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雑誌目次

雑誌文献

medicina43巻8号

2006年08月発行

雑誌目次

今月の主題 消化器内視鏡治療の現在 総論

消化器内視鏡治療の過去,現在,未来

著者: 藤田直孝

ページ範囲:P.1256 - P.1257

ポイント

臨床消化器内視鏡のなかで,内視鏡治療の役割は確実に大きくなっている.

機器の進歩により内視鏡治療の適応は拡大している.

偶発症を減少させ,内視鏡治療の恩恵を受ける患者を増加させるために,さらなる努力・そう意工夫が期待される.

内視鏡治療時の抗凝固薬・抗血小板薬

著者: 荒川廣志 ,   貝瀬満 ,   田尻久雄

ページ範囲:P.1258 - P.1262

ポイント

抗血栓療法休止中の血栓症発症の報告はアスピリンよりワルファリン中止時に多い.

ワルファリンは内視鏡治療日の3~4日間前から中止し,PT-INRが1.5以下であることを確認する.

抗血栓療法の周術期管理に関するエビデンスが少ないため,ガイドラインはあくまでも目安であり絶対的基準ではない.症例ごとに十分な検討が必要である.

食道疾患

食道静脈瘤の治療適応

著者: 小野弘二 ,   國分茂博

ページ範囲:P.1264 - P.1266

ポイント

食道静脈瘤の治療決定には定期的な上部内視鏡は必須である.

食道静脈瘤の内視鏡所見の記載は正確に.

原疾患の病状と予後の把握が肝腎である.

食道胃静脈瘤治療の実際

著者: 村島直哉 ,   中山聡

ページ範囲:P.1267 - P.1269

ポイント

食道胃静脈瘤は,肝硬変症例における消化管出血の90%を占めるうえ,出血から8週間以内に30%が死亡する重大な疾患である.

内視鏡治療には,硬化療法と結紮療法とがある.

硬化剤には,血管内に注入するものと血管外に注入するものがある.結紮には連発式とニューモ・アクティベイト式がある.

スダレ様静脈を消失する方法としてアルゴンプラズマ凝固法を用いることもある.

目的と血管の太さに応じてこれらの方法を使い分ける必要がある.

食道表在癌に対する内視鏡的粘膜切除術

著者: 島田英雄 ,   幕内博康 ,   千野修

ページ範囲:P.1271 - P.1273

ポイント

絶対適応例はm2(癌浸潤が粘膜固有層まで)までの病巣である.

リンパ節転移の可能性がある症例は適応とならない.

深達度が適応範囲であれば5cm以上の病巣や全周切除も行われている.

m3,sm1症例ではEMR後の病理組織評価で追加切除の検討が必要である.

適応拡大例における経過観察には,内視鏡検査に加えて,CTやEUSが必要である.

食道狭窄の内視鏡治療(ステント留置術,バルーン拡張術)

著者: 水本吉則 ,   前川高天 ,   勝島慎二

ページ範囲:P.1274 - P.1277

ポイント

内視鏡的ステント留置術の適応は手術不能の悪性疾患に起因する閉塞性障害に対してのみである.

良性狭窄へのステント留置は適応外である.

良性の内因性閉塞に起因する閉塞性障害と運動性障害に対しては,拡張術のみが適応である.

頸部食道,下部食道の狭窄に対するステント留置には注意が必要である.

放射線治療後の悪性食道狭窄には,組織の脆弱性から縦隔炎や穿孔のリスクが高いと考えられ,細心の注意を払って留置すべきである.

逆流性食道炎の内視鏡治療

著者: 樋口和秀 ,   岡崎博俊 ,   藤原靖弘

ページ範囲:P.1278 - P.1281

ポイント

逆流性食道炎の治療には,薬物治療,手術療法および内視鏡的治療がある.

逆流性食道炎に対する内視鏡的治療には,縫合法,焼灼法,局注法の三種類がある.

本邦においては,縫合法,焼灼法が導入されており,EndoCinchTMは保険収載されている.

内視鏡治療の特徴は,手術に比較して低侵襲であること,再治療が可能であること,約50~70%の患者は薬物治療から離脱できることである.

内視鏡治療の今後の課題は,長期予後がまだ明らかになっていない点で,さらなる検討が必要である.

食道の内視鏡下外科手術

著者: 東野正幸 ,   竹村雅至

ページ範囲:P.1282 - P.1283

ポイント

良性食道疾患に対する鏡視下手術は低侵襲手術として広く普及している.

