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雑誌目次

雑誌文献

medicina43巻2号

2006年02月発行

雑誌目次

今月の主題 ブレインアタック2006―t-PA時代の診断と治療 Editorial

t-PA時代のブレインアタック診療

著者: 山脇健盛

ページ範囲:P.188 - P.190

ポイント

・2004年3月に,わが国初の「脳卒中治療ガイドライン2004」が発表された.

・2005年10月,発症3時間以内の急性期脳梗塞におけるt-PA静注療法が認可された.同時に日本脳卒中学会より,「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針」が作成され発表された.

・血栓溶解薬は諸刃の剣であり,使用基準を遵守しない場合,症候性頭蓋内出血の危険性が著しく増大する.

ブレインアタック理解のために

脳卒中の分類

著者: 星野晴彦

ページ範囲:P.192 - P.195

ポイント

・脳卒中の分類は1990年のNINDSの分類が使われることが多い.

・TIAは病態まで診断し,適切な治療を行うことが必要である.

・TOASTの診断基準では,原因の特定できない分類不能の脳梗塞症例が多くなってしまう.

・BADは臨床病型として分類が問題となっている.

わが国の脳卒中の疫学と動向

著者: 今村剛 ,   清原裕 ,   井林雪郎

ページ範囲:P.196 - P.198

ポイント

・久山町における住民調査の結果,
①脳卒中死亡率は減少傾向にある.
②脳卒中発症率は1960年代から減少傾向にあるが,その傾向は1980年代になり鈍化している.
③高血圧の頻度には時代的変化は認めなかったが,治療により血圧レベルが低下した.一方で肥満・耐糖能異常・高コレステロール血症の頻度が急増した.

虚血性ペナンブラとは

著者: 中川原譲二

ページ範囲:P.199 - P.201

ポイント

・急性脳虚血では,electrical failureとmembrane failureを生じる2つの脳血流閾値が存在し,この閾値間の脳血流量が残存している脳組織を虚血性ペナンブラと命名する.

・その可逆性は,残存脳血流量と発症からの時間の2つの要因に依存し,MRIやSPECTによる虚血性ペナンブラの画像診断は血栓溶解療法の適応判定に役立つ.

Therapeutic time windowとは

著者: 小張昌宏

ページ範囲:P.202 - P.204

ポイント

・ある疾患に対する治療法が限られた時間内でのみ有効な場合,それをtherapeutic time windowという.

・静注による血栓溶解療法のtherapeutic time windowは発症後3時間以内である.

・therapeutic time windowを過ぎて血栓溶解薬を投与すると,効果がないばかりか出血性梗塞などの有害事象を生じやすい.

Stroke UnitとStroke Care Unit

著者: 上野友之 ,   長田乾

ページ範囲:P.206 - P.210

ポイント

・Stroke Unit(SU)は,急性期から慢性期までの脳卒中患者を特定病棟に集め,専門的知識と治療経験を有する脳卒中専門チームが一貫して実施するシステム.

・Stroke Care Unit(SCU)は,重症例や超急性期例の治療を中心とする脳卒中集中治療室.

・SCU/SUでの治療は,死亡率の低下,ADL,QOLの改善,入院期間の短縮につながる.

・運用にあたっては,多職種からなる脳卒中専門チームの構築,統一された診療指針が必要.

脳卒中データバンク

著者: 小林祥泰

ページ範囲:P.211 - P.213

ポイント

・脳卒中データバンクは日本人のためのEBMを確立するためのインフラとして,また,急性期脳卒中を扱う中核病院の臨床データベースとして全国レベルの登録を行っている.このたびの脳梗塞に対するt-PA静注療法の認可により,治療効果の検証などで脳卒中データバンクの必要性が一層高まるものと思われる.是非活用していただきたい.

ブレインアタックの診断

超急性期に脳梗塞と間違えやすい疾患や病態

著者: 高嶋修太郎

ページ範囲:P.215 - P.217

ポイント

・脳梗塞とは,脳血管の閉塞により脳組織が虚血に陥り,脳局所神経症状が急に出現する疾患である.

・頭部CTで脳出血,脳腫瘍,脳膿瘍などの出血性病変や占拠性病変を鑑別する.

・さらに,脳卒中類似症状を呈する疾患,すなわち,解離性障害などの精神障害,てんかん発作後のTodd's麻痺,低血糖,末梢性めまいなどを除外する必要がある.

