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雑誌目次

雑誌文献

medicina43巻9号

2006年09月発行

雑誌目次

今月の主題 循環器薬の使い方 2006 循環器疾患に対する薬物治療の基本

慢性虚血性心疾患:安定狭心症など

著者: 吉野秀朗 ,   加地英生

ページ範囲:P.1436 - P.1441

ポイント

狭心症の病態を理解し,それに合った薬物治療を行う.

慢性虚血性心疾患の治療目標は,発作の寛解・予防とQOL・生命予後の改善である.

慢性虚血性心疾患の内科治療を行う際には,狭心症の増悪因子,冠危険因子,生活習慣の改善,薬物治療の選択,血行再建術の適応を念頭に置く.

急性冠症候群(非ST上昇型):不安定狭心症,非Q波心筋梗塞

著者: 中村正人

ページ範囲:P.1443 - P.1447

ポイント

非ST上昇急性冠症候群は冠動脈粥腫の破綻と血栓で冠動脈内腔が不完全閉塞に陥った病態である.

病状の安定化により心筋梗塞,突然死を防ぐことが短期的な治療目標である.

非ST上昇急性冠症候群はリスク分類に基づいて治療,管理が進められる.

低リスク例は外来管理が可能で,薬物療法が優先される.

中等度,高リスク例に対する治療には2つの異なった治療戦略がある.

薬物療法は心筋虚血に対する治療と冠動脈血栓に対する治療に分けられる.

薬剤に対する反応は個々の症例で異なり,連続した評価が重要である.

抗血栓対策としてはアスピリンとヘパリンの併用が原則である.

急性冠症候群(ST上昇型):急性心筋梗塞

著者: 吉川雅智 ,   高山守正

ページ範囲:P.1448 - P.1453

ポイント

急性冠症候群(ST上昇型)は,冠動脈内のプラークの破錠とそれに引き続く血栓形成により急性~亜急性に冠動脈が閉塞し,心筋虚血の出現により発症する.

急性冠症候群(ST上昇型)では,閉塞した冠動脈の迅速な再灌流が短期的かつ長期的転帰を決定する.

薬物治療の目的は,さらなる血栓形成の抑制と血栓溶解による虚血の軽減,合併症の防止,梗塞サイズの縮小とリモデリングの予防である.

慢性心不全

著者: 荒尾憲司郎 ,   安隆則 ,   百村伸一

ページ範囲:P.1454 - P.1458

ポイント

心不全には神経体液性因子が関与している.

NYHA重症度分類による心不全治療薬の選択を行う.

収縮機能障害だけでなく拡張機能障害も評価する.

無症状期からの治療が推奨されている.

ACEI(またはARB)とβ遮断薬が慢性心不全治療の中心である.

β遮断薬導入は少量から開始し,心不全徴候がないこと確認し漸増していく.

利尿薬やACEIまたはARBを使用する際は電解質異常や腎機能悪化に注意する.

急性心不全

著者: 藤井応理 ,   蔦本尚慶 ,   堀江稔

ページ範囲:P.1460 - P.1466

ポイント

急性心不全の予後はきわめて不良であり,迅速な診断のうえ,強心薬などの薬物療法や呼吸管理,機械的循環補助などあらゆる手段を講じて,呼吸循環動態の安定化に努めなくてはならない.

治療薬選択はSwan-Gantzカテーテルの有無にかかわらず,Forrester分類を念頭に行う.

治療の基本は利尿薬と血管拡張薬であり,強心薬の使用は必要最小限にとどめる.

心房細動

著者: 上野耕嗣 ,   小川聡

ページ範囲:P.1467 - P.1473

ポイント

心房細動は加齢による罹患率の増加を特徴とする不整脈である.

臨床上の問題点は,頻拍による自覚症状,心不全,血栓塞栓症である.

心房細動に対する薬物療法には除細動を目的とするリズムコントロールと頻拍を抑えるレートコントロールがあり,適切な抗凝固・抗血小板療法との併用が肝要である.

非薬物療法にカテーテルアブレーション,心房ペーシングや外科手術がある.