食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術は,呼吸機能の温存などのメリットはあるが,施設により手技はさまざまで,リンパ節郭清の程度に関しての評価が今後の課題である.

胃・十二指腸疾患

胃・十二指腸潰瘍の出血に対する内視鏡的止血

著者: 伊藤透 ,   日下一也 ,   川浦健

ページ範囲:P.1284 - P.1287

ポイント

現在行われている出血性消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)の治療の主体は内視鏡治療である.

緊急内視鏡時の内視鏡診断が重要で,出血の状況を見極め適切な内視鏡的治療法を選択しなければならない.

内視鏡治療の限界を的確に認識し,患者の病態が悪化しない間に迅速に外科的治療に移行しなければならない.

消化器内視鏡医は消化器外科医と綿密な連携をもつ必要がある.

胃静脈瘤の内視鏡診断と治療

著者: 佐藤隆啓

ページ範囲:P.1288 - P.1289

ポイント

胃静脈瘤出血はヒストアクリル®注入により,ほぼすべての症例の止血が可能となった.

出血所見として活動性出血以外にフィブリン栓の診断が重要で,直ちに止血を試みなければならない.

待機・予防例では血行動態の把握が重要である.

早期胃癌の内視鏡治療の適応

著者: 赤松泰次 ,   横沢秀一 ,   金子靖典

ページ範囲:P.1291 - P.1293

ポイント

術前診断に基づく適応基準と,切除標本の病理組織検索に基づく追加治療の必要性の判断基準は分けて考える.

早期胃癌の内視鏡治療の適応には,適応内病変,適応拡大病変,適応外病変の3つがある.

治療法は原則として,適応内病変はEMRまたはESD,適応拡大病変はESD,適応外病変は外科手術を行う.

早期胃癌の内視鏡治療の実際(EMR,ESD)

著者: 小田島慎也 ,   藤城光弘 ,   小俣政男

ページ範囲:P.1294 - P.1297

ポイント

早期胃癌の内視鏡治療には,病変を一括で切除し病理学的な詳細検討が必要.

EMRは比較的簡便に短時間で施行できる手技だが,一括切除可能な病変には技術的な制限がある.

ESDは内視鏡治療適応となるあらゆる病変で一括切除可能な非常に有用な手技だが,手技自体の難易度が高く,偶発症(穿孔など)が多いことが問題とされる.

経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)

著者: 倉敏郎 ,   西堀恭樹 ,   西堀佳樹

ページ範囲:P.1298 - P.1301

ポイント

PEGは栄養管理のツールとして第一選択となっている.一方,PEGに関する重篤な合併症の報告も増加しており,造設・管理に習熟する必要がある.

定期的カテーテル交換が必要であるが,瘻孔損傷を起こさぬよう慎重な配慮が必要である.

適切な栄養管理のもと,経口摂取への復帰が約4割にみられる.「食べるための胃瘻」が目指すゴールである.

胃・十二指腸の腹腔鏡下手術

著者: 白石憲男 ,   安田一弘 ,   北野正剛

ページ範囲:P.1302 - P.1304

ポイント

腹腔鏡下手術が頻用されている胃・十二指腸疾患は,早期胃癌,胃粘膜下腫瘍,十二指腸潰瘍穿孔である.

腹腔鏡下手術の特徴は,術後疼痛の軽減,低侵襲性,早期回復,早期社会復帰である.

早期胃癌に対する腹腔鏡補助下手術は,内視鏡治療の対象にならないリンパ節郭清を必要とする早期胃癌を対象に行われる.

胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下手術は,5cm以下の病変を対象に行われる.

十二指腸潰瘍穿孔に対し腹腔鏡下穿孔閉鎖術が行われる.

小腸・大腸疾患

カプセル内視鏡の適応と現況

著者: 渡辺憲治 ,   斯波将次 ,   樋口和秀

ページ範囲:P.1306 - P.1309

ポイント

内視鏡困難だった小腸粘膜を詳細に観察できる有用な検査法で,ダブルバルーン内視鏡とともに,今後の機器の進歩,小腸疾患の病態解明への寄与が期待される.

小腸出血症例では,出血症状後,できるだけ早期に検査を施行することが重要である.

簡便で低侵襲なカプセル内視鏡だが,滞留の危険性に配慮した症例の選択が必要である.

