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雑誌目次

雑誌文献

medicina43巻4号

2006年04月発行

雑誌目次

今月の主題 抗菌薬を使いこなそう!―実地臨床での正しい選択と投与法 感染症診療の基本原則

感染症の診断と抗菌薬投与の基本的考え方

著者: 喜舎場朝和

ページ範囲:P.538 - P.540

ポイント

・耐性菌の氾濫する時代となった.これは環境汚染の一つ.

・原因は,抗菌薬の汎用・乱用による耐性菌の産生・伝播,感染防御能低下患者の急増.

・対策は,耐性菌の産生対策と伝播対策.産生対策は個々の臨床医の適切な抗菌薬の使い方に,伝播対策は院内感染対策委員会の活動などが主.

・目前の細菌感染の疑われる患者に適切な抗菌薬療法を施すように努めることで,直接的に患者の適切なマネジメント,間接的に産生対策が望める.

・適切な抗菌薬療法とは,起炎菌に感受性があり,できるだけ狭域スペクトルで,副作用の少ない,安価な抗菌薬の選択に努めること.

・そのためにはできるだけ正確な診断を先行させる.それは,感染病巣,起炎菌,患者の感染防御能の評価,重症度の評価を含む.

・EBMIP (evidence based medicine of individual patient).特に塗抹検査(グラム染色)と血液培養の有用性を強調する.

発熱と不明熱へのアプローチ

著者: 原田壮平 ,   古川恵一

ページ範囲:P.541 - P.544

ポイント

・発熱は必ずしも感染症の存在を示唆するわけではない.患者の置かれた状況やリスク因子に応じた評価を行い,発熱の原因を検討する.

・感染症が存在する場合は,どの臓器のどのような病原体による感染症が想定されるのかを検討して投与する抗菌薬を決定する.

・抗菌薬投与開始前には,血液培養や感染部位に応じた検体を採取して,鏡検,培養検査を施行する.

慣れ親しむべき検査/手技

グラム染色と抗酸菌染色―スメアを自分の武器にしよう

著者: 椎木創一 ,   遠藤和郎

ページ範囲:P.546 - P.548

ポイント

・スメア(塗抹染色)の利点は診断に有用なだけでなく,①簡便,②迅速性,③安価に行えること.

・スメアの質は,①スライドグラスに検体を引きのばす時と,②脱色で決まる.

・適切なグラム染色の具合:好中球の細胞質がピンク色,核がやや紫色づくぐらい.

・スメアは「習うより慣れろ」.

培養検査の流れ,結果の読み方

著者: 小森敏明 ,   藤田直久

ページ範囲:P.550 - P.553

ポイント

・培養検査を行うためには,検査依頼情報と検体採取が重要である.

・検体提出当日には検体の品質管理とグラム染色結果がわかるので,適切な抗菌薬の選択が可能である.

・検体提出翌日には大まかな推定菌名がわかる.

・検査結果報告書は菌名と薬剤感受性結果をみるだけでなく,品質管理とグラム染色情報を参考にして「真」の起炎菌を推定する.

・健常者には存在しない細菌や無菌的な検査材料から検出された細菌は感染症起炎菌の可能性が高い.

血液培養の意義と解釈

著者: 満田年宏

ページ範囲:P.554 - P.556

ポイント

・血液培養検査は血流感染症の診断はもとより,重症深部臓器感染症の疑われる場合にも検査対象となる.

・診断的価値の高い培養検査であるが,汚染菌に考慮し適正な検体採取を心がける必要がある.

・カテーテル抜去困難な場合,中心静脈ライン血の培養陽性時間と,末梢血管穿刺での採血検体の陽性に至る時間との差が重要な診断根拠となる.

迅速診断/PCRが役に立つ感染症

著者: 宮崎修一

ページ範囲:P.557 - P.560

ポイント

・迅速診断法には凝集反応,標識抗体法を含む免疫学的検査と遺伝子検査があり,培養困難または重篤化しやすい感染症起炎微生物を対象にキットが開発・市販されている.

・標識抗体法ではEIA法やICA法が主流であり,遺伝子検査法ではPCR法,LCR法が用いられてきたが,より簡単かつ時間が短縮されたICAN法,LAMP法も開発されている.

