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書評
標準法医学・医事法―第6版
著者: 近藤稔和1
所属機関: 1和歌山県立医大・法医学
ページ範囲:P.1081 - P.1081
文献購入ページに移動 評者が医学生として法医学を学んでいた頃(決して熱心な学生ではなかった),法医学の教科書といえば限られたものだけで,その一つが「標準法医学・医事法」であった.また,当時は法医学に対する世間の認識も低いものであったが,この20年間,医師,医学生を対象とする専門書はもとより,一般の人を対象とした法医学に関する書物,小説,マンガ,さらにはテレビドラマが放映されるなど,法医学が幅広く認知されるようになったことは言うまでもない.このことはわれわれ法医学を専門とするものにとっては喜ばしいことではあるが,その反面,小説,マンガ,ドラマなどでは,法医学が事件解決のための唯一の手段であるかのように描かれすぎていると感じているのは,評者だけではないはずである.
法医学は,単なる基礎医学ではなく,臨床医学と同様に応用医学に大別され,法治国家においては必要不可欠な学問である.本書において「法医学とは法律上問題となる医学的事項を検査,研究し,それによって問題点を解明して,法的な解決に寄与することを目的とする医学である」と定義されるように,決して法医学は犯罪捜査のための一手段ではない.現代の医学・医療の場において,外因死,突然死や医療事故など,法医学が担う役割は,ひと昔前とは比較にならないほど大きくなっている.したがって,法医学の講義で,評者は学生に対して「どのような分野を専攻しようとも,医師である限りは法医学的知識をもつことは医師としての最低限のマナーである」と,常々言っている.そういう観点からみると,本書は「生体に関する法医学」と「死体に関する法医学」の章立てがあり,法医学が単に「死」を対象とする医学ではないことを示している.第5版が発行されてから6年の月日が経ち,第6版では各分野についての基礎知識から最新の知見にいたるまで網羅されていることはもちろんのこと,各項目の始めにあった「学習目標」に加えて「観察のポイント」または「検査のポイント」が新設され,それぞれの項目における重要な点がより明確にされている.さらに,欄外コラムとして「SIDE MEMO」も新設されるなど,学生にとって非常に親しみやすく,使いやすい教科書となっている.また,学生のみならず,研修医や臨床医にとっても,実際の医療現場で法医学の知識が必要となった時や,死亡診断書(死体検案書)の書き方に迷った時の助け船としても重宝するものと思われる.月並みではあるが,このように本書は,法医学については医学生,医師を問わず,必携の一冊である.
法医学は,単なる基礎医学ではなく,臨床医学と同様に応用医学に大別され,法治国家においては必要不可欠な学問である.本書において「法医学とは法律上問題となる医学的事項を検査,研究し,それによって問題点を解明して,法的な解決に寄与することを目的とする医学である」と定義されるように,決して法医学は犯罪捜査のための一手段ではない.現代の医学・医療の場において,外因死,突然死や医療事故など,法医学が担う役割は,ひと昔前とは比較にならないほど大きくなっている.したがって,法医学の講義で,評者は学生に対して「どのような分野を専攻しようとも,医師である限りは法医学的知識をもつことは医師としての最低限のマナーである」と,常々言っている.そういう観点からみると,本書は「生体に関する法医学」と「死体に関する法医学」の章立てがあり,法医学が単に「死」を対象とする医学ではないことを示している.第5版が発行されてから6年の月日が経ち,第6版では各分野についての基礎知識から最新の知見にいたるまで網羅されていることはもちろんのこと,各項目の始めにあった「学習目標」に加えて「観察のポイント」または「検査のポイント」が新設され,それぞれの項目における重要な点がより明確にされている.さらに,欄外コラムとして「SIDE MEMO」も新設されるなど,学生にとって非常に親しみやすく,使いやすい教科書となっている.また,学生のみならず,研修医や臨床医にとっても,実際の医療現場で法医学の知識が必要となった時や,死亡診断書(死体検案書)の書き方に迷った時の助け船としても重宝するものと思われる.月並みではあるが,このように本書は,法医学については医学生,医師を問わず,必携の一冊である.
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