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文献詳細

雑誌文献

medicina44巻7号

2007年07月発行

文献概要

今月の主題 内科医が診る睡眠障害 Q&A―睡眠についての疑問に答える

どんな枕が良いか?

著者: 小林敏孝1

所属機関: 1足利工業大学付属睡眠科学センター

ページ範囲:P.1367 - P.1367

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 旅先で「枕が違うと気になって,よく寝られない」という話をよく耳にする.快適な睡眠を得るには,枕は大切なものである.いつでもどこでもよく寝られる人にとっては,枕はそれほど大きな問題ではない.しかし,加齢やストレスなどによって睡眠の質が低下している人にとっては,枕の性能は大きな関心事である.

 枕と睡眠の関係はいまだ科学的によく理解されていないが,枕の基本的な機能としては,睡眠を促し維持できるような寝姿勢を確保することである.最適な寝姿勢とは,立位の姿勢がつくる頭部と身体の関係をベッドの上で実現でき,頭部を支える筋肉の緊張が大きく緩和されることが望ましい.この寝姿勢は背骨などの骨格系に負荷が加わらないし,気道が確保できるので,脳を覚醒させるような感覚刺激が大きく抑制される.さらに,寝つきが悪いとき,また夜中に目が覚てしまって再入眠するときに,枕が果たす心理的な役割は非常に大きい.枕に頭を横たえたときに,仰臥位でも側臥位でも,自分とって心地よい寝姿勢になったときに,頭部の安定感と身体全体で感じられる安心感が重要である.枕の形状,硬さ,清潔感を漂わす香りや色,枕カバーの肌触りなどはとくに重要であり,これらがうまく組み合わされると「よく寝られそうだ!」という感触が生まれる.この感触が入眠期や中途覚醒後の再入眠のときには特に重要であろう.また,睡眠という意識状態は,運動系が極端に抑制されるので,身体が一定の姿勢でかなりの時間保持される.これが悪く働くと「寝違え」となり,朝きた起きたときに首が痛いといったことになる.一方,良く働くと整体と同じ機能をはたすことになる.枕を変えてから腰や背中の痛みがやわらいだといった話は,枕が寝姿勢の保持に重要な役割を果たしているので,これが整体の機能を発揮しているものと考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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