多くの大規模研究が進行中であるが,エビデンスに裏づけられた画一的な治療法はいまだ存在せず,各症例ごとに最良の治療法を検討する必要がある.

上室性および心室期外収縮

著者: 西田邦洋 ,   井上博

ページ範囲:P.1475 - P.1480

ポイント

基礎心疾患のない期外収縮は,症状が強い場合を除いて治療の必要はない.

心筋梗塞急性期の心室期外収縮は致死性不整脈を誘発する危険性があり,積極的に治療を考慮する.

虚血性心疾患や心不全では,slow kineticsのNaチャネル遮断薬は生命予後悪化のリスクがあり使用しない.

上室性および心室頻拍

著者: 河田宏 ,   三田村秀雄

ページ範囲:P.1482 - P.1487

ポイント

不整脈に対する薬物選択は,その不整脈が発生するメカニズムと使用する薬物の薬理作用を理解し,薬効が期待でき,しかも安全性の高い薬物を選択する.

心室性不整脈は致死的な不整脈を含み,心機能低下例においては,予後を改善する薬剤がないのが現状である.ICD,アブレーションは有効な治療法であり,それらの適応を理解したうえで,必要に応じて薬物による抗不整脈療法を行う.

高血圧および高血圧心臓病

著者: 福澤純 ,   長谷部直幸 ,   菊池健次郎

ページ範囲:P.1488 - P.1491

ポイント

高血圧治療の目的は,高血圧によってもたらされる心血管系疾患の発症および進展,それらによる死亡を減少させ,quality of lifeを保持することである.

高血圧による臓器障害の予防には,各降圧薬の特徴を生かしたそれぞれの使用とともに,厳格な降圧の達成が重要である.

複数の降圧薬の併用には適当な組み合わせがある.

高脂血症

著者: 山田信博

ページ範囲:P.1492 - P.1496

ポイント

危険因子を正確に評価する.

生活習慣の改善が基本的な治療である.

安全性と有効性のエビデンスに基づいて薬物選択を行う.

循環器薬の併用使用時の注意点

著者: 若杉博子 ,   乾賢一

ページ範囲:P.1497 - P.1501

ポイント

循環器薬の併用時には,吸収,分布,代謝,排泄の各過程で,相互作用の起こる可能性がある.多剤になるほどその可能性は上昇する.

ジゴキシンは,アミオダロン,ベラパミル,キニジン,イトラコナゾール,クラリスロマイシンなどの併用によって,血中濃度が上昇し中毒が起こることがある.

ワルファリンは多くの薬剤と相互作用がある.PT (INR)によって投与量を調節する.循環器薬ではアミオダロン,ボセンタン併用時は特に注意する.

抗不整脈薬では,QT延長作用をもつ他の薬剤との併用に注意する.

ビタミンKを含む健康食品(青汁,クロレラなど),グレープフルーツジュース,西洋オトギリソウには注意が必要である.

病態に応じた循環器薬の使い方 ACE阻害薬とARB

高血圧における使い方―ACE阻害薬とARBの使い分け

著者: 桑島巌

ページ範囲:P.1502 - P.1504

ポイント

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)はレニン-アンジオテンシン(RA)系抑制薬とひとくくりにされるが,薬理学的には大きな違いがある.

降圧効果や脳心血管合併症予防効果に大きな差はないが,価格や副作用に差がみられる.

基本的な姿勢として,ACE阻害薬で咳などの副作用がでたときにARBに切り替える方針が現時点では正しいといえよう.

心不全における使い方

著者: 鳴海浩也 ,   桑原洋一 ,   小室一成

ページ範囲:P.1506 - P.1509

ポイント

心不全では,レニン-アンジオテンシン系が亢進している.

アンジオテンシンⅡの心筋への作用を抑制することが重要である.

高血圧,脂質代謝異常,メタボリックシンドロームなど,リスクファクターを有する患者には,心不全症状がない場合でもARB,ACE阻害薬が有効である.

心筋梗塞,狭心症における使い方

著者: 古本智夫 ,   筒井裕之

ページ範囲:P.1510 - P.1512

ポイント

レニン-アンジオテンシン(RA)系抑制薬は心筋梗塞後の左室リモデリング,心不全の発症を予防し,予後の改善効果をもつ.