薬物血中濃度モニタリング

著者: 森田邦彦

ページ範囲:P.562 - P.564

ポイント

・抗菌薬の血中濃度モニタリングは,毒性回避もさることながら抗菌力を高めることを第一義的な目的として実施すべきである.

・アミノグリコシド系抗菌薬の有効性はピーク血中濃度をできるだけ高めることにより,また安全性はトラフ血中濃度をできるだけ下げることにより確保される.

・バンコマイシンのトラフ血中濃度は15μg/ml付近もしくはそれ以上に高めることで有効性が期待できる.

抗菌薬の投与法―おさえておくべき基礎知識

抗菌薬の選択,投与量,間隔,経路

著者: 倉井大輔 ,   青木眞

ページ範囲:P.566 - P.568

ポイント

・抗菌薬使用前に,どの臓器にどの起炎微生物が感染症を起こしているかを正しく推定する.

・臨床成績で有効性の確かめられている抗菌薬を選択する.

・ターゲットの臓器に移行する抗菌薬を選択する.

・抗菌薬は十分量を使用する.

・目的のはっきりしない併用療法は避ける.

・PK/PDから抗菌薬の特性を生かした使い方をする.

効果判定の方法,抗菌薬が無効のときに考えること

著者: 藤本卓司

ページ範囲:P.570 - P.571

ポイント

・抗菌薬を開始したら必ず効果判定を行う.

・効果判定に用いる項目には,①重視すべき情報,②補助的な情報,の2つがある.

・抗菌薬が無効のとき,安易に広域スペクトラムの薬剤に移行するのでなく,抗菌薬投与法の確認と病態の再評価が必要である.

・全身状態が改善して炎症反応が陰性化しても,月単位の治療が必要な感染症がある.

抗菌薬中止のタイミング

著者: 藤田次郎 ,   健山正男 ,   比嘉太

ページ範囲:P.572 - P.575

ポイント

・抗菌薬の適切な投与期間を把握しよう.

・市中肺炎における抗菌薬終了のタイミングとは?

・抗菌薬による薬剤熱の可能性を念頭に.

抗菌薬の予防投与の原則

著者: 飯沼由嗣

ページ範囲:P.577 - P.579

ポイント

・外科処置時の予防投与は,処置前投与が原則であり,処置後投与の多くは無意味である.

・基本的な予防投薬はセファゾリン1剤とし,それ以外の抗菌薬を投与する場合は理由づけ(セファゾリンでカバーされない菌の関与,移行性など)をよく考える.

・長時間の手術の場合は追加投与を行う.

・心疾患患者の予防投与は処置前のペニシリン投与が原則.

注意すべき添付文書の用法・用量

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.580 - P.583

ポイント

・わが国の抗菌薬の添付文書どおりの投与量や投与間隔では,薬理学的に適切ではないものが多い.

・時間依存性,濃度依存性の抗菌薬の特徴を理解したうえで,投与量と投与間隔を決定する.

・高齢者や腎機能低下時は,投与間隔を延ばすもの・投与量を減量するものがある.

・保険適用の兼ね合いがあるため,現時点では医師の責任・患者とのインフォームドコンセントのうえ,使用する.

臨床で問題となる耐性菌

著者: 藤田直久

ページ範囲:P.584 - P.587

ポイント

・耐性菌を検出できる細菌検査室がなければ,耐性菌はみつからない.

・耐性菌は広域抗菌薬の長期使用後に出現する.

・耐性菌出現は,患者自身の問題のみならず,病院,地域,国といった公衆衛生学的問題でもある.

・耐性菌出現防止には,感染症を治療し,定着(保菌)を治療しないこと,感受性結果を正しく判断し適切な抗菌薬を投与することである.

各種抗菌薬―使いこなすための重要ポイント

ペニシリン系

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.588 - P.590

ポイント

・ペニシリン系薬は狭域スペクトラムで菌交代を起こしにくい.

・ペニシリン系薬は基本的にグラム陽性球菌感染症に対して使用する.

・ウレイドペニシリンは腸球菌,緑膿菌に対してアミノグリコシド系抗菌薬と使用すると相乗作用が得られる.

・βラクタマーゼ阻害薬配合剤は嫌気性菌に対する有効性があり,複数菌感染症に使用しやすい.

セフェム系薬

著者: 宮良高維 ,   東田有智

ページ範囲:P.591 - P.594

ポイント

・同一世代に属するセフェム系薬でも,対象菌種や対象疾患が大きく異なる.

