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雑誌目次

雑誌文献

medicina44巻11号

2007年11月発行

雑誌目次

今月の主題 内科臨床に役立つ心療内科的アプローチ

著者: 熊野宏昭

ページ範囲:P.2015 - P.2015

 本特集では,心療内科的アプローチのエッセンスを,読者の方々の臨床に今日からでも役に立てていただけるように,心療内科のみならず内科,精神科,臨床心理を専門とする多くの先生方にもご協力いただきながら,わかりやすくご紹介することを狙いとしました.

 心療内科的アプローチの特徴は,身体面に加えて心理行動面からも見立てと介入を行うことにあります.現在,内科で診る多くの疾患は生活習慣病に含まれ,治療を進めるうえで生活習慣(=行動)をどのように変えていくかが重要なポイントになりますが,これまでの医学教育ではその扱いが不十分であり,読者の多くにとっては具体的な方法論がわからないというのが正直なところではないでしょうか.心療内科では,身体面からのアプローチに加えて,いろいろな面に気を配らないとよくならない慢性身体疾患(=心身症)を対象に,臨床経験や実証的研究を積み重ねてきました.そのなかで,治療関係づくりや医療面接のスキルを発達させるとともに,認知行動療法に代表される生活習慣の変容方法を積極的に活用しながら,心理行動面と身体面の複雑な相互関係に注目してきたわけです.その経験の蓄積から,生活習慣病の臨床全般に対しても広く寄与できるものがあると考え,「生活習慣病の認知行動療法」を本特集の一つの柱にいたしました.また,応用問題として,上記の通り,重篤ではないにしても難治性の慢性身体疾患である心身症について,基本的な理解の枠組みを提供し,身体に効く薬,脳や心に効く薬,行動変容を組み合わせてアプローチする方法論の基礎について理解していただけるようにしました.

心療内科的アプローチのポイント

アセスメントと初期対応

著者: 熊野宏昭

ページ範囲:P.2016 - P.2019

ポイント

●生活習慣病,心身症,コモンメンタルディジーズの鑑別が重要.

●コモンメンタルディジーズでは,まずうつ病とパニック障害を診断する.

●ストレスに関連した身体症状,行動面の問題では,行動アセスメントが不可欠.

●心理行動面を考慮した医療面接では,受容・支持・保証に留意する.

●良好な治療関係の基盤は,十分なコミュニケーションと治療の枠組みの自覚である.

外来診療のパフォーマンスを高める―医療面接のコツ

著者: 川原健資

ページ範囲:P.2020 - P.2022

ポイント

●患者の「語り」(主観)を受け止める(積極的傾聴).

●主治医の「語り」(見立て)を患者に伝える.

●両者のすり合わせを行い治療同盟を構築する.

●共同探索的な姿勢を持ち,「おまかせ」医療にならぬような配慮をする.

●病態や経過に心理社会的因子が関与していないか留意する.

●アドヒアランスが良好になると,治療に必要な時間や労力が患者に移行する結果,外来診療にかかる時間が短くなる.

生活習慣病の認知行動療法的介入 【認知行動療法の基本と具体的手法】

認知行動療法の基本

著者: 鈴木伸一

ページ範囲:P.2023 - P.2027

ポイント

●患者の実生活の情報を丁寧に聴取することを通して,生活パターンを把握する.

●悪循環から脱却するための方法を具体的に決めて,それを実行するための工夫を話し合う.

●悪循環に関連する患者のストレスや不安などを具体的に把握し,対処法を話し合う.

●うまくいかない理由を「頑固だ」「意識が低い」など患者の性格の問題とするのではなく,患者の「やる気と自信」を育てるための方法を具体的に考える.

リラクセーション法

著者: 石原俊一

ページ範囲:P.2029 - P.2032

ポイント

●リラクセーションの目標の中心は,適切にリラクセーション反応を誘導することにある.

●自律訓練法は心身症などの治療法だけではなく,産業や教育の場面などでも行われている.

●自律訓練法の練習公式は,背景公式を含めて7段階からなっている.

●受動的注意集中は,自律訓練法の重要な要素であり,達成努力を伴わない,さりげない態度で注意を集中することである.

