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雑誌目次

雑誌文献

medicina44巻5号

2007年05月発行

雑誌目次

今月の主題 ウイルス肝炎 実地診療A to Z

著者: 石川哲也

ページ範囲:P.847 - P.847

 本特集号は,研修医,若手医師,および肝臓を専門としない内科の先生方が,ウイルス肝炎患者の診療に際して知っておくべきことを網羅的に取り上げ,実地診療に役立てていただくことを目的として企画しました.

 “medicina”では2004年10月号で柴田実先生が「肝疾患の疑問に答える」という形で,肝疾患全般にわたってのわかりやすくユニークな特集号を企画されましたが,今回はそれから2年半ぶりの肝疾患の特集号となります.

ウイルス肝炎の的確な診断のために

肝障害患者の診断の進め方

著者: 各務伸一 ,   石川哲也

ページ範囲:P.848 - P.851

ポイント

●肝機能異常のパターンにより,おおよその疾患のふるい分けが可能である.

●肝実質障害型では肝炎ウイルスマーカーの検索から始めるのが実践的である.

●受診のきっかけ,受診時の状態により,適切に検査,処置を選択する.

●肝障害の原因疾患のなかには予後のよくないもの,長期の管理を要するものもある.患者の心理状態に配慮するとともに,病状について正確な情報を伝えるように心がける.

医療面接と身体診察の方法

著者: 冨田栄一

ページ範囲:P.852 - P.855

ポイント

●個人的な病歴以外にも,家族歴,社会環境などの聴取も大切である.

●性交渉や家族歴などについては,プライバシーに配慮した問診を行う.

●肝炎ウイルスそれぞれの特徴に応じた病歴を聴取する必要がある.

●肝炎は感冒様症状を呈するので,感冒を診たときは肝炎を常に念頭に置く.

●肝炎は全身疾患と考えて,身体診察は系統的に全身を細かに注意深く観察する必要がある.

肝機能検査をどう解釈するか

著者: 中村郁夫

ページ範囲:P.856 - P.858

ポイント

●肝炎ウイルスの感染により,生体の免疫応答が惹起され,感染肝細胞の障害が生じる.

●血小板数・線維化マーカー・腹部超音波所見を総合的に評価することにより,肝線維化の程度を推定しうる.

●肝硬変症例における予備能は,蛋白合成能(アルブミン,コリンエステラーゼ,PT),ビリルビンなどにより評価される.

肝炎ウイルスマーカーの意義と選び方

著者: 安藤量基

ページ範囲:P.860 - P.863

ポイント

●核酸増幅法の導入により抗原の測定系の感度は高まったが,測定感度には限界があり,陰性であってもウイルス感染を否定はできない.

●肝炎ウイルスの感染でも一般のウイルス感染と同様,感染の急性期(急性肝炎)の診断にはIgM型の抗体の証明が有用であるが,一部例外もある.

●HBV(hepatitis B virus)やHCV(hepatitis C virus)感染ではgenotypeの違いにより,予後やIFN治療に対する反応性などが異なる.

画像診断からわかること

著者: 黒河内和貴

ページ範囲:P.864 - P.867

ポイント

●肝炎の肝障害度,進展度の評価には簡便に行える超音波(エコー)検査が重要である.

●正中縦走査・右肋間走査によって肝臓の大きさ・肝臓辺縁・内部エコーについて評価しよう.

●急性肝炎では肝の腫大,内部エコーの不均一化をきたし,胆嚢壁肥厚を認めることが多い.

●慢性肝炎から肝硬変へと肝機能障害が進んでいくに従って,肝辺縁が鈍角となり裏面が下方に凸となっていく.

肝生検からわかること

著者: 橋本直明 ,   松浦広 ,   光井洋

ページ範囲:P.868 - P.871

ポイント

●慢性肝炎の診断の確認,および炎症の程度(grading)と線維化の程度(staging)の評価が第一の目的.

●肝硬変を含む他疾患の除外も目的の1つ.

●より確かな診断のため,臨床情報を基に,病理医と直接対話を.

●侵襲のリスクを上回る場合にのみ適応.

●リスク対策をしっかり.

ウイルス肝炎の疫学

急性肝炎・劇症肝炎

著者: 持田智

ページ範囲:P.873 - P.876

ポイント

●急性肝炎重症型,劇症肝炎は急性肝炎と異なり,B型キャリア,自己免疫性,薬物性を含む.