心筋梗塞後の予後改善効果においては,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)にもアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬と同等の効果が期待される.

RA系抑制薬には降圧効果を超えた血管保護効果が期待されるので,冠危険因子を有する狭心症患者には積極的に使用すべきである.

β遮断薬

高血圧におけるβ遮断薬の使い方

著者: 熊谷裕生 ,   滝本千恵 ,   釜萢正

ページ範囲:P.1514 - P.1516

ポイント

β遮断薬は,狭心症,心筋梗塞後,心不全を伴う高血圧患者に適している.

頻脈や妊娠女性にも用いられる.

徐脈,呼吸器疾患,ASO(閉塞性動脈硬化症)の患者には禁忌である.

心不全における使い方

著者: 柴信行 ,   下川宏明

ページ範囲:P.1517 - P.1519

ポイント

β遮断薬は慢性心不全症例において自覚症状・心機能・生命予後の改善をもたらす.

まず症例ごとに十分な評価を行って,安定期にあることを確認する.その後,少量から開始し,ゆっくり増量する.

日本人の慢性心不全におけるβ遮断薬の最適投与量については,今後の検討が必要である.

心筋梗塞,狭心症における使い方

著者: 山田裕一 ,   西村重敬

ページ範囲:P.1520 - P.1522

ポイント

β遮断薬は狭心症に対する第一選択薬である.

急性心筋梗塞患者へは,できるだけ速やかにβ遮断薬の投与を開始し,長期間の内服を継続する.

心筋梗塞による高度の心機能低下例でもβ遮断薬により予後効果の改善が期待でき,状態が安定したらβ遮断薬の投与を開始する.

心機能が低下している患者や高齢者へは少量から開始する.

β遮断薬の副作用・禁忌に習熟する必要がある.

不整脈における使い方

著者: 山下武志

ページ範囲:P.1524 - P.1525

ポイント

β遮断薬は抗不整脈薬効果と生命予後改善効果を併せもつ薬物である.

心房細動ではβ1選択性の高い薬物を選択する.

陳旧性心筋梗塞ではβ1選択性で脂溶性の薬物を選択する.

心不全ではカルベジロールが用いやすい.

カルシウム拮抗薬

高血圧における使い方

著者: 松岡博昭

ページ範囲:P.1526 - P.1528

ポイント

カルシウム(Ca)拮抗薬は良好な降圧作用を示し,重篤な副作用がないことから,わが国では最も使用頻度が高い降圧薬である.

厳格な降圧が心血管イベント抑制に重要であり,良好な降圧作用を示すCa拮抗薬は基本的な降圧薬である.

Ca拮抗薬は単剤でも用いられるが,併用薬としても優れた降圧薬である.

Ca拮抗薬は軽症から種々合併症を伴う重症の高血圧まで幅広く用いられる.

狭心症における使い方

著者: 山室淳 ,   木原康樹

ページ範囲:P.1531 - P.1533

ポイント

カルシウム(Ca)拮抗薬の使用時に,虚血性心疾患を誘発する危険性があるとする指摘もあったが,その危険性は短時間作用型のCa拮抗薬に限られることが,その後の研究で明らかにされた.

Ca拮抗薬を降圧薬として使用することの利点は,脳循環,冠循環,腎循環,末梢循環を良好に保ち,糖・脂質代謝への悪影響がないことである.

Ca拮抗薬には動脈硬化の進展阻止効果も証明されている.

利尿薬

心不全における使い方

著者: 後藤葉一

ページ範囲:P.1534 - P.1537

ポイント

急性心不全では,フロセミドのボーラス静注を第一選択とし,無効の場合は持続静注とする.

慢性心不全では,利尿薬はACE阻害薬やβ遮断薬と併用し,体液貯留や血管内脱水に注意して至適投与量を決定する.

スピロノラクトンは,高齢者への投与やACE阻害薬やARBとの併用で高K血症のリスクが増大するので,注意が必要である.

