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雑誌目次

雑誌文献

medicina44巻4号

2007年04月発行

雑誌目次

今月の主題 内科エマージェンシー2007 鬼門を克服する

著者: 田中和豊

ページ範囲:P.637 - P.637

敵を知り,己を知れば百戦危うからず

──孫子

 一次から三次救急患者のなかで最も数が多いのが内科系救急患者である.しかし,日本の救急医学は,外傷救急から始った経緯により診療範囲が外傷・熱傷・中毒に偏っていて,一番重要な内科系救急が欠落している.このため,救急医が内因性疾患を診察すると,鑑別診断など考えずに一通りの検査をして,お決まりの「内科コンサルテーション」に終わってしまう.いわゆる「丸投げ診療」である.こういう診療を見た研修医からこう質問されたことがある.「救急医は救急隊や看護師とどう違うのですか?」と.

 一方,日本の救急医療では現在でも一次二次の内科系救急患者は,救急医が診察するのではなく内科医が診察するのが一般的である.ところが,この一次二次の内科系救急患者を内科医が診療すると,自分の専門科以外の病態は全くわからない,あるいは,少し重症な患者は全く手に負えない状態になってしまう.こういう診療を見た研修医からこう言われたことがある.「内科の先生は自分の専門外のことは全くわからない」,「内科の先生は自分の患者の状態が悪くなるとその患者をすぐ人に渡す」と.

危機管理―人間の真価は逆境のときに試される

蘇生法―断崖絶壁から生還する方法

著者: 田中和豊

ページ範囲:P.638 - P.643

ポイント

●「蘇生法」は内科エマージェンシーの最難関の鬼門である.

●「蘇生法」は2回のABCDで構成されている.

●BLSとACLSのアルゴリズムを身につける.

●バッグ・バルブ換気と急速導入挿管法による挿管を身につける.

ショック―ショックの患者を見てショックになるな

著者: 朝日茂樹 ,   木村昭夫

ページ範囲:P.644 - P.648

ポイント

●ショックは全身性の急性循環不全の状態で,放置すれば致命的な結果となる.まず応援要請を.

●代表的な臨床症状は5Ps:蒼白(Pallor),虚脱(Prostration),冷汗(Perspiration),脈拍触知不能(Pulselessness),呼吸不全(Pulmonary insufficiency).

●突然の血圧低下では,ポンプ力か,リズムか,循環血液量のどこかに問題あり.

●血液供給不足,心臓のポンプ機能異常(力不足か拡張制限),血液分布異常の4つの病態がある.

内科エマージェンシーの診断―確実な診断が患者を救う

呼吸困難(心不全,気管支喘息,肺塞栓)

著者: 金城紀与史

ページ範囲:P.651 - P.654

ポイント

●救急の場面では急性疾患と慢性疾患の急性増悪を考える.

●呼吸困難患者のトリアージをまず行い,緊急症では安定化を優先する.

●病歴と診察のポイントを押さえて診断を絞り込む.

●単一疾患だけで呼吸困難が説明できない場合もある.

胸痛(ACS,肺塞栓,急性大動脈解離,緊張性気胸)―最も緊急度の高い4つの疾患

著者: 飯田幸生 ,   山中克郎

ページ範囲:P.657 - P.663

ポイント

●胸痛の4killer(すぐに患者を死に追いやる疾患)を見逃さない.

●4killerとは急性冠症候群(ACS),肺塞栓,大動脈解離,緊張性気胸である.

●典型的な症状で受診するとは限らないので,病歴/身体所見から4killerを疑う習慣をつける.

失神

著者: 栗原陽子 ,   前野哲博

ページ範囲:P.664 - P.668

ポイント

●循環器疾患による致死的な失神を見逃さない.

●神経症状を伴わない場合,脳血管障害による失神は否定的である.

●プライマリケアで最も多く遭遇するのは血管迷走神経性失神であり,予後良好である.

●病歴・身体診察・心電図から失神の約半数は診断可能である.

吐下血―コモン・ディジーズである消化管出血を確実にものにする

著者: 吉村大輔 ,   落合利彰 ,   壁村哲平

ページ範囲:P.670 - P.676

ポイント

●一次対応として,出血性ショックの補正とAMPLE historyの聴取は特に重要である.

●診断の第一歩は症状と吐下血の性状から出血部位の推定と鑑別診断を行うこと.

●内視鏡的止血術には出血原因に応じた適切な処置具の選択と組み合わせが重要である.