●北海道地区では急性肝炎の成因としてE型肝炎が重要である.

●劇症肝炎は急性型の70%,亜急性型の30%がウイルス性である.

●劇症肝炎ではウイルス性の大部分はB型で,急性型は急性感染例,亜急性型はキャリア例が多い.

●急性肝炎,劇症肝炎では,成因不明例が少なからず存在する.

慢性肝炎・肝硬変・肝癌

著者: 田浦直太 ,   八橋弘

ページ範囲:P.878 - P.881

ポイント

●現在の日本には,HBVキャリアは110~140万人,HCVキャリアは150~190万人存在すると推定される.

●罹患率に関してHBVキャリアは50歳台に,HCVキャリアは60~70歳台に陽性率のピークがある.

●慢性肝疾患の約70%はHCV,約20%がHBVを原因とし,残り10%がその他である.

●日本における肝癌死亡者の約80%はHCV感染,約16%はHBV感染,残りの4%が原因不明と推定されている.

●HCV肝癌患者数はHCVキャリアの高齢化とともに増加している.

B型肝炎診療の実際

自然経過を理解する

著者: 神代龍吉

ページ範囲:P.882 - P.885

ポイント

●B型肝炎は乳幼児期に感染すれば慢性化,成人では急性肝炎に終わる.

●HBVだけでは肝炎は起こらず,HBVに対する免疫応答で肝炎が始まる.

●30歳までにseroconversionがみられ,それ以後はHBV複製が低下する.

●HBVによる肝細胞癌は,必ずしも肝炎や肝硬変の程度とは関連しない.

●B型急性肝炎の慢性化や劇症化にHBV genotypeが関係する.

抗ウイルス療法の対象となるのは?

著者: 上野義之 ,   長崎太 ,   下瀬川徹

ページ範囲:P.886 - P.888

ポイント

●B型肝炎に対する抗ウイルス療法として現在インターフェロンと核酸アナログがある.

●B型急性肝炎は自然治癒が高率に予測されるため,基本的には対症療法となるが,一部で劇症肝炎に進展する例や,慢性肝炎に移行する例が存在する.

●B型慢性肝炎では,その自然経過を十分に理解したうえで,抗ウイルス療法の対象,適応を慎重に決定すべきである.

●HBVキャリアの併発疾患に対する加療の際の肝炎増悪が知られており,十分に留意する必要がある.

●無症候性キャリアからの急性増悪や発癌の可能性があり,一般医と専門医との診療連携が重要である.

インターフェロンの使い方

著者: 南祐仁

ページ範囲:P.889 - P.891

ポイント

●B型肝炎治療の目標は,ウイルスの排除ではなく,ウイルス増殖の抑制による肝炎の沈静化である.

●30~35歳までは自然軽快する可能性があるので,原則経過観察する.

●長期にdrug freeで肝炎が沈静化することを目指すには,核酸アナログよりインターフェロンがよい.

●インターフェロン24週投与の成績は決して高いものではなく,QOLを損なうこともあるので,適応にあたり,十分な説明と同意が必要である.

核酸アナログの使い方

著者: 鈴木文孝

ページ範囲:P.892 - P.894

ポイント

●B型慢性肝炎に対するラミブジン治療では,治療開始時HBe抗原陰性例のほうが,HBe抗原陽性例よりも治療効果が高い.

●ラミブジン治療の問題点は,長期投与によって耐性ウイルスが出現し,肝炎の再燃が起こることである.

●アデフォビルは,ラミブジン耐性ウイルスに対して有効な治療薬である.

●エンテカビルは,核酸アナログ未使用例に対して有効な治療法である.核酸アナログ未使用例では,耐性ウイルス出現率はラミブジンよりも少ないといわれている.

C型肝炎診療の実際

自然経過を理解する

著者: 田中榮司

ページ範囲:P.895 - P.897

ポイント

●C型急性肝炎の劇症化はきわめて稀であるが,慢性化率は約70%と高い.

●C型慢性肝炎の病態は緩徐であり,線維化は10年で約1ステージ進行する.

●C型肝炎ウイルスの初感染から肝細胞癌合併までの期間は約30年である.

●近年,日本の肝細胞癌は増加傾向にあり,特に高齢者で増加している.

●肝線維化ステージとこれを反映する血小板数は肝発癌のよい指標である.