急性期脳梗塞病型診断のこつ

著者: 野村栄一

ページ範囲:P.218 - P.221

ポイント

・脳梗塞の病型分類では,NINDS分類が広く用いられているが,急性期に行う分類としてはTOAST分類があり,使用の機会が増加している.

・t-PAは病型を問わず有効であり,分類を行うことにいたずらに時間を費やすべきではないが,病型によって再開通率や出血性梗塞の発症率は異なる可能性が高い.

・t-PA時代に即した病型分類法を作成し,病型別の治療戦略を検討していく必要がある.

くも膜下出血を見逃さないために

著者: 間瀬光人

ページ範囲:P.222 - P.224

ポイント

・正しい病歴聴取により突然の頭痛の有無を確認する.

・診断はCTが最も適している.

・症状からくも膜下出血を疑ってCTで異常がない場合は腰椎穿刺を行う.

・急性期のくも膜下出血はFLAIR法でhigh,T2強調画像でlow intensityに描出される.

CTかMRIか

著者: 長尾毅彦 ,   片山泰朗 ,   横地正之

ページ範囲:P.226 - P.229

ポイント

・CT検査は脳卒中救急診療の最低限の設備であるが,その撮影,診断基準などを推奨通りの基準に統一することが重要である.

・CT検査で,血栓溶解療法の適応基準が狭まる可能性は少ないが,無効例の除外,3時間以降の有効例判定にはMR検査が不可欠である.

・MR検査でも,脳出血,くも膜下出血はCT検査と同様に診断可能であるため,MR施行可能な施設では,CT検査を先行させる必要はない.

・超急性期血栓溶解療法施行にあたっては,可能な限り24時間稼働でMR検査を行う診療体制を組むべきである.

拡散強調画像の有用性と落とし穴

著者: 安井敬三 ,   長谷川康博 ,   柳務

ページ範囲:P.230 - P.233

ポイント

脳梗塞診療においてDWIは,

・発症1時間ほどで病巣を指摘でき,超急性期診療に役立つ.

・新病巣のみを検出する.

・皮質小梗塞を最も診断しやすい.

・一過性脳虚血発作であっても,小梗塞を指摘できる例がある.

・偽陰性を示すことがあり,ペナンブラの遷延によると考えられる.

急性期診断における超音波検査の有用性

著者: 立石洋平 ,   和田邦泰 ,   木村和美

ページ範囲:P.234 - P.237

ポイント

・発症3時間以内の脳梗塞に適応があるtissue plasminogen activator(t-PA)による経静脈的血栓溶解療法においては,CTやMRIの所見だけではなく,閉塞血管の情報が得られることが望ましい.しかし,閉塞血管の評価は限られた時間の中で行われなければならない.

・頸部血管超音波検査は,頸動脈および椎骨動脈の血管病変を短時間でリアルタイムに評価することができる.

・経頭蓋ドプラ(transcranial Doppler:TCD)および,経頭蓋カラードプラ(transcranial color-coded sonography:TCCS)は,頭蓋内脳血管の血流情報をリアルタイムに観察可能であり,t-PA治療開始後の閉塞血管における再開通のモニタリングにも適している.また,TCDを用いるとt-PAによる治療効果の増強の可能性も期待されている.

重症度評価の重要性と問題点

著者: 寺山靖夫

ページ範囲:P.238 - P.241

ポイント

・脳卒中重症度とは一般的に患者の神経学的脱落症状を統合して得られる機能的な障害の程度を示し,脱落症状を評価し点数化したものを一般にストロークスケールと呼び,脳卒中重症度のものさしとして使用しているが,客観的で定量的なスケールは少ないのが現状である.

・急性期の重症度評価は,個々の患者にみられる神経学的脱落症状の組み合わせから,奥に潜む病態の重大さ,回復の程度,増悪・再発の可能性などを読み取り,発症後も起こりうるさまざまな事態を検知し的確に対処するために重要である.

・t-PAなどの抗血栓療法に伴う出血性梗塞の兆候,画像検査のタイミングをいち早く検知し,状況によっては他の治療への速やかな転換を図るためにベッドサイドでの重症度判定は重要である.

ガイドラインに基づくブレインアタック治療

「脳卒中治療ガイドライン2004」の特徴,使い方,問題点

著者: 永山正雄

ページ範囲:P.242 - P.244

ポイント

・2004年春に公表された,わが国で初めての脳卒中治療ガイドライン(GL)について,その特徴,使い方,問題点をまとめた.