●消去動作については訓練の効果の有無にかかわらず,必ず訓練終了後に行うようにする.

【一般内科医にもできる介入法】

メタボリックシンドロームに対する具体的介入方法

著者: 木村穣

ページ範囲:P.2033 - P.2035

ポイント

●メタボリックシンドロームの基本はインスリン抵抗性による高インスリン血症である.

●メタボリックシンドロームでは減量とともに,栄養バランスや運動耐容能の向上が重要.

●治療効果として生体指標の変化とともに,行動パターンの変化も有用な指標となる.

●二分割思考,教条的思考などの肥満患者の認知の歪みにつき理解しておく.

●セルフモニタリングによる自己評価,自己効力感の向上が鍵を握る.

肥満への認知行動療法的介入

著者: 野崎剛弘 ,   小牧元

ページ範囲:P.2037 - P.2041

ポイント

●いかなる非外科的肥満治療でも,治療後3~5年以内にはほぼすべての例で元の体重に戻っている.

●現在の肥満治療の最大の問題は,減量した体重をいかにして維持していくかである.

●減量後の再増加を阻止するには,まず減量期と体重維持期を区別する必要がある.

●減量期のうちから,体重維持という目標を受け入れることに対する抵抗を扱うことが不可欠である.

●体重維持に重点をおいた認知行動療法を行うことで,減量した体重の再増加の阻止が十分期待できる.

糖尿病への認知行動療法的介入

著者: 金外淑

ページ範囲:P.2043 - P.2045

ポイント

●患者の生活習慣や望ましくない考え方に働きかけ,認知・行動変容をねらう.

●医療者側の対応や治療に対する考え方,治療アプローチによって糖尿病治療の効果の差が生じる.

●糖尿病患者へのかかわり方を見直し,一人ひとりにあった治療に対する視点を変える.

高血圧への認知行動療法的介入

著者: 中尾睦宏

ページ範囲:P.2046 - P.2049

ポイント

●高血圧は最も頻繁に診療する疾患であり,患者の病識や性格に応じた対応が大切である.

●高血圧リスクとして,食事(栄養,食塩摂取),飲酒,喫煙,運動など生活習慣を考慮する.

●高血圧への認知行動医学的介入の効果はエビデンスが集積中である.

●高血圧診療の際は,「戦略をもった声かけ」と「リラクセーション練習」の2つを心がけたい.

●うつ病や不安障害など精神疾患を有した高血圧患者にも注意したい.

虚血性心疾患への認知行動療法的介入

著者: 渡辺尚彦 ,   川島真澄 ,   多田里美 ,   小寺郁子

ページ範囲:P.2051 - P.2055

ポイント

●虚血性心疾患は生活習慣の歪みによる病気である.

●生活様式の把握にはセルフモニタリングが役立つ.

●生活指導は身近で具体的な行動目標を提示する.

●認知行動療法は心筋梗塞再発予防効果のエビデンスがある.

禁煙指導

著者: 伊藤絵美

ページ範囲:P.2056 - P.2060

ポイント

●認知行動療法とは患者の自助を側面から援助するための体系的な心理療法である。

●禁煙指導では従来の行動療法に認知的アプローチを加えることで効果促進を図れる。

●一般外来での医師による短時間禁煙指導には高いエビデンスが見いだされている。

●禁煙指導に先立ち,患者の喫煙のあり方をアセスメントすることが重要である。

●タバコに対する認知の変容を援助することが,禁煙行動を定着させるために有効である。

心身症としての慢性身体疾患へのアプローチ

心身症の発症と増悪のメカニズム

著者: 稲田修士 ,   吉内一浩

ページ範囲:P.2061 - P.2064

ポイント

●ストレスに伴い,生理的な変化・行動上の変化が起こることで慢性疾患の病態は修飾される.

●ストレス下では,HPA系やLC/NE系を介して,さまざまな身体的反応が生じる.

●内科治療への反応が不良な場合や,病態の変化とストレスとの関係が明白な場合には,心身症としての対応が必要である.

