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雑誌目次

雑誌文献

medicina43巻5号

2006年05月発行

雑誌目次

今月の主題 経静脈・経腸栄養―プランニングとその実践 Editorial

最近の栄養療法の動向とその意義

著者: 東口髙志

ページ範囲:P.714 - P.717

ポイント

適切な栄養管理を,診療科間の垣根を越えて多職種で実施する集団をNSTという.

2005年12月現在,わが国では680以上の施設にNSTが設立されており,230以上の施設でNSTの稼動準備がなされている.

平成18年度診療報酬改正で『栄養管理実施加算』が新設された.この加算の取得には施設全体でのNSTの実施が必要とされ,これによってわが国の栄養療法は新たな展開を迎えることになる.

わが国の栄養療法の現状

栄養療法発展の歴史的背景

著者: 福島秀樹 ,   森脇久隆

ページ範囲:P.718 - P.721

ポイント

初期の経腸栄養法は紀元前に行われていた.

上部消化管への経腸栄養は16世紀末より始まった.

17世紀より経静脈栄養法は開始された.

1960年代のDudrickらの研究成果により中心静脈栄養法が普及した.

わが国の静脈・経腸栄養の現状

著者: 井上善文

ページ範囲:P.722 - P.724

ポイント

わが国の静脈・経腸栄養のレベルは,安全に適正な管理ができるレベルではない,と言わざるを得ない.

臨床栄養教育が十分に行われていないことも重要な要因である.

個々の患者に最も適正な栄養療法を実践することの重要性を理解し,レベルアップを図るための努力が続けられなければならない.

わが国における栄養サポートチームの普及状況

著者: 伊藤彰博 ,   東口髙志 ,   梶谷伸顕

ページ範囲:P.726 - P.729

ポイント

日本静脈経腸栄養学会が,NSTの導入を学会主導で支援する“NSTプロジェクト”を設立し,わずか5年間で,プロジェクト参加施設は920,このうち684施設でNSTの稼動が開始されるに至った.

日本栄養療法推進協議会のNST稼動施設基準では,医師,薬剤師,管理栄養士,看護師,臨床検査技師の参加は必須とされている.

さらに栄養療法および栄養管理に関する成績(データやoutcome)を集積し,それを基に現行の実施方法を改善させる機能を有していることや,褥瘡チームや感染対策チームならびにリハビリテーション部門などの他のチーム医療や部門とのコラボレーションが図られていることが求められている.

経静脈・経腸栄養法のoutcome

著者: 清水敦哉

ページ範囲:P.730 - P.732

ポイント

適切な栄養管理を行うことにより,在院日数が減少し,経済的効果が得られる.

経腸栄養は静脈栄養に比較して,感染性合併症が少ない.安易な中心静脈栄養は慎むべきである.

immunonutritionの周術期の使用により術後の感染性合併症が減少する.

栄養療法の基礎

栄養障害とその程度の評価(栄養アセスメント)

著者: 宮司智子 ,   田中弥生

ページ範囲:P.734 - P.737

ポイント

栄養障害が発生すると生体のあらゆる生理機能は正常に維持されなくなる.栄養障害は生体の死をももたらす危険性がある.

栄養アセスメントとは,栄養状態をさまざまな栄養指標を用いて栄養状態良好か,栄養不良かを客観的に評価することである.

栄養アセスメントはまず,SGAで栄養状態のスクリーニングにかけ,栄養障害ありと判断された場合にODAにかけ,客観的に判断していく.

栄養管理法の選択

著者: 山中英治

ページ範囲:P.738 - P.740

ポイント

栄養投与経路は,生理的な経路から,すなわち,経口栄養,経管栄養(経鼻,胃瘻,腸瘻など),静脈栄養の順番に選択する.

静脈栄養施行中であっても,できるだけ早く経口摂取や腸管利用を再開することで,回復が早くなる.