・t-PA時代における脳卒中の治療は,もはや神経内科医あるいは脳神経外科医などが単独で行えるものではなく,職種を越えたseamlessな連携が重要である.

脳梗塞治療ガイドライン

著者: 棚橋紀夫

ページ範囲:P.246 - P.250

ポイント

・脳梗塞は発症後3時間以内,3時間以後で治療法の選択肢が異なる.

・発症後3時間以内であれば,臨床病型を問わずrt-PA静注療法の適応の有無を検討する.

・rt-PA静注療法を予定する患者では,収縮期血圧185mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上の場合は降圧療法を開始する.

・rt-PA施行例では24時間以内は抗血栓療法は行わない.

・抗凝固療法,抗血小板療法の適応は臨床病型を考慮して行う.

脳出血ガイドライン

著者: 伊藤義彰

ページ範囲:P.252 - P.255

ポイント

・脳出血の予防では,高血圧,過量飲酒,運動不足への対策が重視される.

・急性期には血圧,頭蓋内圧,呼吸の管理が重要で,痙攣,消化管出血の合併に気をつける.

・急性期手術治療についてはエビデンスに乏しいが,被殻,皮質下,小脳の出血では大きさや意識レベルに応じて手術を考慮してもよい.

・血栓溶解療法や抗血栓療法中に発症した脳出血では,起因薬剤の中止,採血による凝固系の評価,薬剤による凝固系の補正をしたうえで,部位・病態によっては手術を考慮する.

くも膜下出血治療ガイドライン

著者: 飯原弘二

ページ範囲:P.256 - P.259

ポイント

・くも膜下出血の発生頻度は,本邦では人口10万人あたり約20人程度と諸外国に比較して多く,年齢調整死亡率では男性でほぼ横ばいであるのに対して,女性では倍増している.

・くも膜下出血の予後不良に関係する因子として,入院時の神経学的状態,特に意識レベルが重要な決定因子である.Hunt and Hess やGlasgow Coma Scale (GCS)の合計点をもとに5段階に分類した,World Federation of Neurological Surgeons (WFNS)分類が汎用されている.

・破裂脳動脈瘤の初期治療として再出血の予防が最も重要であり,重症度,年齢,合併症などに応じて,開頭手術(クリッピング術),血管内治療(コイル塞栓術)を行う.

脳卒中リハビリテーションガイドライン

著者: 園田茂

ページ範囲:P.260 - P.261

ポイント

・訓練量の多いほうが麻痺,ADL,歩行能力の改善がみられやすい.

・早期リハの効果は認められているが,リハ開始時期の推奨は明確ではない.

・痙縮には投薬および運動点・神経ブロックが有用である.

・ガイドラインには「エビデンスレベル」に頼りすぎた部分もある.

「脳卒中治療ガイドライン2004」後のエビデンス

著者: 永金義成

ページ範囲:P.262 - P.263

ポイント

・脳卒中発症予防には,より厳格な降圧が重要である.

・降圧薬としてCa拮抗薬とともにACE阻害薬やARBの有効性が示されつつある.

・スタチンを用いた大規模試験の結果から,スタチンによる脳卒中発症抑制効果が明らかになってきている.

・糖尿病は血圧管理や脂質管理などを含めた多面的な治療が必要である.

t-PAで変わるブレインアタック治療

t-PA静注療法大規模試験

著者: 宮下光太郎

ページ範囲:P.264 - P.267

ポイント

・t-PA静注療法の有効性が証明されているのは,虚血性脳卒中発症後3時間以内であるが,発症後90分以内での投与の有効性はきわめて大きい.

・t-PA静注療法によって症候性頭蓋内出血の頻度が増加することは避けられず,使用条件を満たしていない場合にはかえって死亡率が高くなる可能性がある.

・したがって,日本脳卒中学会を中心にまとめられた『rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針』に準拠した慎重かつ迅速な治療体制の整備が重要である.

t-PA静注療法の適応と限界

著者: 平野照之 ,   橋本洋一郎

ページ範囲:P.268 - P.271

ポイント

・t-PA静注療法(0.6mg/kg)は発症3時間以内の脳梗塞が適応である.

・使用基準を遵守しないと症候性頭蓋内出血の危険性が著しく増大するため,適応症例は厳密に選択する.