過敏性腸症候群

著者: 福土審

ページ範囲:P.2066 - P.2069

ポイント

●過敏性腸症候群(IBS)とは,腹痛と便通異常が慢性に持続する機能異常症である.

●IBSはその大部分がストレスによる症状の増悪,すなわち心身症の病態生理を呈する.

●治療の第1段階では生活指導と消化管機能の調整を行う.

●治療の第2段階では向精神薬と簡易精神療法により,心身症の病態改善を図る.

●治療の第3段階で専門的な心身医学的治療を行う.

機能性ディスペプシア

著者: 金子宏

ページ範囲:P.2070 - P.2073

ポイント

●機能性ディスペプシアは慢性の上腹部症状を主体とするcommon diseaseである.

●不安・抑うつ状態や何らかのストレスが存在し,QOLが低下する.

●検査直後に異常のないことを十分に説明し,予後が良好であることを保証する.

●病態仮説を立てて,患者が主体性をもって治療に参加できるようにする.

●プライマリケア医とメンタルヘルス専門医との共同治療体制の構築が必要である.

頭痛に対する心身医療的アプローチ

著者: 天野雄一 ,   佐谷健一郎 ,   端詰勝敬

ページ範囲:P.2074 - P.2076

ポイント

●治療者患者関係を築く第一歩として,初診時の「患者を理解しようとする基本姿勢」は大切である.

●片頭痛においてもストレスは強力な発症要因と考えられるようになっている.

●片頭痛の患者はうつ病およびパニック障害に罹患するリスクが3~4倍高いとされており,随伴症状には注意が必要である.

●予防薬としては,片頭痛,緊張型頭痛ともにアミトリプチリン(トリプタノール®)10~30mg/日が有効とされている.

●鎮痛薬の漫然とした投与は薬剤乱用頭痛の原因となることがあり,慎重な投与が必要である.

気管支喘息に対する心療内科的アプローチ

著者: 江花昭一

ページ範囲:P.2078 - P.2080

ポイント

●成人気管支喘息の50%ないしそれ以上に,一般的な治療では改善しにくい心身症の病態が認められる.

●身体面とともに心理・行動,社会面などの情報を得て全体的な見立てを行い,介入のポイントを見定め,患者と共有する.

●初期対応として,過労やストレスの軽減,良好なライフスタイルの必要性などの教育を行う.

●患者に不安状態やうつ状態が認められる場合,抗不安薬,抗うつ薬の処方を行うと,喘息の経過が好転することがある.

甲状腺機能亢進症への心療内科的アプローチ

著者: 深尾篤嗣 ,   高松順太 ,   隈寛二

ページ範囲:P.2081 - P.2085

ポイント

●Basedow病甲状腺機能亢進症の発症にはライフイベント,日常苛立ち事などの心理的ストレスが関連している.

●本症の治療経過には日常苛立ち事や特定の心理特性が関連している.

●本症では治療によりeuthyroidになっても精神障害が残存する例が多い.

●身体的治療に抗不安薬,抗うつ薬,精神療法を併用することで心身両面の症状改善が期待できる.

神経性食欲不振症への心療内科的アプローチ

著者: 河合啓介 ,   久保千春

ページ範囲:P.2086 - P.2089

ポイント

●神経性食欲不振症は,個人の因子や現代の社会状勢を背景に,挫折体験などのエピソードが加わり発症する.

●面接では,体重の話題以外に,ストレスを適切に処理することができないことなども取り上げる.

●身体的に直ちに対処すべきものとして,①低血糖発作による意識障害,②歩行困難などの運動障害,③不整脈がある.

●慢性の低栄養状態の患者に栄養補給を急速に行うことは,むしろ危険である.

●専門医へ紹介するタイミングは,①体重が増加しない,②自傷行為,③著明な低体重.

内科医に必要なメンタルヘルスの知識

コモンメンタルディジーズの診療の進め方

著者: 山中学 ,   榧野真美

ページ範囲:P.2091 - P.2094

ポイント

●ある人が生涯に何らかの精神障害に罹患する割合はかなり高い(米国46%,日本24%).

