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雑誌目次

雑誌文献

medicina44巻9号

2007年09月発行

雑誌目次

今月の主題 消化器薬の使い方Update

著者: 上野文昭

ページ範囲:P.1647 - P.1647

 本号では,これまで何度か本誌の主題として取り上げられてきた「消化器薬の使い方」をupdateします.前回の企画から6年以上経過し,その間に開発された新薬や適応追加が承認された薬剤は少なくありません.また,わが国の診療にもEBMの概念が徐々に浸透し,経験だけで用いられていた薬剤は徐々に淘汰され,明確なエビデンスのある薬剤が重視されるようになってきました.

 薬のエビデンスを知るうえで最も重要なことは,その薬剤が何を改善する効果があるのかをピンポイントに把握することです.漠然と適応症を知るだけでは不十分で,症状を改善するのか,検査値や画像所見を改善するのか,あるいは予後を改善するのかなどを的確にとらえる必要があります.もちろん,患者アウトカムに直結するエンドポイントが重要であることは言うまでもありません.

今日の消化器治療薬

H2受容体拮抗薬

著者: 武田宏司 ,   浅香正博

ページ範囲:P.1648 - P.1652

ポイント

●H2受容体拮抗薬は,ヒスタミンH2受容体を特異的に,競合的に阻害し,酸分泌を抑制する.

●H2受容体拮抗薬の酸分泌抑制効果は,特に夜間に強く認められる.

●H2受容体拮抗薬は,消化性潰瘍の初期治療および維持療法,胃食道逆流症,機能性ディスペプシアの治療に用いられている.

●長期投与においても重篤な副作用はきわめて少ないが,腎機能低下例では排泄遅延により副作用を惹起する可能性がある.

プロトンポンプ阻害薬

著者: 春間賢 ,   鎌田智有 ,   塩谷昭子

ページ範囲:P.1654 - P.1656

ポイント

●最も強い胃酸分泌抑制効果が得られる.

●初期治療としては消化性潰瘍,逆流性食道炎,Helicobacter pylori除菌,非びらん性胃食道逆流症(NERD)が適応疾患である.

●再燃・再発を繰り返す逆流性食道炎の維持療法に用いられる.

消化管運動改善薬

著者: 茂木文孝 ,   草野元康

ページ範囲:P.1657 - P.1661

ポイント

●副交感神経にはドパミンやセロトニンの受容体が,消化管平滑筋にはオピオイド受容体が存在する.

●これらの受容体を刺激あるいは拮抗することで,消化管運動を協調的に調節する薬剤が多い.

●消化管の機能的疾患にまで医療の対象が広まっており,消化管運動改善薬の役割は大きい.

便秘治療薬

著者: 谷口誠

ページ範囲:P.1662 - P.1664

ポイント

●病歴聴取の際は,既往歴,合併症,内服薬,食事内容,排便習慣,既往の腸検査結果などに注意する.

●下剤を使用する前に,必ず診察(直腸診を含む),X線検査などで器質的疾患の除外をする.

●下剤を処方する場合は,患者の病態,下剤の作用機序,副作用・禁忌を考慮し,少量から開始し,反応をみながら漸増する.

●便秘治療のエンドポイントは,腹部膨満などの症状改善である.

止痢整腸薬

著者: 上田俊秀 ,   三浦総一郎

ページ範囲:P.1666 - P.1667

ポイント

●作用機序の異なる止痢薬を組み合わせると効果的である.

●急性の感染性腸炎が疑われる場合,止痢薬の使用は最小限度にとどめる.

抗肝炎ウイルス薬

著者: 山田春木 ,   三浦英明

ページ範囲:P.1668 - P.1670

ポイント

●抗ウイルス療法の進歩により,B型肝炎では肝炎正常化,C型肝炎では治癒が十分期待できる時代となってきた.

その他の肝疾患治療薬

著者: 柴田実

ページ範囲:P.1672 - P.1674

ポイント

●その他の肝疾患治療薬は,抗肝炎ウイルス薬以外の肝病変治療薬と肝疾患の合併症治療薬に分けられる.

●肝病変治療薬には,肝庇護薬,免疫抑制薬,特異的治療薬,新しく期待される肝臓用剤などがある.

●合併症治療薬には,腹水治療薬,肝性脳症治療薬,低アルブミン血症改善薬,高アンモニア血症治療薬,門脈圧亢進症治療薬,凝固障害治療薬などがある.