・本系薬は,肺炎球菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,Bacteroides属などへの抗菌活性の強さが使い分けのポイントとなる.

カルバペネム系

著者: 安田善一 ,   信川泰成 ,   藤林哲男

ページ範囲:P.596 - P.597

ポイント

・著しく広いスペクトラムをもった抗生物質である.

・無効あるいは有効性が低いものを把握しておくべきである.

・本剤の濫用・長期使用はMRSAなどの耐性菌や真菌感染症を誘発するため,通常は第一選択薬としては使用せず温存すべき薬剤である.

・副作用として有名なものに痙攣の発生があり,注意が必要である.

モノバクタム系

著者: 堀野哲也 ,   吉田正樹

ページ範囲:P.598 - P.599

ポイント

・グラム陰性好気性菌にのみ有効なβラクタム系薬だが,その抗菌力は第三世代セフェム系薬やアミノグリコシド系薬に匹敵する.

・複数菌感染症が疑われる症例やエンピリック治療としての単独投与は避けるべきである.

・ペニシリン系薬やセフェム系薬との交叉アレルギーはほとんどない.

アミノグリコシド系

著者: 小橋吉博

ページ範囲:P.600 - P.602

ポイント

・アミノグリコシドを投与する場合には,薬物動態を考慮して,有効でかつ副作用の少ない投与法を行う必要がある.

・1日1回投与法は濃度依存的な短時間殺菌効果というアミノグリコシドの長所を利用した方法で臨床への有用性が報告されている.

・アミノグリコシドでは,治療域と中毒域が狭いことから,TDMを行いながら適正な投与量と投与間隔を設定する.

マクロライド系・ケトライド系

著者: 石田直

ページ範囲:P.603 - P.605

ポイント

・マクロライド系薬はグラム陽性菌や非定型病原体を中心に抗菌力を有する.

・ケトライド系薬はマクロライド耐性肺炎球菌やレジオネラ菌にも有効である.

・マクロライド系薬の副作用の頻度は少ないが,他の薬剤との相互作用に留意する必要がある.

・近年,肺炎球菌のマクロライド高度耐性化が進行しており,インフルエンザ菌に対する有効性も低下してきている.

テトラサイクリン系抗菌薬

著者: 大西健児

ページ範囲:P.606 - P.607

ポイント

・テトラサイクリン(TC)系抗菌薬はリケッチア症,クラミジア症,Q熱の第一選択薬である.

・ドキシサイクリン,ミノサイクリン(MINO)は腎臓よりも肝臓から排出される.

・点滴静注用MINOは緑膿菌を除くブドウ糖非発酵グラム陰性菌にも有効で,重症例では他剤と併用することで治療効果がより高くなることがある.

・TC系抗菌薬は妊婦や小児,授乳中の女性には原則として投与しない.

クリンダマイシン

著者: 藤田芳郎

ページ範囲:P.609 - P.612

ポイント

・クリンダマイシンの抗菌範囲は「嫌気性菌と好気性グラム陽性菌に効き,好気性グラム陰性菌には効かない」と覚える.

・「クリンダマイシン+ゲンタマイシン」の処方は腹腔内感染症に有効である.

・A群β溶血連鎖球菌あるいはクロストリジウムが関与する壊死性筋膜炎や筋炎では,ペニシリン+クリンダマイシンが第一選択である.

グリコペプチド系

著者: 佐竹幸子

ページ範囲:P.614 - P.615

ポイント

バンコマイシンの適切使用は以下の症例に限られる.

・βラクタム薬耐性グラム陽性菌による重症感染症

・βラクタム薬にアレルギーのある患者

・偽膜性大腸炎(条件付き)

・心内膜炎の危険性が高い患者や外科手術患者に対する予防投与(条件付き)

・テイコプラニンが選択される場合:テイコプラニンに感受性のVREによる感染症

メトロニダゾール

著者: 神谷亨

ページ範囲:P.616 - P.618

ポイント

・メトロニダゾールは,トリコモナス腟炎の治療のみならず,嫌気性菌感染症,偽膜性腸炎,アメーバ赤痢,ランブル鞭毛虫症など幅広い疾患に有効である.