●気分障害,不安障害,身体表現性障害などは,最初に内科を受診する場合が多い.

●身体疾患による精神症状である可能性を常に念頭におかなければならない.

●「著明な苦痛または機能障害を引き起こしている」かどうかが診断のポイントである.

向精神薬の使い方

著者: 貝谷久宣

ページ範囲:P.2095 - P.2099

ポイント

●作用機序の同一のものを何種類も使用しない.1種類の薬剤を十分量使用し,効果がなければ別の薬剤に変更する.

●向精神薬はすべて脳内の神経伝達,とりわけシナプス周辺で起こる事象に影響を与えて効果を発揮する.セロトニン欠乏は抑うつ気分に,ノルアドレナリン欠乏は行動力低下に,ドパミン欠乏は興味・関心の低下に関係しており,ガンマ-アミノ酪酸(GABA)は不安・抑うつを緩和する神経伝達物質であると大まかに理解しておくとよい.

●向精神薬は中途半端に使用せず,許容最高量まで漸増し,病的症状のない状態(寛解)を3カ月以上続けたら,ゆっくり減薬していくのが原則である.

うつ病

著者: 原田誠一

ページ範囲:P.2101 - P.2103

ポイント

●うつ病の症状を“知・情・意&身体”に分けて整理すると把握しやすい.

●第一選択薬は,薬効を期待でき副作用が少ないSSRIまたはSNRIである.

●抗うつ薬の効果が出現するまでに,服薬開始後2週間程度かかる.

●抑うつ症状が改善した後も,再発予防のために一定期間薬物療法を続ける.

●「抑うつ症状が重篤」「双極性障害」などの場合には早めに専門医と連携する.

パニック障害

著者: 佐々木司

ページ範囲:P.2104 - P.2107

ポイント

●過呼吸・頻脈などの発作を主訴とする患者の診察は,パニック障害の可能性も念頭に.

●「パニック障害」と診断されたら,まず治療教育を開始.

●「心のあり方」の病気との誤解を解くこと.

●抗うつ薬(SSRIなど),抗不安薬(特に治療初期)などによる薬物療法が有効.

●心理療法(特に認知行動療法)も有用性が高い.

●治療は長年にわたることが多い.

●うつ病(時に躁うつ病)などを続発することが多いので,長期の治療は専門医に委ねる.

社会不安障害

著者: 山田和夫

ページ範囲:P.2108 - P.2113

ポイント

●社会不安障害とは「上がり症」のことである.かつて日本では「対人恐怖」と言われていた.

●アメリカの診断基準DSM-III(1980年)のなかで初めて1つの障害として取り上げられ,世界に広まった.

●社会不安障害はSSRIの1つであるフルボキサミンで完治するようになった.

●社会不安障害は少子化,ひきこもりなど社会を揺るがす諸問題の大きな要因である.

身体表現性障害

著者: 津久井要

ページ範囲:P.2114 - P.2117

ポイント

●身体表現性障害は,心理的問題が精神症状として現れず,身体症状として表出されたものである.

●身体表現性障害は病態概念であり,複数の疾患カテゴリーから構成される.

●身体表現性障害の治療は通常容易ではなく,心理的対応には慎重な配慮が必要となる.

●特異的に有効な治療薬は存在しないため,ベンゾジアゼピン系抗不安薬の安易な投与は控える.

●身体症状を介しての関係ではなく,信頼に基づく医師-患者関係の構築に力点を置く.

睡眠障害

著者: 井上雄一

ページ範囲:P.2119 - P.2124

ポイント

●不眠は,その発現背景を慎重に鑑別すべきである.

●過眠は,睡眠専門医療機関での検査診断が重要である.

●PSQIなどの,他覚的重症度評価を活用したい.

●二次性睡眠障害の原因になる睡眠時無呼吸,周期性四肢運動に注目したい.

身体疾患に伴ううつ病

著者: 吉田菜穂子

ページ範囲:P.2125 - P.2128

ポイント

●うつ病との関連が強い身体疾患の診療は,うつ病の有無を常に念頭に置いて行われるべきである.

●身体疾患がうつ病の要因となる場合も,うつ病が身体疾患を悪化させる場合もある.