・日本脳卒中学会の定める施設基準(24時間体制CT/MRI,ストローク・ユニット設置,脳外科的処置可能)を満たした施設での使用が望まれる.

t-PA静注療法の禁忌と注意事項

著者: 後藤淳

ページ範囲:P.272 - P.278

ポイント

・t-PA静脈注射療法の最大の副作用は,頭蓋内出血を含む出血性合併症である.

・わが国のガイドラインを理解し,徹底的に遵守することが最低条件である.

・チーム医療による時間との有効な闘い(“Time is brain”)が鍵となる.

・投与中および投与後24時間の慎重な観察が重要である.

t-PA静注療法か局所線溶療法か

著者: 江面正幸 ,   松本康史 ,   高橋明

ページ範囲:P.280 - P.282

ポイント

・2005年10月に脳梗塞急性期(発症3時間以内)に対するt-PAの静注療法が保険適用となったため,脳塞栓症を否定できない発症3時間以内の脳梗塞に対しては,t-PAの静注療法が第一選択である.

・発症3時間以上を経過した症例,特に脳底動脈塞栓症に対しては,局所線溶療法を検討する必要がある.

t-PA静注療法施行施設のあり方

著者: 奥田聡

ページ範囲:P.283 - P.285

ポイント

・t-PA静注療法を施行する施設には適応・除外症例をすばやく鑑別診断し,制限時間内に治療を終える能力と体制,静注後の患者の状態の厳密なモニタリング,万一,副作用が生じた際の対応能力が求められる.

・各施設において,患者到着後,10分以内に診察を終え,45分以内にCT読影を終え,60分以内にt-PA静注を開始できること目指した体制作りが必要となる.

t-PA静注療法における法律的問題

著者: 大平雅之

ページ範囲:P.286 - P.289

ポイント

・裁判の果てに法律上の責任が認められるのか否かと,事前にトラブルをいかに避けるのか,いかに患者のニーズに応えていくのかは次元の異なる問題である.

・保険適応のないからといって,血栓溶解療法の施行が法律的に問題がなかったわけではない.

・血栓溶解療法の法律的問題を検討するに際し,他の治療法に比べ新たな配慮が必要というわけではない.

発症3時間以内に治療開始のために

一般市民・患者・家族への啓発活動

著者: 中山博文

ページ範囲:P.290 - P.292

ポイント

・発症2時間以内の専門病院到着を実現するには,一般市民への脳卒中の症状・徴候に関する知識の普及と,発症時の救急車を利用した迅速な受診の啓発が必要である.

・わが国の一般市民における脳卒中の症状・徴候についての知識は乏しく,今後啓発が必要である.

・ハイリスクグループの患者には,日常診療において,脳卒中の症状・徴候と発症時の対応方法を教育しておくことが望ましい.

プライマリケア医の役割

著者: 柴田真一

ページ範囲:P.294 - P.296

ポイント

・脳血管障害は今後増加すると予測される.

・脳血管障害に対する予防は血圧,血糖のコントロール,その他などによりある程度可能であるとのエビデンスがそろいつつある.

・t-PAの脳梗塞急性期の適応承認により,今まで以上に急性期対応のスピードが求められるようになった.

救急医,当直医の役割

著者: 並木淳

ページ範囲:P.297 - P.299

ポイント

・脳卒中患者であることを早期に認知する.

・重症度・緊急性に基づいた診察と患者処置を行う.くも膜下出血は最重症,血栓溶解療法適応の脳梗塞は最緊急である.

・まず,生理学的徴候の把握とそれに対する処置.次いで,頭部CTによる病型診断を行う.

脳卒中専門医の役割

著者: 湯浅浩之 ,   三竹重久

ページ範囲:P.300 - P.302

ポイント

・虚血性脳血管障害急性期の治療として,t-PAが日本でも静脈投与できるようになった.しかしその使用においては,さまざまな“禁忌”や“慎重投与”用件をクリアしなければならない.

・脳卒中専門医は,急性期脳梗塞の正確な診断とt-PA投与の決定,院内・院外の脳卒中診療体制の確立,地域住民への教育・啓蒙を行う必要がある.

Door to needle time短縮の工夫

著者: 井上勲

ページ範囲:P.305 - P.307

ポイント

・チーム医療としての急性期脳卒中診療プランとプロトコールの作成徹底が重要である.

・必要以上の検査のために治療開始時期が遅れてはならない.

・発症から3時間以内に投与を行えばよいの認識ではなく,早ければ早いほどよい(Time Lost is Brain Lost)の概念を院内で徹底させる.