各栄養投与経路の長短所を理解して適用する.経腸栄養の長所は生理的であり,短所は下痢などの腹部症状である.静脈栄養の短所は穿刺時の合併症と,カテーテル敗血症である.

投与カロリーの算出と投与栄養素の決定

著者: 福村早代子 ,   東口髙志

ページ範囲:P.742 - P.746

ポイント

基礎エネルギー消費量(BEE)は生命維持のために必要な最低限のエネルギー量である.

BEEは性別・身長・体重・年齢を用いてHarris-Benedictの式により算出する.

総エネルギー投与量はBEEと,活動係数と侵襲因子をかけあわせて求める.

栄養素投与量は①蛋白質(アミノ酸),②脂肪,③糖質(炭水化物),④水分量,⑤ビタミン・ミネラルの順に決める.

栄養管理プランニングは定期的な実施状況のチェックと修正,再評価が重要である.

経静脈・経腸栄養法の基本と実際

経静脈・経腸栄養法の適応・利点と選択基準

著者: 加藤恭郎 ,   松末智

ページ範囲:P.749 - P.751

ポイント

末梢静脈栄養法は,安全性は高いが投与カロリーに限度があり,長期の栄養管理は困難である.

腸管が利用可能な患者には中心静脈栄養よりも経腸栄養を積極的に用いるべきである.

中心静脈栄養用輸液はトリプルバッグ製剤が主流であるが,成分を十分理解して使用する.

経腸栄養剤では消化態栄養剤と半消化態栄養剤の違いを理解して使い分ける.

静脈栄養法の基本と実際

著者: 小山諭 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.752 - P.755

ポイント

静脈栄養法では,短期であれば末梢静脈栄養(PPN),長期の場合には中心静脈栄養(TPN)を選択する.

PPNでは25kcal/kg/dayまでの投与が可能である.

TPNでは25~35kcal/kg/day程度での投与が可能である.

モニタリングに際し,感染予防と栄養学的効果,代謝性合併症に注意する.

経静脈輸液剤の種類と特徴

著者: 児玉佳之

ページ範囲:P.756 - P.758

ポイント

静脈栄養法は,末梢静脈栄養法(peripheral parenteral nutrition:PPN)と中心静脈栄養法(total parenteral nutrition:TPN)に分類される.

末梢静脈栄養においても,ビタミン剤の投与を考慮する必要がある.

中心静脈栄養において,ビタミン,微量元素の投与は積極的に考慮する必要がある.

静脈栄養の合併症とその対策

著者: 秋山和宏

ページ範囲:P.761 - P.763

ポイント

静脈栄養の合併症として特に注意を要するのは,まず,高浸透圧性高血糖性非ケトン性昏睡である.速やかな生理食塩水の点滴と速効型インスリンにて対応する.次に,ビタミンB1欠乏症による乳酸アシドーシスであるが,診断がついたら直ちにビタミンB1の100mgを静注することで速やかな改善が得られることが多い.

経腸栄養剤の選択と衛生管理

著者: 二村昭彦

ページ範囲:P.764 - P.767

ポイント

各種経腸栄養剤の組成上の相違を知り,病態に最も適切な栄養剤を選択することが,患者の治療効果およびQOLにおいて重要である.

経腸栄養剤や投与容器・チューブの細菌汚染が下痢,腹部膨満,肺炎などの原因となっている可能性があることを常に念頭におき,衛生的な経腸栄養剤の調製および投与・管理を行うことが大切である.

経腸栄養の適正投与法

著者: 岡田晋吾

ページ範囲:P.768 - P.770

ポイント

投与ルートに応じた投与法,管理法を考える.

栄養剤だけでなく薬剤の投与が必要なことが多く,簡易懸濁法は優れた方法である.

栄養剤の固形化は,介護者の負担を軽減する方法として今後ますます普及すると考える.

経腸栄養の合併症とその対策

著者: 粟井一哉

ページ範囲:P.772 - P.774

ポイント

経腸栄養の合併症には,栄養剤投与に伴うもの,投与ルートに関連したもの,代謝性のものが挙げられる.

