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雑誌目次

雑誌文献

medicina43巻6号

2006年06月発行

雑誌目次

今月の主題 ベッドサイドの免疫学-免疫疾患に強くなるために 免疫系のしくみとネットワーク-免疫疾患を理解するためのミニマル・エッセンス

免疫担当細胞の分化とネットワーク

著者: 松田達志 ,   小安重夫

ページ範囲:P.884 - P.886

ポイント

1個の造血幹細胞のみですべての免疫系を再構成することが可能である.

骨髄系共通前駆細胞からは,樹状細胞,マクロファージ,顆粒球などの免疫担当細胞が分化する.

リンパ球系共通前駆細胞からは,T細胞,B細胞,NK細胞などが分化する.

免疫系の起動を司る樹状細胞に注目が集まっている.

自然免疫と獲得免疫のインターフェーズで機能するT細胞群

著者: 杉田昌彦

ページ範囲:P.887 - P.889

ポイント

抗原非特異的な生体応答を基盤とした自然免疫と蛋白抗原特異的な生体応答を主体とした獲得免疫は,双方のクロストークにより,効果的,相乗的な宿主防御を可能にしている.

従来,T細胞は獲得免疫のみを担うと考えられてきたが,自然免疫と獲得免疫のインターフェーズで機能する新しいT細胞群の存在とその意義が明らかとなってきた.

これらのT細胞は,自己あるいは微生物由来の非蛋白抗原を特異的に認識して活性化され,自然免疫と獲得免疫のクロストークを担うとともに,その一部は癌細胞や微生物感染細胞を直接傷害する機能を有している.

これらのT細胞を人為的,選択的に活性化することにより,癌や感染症を制御する試みが展開されている.

抗原認識のメカニズム

著者: 塚本博丈 ,   西村泰治

ページ範囲:P.890 - P.893

ポイント

T細胞はT細胞抗原受容体(TCR)を介して,自己MHCに提示された非自己ペプチドを複合体の形で認識する(MHC拘束性).

CD8+キラーT細胞は,MHC-Ⅰにより提示された細胞質あるいは核蛋白質由来のペプチドを,CD4+ヘルパーT細胞は,MHC-Ⅱに提示された細胞外由来蛋白質を認識する.

MHC分子のペプチド収容溝には多型が存在し,結合できる抗原ペプチドの構造およびTCRの抗原認識に影響を与える.

免疫自己寛容のメカニズム

著者: 野村尚史 ,   坂口志文

ページ範囲:P.894 - P.896

ポイント

自己・非自己の識別は免疫系の特徴であり,免疫系が自己を攻撃しないことを免疫自己寛容(自己に対する免疫寛容)という.

リンパ球が産生される一次リンパ組織(胸腺,骨髄)で未熟リンパ球の段階で誘導される免疫寛容を中枢性免疫寛容といい,自己反応性未熟リンパ球が除去されることで成立する.

一方,免疫反応が生ずる二次リンパ組織(リンパ節,脾臓など)で誘導される免疫寛容を末梢性免疫寛容といい,転写因子FoxP3を発現する制御性T細胞によって成立する.

免疫記憶のメカニズム

著者: 徳久剛史

ページ範囲:P.897 - P.899

ポイント

免疫により,抗原に特異的なメモリーB細胞やメモリーT細胞が誘導される.

メモリーB細胞は,二次リンパ組織で胚中心を形成するB細胞から分化し,抗原親和性の高いIgGクラスの抗体を産生する.

メモリーT細胞は,抗原刺激後に著しく早く,かつ多種類のサイトカインを産生する.

ケモカインと細胞接着分子

著者: 梅原久範 ,   澤木俊興 ,   田中真生

ページ範囲:P.900 - P.902

ポイント

自己免疫疾患の病態は慢性炎症である.

炎症部位には免疫細胞の浸潤が認められる.

ケモカインは免疫細胞の血流中から組織への遊走を促す因子である.

細胞遊走の初期過程は,免疫細胞と血管内皮細胞との接着から始まる.

接着分子は,細胞-細胞間の接着を行うレセプターである.

粘膜免疫

著者: 臼井崇

ページ範囲:P.903 - P.906

ポイント

粘膜の表面積は皮膚の約200倍,テニスコート1.5面分にも達し,抗原提示細胞を含むパイエル板,上皮内リンパ球,粘膜固有層リンパ球など1011個以上もの免疫担当細胞が存在する人体最大の免疫臓器である.