・中枢神経系を含むすべての組織,体液に良好に移行するため,脳膿瘍,骨髄炎,皮膚軟部組織感染症,関節炎の治療にも有用である.

ST合剤

著者: 本郷偉元

ページ範囲:P.620 - P.623

ポイント

・ST合剤は広域抗菌薬であり,第一選択薬となることは少ない.

・ST合剤が必要となる感染症では感染症専門医へのコンサルトが必要なことが多い.

・ST合剤でのトリメトプリム:スルファメトキサゾールの用量比は1:5であり,ST合剤の用量を表すときはトリメトプリムの量で表す.

・他の抗菌薬同様,重症な副作用を起こすことがある.

ニューキノロン系

著者: 中浜力

ページ範囲:P.625 - P.627

ポイント

・経口キノロン薬は,細菌,非定型菌,嫌気性菌などにきわめて広い抗菌スペクトラムを有する優れた抗菌薬であり,適応感染症も広範である.

・しかしキノロン耐性菌を抑制する観点からも,投与に際しては“適正使用”の遵守が望まれる.

各種感染症―抗菌薬選択の根拠と投与法

肺炎

著者: 小野宏 ,   蝶名林直彦

ページ範囲:P.629 - P.634

ポイント

・市中肺炎と院内肺炎に分けて考える.

・「成人市中肺炎診療ガイドライン」,ATSガイドラインを参考に診療を進める.

・特殊肺炎について理解する.

肝胆道系感染症

著者: 小林健二

ページ範囲:P.636 - P.639

ポイント

・細菌性肝膿瘍の原因として多いものは胆道系感染で,腹腔内の感染が門脈を介して広がるものがこれに次ぐ.前者の場合,グラム陰性桿菌,腸球菌が起炎菌のことが多く,後者の場合,グラム陰性桿菌と嫌気性菌が原因となる.

・胆管炎は迅速に治療されないと死に至る重篤な疾患であり,胆管のドレナージ減圧術を行うことが最も重要である.抗菌薬の使用はドレナージを補完するものと考えるべきである.原因菌として頻度の高いものは,大腸菌,腸球菌,クレブシエラなどであるが,胆道系術後の症例では嫌気性菌もカバーする必要がある.

尿路感染症

著者: 草深裕光

ページ範囲:P.640 - P.643

ポイント

・尿路感染は若い女性に多く,大腸菌が主な原因菌である.

・男性の尿路感染は基本的には複雑性である.

・尿路感染が疑われた場合,急性非複雑性膀胱炎以外は尿培養を採取し,地域の感受性パターンを考慮したエンピリック(経験的)治療を開始する.

・尿路感染の初期治療はST合剤,キノロン,セフェムが選択されるが,腸球菌の場合ペニシリンで治療する.

血管内カテーテル感染症

著者: 水谷哲

ページ範囲:P.644 - P.646

ポイント

・血管内カテーテル感染症の治療期間は,カテーテル抜去後,CNS5~7日間,ブドウ球菌14日間,グラム陰性桿菌10~14日間,カンジダは血液培養陰性後,14日間である.

・合併症に対する治療期間は,敗血症による転移性感染症(肺塞栓,脳梗塞・脳膿瘍,肝膿瘍,腸腰筋膿瘍,感染性心内膜炎)は4~6週間,化膿性脊椎炎では6~8週間である.

・血液培養でカンジダを検出した場合は真菌性眼内炎の合併に留意して経過観察する.

市中の細菌性髄膜炎の抗菌薬治療

著者: 五味晴美

ページ範囲:P.648 - P.651

ポイント

・市中の細菌性髄膜炎の起因菌の把握

・抗菌薬投与前のステロイド(デキサメタゾン)の投与について

・標準的な初期治療

・各起因菌の最適治療と標準的投与期間とフォローの仕方

性感染症

著者: 圓谷由紀子 ,   小山茂

ページ範囲:P.652 - P.655

ポイント

・原因菌はクラミジアと淋菌が主であり,両者の重複感染が多く治療も同時に行う必要がある.

・クラミジアにはテトラサイクリン系,マクロライド系またはニューキノロン系薬を7~14日間投与する.淋菌はニューキノロン耐性株が増加している.

・腹痛を主訴とする疾患にクラミジアや淋菌の感染が原因である例がある.

・梅毒の治療はペニシリン系薬が基本であり,病期に応じて投与期間を決める.