経腸栄養の最も重要な合併症は,胃食道逆流による誤嚥性肺炎である.

経鼻栄養チューブの誤挿入事故防止のため,X線写真による確認が推奨される.

PEGを用いた栄養管理の実際

著者: 平良明彦 ,   藤木茂篤 ,   有本之嗣

ページ範囲:P.775 - P.777

ポイント

PEGは低侵襲ながら術後の早期単純死亡率は比較的高いため,適応を十分検討すべきである.

造設時の陰圧試験穿刺,皮膚大切開,胃壁固定具併用はPEG造設時の偶発症予防となりうる.

術後の嘔吐による誤嚥性肺炎を防ぐために腸蠕動,排便には十分気を付けるべきである.

PEG造設後に嚥下リハビリが進み,抜去可能となる症例もあり,QOLからも注目されている.

栄養サポートチームの役割と活動

NSTの体制と組織づくり

著者: 飯島正平

ページ範囲:P.779 - P.782

ポイント

NSTは病院の正式な組織として認められないといけない.

活動への時間は,業務の見直し・効率化によって見い出すことができる.

NSTスタッフは,関係する全職種より構成される必要がある.

NSTの目標と活動の実際

著者: 野上哲史

ページ範囲:P.783 - P.785

ポイント

NSTはチームアプローチにより適正な栄養療法が行われるように評価,介入を行う.

活動の鍵となるのが,コンサルテーション,ラウンド,チームミーティングであり,介入記録の情報共有も重要である.

NSTの基本的な活動の定着とともに,病院機能へのNSTの寄与を評価するシステムづくりも活動計画の視野に納めるべきである.

NST活動の効果

著者: 大川光 ,   東口髙志

ページ範囲:P.786 - P.788

ポイント

尾鷲総合病院ではNSTおよびワーキングチームの活動により,高齢者医療が確立された.

NST稼動による適正な栄養管理の実施は,病院の医療の質を向上させつつ,多くの経済効果を生むことにもなる.

NSTの効果は多岐に及ぶが,なかでも平均在院日数の短縮は大きな経済効果をもたらす.

疾患治療としての栄養療法

重症感染症,敗血症

著者: 丸山道生

ページ範囲:P.790 - P.792

ポイント

重症感染症,敗血症時にはエネルギー消費量の増大,高血糖,糖新生,骨格筋蛋白の崩壊,脂肪分解の亢進などの代謝変化が認められる.

栄養ルートとしては,経腸栄養が望ましい.

必要エネルギー量はHarris-Benedictの式からBEEを算出し,活動係数1.2と傷害係数は1.5~1.7程度を乗じる.

蛋白・アミノ酸必要量は1.5~2.0g/kg/dayで,BCAAやグルタミンが有用である.

脂肪乳剤(n-3系脂肪酸含有)の静脈投与は不利益になることがありうる.

MCTやn-3系脂肪酸は有用であると考えられる.

脳血管障害

著者: 柴本勇

ページ範囲:P.794 - P.797

ポイント

脳血管障害の25~50%で一時的に嚥下障害が起こると言われ,呼吸器合併症や低栄養を予防する意味で嚥下機能評価および経腸栄養の導入は重要である.

経口摂取への移行は,摂食・嚥下リハビリテーションの実施が不可欠である.

摂食訓練の中心は段階的摂食訓練であり,一定の基準に従って進めることである程度の経口摂取が期待できる.

脳血管障害患者では,口腔内乾燥や汚染を認めることも多く,口腔ケアの実施も重要である.

慢性呼吸不全

著者: 大川貴正 ,   東口髙志

ページ範囲:P.798 - P.800

ポイント

慢性呼吸不全,特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の栄養状態は,呼吸機能,呼吸筋力,免疫能と密接に関連する.

COPDにおける栄養障害は,エネルギー消費量の増加とカロリー摂取量の低下によるエネルギーインバランスが原因と考えられている.