抗ウイルス療法の対象となるのは?

著者: 平松直樹 ,   林紀夫

ページ範囲:P.898 - P.902

ポイント

●高齢者,線維化進展例,ALT持続正常者ならびに合併症を有するC型慢性肝炎症例では,その治療適応の決定に考慮を要する.

●C型急性肝炎では,慢性化の抑止のために抗ウイルス療法の施行が有用である.

●C型肝炎に対する抗ウイルス療法の適応については,“NSE”に沿って考えるのが合理的である.

●肝疾患が予後規定因子であれば,原則として肝炎治療の必要性(Necessity of treatment)が生じる.

●抗ウイルス療法の副作用への対処(Safety of treatment)が可能であると判断でき,患者の承諾が得られれば,治療は可能となる.

●予測される治療効果(Efficacy of treatment)について患者に説明し,承諾が得られれば,実際に治療へと進む.

抗ウイルス療法の実際―PEG-IFN+リバビリン併用療法を中心に

著者: 朝比奈靖浩

ページ範囲:P.904 - P.909

ポイント

●IFNのペグ化により週1回の注射で血中濃度が維持されるようになった.

●PEG-IFNとリバビリンの併用48週の治療によりgenotype 1b型かつ高ウイルス量症例の約50%にウイルス学的著効(SVR)が得られる.

●わが国では,高齢者や女性におけるSVR率が低い.

●PEG-IFN+リバビリン併用療法では,治療開始後のHCV量のモニターが治療効果予測に有用である.

●血球系などの副作用に注意し,減量基準を遵守し安全な治療を心がけることが重要である.

除鉄療法の実際

著者: 矢野元義 ,   林久男

ページ範囲:P.910 - P.913

ポイント

●鉄はC型慢性肝炎の増悪因子の1つである.

●瀉血療法は除鉄治療のうち,最も簡便で有効な方法である.

●瀉血療法はC型慢性肝炎の補助療法の1つであり,根本治療ではない.

●血療法の長期効果として,組織学的進展も緩徐化される.

C型肝炎の合併症について

著者: 奥瀬千晃 ,   四柳宏

ページ範囲:P.914 - P.918

ポイント

●C型肝炎は肝臓以外の臓器および組織に多彩な肝外病変を合併する.

●C型肝炎ウイルス(HCV)は肝臓以外の臓器に感染し,増殖することが示唆されている.

●肝外病変の発症にはHCVに対する免疫反応を介した傷害の関与が示唆されている.

●肝外病変の治療においてインターフェロンを基盤とした抗ウイルス療法の有効性が示されている.

●HCV感染患者の診療においては肝外病変の合併を念頭におく必要がある.

その他 ウイルス肝炎診療において知っておくべきこと

A型肝炎について知っておくべきこと

著者: 豊田秀徳 ,   熊田卓

ページ範囲:P.920 - P.922

ポイント

●A型肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV)の経口感染により伝播する感染症である.

●初発症状としては,全身倦怠感・尿濃染などのほかに心窩部痛や右上腹部痛などがあり,時として胆道系疾患との鑑別を要する.

●診断はIgM型HAV抗体の検出による血清学的診断で行う.

●急性肝炎を生ずるが,慢性化はしない.

●わが国で以前は局地的な流行がみられたが,現在は稀である.

E型肝炎について知っておくべきこと

著者: 髭修平

ページ範囲:P.923 - P.925

ポイント

●「輸入感染症」以外に,わが国に「土着」したE型肝炎ウイルスにより発症する.

●ヒトと動物にともに発症する「人獣共通感染症(zoonosis)」として注目されている.

●ブタ・イノシシなどの肉・レバー・ホルモンなどの生食により感染する可能性がある.

●感染者は中高年の男性に多く,genotypeに地域性や重症度の差がみられる.

●急性肝炎の原因として,忘れずに鑑別疾患に挙げる必要がある.

慢性肝炎に対する肝庇護療法

著者: 広石和正 ,   江口潤一 ,   井廻道夫

ページ範囲:P.926 - P.928

ポイント

●肝炎ウイルスによる慢性肝炎において,第一の治療目標は,生体からの肝炎ウイルスの排除である.

●肝炎ウイルスが排除不可能である場合,肝炎の鎮静化,残存肝機能保護の目的で肝庇護薬が使用される.