小腸内視鏡(ダブルバルーン法)

著者: 荒川大吾 ,   大宮直木 ,   後藤秀実

ページ範囲:P.1310 - P.1312

ポイント

ダブルバルーン小腸内視鏡は比較的低侵襲に全小腸の観察をすることができ,止血術,ポリペクトミー,バルーン拡張などの内視鏡的治療が可能である.

小腸の腸管壁は薄いため,内視鏡治療の際には穿孔の危険を念頭に入れ,慎重に行う必要がある.

開腹手術の既往やCrohn病など腹腔内癒着が存在する場合に挿入困難例が認められる.

大腸ポリペクトミーの適応と実際

著者: 鈴木武志 ,   田尻久雄

ページ範囲:P.1314 - P.1316

ポイント

対象ポリープに対し通常観察,場合によっては拡大内視鏡や超音波内視鏡を用い,深達度診断を行う.

良好な位置取りをし,病変を5~6時方向にし,場合によっては局注をしてスネアリングを行う.

合併症として出血,穿孔があり,止血予防としてクリッピングなどが有効と思われる.

早期大腸癌の内視鏡治療

著者: 鶴田修 ,   河野弘志 ,   佐田通夫

ページ範囲:P.1318 - P.1321

ポイント

大腸癌は粘膜内にとどまる間(M癌)は転移せず,粘膜下層に浸潤して(SM癌)はじめて転移する.

SM癌の組織学的リンパ節転移危険因子は粘膜下層への垂直浸潤距離1,000μm以上,脈管侵襲陽性,低分化腺癌・未分化癌である.

治療前にM癌およびSM微小浸潤癌と診断された病変に対し内視鏡治療を施行し,組織学的にリンパ節転移危険因子が存在した場合は追加外科的手術を勧める.

大腸癌に対する内視鏡治療は一括切除が原則である.

病変の形態,大きさに応じて内視鏡治療法を選択せねばならない.

SM癌に関しては内視鏡治療後,局所再発のみでなく全身への転移のチェックを定期的に行わねばならない.

大腸の腹腔鏡下手術(大腸癌,Crohn病,潰瘍性大腸炎)

著者: 井原厚 ,   渡邊昌彦

ページ範囲:P.1322 - P.1325

ポイント

早期大腸癌に対する腹腔鏡下大腸切除術の適応としては,大腸鏡で根治的切除が不十分なsm’massiveな大腸癌である.

進行大腸癌に対する腹腔鏡下大腸切除術の適応としては,mp癌まではほぼ認知されており,直腸癌やss以深の進行癌に対しては2004年よりJCOGの下,多施設共同RCTが進行中である.

近年は,Crohn病,潰瘍性大腸炎に対する低侵襲手術として,腹腔鏡下手術が行われている.

胆・膵疾患

胆管結石症の内視鏡治療

著者: 糸井隆夫 ,   祖父尼淳 ,   糸川文英

ページ範囲:P.1326 - P.1329

ポイント

胆管結石の大部分は経乳頭的に截石可能である.

ESTでは出血,穿孔が,EPBDでは急性膵炎が懸念される重篤な偶発症である.

経皮経肝的截石術は巨大結石例や経乳頭的截石困難例が適応となる.

腹腔鏡下手術は一期的に胆囊・胆管結石治療できる長所を有する.

多種多様な胆管結石すべてを腹腔鏡下手術で截石することは,現段階では議論の余地がある.

胆管ステンティング

著者: 久保田佳嗣

ページ範囲:P.1330 - P.1332

ポイント

ステントは,プラスティックステント(PS)とメタリックステント(MS)に大別される.MSはさらに,uncovered MSとcovered MSに分けられる.各ステントの特徴を踏まえ,目的に応じて選択する.

MSは長期開存が得られるが抜去不能(または困難)であり,切除不能悪性病変が最も良い適応である.

肝門部胆道狭窄に対するドレナージ法の事前検討にはMRCPが有用である.

膵管ステンティング

著者: 五十嵐良典 ,   三浦富広 ,   三木一正

ページ範囲:P.1333 - P.1335

ポイント

主膵管狭窄を伴う慢性膵炎例には膵管ステント留置の良い適応である.

腹痛や背部痛は膵管ステント留置後消失する.

体重やBMIなどの増加により,栄養状態は改善する.

膵管ステントの留置期間および交換期間に注意する.

アルコール性慢性膵炎では禁酒を徹底的に指導する.