・地域として急性期脳卒中治療のネットワークのシステム構築が重要である.

脳卒中慢性期の管理

血圧管理―「高血圧治療ガイドライン2004」を踏まえ

著者: 伊佐勝憲 ,   大屋祐輔 ,   瀧下修一

ページ範囲:P.308 - P.310

ポイント

・脳卒中慢性期では血圧150/95mmHg未満を一次目標に,140/90mmHg未満を最終目標に設定する.

・選択降圧薬としてはACE阻害薬と少量の利尿薬の併用,ARB,長時間作用型Ca拮抗薬が望ましい.

・ガイドラインでは降圧目標の下限域の設定はないが,症例により過剰降圧により再発脳梗塞を引き起こす危険性は存在する.個々の症例を詳細に検討して,柔軟に対応する.

観血的処置(抜歯,内視鏡,大手術)における抗血栓薬の管理

著者: 矢坂正弘

ページ範囲:P.311 - P.313

ポイント

・ワルファリン療法を中断すると約1%の頻度で血栓症や塞栓症を発症し,その多くは重症である.

・抜歯は原疾患に対する適切な抗血栓療法(ワルファリンや抗血小板療法)継続下での施行が望ましい.

・大手術時には抗血栓薬を休薬せざるを得ないが,その間に半減期の短いヘパリンを併用することによって抗血栓薬非施行時間を短くする.

無症候性脳梗塞,脳出血,動脈瘤の管理

著者: 斎藤こずえ ,   上野聡

ページ範囲:P.314 - P.316

ポイント

・無症候性脳梗塞を有する人は,脳卒中発症率が高く,その原因を検索しリスクに応じた治療をすることが重要である.

・無症候性脳出血は高血圧や,ラクナ梗塞,症候性脳出血と関連している可能性があり注意が必要である.

・無症候性未破裂動脈瘤の治療は動脈瘤の大きさ,形,部位,多発性,患者の年齢,性別,家族歴,高血圧や喫煙などリスクに応じて治療する.

座談会

t-PA認可により脳卒中診療はどう変わるか

著者: 木村和美 ,   高木誠 ,   江面正幸 ,   山脇健盛

ページ範囲:P.318 - P.327

 山脇 本日はお忙しい中お集まりいただき,ありがとうございます.

 2005年10月,日本でもt-PA(組織型プラスミノーゲンアクチベータ)が脳梗塞急性期の治療薬として認可されました.これによって脳卒中診療がどう変わったか,また今後どう変わっていくか,第一線の先生方にお伺いしたいと思います.

理解のための32題

ページ範囲:P.328 - P.334

問題1 急性期脳梗塞におけるt-PA静注療法について,誤っているのはどれか.
① 急性期脳梗塞におけるt-PA 静注療法は,わが国で行われた二重盲検試験において有効性が証明された.
② 全ての臨床カテゴリー(アテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓症)の脳梗塞が対象となる.
③ わが国におけるt-PA の用量は欧米諸国と異なり0.6mg/kg(34.8万国際単位/kg)である.
④ 使用基準を遵守しない場合,症候性頭蓋内出血の危険性が著しく増大する.
⑤ t-PA の投与方法はワンショットで静脈内に投与する.

A:①,②

B:②,③

C:③,④

D:④,⑤

E:①,⑤

問題2 以下のうち,正しいものはどれか.
① 脳梗塞は,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓,ラクナ梗塞,その他に分類される.
② くも膜下出血の原因としては動脈瘤破裂が最も多い.
③ TIA はMR で脳梗塞を呈していないことが必要である.
④ branch atheromatous diseaseは,主幹動脈に50%以上の狭窄を認める.
⑤ 心原性脳塞栓の原因として弁膜症が最も多い.

A:①,②

B:②,③

C:③,④

D:④,⑤

E:①,⑤

病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 1

上部消化管

著者: 武内英二

ページ範囲:P.336 - P.340

 病理診断が病名の決定,治療方針の決定,治療効果および予後判定に重要な役割を果たす,ということはすでに総論を読んだ読者には十分理解していただいたと思う.本号からの実践編(各論)では,臓器別に具体的な病理との付き合い方を学ぼう.

「病理との付き合い方」今後の連載予定(各論)

2.下部消化管(小腸・大腸)

3.呼吸器

4.乳 腺

5.婦人科

6.リンパ節

7.肝 臓,胆道系・膵

8.骨 髄

9.皮 膚

10.神経,筋肉

11.甲状腺

12.泌尿器

連載

目でみるトレーニング

著者: 金本素子 ,   川畑茂 ,   岩崎靖

ページ範囲:P.342 - P.348

問題 433

 症 例:66歳,男性.