高血圧における使い方

著者: 平田恭信

ページ範囲:P.1538 - P.1540

ポイント

腎機能が正常な高血圧者にはサイアザイド系利尿薬やカリウム(K)保持性利尿薬を投与する.腎機能の低下例ではループ利尿薬を投与する.

投与量は少量にとどめ,降圧不十分な場合は併用療法を心がける.

副作用としての低K血症や尿酸,コレステロール,血糖の増加に気をつける.K保持性利尿薬では高K血症に気をつける.

抗血小板薬

急性冠症候群における使い方

著者: 本宮武司

ページ範囲:P.1542 - P.1544

ポイント

急性冠症候群発症直後にはアスピリン初回投与量162~325mgを咀嚼服用させる.急性期のみチクロピジンを併用してもよい.

長期的にはアスピリン75~150mg/日,分1(維持量),アスピリン禁忌例ではチクロピジン200mg/日,分2で投与する.

経皮的冠インターベンション(PCI),特にステント留置ではアスピリン初回量を維持量の2~3倍とし,チクロピジンを1カ月間(DESでは3~12カ月間)併用する.

PCI,CABG後の抗血小板薬の使い方

著者: 伊苅裕二

ページ範囲:P.1546 - P.1547

ポイント

ステントを用いたPCI後には亜急性冠閉塞という血栓による合併症があり,予防には抗血小板薬が必須である.

日本においてはアスピリン+チクロピジンの投与が主流であり,現在までの薬剤溶出性ステントの成績もこの2剤で十分予防されている.

抗血小板薬の中止が最大の血栓症のリスクである.

慢性虚血性心疾患における使い方

著者: 國本聡 ,   斎藤穎

ページ範囲:P.1548 - P.1550

ポイント

慢性虚血性心疾患においては,禁忌でない限りアスピリン75~150mg/日を投与するべきである.

アスピリン禁忌例においては,チクロピジンの投与が推奨される.

非急性期の心筋梗塞で血栓症の合併が考えられる病態を伴っている場合は,ワルファリンを併用することが推奨される.

不整脈における使い方

著者: 杉薫

ページ範囲:P.1551 - P.1553

ポイント

不整脈治療において抗血小板薬を使用する機会はそれほど多くないが,心房細動あるいは心房粗動に伴って生じる頻度の高い血栓塞栓症予防が代表的な用途である.

心房細動および心房粗動による血栓塞栓症予防には抗凝固薬が中心で,抗血小板薬はそれを補完する役目を担っている.

スタチン

高コレステロール血症における使い方

著者: 寺本民生

ページ範囲:P.1556 - P.1558

ポイント

高コレステロール血症では他の危険因子で治療判断をする必要がある.

冠動脈疾患既往患者,糖尿病,危険因子3つ以上のハイリスク群は女性・高齢者でも治療が必要である.

副作用としての横紋筋融解症は重要であるが,頻度が低いことも認識する.

横紋筋融解症の危険因子があるので,その注意も重要である.

急性冠症候群における使い方

著者: 横山貴之

ページ範囲:P.1559 - P.1562

ポイント

スタチン投与は急性冠症候群の発症から可能な限り早期に開始する.

急性冠症候群症例では,LDLコレステロール:70mg/dl未満を管理目標値とする.

スタチンの選択としては,ストロングスタチンを用いる.

副作用がない限り,スタチン内服は継続する.

その他の循環器薬の使い方

急性心筋梗塞に対する血栓溶解療法―tissue-type plasminogen activator(t-PA)を中心に

著者: 成瀬寛之 ,   尾崎行男

ページ範囲:P.1563 - P.1566

ポイント

血栓溶解薬は遺伝子組み換え型の第2世代のt-PAが主流である.

ACC/AHAガイドラインでは,①ST上昇を有し発症12時間以内の75歳未満の症例,②急性心筋梗塞を疑わせる脚ブロック症例,が血栓溶解療法の最もよい適応とされている.

PCIが普及した本邦における血栓溶解療法の位置づけは,①PCIが施行可能な施設に移送するまでの補助的治療法,②予後改善効果を期待したPCI施行前の薬物療法,と考えられる.