膵疾患(急性膵炎・慢性膵炎)治療薬

著者: 丹藤雄介 ,   松橋有紀 ,   中村光男

ページ範囲:P.1675 - P.1677

ポイント

●急性膵炎では,絶飲食,補液,疼痛管理を確実に行ったうえで,薬物療法を検討する.

●蛋白分解酵素阻害薬の効果はエビデンスに乏しいが,経験的に広く使用されている.

●膵性消化吸収不良を治療するためには,保険適用を超える量の酵素薬投与も必要である.

消化管内視鏡検査の前投薬・前処置薬

著者: 町田マキヨ ,   佐竹儀治

ページ範囲:P.1678 - P.1681

ポイント

●前処置は,被検者の排便状況を含めた問診,腹部触診,その他の検査のうえで被検者ごとにきめ細かく決定すべきであって,安易にマニュアルに従えばいいというものではない.

●前処置を実施中に腹痛や嘔吐が出現した場合には,必ず診察のうえで前処置を続行するかどうか決定し,必要に応じた処置をとる.

●前投薬は優れた検査のためには必須であるが,使用する以上は被検者の観察を怠らず,呼吸抑制などが生じた場合には適切な処置をとる.

消化器疾患の薬物治療

胃食道逆流症(GERD)

著者: 富田寿彦 ,   三輪洋人

ページ範囲:P.1682 - P.1684

ポイント

●胃食道逆流症(GERD)とは,胃内容物が食道内に逆流し,身体的合併症や健康な生活を障害した状態を指している.

●GERDの初期治療には,従来のステップアップ療法よりプロトンポンプ阻害薬(PPI)が優れている.

●GERDの維持療法に関しても明らかにPPIのほうがH2受容体拮抗薬(H2RA)よりも優れた治療効果を示しており,費用対効果にも優れている.

消化性潰瘍

著者: 高木敦司

ページ範囲:P.1685 - P.1687

ポイント

Helicobacter pylori除菌治療に成功すると,潰瘍再発が有意に抑制される.

●3剤療法は,プロトンポンプ阻害薬(PPI),アモキシシリンおよびクラリスロマイシンの組み合わせが有効である.

●除菌療法の適応がない場合は,潰瘍再発予防のための維持療法が有意に再発を抑制する.

薬剤起因性消化管粘膜傷害

著者: 東健 ,   森田圭紀 ,   吉田優 ,   久津見弘 ,   井口秀人

ページ範囲:P.1688 - P.1691

ポイント

●薬剤起因性消化管粘膜傷害において,非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)によるものが最も多い.

●NSAID潰瘍の治療は,まずNSAIDを可能なら中止し,通常の潰瘍治療を行う.NSAIDの中止が不可能ならば,プロトンポンプ阻害薬(PPI)あるいはプロスタグランジン(PG)製剤により治療を行う.

●NSAID潰瘍の予防には,PPI,PG製剤,高用量H2受容体拮抗薬(H2RA)を使用することが推奨されているが,保険診療では適応が認められていない.

消化管出血

著者: 吉田篤史 ,   上野文昭

ページ範囲:P.1692 - P.1695

ポイント

●臨床上問題となる原因疾患として,消化性潰瘍,食道・胃静脈瘤破裂が重要である.

●全身状態の管理と,必要に応じて速やかな内視鏡診断・治療を優先させる.

●多種の治療薬があるが,薬物治療の役割は補助的なことが多い.

過敏性腸症候群(IBS)

著者: 正田良介

ページ範囲:P.1696 - P.1698

ポイント

●治癒ではなく,現実的な症状のコントロールを目指す.

●非薬物療法(患者-医師関係の構築,病態・予後の説明,診断・治療過程の共有,生活・食事指導など)は全患者に行う.

●非薬物療法のみではコントロールが困難な患者に薬物療法を加えることを検討する.

炎症性腸疾患(IBD)

著者: 二階亮

ページ範囲:P.1700 - P.1702

ポイント

●炎症性腸疾患(IBD)の標準的治療薬として,アミノサリチル酸薬・ステロイド薬・プリン拮抗薬が用いられている.

●ステロイド薬に緩解維持効果はないので,緩解期には漸減中止する必要がある.

●プリン拮抗薬はステロイド依存例に有効であるが,至適用量に大きな個人差がある.

感染性腸疾患

著者: 永田博司

ページ範囲:P.1704 - P.1706

ポイント

●大多数の感染性腸炎は自然軽快するので,抗菌薬は不要である.