●肝庇護薬により肝炎の鎮静化が可能ならば,肝硬変への移行や肝癌合併にも有効と考えられるが,効果には限界がある.

●難治性のウイルス肝炎では,肝庇護薬にてできるだけ肝機能を保ちつつ,新規抗ウイルス薬の開発を待つ.

肝硬変の治療

著者: 中尾春壽 ,   野尻俊輔 ,   城卓志

ページ範囲:P.930 - P.933

ポイント

●日常生活では肝予備能に応じた指導を行う.

●肝性脳症の予防や栄養改善にBCAA製剤やLESが有用である.

●腹水の治療は,減塩や薬物療法を段階的に施行し,難治性の場合は特殊療法を検討する.

●食道胃静脈瘤では肝予備能,静脈瘤の血行動態,全身状態に応じた治療法を選択する.

●B型肝硬変症には核酸アナログが有効であり今後はETVが第一選択薬となりうる.

●C型肝硬変症のIFN療法では副作用を考慮し,適応を慎重に検討する必要がある.

劇症肝炎の診断と治療

著者: 井戸章雄 ,   桶谷真 ,   坪内博仁

ページ範囲:P.934 - P.937

ポイント

●劇症肝炎は,発症から8週以内にプロトロンビン時間40%以下,昏睡II度以上の肝性脳症を生じる肝炎である.

●先行する肝疾患のないことが原則であるが,B型肝炎ウイルス無症候性キャリアの急性増悪例は劇症肝炎とする.

●遅発性肝不全(LOHF)は8~24週の間に昏睡II度以上の脳症が出現する肝不全である.

●劇症肝炎の診療では,救命率の高い生体肝移植の実施可能性をまず念頭に置く.

●内科的には,全身状態および合併症を厳重にモニタリングし,血液浄化療法を主体とした治療を行う.

肝炎ウイルスキャリアのフォローアップの仕方

著者: 宇都浩文 ,   熊谷公太郎

ページ範囲:P.938 - P.941

ポイント

●肝炎ウイルスキャリアは肝細胞癌の高危険群であり,注意深いフォローアップが必要.

●肝硬変への進展,発癌のリスクを考慮したフォローアップが重要である.

●HBVキャリアでは,HBV-DNA量とALT値がフォローアップに重要な検査である.

●HCVキャリアの発癌率は肝線維化の進行に伴って増加する.

肝炎ウイルスの感染予防と汚染事故への対応

著者: 伊藤圭一 ,   白木克哉

ページ範囲:P.942 - P.945

ポイント

●HAV,HEVは経口感染であり,流行地での一般的な経口感染予防が重要である.

●HBV感染ハイリスクグループはHBワクチンによる感染予防処置が重要である.

●HBV汚染した場合は,HB免疫グロブリン,HBワクチンによる処置が必要である.

●HBs抗原陽性の母親から出生した児は,HB免疫グロブリン,HBワクチンの投与が必要である.

●HCVは血液を介して感染し,一般的な血液汚染予防が重要であり,ワクチンなどの感染予防法は現在ない.

ウイルス肝炎の実地診療のために知っておくべきこと

診療に役立つガイドラインの集め方,活用法

著者: 柴田実

ページ範囲:P.946 - P.948

ポイント

●診療ガイドラインとは特定の臨床状況のもとで適切な判断や決断を下せることを支援する公的文書である.

●ガイドラインは比較的普遍的なクリニカルクエスチョンを扱うものであり,臨床現場で絶対に守らなくてはいけないという拘束性をもつものではない.

●診療ガイドラインにはいろいろなレベルがあり,単なるエクスパートオピニオン集からEBMの手法に則った信頼性の高いものまである.

インフォームド・コンセント―経過や予後をどう説明するか?

著者: 奥村明彦

ページ範囲:P.950 - P.953

ポイント

●B型・C型慢性肝炎の自然経過を十分に理解しておくことが重要である.

●行おうとする医療行為に伴うリスクとその頻度について十分に説明する必要がある.

●代替可能な医療,医療を行わない場合に起こりうる結果についても説明する.

●説明は,信頼できる最新の医学的知見を基にして行う.