粘液と分泌型IgAは感染防御の第一線として重要であり,パイエル板をはじめとするリンパ組織は侵入抗原に対して強い特異免疫応答を起こす.一方で,有害ではない外来抗原に対しては,経口免疫寛容と呼ばれる負の免疫応答機構が存在し生体の恒常性を維持している.

免疫疾患はなぜ起こるか?

サイトカインと自己免疫疾患

著者: 西本憲弘

ページ範囲:P.908 - P.910

ポイント

サイトカインは種々の細胞から産生される細胞間の情報伝達分子である.

サイトカインは免疫応答や炎症反応,造血,細胞の増殖・分化などを制御し,内分泌・代謝,神経,循環,消化などの調節にかかわる.

サイトカインはネットワークを形成し制御されるが,調節異常が自己免疫疾患の病態に関与する.

サイトカインの異常シグナルの是正により自己免疫疾患の治療が可能である.

ゲノムワイド解析による自己免疫疾患感受性遺伝子の探索

著者: 山田亮

ページ範囲:P.912 - P.913

ポイント

ヒトDNA配列が決定され,すべての遺伝子を総体として対象とするゲノムアプローチが本格化している.

ゲノムワイドアプローチでは,未知の遺伝子・分子の中から免疫系・自己免疫疾患に関連する遺伝子を見いだす可能性がある.

さまざまな自己免疫疾患に対してSNPを用いたゲノムワイド関連解析が進められ,複数の自己免疫疾患に関連する遺伝子が同定されている.

自己免疫疾患モデル動物から学ぶこと(SKGマウス)

著者: 坂口教子 ,   坂口志文

ページ範囲:P.914 - P.916

ポイント

SKGマウスの関節炎はヒト関節リウマチと酷似している.

その原因はT細胞シグナル伝達分子ZAP-70の点突然変異である.

SKGマウスはヒト関節リウマチ研究のよいモデルとなりうる.

アレルギー反応のメカニズム

著者: 釣木澤尚実 ,   秋山一男

ページ範囲:P.917 - P.920

ポイント

アレルギーとは抗原抗体反応のうち病的なものを指し,その反応により標的細胞,標的組織の傷害が起こることをいう.

アレルギー反応は感作相(induction phase)と効果相(effector phase)に分けられる.

アレルギー反応には古典的な分類である液性免疫と細胞性免疫がある.

1980年代よりTh1/Th2 theoryが加わった.

アレルギー反応はさまざまな要素のネットワークにより成立し,1つの理論だけでは説明できない.

IgE産生のメカニズム

著者: 千葉貴人 ,   茆原順一

ページ範囲:P.921 - P.923

ポイント

IgE免疫応答は,B細胞上に提示された抗原ペプチドをTh2細胞が認識することにより始まる.

クラススイッチとは,B細胞からの抗体産生において,IgMからIgG,IgEなど,ほかの抗体を産生できるように免疫グロブリンのクラスが変化することをいう.

クラススイッチにおいて,Th2細胞におけるIL-4/IL-13の産生とCD40リガンド(CD40L)の発現が必須である.

肥満細胞と好酸球の役割

著者: 羅智靖

ページ範囲:P.924 - P.927

ポイント

アレルギー反応は即時相と遅発相の2相性反応からなる.

肥満細胞(マスト細胞)は即時相のみならず遅発相の誘導を含めて,アレルギー炎症のコンダクターとして中心的に働く細胞である.

アレルギー炎症の局所に,マスト細胞を中心にしてアレルギー炎症の“増悪サイクル”が形成される.

好酸球は気道などの修復,リモデリングに重要な働きをする.

知っておきたい免疫疾患のトピックス 【自己免疫疾患とアレルギーのトピックス】

全身性エリテマトーデス

著者: 高崎芳成

ページ範囲:P.929 - P.931

ポイント

SLEの予後は著しく改善したが,治療に用いる薬剤の副作用やその治療に抵抗する難治性病態の存在が問題である.

シクロフォスファミド大量間歇静注療法は難治性病態により高い効果を示す.

ミコフェノール酸モフェチルは増殖性腎炎の寛解維持と再燃防止に有用で,有害事象が少ない.

リツキシマブはSLEの難治性病態の新たな治療法として期待される.

強皮症

著者: 佐藤伸一

ページ範囲:P.932 - P.934

ポイント

全身性強皮症では,B細胞の異常な活性化が自己抗体と皮膚硬化を誘導する可能性が示されている.