好中球減少時の発熱

著者: 畑中一生

ページ範囲:P.656 - P.658

ポイント

・化学療法時の発熱性好中球減少症(fibril neutropenia:FN)はリスクにより治療方針が異なる.

・FNでは不顕性感染が多く,エンピリック治療が必要となることが多い.真菌感染も念頭に置く必要がある.

手術部位感染予防

著者: 竹末芳生

ページ範囲:P.660 - P.662

ポイント

予防抗菌薬を有効に使用するために,4つの原則が守られなければならない.

・準清潔手術では,臨床研究で予防抗菌薬は感染率を減少させることが証明されている.清潔手術では,異物を装着する場合や感染を合併すれば重篤化する手術で適応となる.

・術中汚染菌に活性を有する予防抗菌薬を使用する.

・初回抗菌薬は皮切<30分前に投与する.

・多くの場合,有効血中濃度を術中のみ維持すればよい.

結核

著者: 鈴木克洋

ページ範囲:P.664 - P.665

ポイント

・現在,結核の標準療法は,INH・RFP・PZA・EB・SMから3~4剤を組み合わせて使用する二つのレジメンとなっている.

・初期により多くの薬剤を用い,維持期は薬剤数を減らす二相治療方式で行う.

・治療期間はレジメンごとに決定されており,個別に治癒を判定するマーカーはない.

理解のための34題

ページ範囲:P.667 - P.673

問題1 次の各項目の文章で,正しい組み合わせはどれか.
① 昨今の耐性菌の氾濫は「環境汚染」の一つと捉えるべきである.
②「抗菌薬を選択する」とは,その種類,用量,投与ルート,投与期間を決めることまで含む.
③ 耐性菌産生対策は看護師の,伝播対策は臨床医の努力に負うところが大きい.
④ 抗菌薬療法においては,できるだけ広域スペクトル抗菌薬を選択するように努める.
⑤ 細菌感染症の診断とは,感染病巣,起炎菌,患者の感染防御能の評価,重症度の評価を含む.

A:①,②,③

B:①,②,⑤

C:①,④,⑤

D:②,③,④

E:③,④,⑤

問題2 発熱患者の評価と治療について,正しい組み合わせはどれか.
① 重症市中肺炎のために入院している患者が,抗菌薬投与開始後3日目に解熱していなければ,治療は無効と判断して抗菌薬を変更すべきである.
② 急性腎盂腎炎の患者が,抗菌薬投与開始後2~3日経過しても解熱しない場合は,起因菌の感受性を確認するとともに,腎実質膿瘍,腎周囲膿瘍などの合併症の存在や,尿路の通過障害などの問題が存在している可能性を検討すべきである.
③ 中心静脈カテーテル挿入中の患者がCandida albicans による菌血症をきたした場合は,抗真菌薬の投与とともに中心静脈カテーテルの抜去が必要である.
④ 発熱,咳嗽を主訴に来院した外来患者の痰が黄色で膿性ならば抗菌薬投与の適応となる.
⑤ 薬剤熱では39℃を超えるような高熱は認められない.

A:①,②

B:②,③

C:③,④

D:④,⑤

E:①,⑤

できる医師のプレゼンテーション―臨床能力を倍増するために 1(新連載)

なぜ,プレゼンテーションが必要か?

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.678 - P.681

・入院紹介で

 「本日,新入院の方です.主訴は発熱です.現病歴ですが……(数分経過)」「で,何歳の男性/女性?ベースはどんな方なの?」「………」

・消化器内科医に内視鏡検査を頼みに行って

 「元来,著患のない38歳の男性の方で主訴はふらつきです.現病歴ですが,入院の5日前から黒色便に気づいていましたが,放置されておりました.労作時の呼吸困難が……」「で,どうしてほしいの? 緊急内視鏡をやれってこと?」「………」

医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために 4

マニュアルは絵に書いた餅?―手技マニュアルの有用性,手技のライセンス化

著者: 本村和久

ページ範囲:P.682 - P.684

教育の重要性

 気管内挿管,胸腔ドレーン挿入などの侵襲的な手技が患者さんの命を救うことは多いが,未熟な研修医が手技を行えば,事故が起こる可能性は当然高くなる.しかし,やらないことには手技は上達しない.最初から名医はいない.