内視鏡的乳頭切除術

著者: 向井秀一 ,   尾阪将人 ,   吉永寛

ページ範囲:P.1336 - P.1338

ポイント

乳頭部腫瘍に対する術前進展度診断には限界があり,内視鏡的乳頭切除術の適応としてコンセンサスが得られるのは,露出腫瘤型腫瘍のうち生検診断が腺腫であり,ERCP・EUS・IDUSにより乳頭部内(Oddi筋内)に限局する例である.

内視鏡的乳頭切除術の手技の完成や偶発症対策などの課題が克服されることにより,乳頭部腺腫から早期乳頭部癌への適応の拡大と治療成績の向上が期待される.

胆・膵疾患の腹腔鏡下手術

著者: 草薙洋 ,   加納宣康

ページ範囲:P.1340 - P.1342

ポイント

さまざまな器機,技術の導入により腹腔鏡下手術は急速に進歩し普及してきた.胆囊摘出術は腹腔鏡下手術が標準術式となり,胆管結石や一部の膵疾患にも腹腔鏡下手術が施行されている.

腹腔鏡下手術には低侵襲という長所もあるが開腹手術と異なる技術が不可欠であり,特有の危険性もあるという認識が必要である.

胆・膵疾患―超音波内視鏡(EUS)ガイド下治療

EUSガイド下穿刺生検

著者: 良沢昭銘 ,   浦山直樹 ,   坂井田功

ページ範囲:P.1343 - P.1345

ポイント

超音波内視鏡(EUS)ガイド下穿刺生検(EUS-FNA)により,膵病変や消化管粘膜下腫瘍,縦隔腫瘍の安全かつ確実な生検が施行できる.

EUS-FNAの偶発症として,感染,出血,穿孔,膵炎などが報告されているが,その頻度は0.5~2%と稀である.

EUS-FNAは診断だけではなく,治療手技としても応用されている.

EUSガイド下膵仮性囊胞ドレナージ

著者: 長谷部修 ,   越知泰英 ,   立岩伸之

ページ範囲:P.1346 - P.1348

ポイント

ドレナージ適応は6週間以上経過した5cm以上ないし臨床症状を有する囊胞である.

EUS下ドレナージは外科手術,経皮的ドレナージに比べて安全である.

穿刺に際しては穿刺経路に介在血管がないことを確認する.

ドレナージ方法には内瘻と外瘻があり症例により選択する.

偶発症は出血,穿孔,囊胞感染がある.

EUSガイド下穿刺注入―腹腔神経叢ブロック・抗腫瘍療法

著者: 入澤篤志 ,   高木忠之 ,   大平弘正

ページ範囲:P.1350 - P.1352

ポイント

EUSガイド下穿刺注入療法として現在施行されているものには,腹腔神経叢ブロックや膵癌に対する抗腫瘍療法がある.

癌性疼痛に対するEUSガイド下腹腔神経叢ブロックは良好な成績が報告されており,緩和医療におけるEUSの新たな役割を構築した.

EUSガイド下抗腫瘍療法はまだ試験的に施行されているに過ぎないが,今後の発展が期待されている治療法である.

肝疾患

肝細胞癌に対する内視鏡下治療(マイクロ波,ラジオ波)

著者: 泉並木

ページ範囲:P.1353 - P.1355

ポイント

腸や肝皮膜直下に存在する肝細胞癌では経皮的治療のリスクが高い.

肝表面から2cm以内に存在する腫瘍に対して,腹腔鏡下ラジオ波焼灼術は安全かつ確実な治療を行える.

腫瘍の確実な壊死と肝内脈管損傷を避けるため,腹腔鏡用超音波を用いるのがよい.

トピックス

内視鏡外科手術 トレーニングセンターの現況

著者: 田上和夫 ,   橋爪誠

ページ範囲:P.1356 - P.1359

ポイント

内視鏡外科手術の安全水準の向上には専門的な教育・トレーニングが重要である.

九州大学病院では内視鏡外科手術トレーニングセンターを設立し,スタンダード,アドバンスコースを開始した.

われわれの目的は,最も有効なカリキュラムを確立し,それにより内視鏡外科手術における医療安全水準の向上に寄与することである.

付録

消化器内視鏡治療に関する用語集

著者: 川口淳 ,   東山正明 ,   永尾重昭

ページ範囲:P.1360 - P.1363

ポイント

消化器内視鏡治療は対応する外科手術に比して,短時間,低侵襲,全身麻酔が不要な治療として始まった.

しかしながら,現在では,治療内容によっては,必ずしも短時間,低侵襲治療とは言えず,全身麻酔下に麻酔科医の協力を必要する場合もある.