開業医はどこまで診られるか

著者: 伊東和樹

ページ範囲:P.954 - P.956

ポイント

●慢性肝炎の外来管理は開業医向きの仕事

●症例の病態ごとに治療目標を決め,この目標を患者と共有

●患者の便益を第一に,病診連携を活用

●肝炎治療中も定期肝癌検診は必須

高次医療施設へのコンサルト・移送について

著者: 石上雅敏

ページ範囲:P.958 - P.961

ポイント

●本邦では健常者をドナーとした生体肝移植が大多数であることから,的確な移植時期の適応の判断が重要である.

●急性肝不全においては全例肝移植を念頭に置きつつ治療を進め,適切なタイミングを逃さないことが肝要である.

●肝硬変においてはその移植適応として1年程度の生命予後,あるいは合併症によるQOLの阻害の2つの方向性がある.

●肝癌においては,ベースの肝予備能が不良,肝予備能は比較的良好だが癌のコントロールが不十分になることが予想される場合の2つの方向性がある.

●移植後の癌再発の問題が不可避であるので,肝癌の移植適応については現在でもかなり議論が分かれる.

トピックス

HBV genotypeと臨床像,治療反応性

著者: 田中靖人 ,   溝上雅史

ページ範囲:P.962 - P.966

ポイント

●B型肝炎ウイルス(HBV)はA型からH型までの8つのgenotype(遺伝子型)に分類される.

●わが国のB型慢性肝炎において,HBV/Bは予後良好であるが,HBV/Cは予後不良である.

●B型急性肝炎においては,外国株(特に欧米型Ae)の割合が高くなってきている.

●HBV genotypeによりインターフェロン治療効果に差がみられる.

●ラミブジン治療による耐性株の出現頻度は,HBV/CのほうがHBV/Bより多い.

ウイルス性肝炎の新規治療法

著者: 村田一素

ページ範囲:P.968 - P.970

ポイント

●核酸アナログ製剤の出現によりHBVのcontrolは良好となった.

●長期の核酸アナログ製剤の投与は耐性HBV変異株の出現を助長する.

●NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬の単独投与にてHCV量が激減する.

●HBVおよびHCVの治療は発展段階であり今後の研究が期待される.

座談会

外来で診るウイルス肝炎―効果的な病診連携のために

著者: 八橋弘 ,   伊東和樹 ,   柴田実 ,   石川哲也

ページ範囲:P.972 - P.983

ウイルス肝炎に基づく肝硬変・肝臓癌による死亡を減少させるためには,病院と診療所,専門医と一般医,入院治療と外来診療の連携が欠かせない.現在の医療環境では外来でどこまでウイルス肝炎を診られるのか?そのツールとしてのガイドラインの問題点は?効果的な病診連携には何が必要なのか?各現場の第一線に立つ臨床医に語っていただく.

連載 聖路加Common Diseaseカンファレンス・2

あなたは脳梗塞を的確に診断できますか?

著者: 堀之内秀仁 ,   木村哲也

ページ範囲:P.990 - P.996

脳梗塞の診断 まずここを押さえよう
①発症パターン,症状の進行の有無から成因を推測し,適切な初期治療を行う.
②明らかな脱落症状(片麻痺,感覚障害,半盲,共同偏視,運動失調,失語,失認,失行,脳神経麻痺)を持つものを見逃さない.
③性格や情動の変化,記憶障害,自発性の低下など軽度の高次機能障害のみで発症することもある.

研修おたく海を渡る・17

相思相愛

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.997 - P.997

 3回続けてがん診療について書こうとも思ったのですが,今(2007年2月)は,レジデント,フェロー採用時期の真っ最中です.今回はリクルートする側から書いてみます.

 プログラムに合った人を採るために,どのプログラムも採用に時間と労力をかなりさきます.プログラムコーディネーターと呼ばれる専属の秘書さんが,採用したレジデントの世話から,リクルート活動まで担当するのです.ERAS(http://www.aamc.org/students/eras/start.htm)というオンラインのシステムが導入されるようになり,紙を扱う煩雑さは減ったものの,統一の願書をクリックひとつで(お金さえ払えば)どのプログラムにも応募できるので,応募者数は増える傾向にあり,まだまだ面倒なようです.

Case Study 診断に至る過程・9

優先すべきこと

著者: 松村正巳 ,  

ページ範囲:P.998 - P.1002

病歴&身体所見

29歳,女性

主 訴:発熱

現病歴:生来健康であったが,3週間前から,37~39℃の発熱が毎晩出るようになった.5週間前には,4日間の発熱のエピソードがあり,このときは,同時に子どもも発熱しており,子どもは耳下腺炎と診断されていた.頭痛,咳,関節痛,消化器症状はなく,この3週間で体重が52kgから50 kgに減ったという.