 研修医が手技を行う場合でも,確実に安全は確保されなければならないし,患者さんの負担も最小限に抑える環境が整っていなければならない.研修施設は,患者さんを実験台とする病院であってはならず,むしろ,患者さんの安全を確保するために,たゆみない努力を続けている病院でなければならない.国の内外を見渡しても,臨床で優れた評価を得ている病院は研修病院であることが多い.米国のマサチューセッツ総合病院はその好例であるが,十分な研修医教育を行うと同時に安全管理も徹底して行い,優れた質の医療を提供している.研修病院であることは,逆に言えば常に「医療安全」に熱心な病院ということでもある.手技一つをとっても,適切な方法で安全に行われるような条件を確保していなければならない.

研修おたく海を渡る 4

週80時間ルール―俺の若い頃は

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.685 - P.685

 「週80時間ルール」とは,研修医の長時間勤務が,研修医のみならず,疲労による判断ミスなどで患者にも不利益を及ぼす可能性からACGME(注1)により,全米の研修プログラムで2003年7月から導入されたルールです.週の勤務時間は当直含めて80時間以内,連続勤務は30時間(24時間+引き継ぎ,教育のための6時間)を超えない,また週に一度は連続24時間以上の休みがなくてはならないなどとさまざまな制約ができました.ニューヨークなどでは以前から同様のルールがあったようです.

 これらを満たさないとプログラム自体が取り消されることもあります.そのためタイムカードのように病院での仕事始めと終わりにIDカードを機械に通すことで時間を管理したり,web上で毎日の勤務時間を自己申告させたりしています.またSleep Deprivation(睡眠不足,断眠)が及ぼす影響をテーマにしたレクチャーを受けることが必修とされています.このルールを満たし,かつ教育面の基準も達成するためにプログラムディレクターはいろいろと頭を悩ませるようです.

東大病院内科研修医セミナー 10

トロンボポエチンが診断に有用であった特発性血小板減少性紫斑病の1例

著者: 大池裕美子 ,   松川倫子 ,   江頭正人

ページ範囲:P.686 - P.690

Introduction

・血小板減少をきたす疾患は?

・特発性血小板減少性紫斑病(ITP:idiopathic thrombocytopenic purpura)の診断は?

・ITPの治療は?

C A S E

【症例】 70歳,女性.

【主訴】 関節痛,紫斑.

【現病歴】 2001年10月29日左側頭葉~後頭葉の脳梗塞を発症して当科入院.この頃血小板数は20万/μl台であった.2004年11月26日血小板数12.4万/μlに低下していた.以後も斬減し,12月16日に9.9万/μlとなった.2005年5月,皮膚に瘙痒感があり,引っかくとその跡に,点状に小紫斑が出現するようになった.2005年7~8月頃より(1,2カ月前より),打撲すると皮下出血するようになった.2005年9月9日区の健診で血小板減少2.6万/μlを指摘されたため,9月12日当院受診.血小板1.9万/μlであり,精査加療目的に9月12日入院となった.

連載

目でみるトレーニング

著者: 金本素子 ,   岩崎靖 ,   福田耕一

ページ範囲:P.692 - P.697

問題 439

 症 例:52歳,男性.

 主 訴:頭痛,発熱.

 既往歴,家族歴:特記すべき事なし.

 現病歴:2000年12月初旬より特に誘因なく頭部全体の頭痛,発熱出現し,12月27日当科外来受診した.上気道炎として経過みたが,症状,炎症反応増悪したため,2001年1月23日精査,加療目的に入院となった.

病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 3

呼吸器

著者: 清水健 ,   河村憲一 ,   是松元子

ページ範囲:P.698 - P.702

 呼吸器(気道)は上部と下部に分かれ鼻腔から肺までが含まれるが,特に重要なのは肺である.悪性腫瘍による死亡順位で,肺癌は男性では第1位,女性でも大腸癌,胃癌についで第3位であり,死亡数は年々増加している.本稿は肺を対象臓器とし,肺癌検査に焦点を当てた病理検査について話を進める.