 主 訴:腹痛,下痢.

 既往歴,家族歴:特記すべき事なし.

 現病歴:1992年関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)発症し,他の各種抗リウマチ薬は無効もしくは副作用のため使用できず,当科外来でブシラミン(リマチル®)100mgなどの投与を受けていたが,RAの活動性は高い状態であった.

Case Study 診断に至る過程・2

シリアスな腰痛

著者: 松村正巳

ページ範囲:P.350 - P.355

本シリーズではCase Studyを通じて鑑別診断を挙げ,診断に至る過程を解説してみたいと思います.どこに着目して鑑別診断を挙げるか,次に必要な情報は何か,一緒に考えてみませんか.さて,今回の患者さんです.

病歴&身体所見

68歳,男性

主 訴:腰痛

現病歴:腰痛が出現した7週間前までは元気であった.腰痛は徐々に悪化し,安静時も痛くなってきた.2週間前からは食欲低下,全身倦怠感,夜間の頻尿が出現した.かかりつけ医を受診したが,腰痛の原因はわからなかった.昨日からは腰痛がさらに悪化し,動けなくなった.今朝からは受け答えがおかしいため救急外来へ搬送された.この2カ月で体重が2kg(71kgから69kg)減ったという.

研修おたく海を渡る 2

Retreat

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.349 - P.349

 今回から数回に分けて,レジデント対象に開かれるRetreatとよばれるワークショップについて綴ってみたいと思います.

 「Retreat」には隠れるとか逃げ込むという意味があるようです.大学近くのホリデイ・インの会議室をかりて,半日ですが文字どおり病棟業務から隠れられます.テーマは「プロフェッショナリズム」だったり,「インターンをどう教えるか」などと堅苦しいのですが,このときだけは病棟業務から逃れられるのです.こんなうれしいことはありません.

医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために 2

処方ミスをなくそう

著者: 本村和久

ページ範囲:P.356 - P.358

私の反省

問題だらけの処方箋

 研修1年目を振り返ってみると,当時手書きであった処方箋の書き方はひどいものであったと反省しきりである.私の書いた処方箋が届くとすぐに薬剤師からのポケベルが鳴り,読めない,用法が違う,量が多いなどの指摘を受け,いつも平謝りしていた.間違いを指摘してくれないと患者さんに被害が及ぶことになる.学生のときまでを振り返ると,卒前の医学教育のなかで処方箋の書き方を学ぶ機会はごくわずか,講議で2~3回,卒前に病棟で処方箋を書くことは,ほとんどなかったと記憶している.また,新研修医オリエンテーションで,薬局が研修医に説明する時間はないのだが,多いときで1日50件を超える病棟での処方箋書きは研修1年目の仕事であった.

しりあす・とーく 第14回

初期研修から後期研修へ―医師研修の「はざま」を語る(後編)

著者: 岩田健太郎 ,   陳若富 ,   吉津みさき

ページ範囲:P.360 - P.367

かつて,日本の臨床研修は大学医局による診療科別のストレート研修を中心に行われ,3年目ともなれば1人前の医師として扱われることも少なくなかった.しかし,スーパーローテーション方式を基本とする2年間の初期研修が義務化された今,3年目以上の後期研修の充実が求められるようになり,かなりの数の病院が後期研修プログラムを立ち上げるようになった.本誌では前回にひきつづき,臨床研修の最前線にいる指導医たちに,日本における後期研修の問題点と今後の方向性について語っていただいた.

書評

診療・研究に活かす病理診断学 消化管・肝胆膵編

著者: 角谷眞澄

ページ範囲:P.335 - P.335

 福嶋敬宜先生編集による『診療・研究に活かす病理診断学―消化管・肝胆膵編』が医学書院から上梓された.B5版の272頁からなる病理診断学の解説書である.

 「明日から“病理に強い臨床医”と呼ばれるようになる」,そして「臨床医と病理医を強力につなぐ一冊.これで自信をもって患者さんに説明できる!」さらに「これで学会・研究会が楽しくなる!!」と帯には謳われている.医学書院の発刊にしてはずいぶんとノリがいいなあと思いながらページを開いてみた.実は……今,いつでも鞄に入れて持ち歩いている一冊になっている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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