●感染性腸炎では,抗菌薬を必要とする限られた細菌・原虫と臨床所見を覚えておく.

●大多数の大腸憩室炎は,経口の抗菌薬と腸管安静により,外来で治療できる.

B型肝炎

著者: 高橋祥一 ,   茶山一彰

ページ範囲:P.1707 - P.1709

ポイント

●B型急性肝炎に対しては,重症,劇症化例でなければ,抗ウイルス薬,肝庇護薬を投与せず,B型肝炎ウイルスの自然排除を待つ.

●B型慢性肝炎は若年,非進行例ではインターフェロン治療,中高年,肝炎進行例ではエンテカビル投与が第一選択となる.

C型肝炎

著者: 狩野吉康 ,   赤池淳 ,   豊田成司

ページ範囲:P.1710 - P.1712

ポイント

●C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型とウイルス量,さらに初回,再投与別に治療方法が異なる.

●インターフェロン(IFN)・リバビリン(RBV)併用療法時では12週目までのHCV RNA陰性化例で高率にウイルス学的著効(SVR)が得られる.

自己免疫性肝炎(AIH)

著者: 石川哲也

ページ範囲:P.1713 - P.1715

ポイント

●治療の主体はステロイド療法である.

●ステロイドは,トランスアミナーゼ値を治療効果の指標とし,初期量より漸減する.

●長期の治療を必要とするが,多くの例で治療により予後の改善が見込まれる.

非代償性肝硬変症―門脈圧亢進症・腹水の治療

著者: 村島直哉 ,   中山聡 ,   巽政人

ページ範囲:P.1716 - P.1718

ポイント

●門脈圧亢進症の薬物治療は,日本ではエビデンスに乏しい.

●分岐鎖アミノ酸(BCAA)はQOLの改善に有用である.

●腹水は,利尿薬治療を第一選択とするが,難治例が存在する.

非代償性肝硬変症―肝性脳症

著者: 長岡進矢 ,   阿比留正剛 ,   石橋大海

ページ範囲:P.1720 - P.1722

ポイント

●薬物療法の基本は非吸収性合成二糖類,特殊組成アミノ酸薬の投与である.

●薬物療法に併行して,肝性脳症の誘因の除去と水,電解質,アミノ酸代謝異常の是正を行う.

●日常から食事療法や排便コントロールに関する教育が重要である.

急性胆囊炎・胆管炎

著者: 小林健二

ページ範囲:P.1723 - P.1725

ポイント

●急性胆囊炎・胆管炎に対する抗菌薬の投与は補助的な治療であり,胆囊摘出術あるいは胆道ドレナージ(±結石除去)が根本的な治療である.

●いずれの疾患も起炎菌として頻度の高いものは,大腸菌,腸球菌,クレブシエラ,エンテロバクターである.初期の治療では,これらの細菌を想定して広域ペニシリン薬,第3~4世代セフェム,カルバペネムなどを投与する.

急性膵炎

著者: 朴沢重成 ,   宮田直輝 ,   日比紀文

ページ範囲:P.1726 - P.1728

ポイント

●治療目標は,疼痛除去,初期合併症(循環不全)と後期合併症(感染・出血)のコントロールである.

●原因の除去を行う.胆石性膵炎では治療のアルゴリズムは異なる.

●重症度に応じて,治療の選択が異なることがある.

消化器薬物治療の新展開

炎症性腸疾患の新しい治療薬

著者: 伊藤裕章

ページ範囲:P.1730 - P.1731

ポイント

●Crohn病治療薬としては,抗サイトカイン抗体や抗接着分子抗体が開発中である.

●インフリキシマブは潰瘍性大腸炎にも有効であることが示された.

●これらの薬剤は症状の緩解のみならず,疾患の自然史まで変える可能性がある.

ウイルス肝炎治療薬の展望

著者: 泉並木

ページ範囲:P.1732 - P.1734

ポイント

●C型肝炎ウイルスの増殖可能な培養細胞ができ,抗ウイルス薬の開発に役立っている.

●次の抗C型肝炎ウイルス薬として,プロテアーゼ阻害薬やポリメラーゼ阻害薬が検討中である.

●薬剤耐性B型肝炎の新たな抗ウイルス薬が開発されている.

機能性消化管障害に対する運動調律薬の開発

著者: 松枝啓

ページ範囲:P.1735 - P.1738

ポイント

●胃の適応性弛緩障害(accommodation disorder):機能性ディスペプシアの重要な病態生理の一つで,食後に胃底部が弛緩しないため早期飽満感や胃部の膨満感を発生させる原因と考えられている.