既往歴:特記事項なし.小さい頃,耳下腺炎になったかどうかはわからない.

家族歴:特記事項なし.

嗜 好:たばこは1日10本吸う.アルコールは飲まない.

 常用薬はなく,最近の旅行歴,発熱している人との接触歴はない.ペットは飼っていない.主婦である.

身体所見:血圧90/50mmHg,脈拍94/分・整,体温37.8℃,呼吸数18/分.皮疹はなし.比較的元気にみえる.口腔内,咽頭に異常所見なし.右後頸部に2つ,左後頸部に1つ,右側腋窩に2つ,両側鼠径部に2つ,リンパ節を触れる.どれも径が0.5~2.0cmで,軽度の圧痛を認める.周囲との癒着はないが,消しゴムくらいの硬さである.胸部に異常所見なし.腹部で肝臓,脾臓は触れない.神経学的所見に異常はなし.

目でみるトレーニング

著者: 酒井リカ ,   岩崎靖 ,   松木薗和也

ページ範囲:P.1004 - P.1009

外来研修医教育への招待・5

こんな場合はどうする? その1

著者: 大和康彦 ,   川尻宏昭

ページ範囲:P.1010 - P.1015

 いよいよ春になり,私たちの病院にも多くの初期研修医が入ってくる時期になりました.医師国家試験に合格し,そのために修得?した知識は豊富で妙な自信をもち,やる気に満ち溢れている研修医.臨床の場でガチガチに緊張している研修医.全く学生気分の抜けない研修医…….後輩ができ,しっかりしてきたように見える2年目研修医.そんな研修医たちを,時に温かく,時に厳しく見守っているコメディカルスタッフ.また「新人が入って1から教えるのは大変」とかなり憂うつ?な指導医.

 私たちの病院では,総合外来研修を初期研修医1年目の初めより開始しており,研修医教育の重要な柱の1つとして捉えています.これまでの4回では,研修医が外来研修を行う意義や目的,成人学習・教育として実践の場で役に立つと思われる考え方や手法,そして私たちの病院で行っている外来研修の実際的な方法についてお話ししてきました.今回から数回にわたり,前回お話した外来研修の実際的な方法を,いくつかのケースにあてはめ,「軸」というキーワードを意識しつつ,御紹介してゆきたいと思います.

日常診療の質を高める口腔の知識・5

誤嚥性肺炎と口腔ケア

著者: 岸本裕充

ページ範囲:P.1018 - P.1021

 肺炎はわが国の全死亡原因の第4位ですが,肺炎が原因で死亡する患者の9割以上が高齢者です.最近,肺炎の予防に口腔ケアが有効との報告が相次ぎ,口腔ケアが俄然注目を浴びるようになりました.

内科医が知っておきたいメンタルヘルスプロブレムへの対応・5

神経症と心身症

著者: 中尾睦宏

ページ範囲:P.1022 - P.1025

 本特集も折り返し点に差しかかった.これまで,主要なメンタルヘルスプロブレムとして「うつ」と「不安」に着目し,うつ病(またはうつ状態),不眠,不安障害(パニック障害,社会不安障害)への対応について整理してきた.今回は神経症と心身症という2つの病態について考えてみる.どちらも心身の不調を前面にして内科を受診することが多いが,その病態は異なるので注意したい.

書評

IPMN/MCN国際診療ガイドライン―日本語版・解説

著者: 真口宏介

ページ範囲:P.885 - P.885

 International Consensus Guidelines for Management of Intraductal Papillary Mucinous Neoplasms(IPMN)and Mucinous Cystic Neoplasms(MCN)of the Pancreas(Pancreatology 6:17-32, 2006)の日本語翻訳版が出版された.粘液産生膵癌として本邦から発信され,その後,粘液産生膵腫瘍,“いわゆる”粘液産生膵腫瘍,膵管内乳頭腫瘍,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)など,さまざまな用語で呼ばれた疾患が「IPMN」として世界的に共通の疾患名で呼称されるようになり,また「MCN」が「IPMN」とは違う疾患群であることがきちんと整理された意義はきわめて大きい.さらに本書では,英文からは読み取り難い微妙なニュアンスを見事に日本語で表現し,理解を深めるために画像を追加した絶妙な構成には,国内委員として参加させていただいた者として,あらためて訳者の田中教授に敬意を表する次第である.