COPD患者における栄養障害は肺機能の重症度とは独立した予後決定因子である.

COPD患者に対しては運動療法や呼吸筋トレーニングとともに適切な栄養療法を併用することが重要である.

肝不全

著者: 小川哲史

ページ範囲:P.802 - P.804

ポイント

肝不全患者では,蛋白・エネルギー低栄養(PEM)が高頻度に出現し,患者のQOLや予後を左右する.

種々の代謝異常が出現するが,Fischer比(分岐鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸)が低下する蛋白・アミノ酸代謝異常が特徴的である.

栄養療法として,分岐鎖アミノ酸製剤の投与や就寝前の軽食(LES)を含む分割食,亜鉛の補充などが重要である.

腎不全

著者: 磯﨑泰介 ,   鈴木由美子 ,   矢野浩樹

ページ範囲:P.806 - P.807

ポイント

栄養療法は,薬物療法・生活改善とともに腎不全治療の3本柱である.

保存期腎不全の栄養療法の目的は,腎不全進行の抑制と尿毒症症状の改善である.適度な蛋白・塩分制限,十分な熱量確保,必要によりカリウム(K)制限を行う.

末期腎不全では適切な熱量・蛋白の確保,塩分制限,必要によりK・リン(P)制限を行い,低栄養にも注意する.

Crohn病

著者: 藤山佳秀 ,   佐々木雅也

ページ範囲:P.808 - P.811

ポイント

活動期Crohn病では,完全静脈栄養法や成分栄養療法による優れた緩解導入効果が確認されている.

在宅成分栄養療法(HEN)は高い緩解維持効果を有するが,必須脂肪酸欠乏や微量元素欠乏症に留意する必要がある.

HENに併用する食事は,総脂肪量を30g/日までに制限し,n-3系多価不飽和脂肪酸を豊富に含む内容とする.

Crohn病では,プレバイオティクス,プロバイオティクスが有用と考えられるが,用いるべき製剤の選択は今後の課題である.

末期癌

著者: 村井美代 ,   東口髙志 ,   伊藤彰博

ページ範囲:P.812 - P.814

ポイント

末期癌患者といえども悪液質に陥っていない場合には,一般患者と同様の原則に基づいた栄養管理を実施することが基本となる.

定期的に栄養状態や病態をチェックし,その変化に応じた輸液・栄養療法のギアチェンジを行うことが重要である.

悪液質に陥った場合には,輸液量や投与エネルギーなどを一気に減少させることが症状増悪の回避につながる.

周術期の栄養管理

上部消化管切除

著者: 池田健一郎 ,   若林剛

ページ範囲:P.816 - P.818

ポイント

周術期であっても経腸的栄養投与を原則とする.

食道癌術後は外科的糖尿病状態を考慮し,TPNは必ずしも必要ではなく,早期からの経腸栄養単独管理でも十分に管理可能である.

胃癌術後はクリニカルパスが普及し,術後絶食期間は短縮している.したがって,この期間はPPNを考慮し,低栄養患者には経腸栄養も考慮する.

肝胆膵手術における周術期栄養管理

著者: 里井俊平 ,   竹山宜典

ページ範囲:P.820 - P.822

ポイント

消化管再建術がなければ早期に経口摂取が可能.

糖尿病合併例はカロリー制限より積極的なインスリン療法.

腸管免疫の観点から,術後早期に経腸栄養もしくは経口摂取を開始する.

下部消化管切除

著者: 西村元一 ,   大村健二

ページ範囲:P.823 - P.825

ポイント

大腸癌の手術の侵襲は中程度である.

一般的に術前の栄養状態は良好であるが,高度の貧血やイレウスなどによる経口摂取不十分による低栄養症例が少なからず含まれている.

術後の栄養管理が必要な期間は1週間ぐらいである.

合併症などがなければPPNによる管理で十分である.