●うつ病に関連した身体面・精神面・行動面の変化を定期的な患者との面接により確認する.

●うつ病を疑う症状が認められた場合には,専門科と連携して診療にあたることが望ましい.

●うつ病が高率に認められる疾患の場合は,あらかじめ専門科と連携して予防的対処を施す意義も大きい.

座談会

内科医に求められる認知行動療法・メンタルヘルスの基礎知識とは?

著者: 熊野宏昭 ,   木村穣 ,   鈴木伸一 ,   原井宏明

ページ範囲:P.2130 - P.2139

 現在,内科で診る多くの疾患は生活習慣病に含まれる.治療を進めるうえでは,薬物治療のみならず,食事や運動など生活習慣への働きかけが不可欠である.そこで注目されているのが身体面に加えて心理行動面からも見立てと介入を行う心療内科的アプローチである.

 内科,精神科,心療内科,臨床心理それぞれの領域から専門家にお集まりいただき,今日から内科臨床に生かしていただけるよう,心療内科的アプローチのエッセンスである認知行動療法とメンタルヘルスの基礎知識について,率直に意見交換していただいた.

連載 外来研修医教育への招待・11

外来研修医教育における看護師のかかわり

著者: 高見澤巧

ページ範囲:P.2146 - P.2150

 前回までは,外来研修医教育の考え方や実際について,医師(指導医)がその経験を中心にお話してきました.外来での研修医教育は,「外来診療を行えるようになる」という研修の目的からすると,その指導の中心はやはり医師となります.しかし,研修医の外来研修にとって,実は,一緒に外来で働いている看護師やコメディカルスタッフ,事務職などが果たす役割は非常に大きなものではないでしょうか.今回は,そのなかでも,研修医と接する機会が多く,また,研修医の成長に大きく影響すると感じている看護師の役割について,外来看護主任の高見澤さんに,「外来研修医教育における看護師のかかわり」と題して話題を提供してもらいました.(名古屋大学附属病院 川尻宏昭)

聖路加Common Diseaseカンファレンス・8

あなたは関節痛を的確に診断できますか?

著者: 西崎祐史 ,   岡田正人

ページ範囲:P.2151 - P.2157

関節痛  まずはここを押さえよう
①関節痛をみたら炎症性か,非炎症性かを区別する

 ・非炎症性:変形性関節症,整形外科的腰痛など⇒運動で悪化する,朝のこわばりがない

 ・炎症性:関節リウマチ,脊椎炎など⇒運動で改善する,朝のこわばりがある
②関節炎患者をみたら,以下の4つのカテゴリーに分類

 →急性多関節炎,慢性多関節炎,急性単関節炎,慢性単関節炎

 急性多関節炎の鑑別:以下の3つに分けて考えると,見逃しを防ぐことができる.

  ・細菌性:感染性心内膜炎,淋菌性関節炎など

  ・ウイルス性:ヒトパルボB19ウイルス感染,肝炎ウイルス感染,急性HIV感染,風疹など

  ・慢性多関節炎の初期:関節リウマチ,SLE(全身性エリテマトーデス),血管炎,成人Still病などの膠原病の初期像

 急性単関節炎:臨床でよく遭遇するのは,結晶誘発性関節炎(痛風など)であるが,感染症と外傷の除外が必要である.

目でみるトレーニング

著者: 熊野浩太郎 ,   今田崇裕 ,   森本聡 ,   大島民旗

ページ範囲:P.2158 - P.2163

研修おたく海を渡る・23

Death Watcher

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.2164 - P.2164

 死という人生に一度しかない出来事に対して,準備する時間をとって心構えができるよう本人と家族を助けるのが,Death Watcherの仕事だと僕のメンターは教えてくれました.

 医療者は,宗教家とともに多くの死に向き合う数少ない職業です.たくさんの死に向き合うことで,「少しでも上手に死を手助けできるようになるのではないか.いや,上手なサポートができるようにならなければならない」と,彼はDeath Watcherになる覚悟をしたそうです.