末梢血管拡張薬―プロスタグランジン製剤など

著者: 並木温

ページ範囲:P.1567 - P.1569

ポイント

末梢血管拡張薬は,その作用機序から血管平滑筋に直接作用する薬剤と神経作動性血管拡張薬に分けられる.

血管平滑筋に直接作用する薬剤のなかでプロスタグランジン製剤の有効性は確立されており,プロスタグランジンE1およびI2の各種製剤が臨床で使用されている.

閉塞性動脈硬化症,Buerger病,末梢血行障害(Raynaud病/症候群)に対して有効であり,原発性肺高血圧症への効果も注目されている.

冠拡張薬―硝酸薬,ニコランジルなど

著者: 西山信一郎

ページ範囲:P.1571 - P.1573

ポイント

虚血性心疾患の治療目的は,短期的には患者の狭心症状の寛解,発作を予防して運動能力やQOLを向上させるとともに,長期時には心筋梗塞や突然死の発症を防止して生命予後を改善させることにあり,この目的に合わせて薬剤を選択する.

硝酸薬は労作性,冠攣縮性いずれの狭心症の発作の緩解・予防に有用であるが,心筋梗塞の二次予防効果は明らかではない.

降圧薬:α遮断薬

著者: 甲谷友幸 ,   苅尾七臣

ページ範囲:P.1574 - P.1576

ポイント

α遮断薬の就寝前投与は過度のモーニングサージ(早朝の血圧上昇)を抑制する作用がある.

α遮断薬は脂質代謝異常・耐糖能異常のある患者などで有用である.

長期の心血管イベント抑制効果について今後のエビデンスの集積が待たれる.

心不全治療薬:ジギタリス

著者: 田村勤

ページ範囲:P.1577 - P.1579

ポイント

ジギタリスはその効能,副作用を熟知していれば,現在でも心不全治療に有用である.

副作用ならびに予後の面から,低用量のジギタリス〔ジゴキシン血中濃度(SDC)で0.5~0.8ng/ml〕投与が勧められる.

心不全治療薬:経口強心薬

著者: 伊原俊一 ,   川名正敏

ページ範囲:P.1580 - P.1581

ポイント

長期的な経口強心薬投与により生命予後が悪化する.

経口強心薬は静注強心薬からの離脱,QOL改善,β遮断薬導入困難例に対して推奨されている.

わが国で認可されている経口強心薬はデノパミン,ドカルパミン,ピモペンダン,ベスナリノンである.

心不全治療薬:静注強心薬

著者: 深谷英平 ,   和泉徹

ページ範囲:P.1582 - P.1584

ポイント

静注強心薬は心不全急性増悪時の血行動態改善に有効である.

β遮断薬内服例ではPDEⅢ阻害薬がより有用である.

静脈強心薬長期投与における予後改善効果は認められない.

不整脈治療薬:ナトリウム(Na)チャネル遮断薬(Ⅰ群薬)

著者: 木村正臣 ,   奥村謙

ページ範囲:P.1585 - P.1589

ポイント

I群抗不整脈薬はNaチャネル遮断作用のほかにKチャネル遮断作用やα受容体遮断作用,β受容体遮断作用,ムスカリン(M2)受容体遮断作用(抗コリン作用)を有するものがあり,薬剤選択のうえで基礎心疾患や心機能,さらに緑内障や尿閉などの他の合併症などを考慮する必要がある.

不整脈治療薬:カリウム(K)チャネル遮断薬(III群薬)

著者: 相澤義房

ページ範囲:P.1590 - P.1592

ポイント

心室細動や血行動態の悪化する心室頻拍治療の第一選択はICDであるが,心機能の維持されている例では,アミオダロンとICDの有用性の差は小さくなる.

またICDの作動は苦痛を伴い,QOLを悪化させる.

このため,III群薬の併用でこれを軽減することは意義がある.

III群薬の突然死一次予防の役割は明確でない.

理解のための37題

ページ範囲:P.1594 - P.1601

連載

目でみるトレーニング

著者: 武政聡浩 ,   鈴木啓介 ,   小田口尚幸

ページ範囲:P.1602 - P.1607

問題 454

 症例:20歳,女性.