微小血管障害には,骨髄から動員される血管内皮前駆細胞の減少とその機能異常が関与している.

活動性肺線維症に対してはシクロホスファミドの有効性が示された.

多発性筋炎・皮膚筋炎―自己抗体に関する最新のトピックス

著者: 吉藤元 ,   三森経世

ページ範囲:P.935 - P.937

ポイント

自己抗体プロファイルは,症状・合併症,治療反応性,予後などの臨床的特徴と関連する.

自己抗体をマーカーとする病型分類は,臨床経過を予測し適切な治療を選択するうえで有用である.

自己抗体と筋炎病態との関連について,再生筋細胞が自己抗原の供給源となり,自己免疫が誘導される可能性が示唆される.

関節リウマチ

著者: 山中寿

ページ範囲:P.938 - P.940

関節リウマチとは

 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は,慢性かつ進行性に経過する多発性関節炎を主体とする炎症性疾患である.長期にわたる関節炎の結果として関節は破壊され,重篤な機能障害を生じるが,肺線維症や血管炎に起因する関節外症状のために生命予後にも影響を及ぼし,寿命の短縮も認められている.

 RAは全世界に分布する疾患で,有病率は人種,民族を問わず0.4~1.0%とされている.一卵性双生児におけるRA発症は15~34%とされているので,発症に遺伝的要因が関与していることは明らかであるが,遺伝的要因だけでは発症は説明できず,環境要因も関与すると考えられる.

MPO-ANCA関連血管炎の重症度別標準的治療と感染症対策

著者: 吉田雅治

ページ範囲:P.941 - P.943

ポイント

厚生労働省難治性血管炎調査研究班で作成されたMPO-ANCA関連血管炎に対する重症度病型別標準的治療プロトコール2005に基づく治療は有用である.

MPO-ANCA関連血管炎の病型の重症度推定に検査上CRP値,ANCA力価が参考となる.

MPO-ANCA関連血管炎の生命予後に影響を与える感染症(特にカリニ肺炎,サイトメガロウイルス感染,真菌感染)のマーカーとして,β-D-グルカン値,アスペルギルス抗原,抗体,C7-HRP値が,予防措置治療としてST合剤,イトラコナゾールの内服,ファンギゾン®の唅嗽などが有用である.

特発性血小板減少性紫斑病

著者: 桑名正隆

ページ範囲:P.944 - P.946

ポイント

特発性血小板減少性紫斑病は血小板膜糖蛋白に対する自己抗体により誘導される自己免疫疾患である.

抗血小板抗体が結合した血小板が網内系マクロファージに貪食されることが主たる病態である.

抗血小板膜糖蛋白特異抗体や血小板回転の指標が診断に有用である.

Helicobacter pylori除菌療法の高い有効性が明らかとなり,従来の治療指針の見直しが検討されている.

新規デスモグレインDsg4に対する天疱瘡自己抗体の反応性

著者: 西藤公司 ,   天谷雅行

ページ範囲:P.947 - P.949

ポイント

天疱瘡は,デスモグレイン(Dsg)1ならびにDsg3に対するIgG自己抗体が水疱形成を誘導する自己免疫疾患である.

先天性貧毛症の責任遺伝子として,新規DsgアイソフォームDsg4が同定される.

天疱瘡患者血清の一部が,Dsg4に対して反応性を有する.

天疱瘡患者のDsg4に対する反応性は,抗Dsg1 IgG自己抗体の一部が示す交差反応による.

多発性硬化症(MS)―診療の進歩

著者: 山村隆

ページ範囲:P.950 - P.952

ポイント

多発性硬化症(MS)急性期はステロイド・パルス療法によく反応する例が多いが,視神経炎は血液浄化療法にのみ反応することがあるので注意する.テイラーメイド医療の考え方がMSでは特に重要である.

全身性エリテマトーデスには禁忌である薬剤(インターフェロン・ベータ)はMSの予後を改善する.一方,関節リウマチに有効なTNF-α阻害療法はMSを悪化させる.複数の免疫疾患の合併例では配慮する必要がある.

ここまでわかった炎症性腸疾患発症のメカニズム―多因子疾患としてのIBD

著者: 根本泰宏 ,   金井隆典 ,   渡辺守

ページ範囲:P.954 - P.957

ポイント

炎症性腸疾患は免疫の異常だけではなく,遺伝素因,環境要因,免疫異常,上皮再生の障害など種々の要因が重なり合って発症する多因子疾患である.

一見複雑にみえる炎症性腸疾患であるが,多因子疾患としての認識があれば病態生理は理解しやすい.