小児の経静脈・経腸栄養

小児の経静脈・経腸栄養の特徴と実際

著者: 土岐彰

ページ範囲:P.826 - P.828

ポイント

小児の栄養管理について

経腸栄養の投与基準は,日本人の栄養所要量―食事摂取基準をもとに検討する.

成長に伴う組織の増加を考慮して計算する.

経静脈栄養も経腸栄養をもとに計算するが,過剰投与に注意する.

栄養必要量を決定する場合,年齢と身長および体重を考慮した細かな配慮が必要である.

在宅栄養療法

在宅静脈栄養法(home parenteral nutrition:HPN)

著者: 城谷典保

ページ範囲:P.830 - P.832

ポイント

医療担当者が,HPNにより患者・家族のQOLが改善すると判断できること.

医療担当者がHPNを十分に理解して,院内・院外を含めて管理体制が確立されていること.

患者・家族がHPNについて十分に理解して,家庭での注入管理が安全に行えて合併症の危険性が少ないこと.

実施中の合併症では,カテーテル敗血症(感染症)が死亡につながる重篤な合併症である.

在宅経腸栄養法(home enteral nutrition:HEN)

著者: 白尾一定

ページ範囲:P.834 - P.836

ポイント

在宅経腸栄養法は,経口摂取が不良で消化管が機能している症例に幅広く行える栄養療法である.

在宅での栄養管理が必要な場合には,長期に栄養管理ができる栄養ルート,経腸栄養剤や投与法を選択し,介護者には,栄養療法の意義や合併症とその対処法を説明する.

合併症に迅速に対応できるバックアップ体制を整える.

理解のための32題

ページ範囲:P.838 - P.844

問題1 栄養療法について,正しい組み合わせはどれか?
① 中心静脈栄養(TPN)は,1968年にS.J.Dudrickによって開発された.
② 栄養アセスメントは,1977年にJ.E.Fischerによって体系付けられた.
③ 欧米のNSTは経腸栄養の適正実施のために誕生した.
④ わが国の栄養管理は経静脈栄養が中心に行われており,この実施に対し平成18年度の診療報酬改正で新たに加算が認められた.
⑤ 適切な栄養管理を,診療科間の垣根を越えて多職種で実施する集団をNSTという.

A:①,②

B:②,③

C:③,④

D:④,⑤

E:①,⑤


問題2 栄養療法の歴史について,正しい組み合わせはどれか.
① 経静脈栄養法は20世紀から始まった.
② Dudrickらの研究成果により末梢静脈栄養法が普及した.
③ 経腸栄養は紀元前に行われた記録がある.
④ アミノ酸輸液や脂質乳剤を開発したWretlindは「経静脈栄養法の父」と称された.
⑤ Fisherらは重症肝疾患患者の肝性脳症時には必須アミノ酸が有効であると報告した.

A:①,②

B:②,③

C:③,④

D:④,⑤

E:①,⑤

病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 4

婦人科

著者: 山本宗平 ,   津田均

ページ範囲:P.846 - P.849

 婦人科領域は,病理診断用に提出される検体数も多く,日常診療において病理診断が特に重要な役割を果たす分野の一つである.特に腫瘍では,病理診断は子宮癌,卵巣癌の病期や治療方針決定に大きな影響を果たす.また婦人科領域独特の診断名,例えば前癌病変(上皮内腫瘍または異形成),境界悪性腫瘍や複雑で独自の腫瘍分類法などが採用されており,臨床側もこれらの診断名・分類法の意義をup to dateで理解している必要がある.

 本稿では,婦人科腫瘍疾患のなかでも特に重要と思われる子宮頸部・子宮体部(内膜)・卵巣に焦点を絞り,各領域における病理診断(細胞診を含む)の有用性,組織採取の注意点,病理組織(細胞診)検査依頼用紙に記載する際のポイント,報告書の読み方などを中心に概説する.