 主 訴:左肩甲骨周囲の疼痛,咳嗽.

 既往歴:幼少時に副鼻腔炎,17歳頃よりアレルギー性鼻炎.

 生活歴:職業;学生,喫煙歴;20本/日×7年間,ペット飼育歴なし.

 現病歴:生来健康であった.2005年6月28日より左肩甲骨付近の疼痛と咳嗽が出現したため,翌29日に外来を受診した.外来での胸部X線写真と胸部CT写真から,胸部異常陰影の精査目的で入院した.

病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 8

骨髄

著者: 佐藤孝 ,   時田智子

ページ範囲:P.1609 - P.1613

 骨髄は骨組織に囲まれた造血組織で,赤血球,白血球,巨核球の造血3系の細胞のほか,マクロファージ,細網細胞,脂肪細胞,血管などから構成されている.骨髄検査は,貧血や白血病などの血液疾患における骨髄造血能の評価のために重要な検査で,骨髄穿刺法と骨髄生検法の2つの方法がある1).骨髄穿刺法は,骨髄内に穿刺針を入れ骨髄液を吸引し塗抹標本を作製し観察するもので,造血細胞をはじめとした骨髄を構成する個々の細胞の詳細な構造を観察するのに役立つ.これに対し骨髄生検は,生検針を用いて骨髄組織を採取し他の生検組織と同様に標本を作製し観察するもので,骨髄全体の組織構築を評価するのに有用である.骨髄穿刺と生検はそれぞれの短所を相補し合うが,生検は穿刺に比べ患者への負担が大きく,手技的な点からも穿刺のほうが行われることが多い.穿刺により採取された骨髄液の中にも骨髄小片が含まれており,細胞数の算定や塗抹標本を作製した残りの骨髄液をホルマリン固定後パラフィン包埋し標本(クロット標本)を作製すれば,骨髄の組織構築の観察が可能となる.病理では塗抹標本を参考にしながら,このクロット標本の観察が中心となる.

 すでに述べたように骨髄検査は重要な検査であるが,血液疾患の診断は他の検査所見も併せてなされることが多い.この点で,今まで取り上げられてきた他の臓器検索の組織診断が病理でなされるのとは違って,病理診断のもつ意義も他の臓器とは多少異なっている.本稿では骨髄穿刺法により作製された塗抹標本,クロット標本について述べる.この2種類の標本のもつ短所,長所を比較しながら,組織構築を中心とした骨髄組織病理の観点から解説を進めたい.

東大病院内科研修医セミナー 14

持効型インスリン製剤が原因と疑われる肝障害を呈しCSII導入となった劇症1型糖尿病の1例

著者: 笹子敬洋 ,   大須賀淳一 ,   門脇孝

ページ範囲:P.1614 - P.1619

Introduction

糖尿病治療中に肝障害が出現した場合,何を疑うか?

CSII(インスリン持続皮下注入療法)とはどのような治療か?

できる医師のプレゼンテーション―臨床能力を倍増するために 6

プレゼンテーションのフォーマット(各論3)―プロブレムリスト・アセスメント/プラン

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.1620 - P.1624

例 高血圧症がBaseにある70歳男性が,発熱や呼吸困難を主訴に肺炎で入院したときのプレゼンテーションで

初期研修医:(検査所見まで述べて)以上です.プロブレムリストですが,#1.市中肺炎,#2.高血圧症,#3.前立腺肥大としました.

指導医:なるほど.

初期研修医:アセスメント・プランです.まず市中肺炎ですが,今回の主訴の発熱や呼吸困難の原因としては画像所見も含めて肺炎でいいと思います.喫煙歴もなく……(#1のアセスメント+プランまで終了).

指導医:それで,異型肺炎の可能性に関しては,どうかな?

初期研修医:えーっと,異型肺炎ですか…….あまり意識していませんでした.

後期研修医:今回の症例に関しては,グラム染色においてもグラム陽性双球菌のみがしっかり見えており,悪寒戦慄なども含めて,肺炎球菌性肺炎でよいと判断しています.また,レジオネラ肺炎などを疑わせる病歴や身体所見も認められておらず……(ちょっと経って).(初期研修医に向かって)ここまでの詰めた話はきっちり打ち合わせていなかったね,ゴメン.