多様な炎症性腸疾患の治療も個々の発症要因と対比することで理解しやすくなる.

気管支喘息の新しい治療戦略―抗IgE療法

著者: 大田健

ページ範囲:P.958 - P.960

 喘息患者の約70%でチリダニに対する免疫グログリンE(immunoglobulin E:IgE)抗体が陽性である事実は,アレルギー反応が気道炎症や喘息症状の発現に重要な役割を演じていることを示唆している.

 本稿では,気管支喘息の新しい治療戦略として,実用化が進んでいるヒト化抗IgE抗体を用いた抗IgE療法について概説する.

アトピー性皮膚炎

著者: 藤本学

ページ範囲:P.961 - P.963

ポイント

アトピー性皮膚炎は,免疫学的異常,皮膚バリア障害,環境的要因,遺伝的背景などが関与する多因子性の疾患であり,純粋なアレルギー的機序から一元的には説明できない.

アトピー性皮膚炎の病態は一般にTh2優位であるが,Th1の関与も想定されている.

アトピー性皮膚炎の動物モデルではIL-18が重要な役割を果たしている.

IgEが病態に関与するメカニズムは不明だが,増悪因子として働く可能性がある.

【薬物療法のトピックス】

抗アレルギー薬の種類と使い方

著者: 松倉聡 ,   國分二三男 ,   足立満

ページ範囲:P.965 - P.967

ポイント

抗アレルギー薬には,メディエーター遊離抑制薬,抗ヒスタミン薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬,トロンボキサンA2阻害薬,Th2サイトカイン阻害薬がある.

喘息治療において,ロイコトリエン受容体拮抗薬には強力な抗炎症作用が認められるため,他の薬剤と分類が区別されている.

疾患や個々の患者の特性に合わせて抗アレルギー薬の選択を行うことが重要である.

免疫抑制薬の種類と使い方

著者: 針谷正祥

ページ範囲:P.968 - P.970

ポイント

免疫抑制薬は,適応と投与方法を熟知して処方する.

漫然と投与を続けずに,常に疾患活動性と安全性を評価し,必要な症例に必要な量・必要な期間だけ処方する.

免疫抑制薬の作用機序は副作用と密接に関連する.他の薬剤に比較して重症な副作用が多く,特に注意が必要な薬剤である.

臨床的には適応外使用も多く行われており,使用にあたっては患者への十分な説明と同意が必須である.

生物学的製剤による抗サイトカイン療法

著者: 長澤逸人 ,   亀田秀人 ,   竹内勤

ページ範囲:P.972 - P.975

ポイント

抗TNF製剤を中心とした生物学的製剤による抗サイトカイン療法は,関節リウマチをはじめ既存の治療に対して難治性の病態に対し高い有効性を認めている.

結核をはじめとした重篤な感染症などの副作用も報告されており,投与の適応や副作用対策について十分理解し,適切に投与することが必要である.

生物学的製剤による抗細胞表面分子療法

著者: 田中良哉

ページ範囲:P.976 - P.978

ポイント

抗細胞表面分子療法の作用機序は,直接的な細胞障害,細胞間相互シグナルの制御,細胞内への正・負のシグナル伝達などが挙げられる.

CTLA-4-Ig融合蛋白アバタセプトは,TNF阻害療法に抵抗性のRAに有効である.

抗CD20抗体リツキシマブは,SLE,RAなど幅広い自己免疫疾患に有効である.

生物学的製剤による抗細胞表面分子療法は,サイトカイン阻害療法無効症例に対するセカンドラインとしても期待される.

臓器・細胞移植の進歩

拒絶反応とGVH反応の制御

著者: 稲葉宗夫 ,   池原進

ページ範囲:P.980 - P.983

ポイント

拒絶反応とはドナー(供与者)とレシピエント(宿主)間で組織適合性抗原が一致していない場合,レシピエントがこれを異物として認識し排除しようとする免疫反応である.

GVH反応は主にドナーT細胞による宿主組織適合性抗原の認識と,これに引き続く免疫反応である.

拒絶反応とGVH反応の制御はステロイドおよびカルシニューリン阻害薬(calcineurin inhibitor)が主に用いられている.

生体肝移植

著者: 上田幹子

ページ範囲:P.984 - P.986

ポイント

脳死ドナー不足を補う生体肝移植は,脳死移植が盛んな欧米にも広がった.