連載

目でみるトレーニング

著者: 宮川比佐子 ,   溝部孝則 ,   宮下真奈備 ,   武政聡浩

ページ範囲:P.851 - P.858

問題 442

 症 例:76歳,男性.

 主 訴:体重減少,繰り返す肺炎.

 既往歴,家族歴:特記すべきことなし.

 喫煙歴:40本/日×36年

 現病歴:2003年8月から11月の3カ月間で体重が8 kg(65 kg→58 kg)減少したため,11月19日近医を受診した.胸部X線上右下肺野に浸潤影を認め抗菌薬が投与された.軽快,増悪を繰り返したため,精査加療目的にて12月17日当院呼吸器内科に紹介され,同日入院となった.なお,近医で使用された抗菌薬はCFPM, PIPC, LVFX, TFLXであった.

 身体所見:身長161.4cm,体重55.5kg,意識清明,血圧140/80mmHg,脈拍71/分・整,体温35.5℃.結膜に貧血,黄疸なし.胸部では右下肺にわずかに湿性ラ音(coarse crackle)を聴取.その他の身体所見に異常なし.

研修おたく海を渡る 5

オンとオフ

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.859 - P.859

 前回80時間ルールの紹介をしました.何でそんなんできんねん,日本では無理や,と思われた方も多いと思います.

 アメリカに来て最初に感動したのは,よく言われていることですが,オンとオフがはっきりしている点です.当直あけの昼下がりに自転車をこぎながら,こんな時間に帰っていいのかと罪悪感におそわれたこともあります.担当の患者さんが亡くなったことを,朝,出勤してはじめて知って少し寂しく思ったこともあります.患者-医師関係が希薄になるとか,責任感がなくなるのではといった懸念は,アメリカでも取りざたされています.

できる医師のプレゼンテーション―臨床能力を倍増するために 2

現在,「ないもの」

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.860 - P.864

ないない尽くしのPresentation

 前回,お話したように,プレゼンテーション能力は,臨床能力を反映すると考えられます.それにもかかわらず,「プレゼンテーションに自信がない」「うちの研修医のプレゼンテーションは駄目だ」ということをよく耳にします.言葉を置き換えると,「臨床能力に自信がない」「うちの研修医の臨床能力は駄目だ」ということです.とても残念なことですが,どうしてプレゼンテーション能力が伸びていかないのでしょう?

 私見ですが,研修医個人だけの問題ではなく,多くの要因(表1)が関係していると思います.あまりにも「悪いもの=ないもの」が多過ぎるので,ちょっとやそっとの改善では上達しないのかもしれません(上達のコツは第7・8話でお話します).今回はそれぞれについての問題点・改善点を検討していきます.

医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために 5

たかが採血,されど採血

著者: 本村和久

ページ範囲:P.865 - P.868

 医師が行う手技のなかで,もっとも基本的な手技は採血と言えるだろう.しかし,その教育方法にスタンダードはないようだ.ここでは,医師だけでなく,医学生,検査技師を含めた採血方法の指導の実際について報告したい.

教育は業種を超えて

 クリニカルクラークシップ(診療参加型臨床実習)と呼ばれる,医学生への臨床教育が進んでいる.従来の講義中心の教育から脱却を図り,実際の臨床現場に出て,生きた知識,技術を習得してもらおうという試みである.以前は手技に関しての規則はなかったが,厚生労働省から医師の指導のもと,手技を行うことが明確化された.当院では,基本的なオリエンテーションを指導医が行い,採血手技に関しては,後期研修医が指導を行うこととした.「駆血帯をいつ巻くのか?」,「採血管の位置は?」など,知っているようで知らないことも多く,研修医が自らの知識を再確認する意味もある.しかし,手技というものは,やり方を理解しても,経験を積まないとうまくはならない.そこで,どう実習を行うかが問題となる.沖縄県立中部病院では,検査技師が外来の採血業務を行っているが,これを患者さんの同意のもと,手伝う形で採血業務実習を行うようにしている.経験豊富な技師の手技の横で経験を積むことはなによりの上達へのステップとなっている.