特に,高齢者の内視鏡治療は,思いがけない合併症が存在することがあるので,術前に循環器,大動脈疾患,呼吸器疾患の検索は行うことが望ましい.

短絡的に内視鏡治療を選択してはならないことを銘記していただきたい.

座談会

安全な消化器内視鏡治療のための教育と研修システム

著者: 井上晴洋 ,   田中信治 ,   山口幸二 ,   豊永高史 ,   五十嵐正広 ,   野田裕 ,   藤田直孝

ページ範囲:P.1364 - P.1378

 藤田 皆さん,本日はお忙しいところをありがとうございます.

消化器内視鏡は診断精度が高く,種々の処置が可能で,低侵襲性の治療を提供できる方法であることから,臨床の場で広く活用されるようになっています.最近では高度な手技も数多く開発され,一層の広がりを見せています.

理解のための29題

ページ範囲:P.1380 - P.1385

連載

目でみるトレーニング

著者: 岸田堅 ,   岩崎靖 ,   石本修

ページ範囲:P.1387 - P.1393

問題 451

 症例:32歳,女性.

 既往歴,家族歴:特記事項なし.

 妊娠歴:2経妊,1経産,前回自然経腟分娩.

 現病歴:妊娠初期より径10cmの子宮頸部後壁筋腫を近医で指摘され,妊娠15週で15cm,妊娠30週で20cmと腫大していき,妊娠33週目に腹部圧迫感にて当院産婦人科紹介入院となった.

 入院時現症:身長165cm,体重71kg,体温35.8℃,脈拍88/min・整,血圧128/66mmHg.上下腹部に胎児・子宮筋腫と思われる巨大な腫瘤を触知,両下肢腫脹するもチアノーゼなし.

病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 7

皮膚

著者: 辻香 ,   峯村徳哉 ,   望月眞

ページ範囲:P.1394 - P.1398

 望月 今回は皮膚病理についての話題です.「皮膚の病気は皮膚科に診せよ」というのが原則だと思うのですが,これを言ってしまうと今回の話は終わってしまうわけなんですが…….

 辻 そうでもないですよ.

 望月 まあ,なんでもかんでも皮膚科に患者さんを送るわけにはいかないですよね.では,どの程度の病気までは他科でも診察してもらいたいものですかね.

 峯村 皮膚科ですべて診療とまではいかなくても,原則としてうちの病院内のすべての皮膚疾患は少なくとも皮膚科で診断まではしたいですね.

東大病院内科研修医セミナー 13

再発急性前骨髄球性白血病に対し亜砒酸にて再寛解導入を試みている50歳男性

著者: 浅井隆司 ,   朝田一生 ,   永井純正

ページ範囲:P.1400 - P.1404

Introduction

急性前骨髄球性白血病の診断・治療

再発急性前骨髄球性白血病に対する亜砒酸投与の意義

亜砒酸を用いる治療の副作用とは?

できる医師のプレゼンテーション―臨床能力を倍増するために 5

プレゼンテーションのフォーマット(各論2)―身体所見・検査所見

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.1406 - P.1410

例 (消化管出血で入院した時のプレゼンテーションで)

 研修医:血圧は114/62で,脈拍90の整でした.

 指導医:あ,体位による変化はあった? 前回,教えたと思うけど…….

 研修医:そ,そうですよね.体位による変化はあったような気がします.

 指導医:座らせたのかな? それとも立たせたのかな? 脈が早くなったの? 血圧も落ちたの?

 研修医:えーっと……どっちだったかな.脈拍は……. 

 指導医:(自分でやったなら忘れるはずもないだろうに)……まあ,次にいこうか.

 研修医:はい.心臓と肺には所見なく,腹部は…….

 指導医:貧血があるので,駆出性収縮期雑音はなかったかな?

 研修医:えーっと,あの……その.あったかな…….

 指導医:(こいつ,聴いてないな)…じゃぁ,検査所見にいこうか.

 研修医:Hb/Hctは7.0/21.4で,(MCVは述べず)……BUN/Creは22.3の0.69,だったかな.あ,0.79でした.BUNは23.2でした.すみません.

 指導医:(どっちでもいいけど… MCVはいくつなのかな?)

 (※ 指導医は,本当はあまりプレゼンテーションを中断しないほうがいいのですが,今回の例ではポイントがわかるように中断をしています)

身体所見

 前回お話ししましたが,準備しておくことがきわめて大切です.後述する検査所見は誰かがオーダーしているかもしれませんし,客観的なデータとして残りますが,身体所見は自分自身が取っていないと,しゃべろうにもしゃべれません.