生体ドナーは,仕事などに復帰するまでに術後3カ月程度の休養を必要とするが,合併症が起こった場合はさらに治療を必要とする.

レシピエントの生存率は,小児ではかなりよいが,成人は約2/3と低く,今後の課題である.同じく生体肝移植によって,再移植を受ける患者もいる.

死体臓器移植の現状

著者: 陳豊史 ,   長谷川誠紀

ページ範囲:P.987 - P.989

ポイント

わが国では,「臓器移植に関する法律」が施行され8年が過ぎたが,深刻なドナー不足により脳死臓器移植は普及せず,健常人をドナーにする生体移植が主流である.

移植における拒絶反応を予防するために免疫抑制薬は必須であり,肺移植においては,T細胞機能抑制薬,代謝拮抗薬,副腎皮質ステロイドの3者併用療法が最も一般的である.

自己免疫疾患の造血幹細胞移植―強皮症を中心に

著者: 片岡浩 ,   渥美達也 ,   小池隆夫

ページ範囲:P.990 - P.992

ポイント

強皮症に対する末梢血幹細胞移植療法は,現在,皮膚硬化の改善が有意に認められる唯一の治療法である.

欧米では移植関連死や移植後再発の報告がある.

移植適応症例の厳密な選定が重要である.

標準的な移植療法と移植後の維持療法の確立が望まれる.

座談会

基礎免疫学と臨床免疫学のクロストーク

著者: 小安重夫 ,   西本憲弘 ,   渡辺守 ,   三森経世

ページ範囲:P.994 - P.1004

 三森 本日は,『medicina』2006年6月号特集の座談会「基礎免疫学と臨床免疫学のクロストーク」にお集まりいただきまして誠にありがとうございます.

 近年は,translational researchがさかんで,特に,translational researchにおける免疫学の役割は非常に大きいのですが,このことは決して,基礎医学から臨床医学への一方通行ではなく,from bedside to bench,つまり患者さんを通して発見される臨床現場の知見が,免疫学や細胞生物学の基礎的知識の発展に貢献していることが少なくないと思います.

 そういう観点から,本日は,免疫学の基礎と臨床の双方向のクロストークによって,免疫学がどのように展開されてきたか,また,これからどのような発展をしていくかについてお伺いしたいと思います.

理解のための31題

ページ範囲:P.1007 - P.1013

連載

目でみるトレーニング

著者: 熊野浩太郎 ,   岩崎靖 ,   川畑茂

ページ範囲:P.1016 - P.1022

問題 445

 症 例:56歳,男性.

 主 訴:下痢,嘔吐.

 既往歴:46歳時,胆石で胆囊摘出術.

 現病歴:1年6カ月前より労作時息切れを自覚し,他院にて間質性肺炎に対して副腎皮質ステロイド薬で加療中であった.2週間ほど前より呼吸困難の増強と下痢,嘔吐,食欲不振もあり,精査加療目的にて当科入院となった.

病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 5

リンパ節

著者: 加留部謙之輔

ページ範囲:P.1023 - P.1027

 血液内科領域においても,病理とかかわる機会は,特にリンパ節病変の際などにおいてしばしば認められると思う.しかし,生検など臨床とのかかわりの深い病理の分野が「外科病理」といわれることだけあって,現在は,病理は主に外科とのつながりが深い科になっている.そのため,外科における病理経験者の割合に対し,内科,特に血液内科医におけるそれは低い傾向にある.そのこともあって,リンパ節,骨髄の病理診断の現場は,多くの血液臨床医にとってブラックボックスになっていると思われる.しかし,病理診断はしばしば病気の診断という医療行為の根幹をなす部分であり,確度の高い病理診断を得るためには病理医のみならず臨床医がかかわる部分が多い.本稿では,リンパ節の病気,特に悪性リンパ腫の確実な診断のために臨床医サイドで大切なことを述べていきたい.

どのようなときに病理検査を行うべきか

 どのような疾患に病理検査が有効かについて,表1に記した.まず重要なのは,悪性リンパ腫である.この疾患群は,病理診断抜きで診断が確定することはありえない.また,結核,サルコイドーシスをはじめとした特殊な反応性病変も病理検査で診断がつく場合が多い.それに対し,せっかく組織を採取しても,それだけでは診断が確定できない疾患もある.特に感染症や膠原病などは,ある程度個々の傾向はあるものの非特異的な炎症像であるので,病理組織だけでは確定診断には至らない.これらの病気は,臨床症状からみた診断基準や,培養検査などのほうがより“強い”検査である.しかし,病理診断は,それの補助診断としては活用できる.