東大病院内科研修医セミナー 11

神経性食欲不振症の男性例

著者: 八塚麻紀 ,   鈴木亜紀 ,   冨久尾航 ,   森屋淳子 ,   吉内一浩 ,   赤林朗

ページ範囲:P.870 - P.874

Introduction

低体重の若年男性で鑑別に挙げるべき疾患は?

さまざまな検査値異常をどのように解釈するか?

書評

解剖実習室へようこそ

著者: 内山安男

ページ範囲:P.845 - P.845

 医学生にとって解剖学実習は通らねばならぬ登竜門です.肉眼(系統)解剖と顕微(組織)解剖を終えると,医学生としての共通の言語を理解し,基礎医学・臨床医学の勉強に親近感を覚えるようになります.特に,肉眼解剖は,人体の構造を理解するにとどまらず,生命について,また,医学について多くを考えることになるため,精神的にもインパクトのあるカリキュラムです.

 医学生がこのような肉眼解剖を学ぶにあたっては,現今,たくさんの教科書が用意されています.実習書も図譜もたくさんあります.これらは,解剖学実習を進めるうえで必需品です.しかし,予習のため実習書を読み,教科書・図譜を参考に勉強して,いざ実習室に行っても,なかなか思うような解剖学実習はできません.皮膚,皮下組織,筋膜,筋,骨,その間に,神経と血管が走り,体幹には臓器が入っており,確かに机上の勉強ではまったくわからないことだらけで,実習を進めることになります.その意味で,臨床研修と同様に,インストラクターが必要になります.

細胞診を学ぶ人のために 第4版

著者: 福田利夫

ページ範囲:P.850 - P.850

 本書の初版は1990年に発刊されました.たかが15年前と思われますが,初版の当時は,病理組織学と細胞診断学とを有機的に結び付け,分かりやすく解説した教科書は他にみられず,国内で細胞診を“学ぶ”人たちの新しいスタイルの教科書として好評をもって迎えられました.その後,国内・国外の細胞診領域での進歩にあわせて,今日までの15年間に3回の改訂が行われ,今回の第4版に至っています.

 今回の改訂に携わった執筆者のうち,6名の病理医は細胞診断学に造詣が深く,細胞診専門医・指導医として細胞検査士の教育に深い経験と理解をもたれている方々です.また6名の細胞検査士は全員,癌研究会附属病院に所属し,細胞診の第一線で活躍されているとともに,細胞検査士の教育に多年の経験を蓄積されている方々です.これらの筆者の方々が編集と執筆を担当された坂本穆彦教授の意向のもとで,細胞診の基本から応用までのすべての領域について過不足なく,また初心者にも理解しやすいように解説されています.

トピックス

rt-PA静注療法を巡りシンポジウム―第31回日本脳卒中学会総会

ページ範囲:P.793 - P.793

 さる3月19~20日,横浜市において第31回日本脳卒中学会総会(会長:児玉海雄 福島県立医科大学脳神経外科教授)が開催された.2005年10月に,発症3時間以内の超急性期脳梗塞に対してrt-PA(遺伝子組換え組織型プラスミノゲンアクチベータ)静注による血栓溶解療法が認可された後の初めての総会とあって,同薬を巡ってさまざまな議論が繰り広げられた.

 発症3時間以内にrt-PA静注を開始するためには,検査などの時間も考え,遅くとも発症2時間以内には医療機関に到着していなければならない.しかし現状では,さまざまな理由で受診までに時間がかかり,適応除外となるケースが少なくない.また,頭蓋内出血の既往などにより投与禁忌となるケースも多い.ミニシンポジウム「rt-PAを用いた急性期治療」では,複数の医療機関がシミュレーションを行った結果,過去のデータからは,rt-PAが適応可能なのは全体の数%程度と想定された.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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60巻7号(2023年6月発行)

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特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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