●内視鏡的止血不能例には,interventional radiology(IVR)や外科適応を検討する.

●出血原因疾患に応じて再発を予防する内科治療があれば必ず行うこと.

頭痛(くも膜下出血,髄膜炎,片頭痛)―良性の頭痛と悪性の頭痛を知る

著者: 中村治雅 ,   池田正行

ページ範囲:P.677 - P.679

ポイント

●悪性の頭痛では,「くも膜下出血(SAH)」と「髄膜炎」から考える.

●「突然の痛みだった」「今までに,こんな頭痛は初めてです」(sudden severe headache)なら,くも膜下出血を疑い,脳外科にコンサルトする.

●くも膜下出血は,CTだけでは除外できない.

●髄膜炎疑い例の髄膜刺激症状の診察は,感度と特異度を理解する.

●片頭痛の診断は,国際頭痛分類第2版 (ICHD-II)を理解する.

意識障害―意識障害=神経系疾患ではない

著者: 高田俊彦 ,   大平善之 ,   生坂政臣

ページ範囲:P.681 - P.684

ポイント

●意識障害の鑑別診断は,神経系疾患だけではなく多岐にわたる.

●意識障害の患者をみたら,まずはバイタルサインのチェック,安定化,続いてDo DON’Tを行う.

●鑑別診断の記憶法としてはAIUEO TIPSが有用である.

●意識障害では血圧が診断において重要.

めまい―末梢性と中枢性を鑑別する

著者: 増田浩三

ページ範囲:P.686 - P.692

ポイント

●患者の訴える“めまい”がどの型なのかを聞き取るのが最初のステップである.

●ポイントを押さえた病歴聴取のみでも,おおかたの病態は把握できることが多い.

●身体診察では眼振の観察と神経学的診察が重要である.

●中枢性めまいの疑いが否定できなければ,頭部CTあるいはMRIを行うべきである.

●原因にかかわらず急性期治療は共通しているため,診断と並行して対症療法を開始する.

●良性発作性頭位めまい症と診断できれば,浮遊耳石置換法を試みるとよい.

痙攣―痙攣を見て逃げない

著者: 中村謙介 ,   山口大介 ,   矢作直樹

ページ範囲:P.693 - P.695

ポイント

●痙攣重積診療の原則は,①呼吸,循環(A,B,C)の確保と②速やかな痙攣の停止,これと並行して鑑別を進める.

●痙攣重積が遷延すると脳に不可逆的なダメージを生じる.

●痙攣停止にはまずジアゼパム,次にフェニトイン.

運動麻痺―脳出血? 脳梗塞?

著者: 中尾哲

ページ範囲:P.696 - P.701

ポイント

●運動麻痺の責任病巣および病態は多様である.

●病態の推察には病歴の聴取が重要で,突然発症の運動麻痺は脳血管障害を疑う.

●脳出血の治療法は,出血原因,出血部位,出血量,意識レベルにより選択する.

●脳梗塞の治療法は,発症からの時間,発症機序,臨床病型により選択する.

しびれ―神経内科か? 整形外科か?

著者: 仲田和正 ,   登木口進

ページ範囲:P.702 - P.711

ポイント

●温痛触覚と振動位置覚は脊髄→延髄→橋部まで離れた場所を通るが,中脳で合流して上行する.したがって脊髄,延髄,橋部の病変では知覚解離が起こるが,中脳以上では全感覚が障害されやすい.

●延髄病変では同側の顔,対側の上下肢の温痛覚低下で交叉性である.

●視床病変は全知覚障害だが,特に位置覚が障害される(足の位置がわからずリハ困難).内包後脚病変も全知覚障害である.皮質病変は知覚は障害されないが,立体覚が障害される.

●しびれ患者の2割が手根管症候群,2割が肘部管症候群であり,手術で治る.

●多発性神経炎の鑑別診断はDANG THERAPIST.

●腰椎椎間板ヘルニアはL4,L5,S1の異常を確認する.

女性の腹痛―「女性の腹痛=婦人科医」ではない

著者: 名郷直樹

ページ範囲:P.712 - P.715

ポイント

●消化器専門医,婦人科専門医はいるが,腹痛専門医という人はいない.

●最初に腹痛患者に向き合った医師の役割が重要である.

●診断は結果オーライでなく,プロセスが大事.

●筋性防御のない反跳痛の強い下腹部痛は,婦人科疾患を考える.

