には「びまん性」の橋本病,Basedow病,亜急性甲状腺炎,アミロイド甲状腺腫なども,腫瘍様病変として病理学的検索の適応となる.

 検索方法としては,穿刺吸引細胞診が果たす役割が大きく,切開生検は現在ほとんど行われていない.以下に,穿刺吸引細胞診と手術による切除検体を中心として,その取り扱いと関連する事項について紹介する.

研修おたく海を渡る 11

Go Steelers!

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1935 - P.1935

 アメフトのシーズンも後半戦に入ってきました.アメリカ文化を語るのにアメリカンフットボールは避けては通れません.当然,僕のレジデント生活にも当てはまります.物事を始めるのに,最低3つの理由があると長続きすると先輩に言われたことがあります.3つともなくなってしまうことはなかなかないからです.

 アメリカ留学を決意した僕の3つの理由とは,
①進んでいるといわれるアメリカの医学教育を直接体験する.
②日本では独立した分野となっていないMedical Oncologyという世界に入り込む.
③本場のアメフトを心ゆくまで観戦する.

東大病院内科研修医セミナー 16

悪性褐色細胞種の長期生存例

著者: 大石篤郎 ,   槙田紀子

ページ範囲:P.1936 - P.1941

Introduction

褐色細胞腫とはどのような疾患か?

内分泌専門医ではない一般内科医・外科医などにとって必要な褐色細胞腫の知識とは?

一般的な褐色細胞腫の診断・治療とは?

褐色細胞腫における禁忌とは?

内分泌悪性腫瘍とは?

できる医師のプレゼンテーション―臨床能力を倍増するために 8

上達への道─鍛え方~指導医へ~

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.1942 - P.1947

例 ・プレゼンテーションについて,研修医同士での雑談

研修医A:せっかくプレゼンテーションの勉強したのに,「ダメだし」ばっかりされるし……かといって,(後期研修医の)X先生のプレゼンも上手じゃないように思えるんだよね.

研修医B:でもAくんのプレゼンテーション,聞いていてすごくわかりやすかったよ.確か,消化管出血の症例って初めて担当するんだよね.

研修医A:ありがとう! 前,Bくんが発表してたのと,指導医の先生からのフィードバックを聞いていて,なるほど,ってメモっておいたんだ.眠かったけど,Bくんの発表って声も大きくて,惹きつけられるから,しっかり聞けたよ.

研修医B:来年からは手本にならないといけないし,僕らが指導医になるときには,後輩のプレゼンテーションをきっちり聞いて,指導しないと日本はダメになっちゃうな.

・難しい英語のテキストを基にした,初期研修医だけの早朝のカンファレンスで

研修医A:ここの部分は,どうなっているの?

研修医B:えーっと……ゴメン,昨日忙しくて準備しきれなかった.資料,わかりにくいよね…….

研修医A:じゃぁ,ここの部分,わかる人っている? 

研修医C:……(寝ている).

研修医B:答えがわからないと,いまいち盛り上がらないよね,ゴメン.(指導医の)Y先生なら知ってるかなぁ…….

研修医A:うーん…….

研修医D:(ガチャ)あーゴメン,遅刻しちゃった……布団から出るのがきつくって…….

研修医一同:もう,やめよっか.このカンファ…….

 前回までは,内容,伝え方などのことの理論をお話ししました.理論について理解すれば,あとはいかに上達するか……というところになります.この上達法にもコツがありますので,今回はそのコツについてお話させていただきます.

 さらにそのコツには指導医やシステムの協力が必要なことが多いので,「指導医へ」というサブタイトルもつけさせて頂きます.

しりあす・とーく 第18回

アメリカの医師研修から何を学ぶか?(前編)

著者: 金城紀与史 ,   白井敬祐 ,   大曲貴夫

ページ範囲:P.1956 - P.1963

 日本でも,新しい医師臨床研修が定着しつつあり,研修の質は改善しつつあると言われている.しかし,いまもアメリカに医師研修の機会を求める若手医師は少なくない.彼らは何をそこに求め,何を学んでくるのか?

 今回の「しりあす・とーく」では,アメリカで医師研修を行った3人の医師に,「アメリカの医師研修から何を学ぶべきか?」を当地での経験を踏まえ率直に語っていただいた.

金城 私は,1994年に東京大学を卒業後,3年間,亀田総合病院で初期研修をしたのですが,その当時,ジェラルド・スタイン先生という医師が亀田総合病院にいまして,「アメリカの研修は絶対にいい」と言われ続けていました.最初は嘘だろうと思っていたのですが,何回か見学に行くにつれて「ほんとうだ」と思うようになって,1997年7月からフィラデルフィアのトーマス・ジェファソン大学病院で内科のレジデントになりました.レジデント修了後も,そのまま米国に残って2000~2003年にニューヨークのマウント・サイナイ医療センターで呼吸器と集中治療のフェローシップを行い,2004年1月から手稲渓仁会病院に入りました.

臨床研修部所属ということですが,臨床では総合内科をやっていて,病棟を中心に研修医と一緒に,総合内科診療をしています.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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