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文献詳細

雑誌文献

medicina44巻3号

2007年03月発行

文献概要

書評

左アプローチによるTRI

著者: 光藤和明1

所属機関: 1倉敷中央病院・循環器内科

ページ範囲:P.474 - P.474

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 右上肢からCAG(coronary angiography;冠動脈血管造影)あるいはPCI(percutaneous coronary intervention;経皮的冠動脈形成術)を行ったことのある術者は,右上肢からの冠動脈造影ではカテーテルのエンゲージの困難な例を少なからず経験しているはずである.腕頭動脈が蛇行しカテーテルが上行大動脈に折り返すように進んでいくときなどはその極みである.それらは左上肢からのアプローチが解決してくれることも,また多くの術者が感じていると思われる.なぜなら,大腿からのアプローチと左上肢からのアプローチは,大動脈弓を超えた後の走行が類似しているからである.さらに橈骨動脈アプローチでは,上腕動脈アプローチに比較して穿刺点は術者からそれほど遠いわけではなく,比較的左大腿動脈アプローチに近くすることが可能である.にもかかわらず,多くの術者は右橈骨動脈アプローチを好んで用いている.理由はいくつかあるであろう.①慣れていないのでコツがあるとしてもそれがわからない,②不測の不都合が起こり得ることが心配である,③いくつかの予測し得るデメリットが考えられる,④現状で満足して“食わず嫌い”になっている,などである.

 PCIの術者は他者が行っている方法を取り入れるべきかどうかを考慮するとき,しばしば自らが長年行ってきた方法を擁護するような論理を展開して,新しい方法を排除しようとする.時としてその手技の理念にかかわることなので,新しい方法がそれまでの自分の行ってきた方法の価値をおとしめることになってしまうのが大きな理由であるように思われる.しかし,実際に新しい方法を取り入れてみると,そのメリットが初めて理解できるし,新たな展開の手段にも考え至ることが多いのである.また取り入れてみないとそのよさが永遠に理解できない部分がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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