急性腹症―「腹痛=外科医」ではない

著者: 今明秀

ページ範囲:P.717 - P.720

ポイント

●腹痛をみたら,内臓痛か体性痛か区別する.

●まず五大疾患の急性虫垂炎,胆嚢炎,イレウス,消化管穿孔腹膜炎,膵炎を考える.

●急性虫垂炎は右下腹部に圧痛がないこともある.

●パンツを下げないと大腿ヘルニアを見逃す.

●“デクビタス”撮影でfree airを見つける.

内科エマージェンシーのデータ解釈―確実なデータ解釈が的確な治療に結びつく

腎機能異常をどうする?―君は腎機能異常に対処できるか?

著者: 茂木恒俊 ,   井村洋

ページ範囲:P.721 - P.723

ポイント

●高齢者は正常クレアチニンでも侮ってはいけない.クレアチニンクリアランスを考える癖をつける.

●高BUN血症は腎機能障害だけではない.BUNと一緒にクレアチニンもチェックする.

●腎不全の原因検索は腎後性から行う.

肝機能異常をどうする?―君は肝機能異常に対処できるか?

著者: 福冨崇能 ,   徳松誠 ,   壁村哲平

ページ範囲:P.725 - P.728

ポイント

●肝機能異常の発生機序について理解する.

●肝機能異常をみた際,どのような病態を鑑別診断に挙げ,さらに必要となる検査は何かを理解する.

電解質これだけは

著者: 大谷典生

ページ範囲:P.730 - P.734

ポイント

●K値の異常を認めたら,直ちに十二誘導心電図検査を行う.

●高K血症を認めたら,まずCa製剤投与を行う.

●低Na血症の補正は0.5mEq/l/hr(12mEq/l/day) 以下の速度で行う.

●高Na血症のアプローチは,体水分量の評価が最初.

●高Ca血症の原因は,悪性腫瘍・副甲状腺機能亢進症が大半である.

酸塩基平衡障害読解法―君は複合する酸塩基平衡障害を読みとれるか?

著者: 田中和豊

ページ範囲:P.736 - P.741

ポイント

●acidemia,alkalemiaとacidosis,alkalosisの相違を理解する.

●酸塩基平衡障害が単一なのか複合するのかを識別するために代償反応の計算式を用いる.

●隠された酸塩基平衡障害の判読には,アニオン・ギャップ(AG)と補正HCO3-が有効である.

●複合する酸塩基平衡障害を正確に読み取れれば,病態のより正確な把握が可能となる.

致死性不整脈の克服―不整脈を見て逃げるな!

著者: 杉山裕章 ,   山下武志

ページ範囲:P.743 - P.747

ポイント

●救急現場における不整脈では,心電図の正しい診断よりも患者を治すことが大事.

●心停止の不整脈は専門を問わず,すべての内科医が対処可能であるべき.

●器質的心疾患を有する低心機能患者での不整脈は,循環器専門医へのコンサルトが必須.

●上室性頻拍のなかにも緊急治療を要すべき状況がある.

1枚の心電図

著者: 林寛之

ページ範囲:P.748 - P.753

ポイント

●急性心筋梗塞の非典型心電図を知っておく.

●高カリウム血症は心電図をみて治療開始を決定する.

●QT延長を見落とさない.

●Brugada症候群,Wellen症候群の心電図を知ろう.

治療―生死を分ける治療介入

抗菌薬を使い分けよ

著者: 大野博司

ページ範囲:P.754 - P.758

ポイント

●抗菌薬のスペクトラムを理解して使い分ける.

●救急の現場で,①生死を分ける感染症か,②待てる感染症かを常に意識する.

●迅速な対応を必要とする生死を分ける感染症に対して,常にバイタルサインを大切にする.

●生死を分ける感染症に対して,①抗菌薬投与のみか,②抗菌薬投与に加え外科的ドレナージが必要かどうかを常に意識する.

●生死を分ける感染症に対して,抗菌薬投与に加え血行動態を安定させることにも集中する.

ステロイドを必要とする感染症―「困ったときのステロイド」では,困ります

著者: 岩田健太郎

ページ範囲:P.760 - P.763

ポイント

●ほとんどの感染症にステロイドは必要ない.特に診断が確定していないときに安易にステロイドを用いてはならない.

●低酸素血症を伴うカリニ肺炎(ニューモシスチス肺炎)には抗菌薬とともにステロイドを併用する.