病理検査の意義

 原発性肺癌には扁平上皮癌,腺癌,小細胞癌,大細胞癌という代表的な4疾患をはじめとしていろいろな組織型があり,それぞれ特有な臨床病理学的特徴を示す.また転移性腎癌がしばしば気管支内発育を示すように,いかにも原発性肺癌のような発育進展形式を示す転移性腫瘍もある.近年,画像診断技術が著しく進歩し,身体の内部の臓器における変化も詳しく描出できるようになったが,治療方針決定のための確定診断に,病変から得られた細胞・組織による直接的な診断が欠かせない点は,他臓器の場合と同様である.例えば小細胞癌という病理診断が確定すれば,手術ではなく化学療法が第一に選択される.肺は深部臓器であり手術も侵襲度の高いものなので病理検査による術前の確定診断は重大な意味を持つ.

書評

そこが知りたい! 感染症一刀両断!

著者: 大西弘高

ページ範囲:P.674 - P.674

 感染症診療には,専門家が非常に少ない状況が続き,上級医の流儀を下に伝えることが「教育」であると誤解されてきた印象があった.最近になり,米国で感染症に関する研修プログラムを受けた医師たちを中心に,感染症学にもようやくきちんとした学問体系が持ち込まれつつあるが,日本の研修病院でトレーニングを受けて感染症学全般を網羅するというにはまだ時間がかかるかと思っていた.

 さて,米国で感染症の専門研修を受けた先駆けである古川先生監修によるこの「感染症一刀両断!」をみると,感染症に対する基本的な考え方,グラム染色,検体のとり方,培養の意義など,感染症診療を行うために必要な臨床検査に関する内容が最初に来ている.感染症診療に切っても切れない微生物系臨床検査をこれだけコンパクトに,かつ分かりやすくしっかりと書いている本は今までなかった.西原先生が臨床(特に内科)に関する基本的な部分からしっかりした臨床トレーニングを受け,しかも感染症についてもかなり本格的に学んだことがうかがわれる.

内科医の薬100 Minimum Requirement 第3版

著者: 大橋京一

ページ範囲:P.676 - P.676

 現在,わが国で市販されている医薬品品目数は15,000を超えている.しかし,一般の臨床医が日常診療で使用している医薬品の数は60前後であると言われている.また,医薬品の開発が進み,毎年新しい薬が臨床の現場に登場している.このような状況で,必要な薬の選択に苦労する.近年,EBMの概念が普及し,エビデンスに基づいた薬物治療が重要視されつつあり,1995年にはWHOが医薬品の適正処方のために『Guide to Good Prescribing』を出版した.この訳が『P-drugマニュアル─WHOのすすめる医薬品適正使用』として医学書院より出版されている.P-drugとはパーソナルドラッグの略であり,「自家薬籠中の薬」の意味である.クライテリア(有効性,安全性,適合性,費用)に沿って吟味を行い,自分の処方集に入れる行為を通して,医薬品の評価ができるし,患者への情報提供もスムーズに行えるようになる(わが国のP-drugの情報は「http://p-drug.umin.ac.jp」で得ることができる).

 合理的な薬物治療は,的確な診断のもとに,必要な薬を必要な量,期間投与する計画を立て,実行し,評価することである.近年,医学部の卒前教育における薬物治療教育の重要性が指摘され,従来の診断学に偏重していた反省にたって,臨床薬理学教育が全国の医学部で行われるようになった.しかし,数年前よりコア・カリキュラムを中心としたカリキュラム編成が行われるようになってきた.コア・カリキュラムの概念は重要であるが,薬物治療に関する内容が乏しく,過去の診断学偏重に逆戻りした感があると思っている方は私一人ではないであろう.

《総合診療ブックス》はじめての漢方診療 十五話 [DVD付]

著者: 山口哲生

ページ範囲:P.677 - P.677

 親友の三潴忠道先生が素晴らしい漢方の解説書を書いてくれた.

 実に読みやすい本だ.漢方の解説書というと,陰陽虚実の証の話からはじまって,西洋医学だけをやっている者にはなかなかとっつきづらいものや,症状別・病名別に使える漢方薬を羅列して説明してあるものが多かったが,この本には漢方の考え方と具体的な使い方,診察のしかたが実にわかりやすく書かれてある.読みはじめると,まず入り口としての簡単な解説がある.それからすぐに「これが漢方診療の実際だ」と,どのような患者にどのように使うのかが著効例を挙げながら具体的に書かれてある.いかにも患者さんを大切にする三潴先生らしい切り口だ.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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