成功率が上がる禁煙指導 誰にでもできる日常診療の工夫・5

保険診療での禁煙治療のテクニック3―実践編

著者: 安田雄司

ページ範囲:P.2165 - P.2170

 前回では私が実際に行っている禁煙治療について説明した.今回は2006年4月から開始された保険診療による禁煙治療の実践について述べてみる.


これまでの当院での禁煙治療成績

 2006年4月1日から保険診療での禁煙治療が開始されたが,開始時の混乱からか処方薬ニコチネル®の保険収載ができていないという大きなミスで始まった.6月からは保険収載がなされ,ここから本格的に保険診療が可能となったといえる.それまでの期間は混合診療となるために薬剤を処方できないという事態であった.

書評

慢性うつ病の精神療法―CBASPの理論と技法

著者: 切池信夫

ページ範囲:P.2129 - P.2129

 うつ病の治療において,寛解しないうつ病を経験することはまれならずあります.

 この場合,性格の問題にしたり,遷延性や治療抵抗性の難治性うつ病としたりして,薬物療法と支持的精神療法を漫然と続け,楽観的にそのうちよくなる,「明けない夜はない」と思いつつ,治療的ニヒリズムに陥らないようにしながら,気の重い外来治療を継続しがちになります.皆さんもこのようなことを経験したことはないでしょうか.

メディカルポケットカード プライマリケア

著者: 岩田健太郎

ページ範囲:P.2145 - P.2145

 アメリカの研修医はアンチョコが大好きである.サンフォードガイドやワシントンマニュアルに代表されるマニュアル類.VINDICATE-P,CAGE,PECOといったアクロニム(頭字語).「A型肝炎だけが,ウイルス性肝炎でspiking feverを起こす」,なんていう含蓄に満ちたメディカルパール(箴言).そしてpalm pilotなどのPDA.アメリカの研修医のポケットにはたくさんの知識の元が詰まっている.

 ポケットカードも,彼らのお気に入りのひとつである.一枚のカード,表裏にびっしりと情報.その科をローテートしているときにポケットに携えておけば,パッと取り出してさっと読める.破れないし,濡れても大丈夫.ちょっと長めで,少しポケットからはみ出すくらいの方が取り出しやすい.

新臨床栄養学

著者: 武藤泰敏

ページ範囲:P.2150 - P.2150

 かつて,『栄養化学概論』(芦田淳著,養賢堂)という名著があり,多くの人々が正しい栄養学を学ぶことができた.しかし,現在「食物や食品に含まれる栄養成分のみをテーマとするのではなく,同時に,それを受け入れる人間の側に立って考察していく」風潮が大きな支持を得つつあります.さらに,高齢者の栄養を考える時,“人間の尊厳”を重視した「人間栄養学」をめざした努力も推し進められています.

 このような視点に立った栄養学の名著が次々に上梓され,わが国に輸入されています.特に,Garrowらによる“Human Nutrition and Dietetics”(邦訳:『ヒューマン・ニュートリション―基準・食事・臨床』医歯薬出版),Allisonの“Nutrition in Medicine A Physician's Views”(邦訳:『医師のための栄養学』ダノン健康栄養普及協会)などは真に味わいのある栄養学の指導書といってよいと思います.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.2178 - P.2178

●非常識な言動に直面したとき,「この人は,いったい何を考えているのか?」と怒りを覚える瞬間があります.しかし,よく考えてみると,私はその人が「何を考えているのか」を知りたいわけではなく,「常識から逸脱した言動」に対して怒りを抱いているだけなのでした.そうであれば,次の一歩は「心のなかを覗く」ではなく,「常識の範囲内で行動してもらう」となるでしょう.

●とはいえ,他人に行動を変えてもらうよう働きかけるのは,至難の業です.特に,電車内や雑踏などで周囲の人は自分に関係ないと思っている人や,自分に非がないと信じ込んでいる人に対して,怒りを抑えて話しかけられるようになるまでには,まだまだ時間がかかりそうです.「人に苦言を呈するとき,相手にとって都合が悪いことを言うときこそ,笑顔と柔らかい物言いが大事」というコミュニケーション学の専門家の言葉が頭をよぎります.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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