●細菌性髄膜炎には抗菌薬処方「前」にデキサメタゾンを用いる.

●結核でステロイドを使うのは,心外膜炎と髄膜炎のみである.

●ARDSでは,ステロイドを使用しないのが原則である.

輸血の適応を知れ

著者: 萩原栄一郎 ,   箕輪良行

ページ範囲:P.764 - P.767

ポイント

●輸血療法は成分輸血が原則である.

●赤血球濃厚液1単位の投与により,Hb値は0.6~0.8g上昇する.

●新鮮凍結血漿の適応は(一部の症例を除き)凝固因子の補充に限る.

●血小板が5×104l以上では,血小板輸血が必要となることはない.

●ABO血液型を判定する時間的余裕がない緊急時には,例外的にO型赤血球を使用する.

●急速大量輸血は加温して行い,低体温を防ぐ.

人工呼吸器を使いこなせ

著者: 福家伸夫

ページ範囲:P.768 - P.771

ポイント

●急性呼吸不全では早めに人工呼吸を行う.

●ガス交換能不全型の呼吸不全ではPaCO2は高くなく,むしろ低めである.

●フルストマックでの挿管時には輪状軟骨圧迫を行う.

●ガス交換不全か換気不全かで,人工呼吸様式の選択は異なる.

●抜管時にはマンパワーも含め,再挿管の用意をしておく.

ペースメーカーの適応を知れ!

著者: 西原崇創

ページ範囲:P.772 - P.776

ポイント

●適応となりうる患者背景を予測・念頭におきながら,常にその可能性を考慮する.

●体外式経皮ペーシングおよび経静脈式ペーシングは臨床上重要である.

●asystole(心静止)では体外式経皮ペーシングの適応はない.

●すべての徐脈が一時ペーシングの適応になるわけではない.

透析導入を判断しろ

著者: 金史英 ,   菊野隆明 ,   猪芳亮

ページ範囲:P.778 - P.780

ポイント

●血液浄化方法の選択は除去目的物質の分子量によって規定される.

●急性腎不全の主な透析適応は水・カリウム(K),HCO3-の制御不能か尿毒症症状である.

●急性薬物中毒の血液浄化適応は致命的中毒か重篤な合併症である.

座談会

どうする?内科エマージェンシー

著者: 田中和豊 ,   井村洋 ,   大野博司 ,   冨岡譲二

ページ範囲:P.782 - P.793

 「飛行機の中で急患が発生したときに,きちんと対応できるような医師を育ててほしい」,2004年に新医師臨床研修制度が創設された際に,強調された視点の1つである.社会は,すべての医師に内科エマージェンシーへの対応を期待しているが,そのような能力を備えた医師の育成にしても,各施設における診療体制にしても十分とは言いがたいのが現実だ.

 本特集のエディターである田中和豊氏の司会のもと,内科エマージェンシーの診療・教育に携わる気鋭の医師にお集まりいただき,内科エマージェンシー診療・教育の現状と今後の展望についてお話いただいた.

連載 聖路加Common Diseaseカンファレンス・1【新連載】

あなたは貧血を的確に診断できますか?

著者: 岡田定

ページ範囲:P.800 - P.805

はじめに

 聖路加Common Diseaseカンファレンスとは,聖路加国際病院内科で2006年11月から始まった新カンファレンスである.

 稀な疾患や複雑な疾患の検討ではなく,比較的ありふれた疾患(common disease)を複数例で検討しようというカンファレンスである.ありふれた疾患に迅速に的確なアプローチができる“反射神経”を養うことを意図している.11の専門分野(循環器,消化器,呼吸器,内分泌,神経,腎臓,感染症,膠原病,血液,一般,心療)の専門医が毎月の持ち回りで,指導医が研修医と質疑応答を繰り返す.それを誌上で再現したのが,今回の連載である.

 「○○の診断 まずここを押さえよう」で始まる.そして「指導医と研修医の質疑応答による症例検討」と「症例から学ぼう」.これを複数症例で繰り返し,最後に「○○の診断 ここがポイント」でまとめる.

 それではさっそく,聖路加Common Diseaseカンファレンスを始めよう.第1回目の疾患は「貧血」である.

Case Study 診断に至る過程・8

意外な関係

著者: 松村正巳 ,  

ページ範囲:P.806 - P.810

病歴&身体所見

63歳,男性

主 訴:血痰,関節炎

現病歴:約11カ月前から,朝の洗面時に痰にわずかに血が混じるようになった.4カ月前からは手,膝,足関節炎が出現し,近医で加療されたが症状は改善しなかった.また30分あまり持続する,朝の手のこわばり感もあるという.明らかな喀血のエピソードはなく,症状が良くならないため受診した.