初期研修医:いや,すみません.#2の高血圧症ですが,近医でFollowされているそうですが,食事や薬剤に対するアドヒアランス(積極的に参加する態度)が,かなり悪いようです.今回の肺炎とは直接は関連しないかもしれませんが,対応したいと思います.

指導医:そうだね.

初期研修医:#3の前立腺肥大ですが,ROSで聞いてみると,結構困っているようで…….

指導医:そうか,それは気付かなかったね.

後期研修医:僕も着目していなかったんですよ.

初期指導医:具体的にどうしたらいいかはまだわかっていないですが…….

指導医:後期研修医ともう一度,確認してみてごらん.わからなかったら,僕(指導医)にでも,泌尿器科の先生にでも相談してもらったらいいよ.よし,じゃぁ,みんなでもう一度見に行こうか.

初期・後期研修医:ハイ!

 前回までの各論で,プレゼンテーションに必要な情報収集,情報の呈示を説明しました.

プロブレムリスト

 既に紹介したフォーマットの通り,プレゼンテーションは主訴,プロファイルから始まり,身体所見,検査所見を述べ,その後にプロブレムリスト,アセスメント・プランに入ります.「プロブレムリストです」と発表者が述べる=ここから整理が始まる!ということで,発表者も聴衆も頭を切り替えられることになります.

医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために 9

中心静脈カテーテル挿入

著者: 本村和久

ページ範囲:P.1626 - P.1628

 今回は中心静脈カテーテル挿入について述べたい.筆者自身が研修医のときに,この手技で大きなトラブル(頸動脈穿刺→出血→上気道閉塞)を起こしたことがある.私だけでなく,同僚,研修医が,同じ間違いを繰り返さないためには,どうしたらよいのか,医療安全を考える大きなきっかけとなった.実際に病院内でマニュアル作成を行うことにもなった1).私がトラブルを起こした当時は,まだ医療安全に注目した日本語で書かれたマニュアルは多くなかったように思えた(海外の文献を取り寄せて学習した)が,いまは,文献に挙げるように,中心静脈カテーテル挿入に関する優れたマニュアル,文書が,インターネット上で簡単に手に入る.また,視覚に訴えたわかりやすい教材もある.紙面は限られており,詳細は,ぜひそれらを参照していただきたい2~4)

私の間違い

 私の個人的な経験から述べたい.高齢,人工透析中の女性,私が病棟主治医だった.虚血性腸炎の精査加療入院,大腸内視鏡後の大腸穿孔で,禁食,中心静脈栄養開始,発熱でカテーテル感染が疑われ,一度は抜去となったが,経口摂取できず,内頸静脈への再挿入でのことだった.指導医の介助のもと,エコーを使用しながらも,頸動脈を誤って穿刺してしまった.きちんとエコーをみて,針先を確認できていなかったのが原因だった.圧迫止血したつもりで,内頸静脈へのカテーテル確保はできたのだが,頸動脈穿刺→出血→上気道閉塞の状態となり,緊急気管内挿管,一命はとりとめ,一旦病状は回復傾向にあったが,敗血症を合併,死亡された.

研修おたく海を渡る 9

多国籍軍

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1629 - P.1629

 今回はアメリカ以外の国からの研修医―多国籍軍―に焦点を当てます.彼らから見ると,はたしてアメリカのシステムはどう映るのでしょうか.アメリカの医療も,単なる地方のシステムと言えるのかもしれません.

 まず同僚の出身国がいかに多彩か列挙してみます.アジアからはインド,パキスタン,中国,台湾,日本,タイ,ヨーロッパからは,イギリス,ドイツ,イタリア,オーストリア,オランダ,ポーランド,セルビアモンテネグロ,ロシア,ウクライナ,中近東からはシリア,ヨルダン,レバノン,イラク,イラン,トルコ,アフリカからは,ケニア,ナイジェリア,南アフリカ,南米からはブラジル,アルゼンチン,26カ国もあります.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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