 本書の特徴は,設問に対して回答する形式を採用しているため,飽きることなく熟読しやすい.また,途中で疑問が浮かび,読み返しが必要な場合にも,読みたい部分を設問から探すことができる.さらに,後半には英文報告がそのまま掲載されているため,英語による表記や表現の勉強にも非常に役に立つ.

内科レジデントの鉄則

著者: 市村公一

ページ範囲:P.953 - P.953

 卒後研修必修化を翌年に控えた2003年,全国の臨床研修病院を回って研修の実態を調査したが,最初に訪問した聖路加国際病院の印象は非常に鮮烈だった.昼食時のセミナーだけでなく,朝夕の回診でも上級医から研修医に次々と質問が飛び,研修医がポンポン答える.研修医も疑問に思ったことは遠慮なくどんどん質問する.大学病院あたりなら「こんなこと聞いたら叱られるんじゃないだろうか」と躊躇する研修医が普通ではないかと思うが,ここでは知らないことを知らないままにやり過ごすのが最大の罪といわんばかりの雰囲気なのだ.上級医も「後で自分で本を読んでおけ」とは言わない.その場で教える.

 全国の25の病院を回って,誰が入っても本人の努力の如何にかかわらず一定のレベルの実力をつけさせる研修が,特定の医師の努力によるのでなく,病院のシステムとしてできあがっているのは,ごくわずかな病院しかないと感じたのだが,その最大の秘訣がこうした「耳学問」の徹底にある.それを裏付けるかのように,意外にも聖路加国際病院では研修医控室にごくわずかな本しかなかった.「『ワシントンマニュアル』は指導医の頭の中に全部入っている.研修医は自分で読まなくても指導医に聞けばいい」とは沖縄県立中部病院の元院長で群星沖縄プロジェクトリーダーの宮城征四郎先生の名言だが,繰り返し耳学問で教わり,かつ多くの症例を通じて教わったことを実地に経験を重ねることが,落ちこぼれを作らない研修医の最も肝心な点だと痛感した.

レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル

著者: 森本佳和

ページ範囲:P.1016 - P.1016

 本書の著者である岡田氏はニューヨークで内科研修,Yale大学でリウマチ・アレルギー臨床免疫科のフェローシップを修了され,米国の内科学・リウマチ学・アレルギー免疫学の3つの専門医をもっておられる.その後,フランスの大学関連病院にて8年間の臨床および医学教育の経験をもたれ,現在は聖路加国際病院に勤務しておられる.アレルギーは,日本-米国-ヨーロッパで大きな違いのみられる医療分野の一つである.アレルゲンに対する減感作療法一つを比較しても,あまり一般的に行われない日本,皮下投与による減感作療法を中心とする米国,舌下投与による減感作療法を積極的に取り入れるヨーロッパ,という具合である.これら異なる医療地域をトップレベルの医療機関で実際に臨床医療を経験してこられた岡田氏が書かれた書物であり,その価値は高い.

 さて,本書を手にし,ページをめくると,そのギッチリと詰め込まれた内容に手に汗をかく思いさえする.内容は新しく,多くのエビデンスをもとに著者である岡田氏の経験や知識に触れることができる.米国におけるアレルギー免疫学の専門臨床トレーニング(フェローシップ)は最低2年間であり,筆者自身その教職にあるが,本書にある内容を身につけて実践できれば,アレルギー疾患に関してはそれで十分ではないかとさえ感じさせられる.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.1034 - P.1034

●新年度が始まってはや一月,この4月に職場や部署を異動された方々は,引き継ぎを終え,新しい席からの眺めにも慣れて,ようやく仕事に身が入るという頃でしょうか.新たに社会に入られた方々も,新人研修や挨拶回りを済ませ,本格的に業務に取り組み始める頃.研修医の先生方では,いよいよ5月から病棟での研修に入られるという方も多いかと思います.

●皐月(さつき)の語源は一説には,苗床から早苗(さなえ)を田に植えかえる月「早苗月」が短くなったもの,であるとか.用水路の淀みが流れ去り,田圃に張られた水に陽光が煌くこの季節は,育苗や田起こしなどの準備を経て,いよいよ田植えを行う,本格的なスタートを切る季節という印象があります.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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