既往歴:特記事項なし.

家族歴:特記事項なし.

嗜 好:たばこは1日20本を43年間吸っている.アルコールは機会があれば飲む程度である.

職 業:農業.

常用薬はなく,ペットは飼っていない.

身体所見:体温36.5℃,血圧120/84mm Hg,脈拍84/分,整,呼吸数16/分.快活に話をされる.皮疹,リンパ節腫脹なし.両手に太鼓ばち状指を認める.関節の可動域に異常はないが,手関節,足関節に圧痛と軽度の腫脹を認める.DIP,PIP,MP関節に関節炎の所見はない.呼吸音,心音に異常なし.腹部に異常所見なし.

研修おたく海を渡る・16

臨床治験

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.811 - P.811

 今回は,臨床治験がいかに進められるかについて紹介したいと思います.

 「アメリカで使える薬が,なんで日本で使えへんねん」と患者さんから言われたことがある方もおられると思います.ぼくもアメリカに来て臨床治験の多さに驚きました.例えば写真1は,先日外来で撮ったものですが,現在うちの施設で行われている乳癌の治験の一覧です.乳癌の治験だけでこの数です.

外来研修医教育への招待・4

いよいよ研修医がやってきた―まずはじめの一歩

著者: 山本亮

ページ範囲:P.812 - P.817

 これまでの3回では,研修医が外来研修をやることの意義や目的,そして患者さんへの利点などをお話ししてきましたが,今回からは実際的なやり方についてお話ししていこうと思います.まずは,前回お話しした,外来研修の実際的な方法について,順を追ってお話ししていくことにします.前回の「ポイント」で示した「指導医の役割」を確認しながら進めていきましょう.

内科医が知っておきたいメンタルヘルスプロブレムへの対応・4

社会不安障害

著者: 中尾睦宏

ページ範囲:P.818 - P.822

 社会不安障害という用語は,耳慣れない先生がいらっしゃるかもしれない.「対人恐怖」とか「赤面恐怖」といった方が病態を連想しやすいであろう.しかしながら,厳密に定義すると社会不安障害は少し異なる病態なので気をつけたい.

日常診療の質を高める口腔の知識・4

歯垢はバイオフィルム

著者: 岸本裕充

ページ範囲:P.824 - P.827

 口内炎,ドライマウス,歯肉出血と,口腔に生じやすいトラブルについてお話を進めてきました.今月は,むし歯・歯周病の原因となり,さらに誤嚥性肺炎との関連も注目されている「歯垢」についてのお話です.

目でみるトレーニング

著者: 吉本満 ,   羽田憲彦 ,   井畑淳

ページ範囲:P.828 - P.834

書評

神経救急・集中治療ハンドブック―Critical Care Neurology

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.655 - P.655

 『神経救急・集中治療ハンドブック』が医学書院から出版された.本書の監修は,多年にわたり神経学の基礎的研究に従事され,幅広い臨床能力を有し,数多くの神経学の教科書を書かれてきた元東海大学医学部の神経学教授で,現在,国家公務員共済総合連合会立川病院長の篠原幸人先生である.

 米国やドイツには救急・集中治療室の患者のなかで,頻度が高く,予後不良な神経疾患患者に絞って診断と治療上の指針を書いたテキストはあるが,日本には,神経学の臨床能力に必ずしも通じない救命救急センターの医師やコメディカルのために,また救急医療を扱う脳外科医や一般内科医または開業医のために,特に神経学の専門知識の下にケアが行えるテキストは残念ながら今日まで出版されなかった.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.842 - P.842

●新医師臨床研修制度が必修化され,3年が経とうとしている.今回の特集テーマである「内科エマージェンシー」は,その診療・教育の充実が社会のセイフティネットの確保そのものに直結しており,「必修化」の目的そのものであるともいえる.

●しかし,さまざまな主訴・症状に対応し,そのなかに潜んでいる重症症例は見逃さないという,外来でのトレーニングは,研修医にとっては貴重な機会であるが,指導医にとっては非常に大きな責任と負荷を負うことを意味している.また,そのようなジェネラルな指導ができる指導医の数も限られている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

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55巻6号(2018年5月発行)

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55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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