しりあす・とーく 第15回

スーパーローテーションの功罪―検証!新医師臨床研修制度(前編)

著者: 前野哲博 ,   石丸裕康 ,   鳥居秀成 ,   下山祐人

ページ範囲:P.1030 - P.1041

 新医師臨床研修制度が実施されて2年が経過し,必修化後初となる研修修了者が誕生した.新制度の目玉とも言える「スーパーローテーション研修」は研修医,指導医にどのようなインパクトを与えたのだろうか? 「しりあす・とーく」では,今回から3回にわたり一巡した新医師臨床研修制度を検証する企画を組んでみた.第一回は「スーパーローテーション」そのものについて,研修医,指導医両方の立場からご議論いただいた.

できる医師のプレゼンテーション―臨床能力を倍増するために 3

プレゼンテーションの準備―フォーマット 総論

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.1042 - P.1045

例 糖尿病がある喫煙している60歳男性が胃潰瘍で入院した時のプレゼンテーションで

研修医:……以上です.

指導医:はい,わかりました.それで,今回の病歴とは直接関係ないけど,ときどき,労作時に胸が詰まった感じがあるって,言ってなかった? 糖尿病で,喫煙者だからこの入院中にチェックしたほうがいいね.

研修医:えっ.先生のカルテにもここまでしか書いていなかったんですけど,そんなこと言ってたんですか?

指導医:あ,ゴメン.書いてなかったっけ……(コイツ,自分では病歴を取っていないのか?)

医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために 6

倫理について考える─問題共有の方法論

著者: 本村和久

ページ範囲:P.1046 - P.1049

 医療の技術的な問題を解決するうえで,コミュニケーションが重要であるといままで書いてきたが,ここでは,倫理的問題に関するリスクマネジメントについて考えてみたい.

倫理的な問題とは?

 患者さんを診るうえで,倫理的な問題は常に考える必要性を感じている.食事がしっかりとれるウイルス性上気道炎の患者さんが点滴を希望されたときにどうするのか,といったような外来レベルの問題も,患者さんの背景を含め,医学的判断だけでないさまざまな問題を含む倫理的な問題といえると思う.しかし,端的に倫理的な問題に直面するのは,「人の生き死に」に関することだろう.もともと元気な方が路上で倒れて,心肺停止になるケースもあるだろうし,予後が1カ月とわかっている,意思表示のはっきりできる担癌患者さんが自宅で死を選ぶケースや,認知症で寝たきりの患者さんをどう看取るか悩むケースまで,その判断は多種多様である.

研修おたく海を渡る 6

学生は味方?

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1050 - P.1050

今回は研修における心強い味方,医学生の存在に焦点をあててみたいと思います.

 研修病院では彼らも立派なチームの一員です.インターンと同じように当直し,入院を取り,朝回診をしてプレゼンもします.ただレクチャーがあるときはそちらが優先になり,病棟から脱出していきます.

書評

両室ペースメーカー植え込み手技のTips & Tricks

著者: 中川義久

ページ範囲:P.1014 - P.1014

 両室ペースメーカー治療は,従来は薬物治療しかないと考えられてきた心不全治療の現場に画期的な変化をもたらした.この治療法は心臓再同期療法(CRT)とも呼ばれ,実効ある治療法として地位を確立しようとしている.

 この治療法の発展と普及の過程は,従来の日本での医学領域の新しい治療法での過程とは少し異なるところがあった.それは,権威づけられてはいないが臨床能力の高い若手医師によって多くの仕事がなされたことである.彼らは日常臨床の現場では心不全患者の治療に限界を抱き,その限界を打破したいと望み,かつ虚血性心疾患に対するカテーテル治療の経験からカテーテル操作にも習熟している.さらに不整脈へのアブレーションの知識と徐脈性疾患に対するペースメーカーにも経験豊富であり,そのうえ基本となる心不全への薬物療法も習得している.こういった総合的かつ実践的な高度の臨床能力をもつ者が,いち早く両室ペースメーカー治療のもつポテンシャルを理解し,多くの症例に施術したのである.その結果として,認知・普及の速度が加速した.本書の監修を務める小倉記念病院の延吉正清先生のもとから,編者の安藤献児医師や静田 聡医師の二人をはじめ執筆陣に何人もの人材を輩出していることは,同師の指導が虚血性心疾患だけでなく,広い基盤のうえに教授されていたことを証左しているともいえよう.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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