 病院/施設ごとに身体所見のフォーマットがあると,初期/後期研修(+スタッフ)の期間を通じて,共通の認識で所見を取ることが可能になるかもしれません.あまりフォーマットにこだわり過ぎるのも良くないかもしれませんが,身体所見における「必要最低限」が指導医も研修医も理解できていない状況であれば,存在価値は大きいと思います.

医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために 8

トロッカー,胸腔チューブ挿入

著者: 本村和久

ページ範囲:P.1412 - P.1414

 いままで,きわめて基本的な手技や安全管理対策について述べてきたが,今回,次回はやや侵襲的な手技について具体例を述べたい.今回は「トロッカー,胸腔チューブ」についてである.

トロッカーということなかれ

 表題が「トロッカー」ながら,「トロッカーということなかれ」とあえて書かせていただきたい.

研修おたく海を渡る 8

日本人研修医

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1415 - P.1415

 僕のいたプログラムには毎年数人の日本人研修医が採用されています.今回はアメリカの研修病院における日本人研修医の生態をレポートします.

 日本で臨床経験を積んでから渡米する人が多いので経験値については問題ないのですが,英語は多かれ少なかれ苦労するようです.病院から離れたクリニックにいる指導医と連絡をとるとき,病棟からひっきりなしになるポケベルに対応するとき,これらのほとんどが電話で行われます.「can」と「can’t」が区別できなかったり,数字が英語になった途端に,頭に残らなくなってしまう経験を僕は今でもします.

しりあす・とーく 第17回

他科ローテーションで何を学ぶか?―検証!新医師臨床研修制度(後編)

著者: 前野哲博 ,   鳥居秀成 ,   下山祐人 ,   石丸裕康

ページ範囲:P.1416 - P.1424

 「しりあす・とーく」では,初の修了者が誕生した「新医師臨床研修制度」を3回にわたって検証してきたが,最終回となる今回は,必修ローテーションとして位置づけられた他科ローテーション,特に小児科,産婦人科,精神科,地域・保健医療をとりあげてみた.これらのローテーションの実際とその意義,今後のあり方などについて,研修医・指導医それぞれの立場から議論していただいた.

(前号よりつづく)

小児科,産婦人科,精神科ローテーション

 前野 新医師臨床研修制度では,小児科,産婦人科,精神科,そして,地域・保健医療が必修科目としてローテーションのなかに位置づけられました.そこで何をどう学んだか,また,その研修の中身はどうあるべきかということについてうかがいたいと思います.まず,小児科,産婦人科,精神科についていかがでしょうか?

 鳥居 まず産婦人科・精神科についてですが,選択科としてはとてもいい研修になるものの,必修科としての意義に疑問を感じていた人が大半を占めていたように思います.それはその2つの科,特に産婦人科は中でも専門性が特化された部分がかなり強いためであり,正常分娩ひとつとってもしっかりとした対処ができるようになるのは1カ月ではかなり厳しいと思いました.若い女性の腹痛のプライマリケアということに関していえばとても重要なことだと思いましたが,総じて回ったことで自分でできるようになることというのは,他の科と比べて少ないのではないかと思います.また,指導医側からしても1カ月間という短い期間のなかでこの専門性の高い分野での指導はとても大変ではないかと思います.この点でいえば,産婦人科を選択科の一つとしてしまい,自分の学びたい選択科の期間を長めに設定するのもいいのではないかと思いました.

書評

腫瘍内視鏡学

著者: 多賀須幸男

ページ範囲:P.1386 - P.1386

 「腫瘍内視鏡学」という書名からは,内視鏡検査の対象になるすべての腫瘍の診断・治療を網羅した書物を想像するかもしれない.しかし本書の内容は少し異なる.編集者の長廻は序論で,本書の目的についておよそ次のように書いている.

 『内視鏡はどこへでも入っていき何でも見つけて,必要とあれば退治するといった時代になった.内視鏡のゴールとして治療が重視されるようになると,病変の範囲・深さ・所属リンパ節転移などまで,より細かく正確に診断する必要が生じる.内視鏡の進歩の到達点を示して,最新の機器の性能を最大限に生かす努力の拠りどころとして欲しい.そして読者のなかからさらに先へ内視鏡の地平を広げるひとの出現を目的としている.本書は網羅本ではない.「一を聞いて十を知る」よすがとされることを求めるものである.』

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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