●十二指腸ブレーキ(duodenal brake):食物の十二指腸への急激な排出を抑制するフィードバック現象で,その結果として胃排出遅延を発生させる.

●食後愁訴症候群(postprandial distress syndrome:PDS):機能性ディスペプシアの病型の一つで,食後に発生する腹部膨満感や膨張感を主症状とする.

●5-HT3受容体拮抗薬および5-HT4受容体刺激薬:5-HT3受容体拮抗薬は大腸運動を抑制し,5-HT4受容体刺激薬は大腸運動を亢進させる作用を有している.前者は過敏性腸症候群(IBS)の下痢型に,後者は便秘型に有効である.

腸内細菌叢への薬物介入と腸疾患

著者: 藤山佳秀 ,   安藤朗

ページ範囲:P.1739 - P.1742

ポイント

●腸内細菌叢のほとんどが難培養菌よりなる.

●炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)では腸内細菌叢の変化が生じている.

●プロバイオティクスとプレバイオティクスの違いについて理解し,その使い分けを考慮する.

消化器薬の保険適応外使用

著者: 杉本光繁 ,   古田隆久 ,   伊熊睦博

ページ範囲:P.1744 - P.1749

ポイント

●消化器薬のなかにも保険適応外使用により有効性を示す薬剤や投与方法が多数ある.

Helicobacter pyloriの二次除菌治療は,一次除菌の失敗の原因によって,抗菌薬の選定や酸分泌抑制薬の投与方法を検討する必要がある.

●潰瘍性大腸炎やCrohn病に対して新たな分子標的治療薬が開発されており,その有効性が示されている.

座談会

消化器薬物治療とEBM―何が変わったか,これからどう変わるか

著者: 上野文昭 ,   小林健二 ,   柴田実 ,   野口善令

ページ範囲:P.1750 - P.1762

 経験によるところが大きい消化器診療.しかし,多くの疾患で病態生理が明らかになり,また治療に関する国内外のエビデンスが集積されてきた.有用なエビデンスとは何か? EBMとは何か? 日常診療での使い方は? 本座談会では,消化器薬物治療に焦点を絞り,EBMにより変わったこと,変わりうることについて,臨床の第一線で活躍されている先生方にお話しいただいた.

連載

目でみるトレーニング

著者: 石田真実子 ,   松木薗和也 ,   大島民旗

ページ範囲:P.1771 - P.1776

研修おたく海を渡る・21

緩和ケアチーム―Palliative Care Team

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1777 - P.1777

 ICUの患者は,時間単位で刻々と容態が変わります.数日の滞在でよくなる患者もいる一方,まったく回復の見込みがもてない状況に陥る患者もいます.担当医が家族に合わせて,患者の状況をタイミングよく説明するというのは,なかなか難しいことです.

 「窓口をひとつにして,その人に他の家族には説明をしてもらいなさい」などともよく言われますが,時間的,空間的なすれ違いはどうしても起こります.そういうことが続くと,感情面でも家族とのすれ違いが起こってしまうことがあります.そんな気配があるときが,Palliative Care Teamの出番です.

成功率が上がる禁煙指導 誰にでもできる日常診療の工夫・3

保険診療での禁煙治療のテクニック1

著者: 安田雄司

ページ範囲:P.1778 - P.1783

 前回までは禁煙指導を始めるに当たっての医師ならび院内での取り組みと工夫について述べてきた.

 いよいよ保険診療による禁煙治療を開始するわけであるが,ニコチン依存症管理料という診療報酬の算定をするに当たっては,日本循環器学会,日本肺癌学会ならび日本癌学会による「禁煙治療のための標準手順書1)」に則って実施される必要がある.それと同時にすべての医療機関で算定できるわけでなく,施設基準を満たしたうえで地方社会保険事務局へ届け出を行わなければならない.これらに従わない診療は従来の自由診療による禁煙治療となる.

外来研修医教育への招待・9

こんな場合はどうする? その5

著者: 鄭真徳 ,   川尻宏昭

ページ範囲:P.1784 - P.1789

 前回・前々回と,「軸を利用した問題解決法」を利用しても,初診時のみの診察では問題解決に至ることのできない患者さんの対応について一緒にみてきました.特に前回は,そのような対応の難しい患者さんについては振り返りカンファでじっくり掘り下げることが重要なステップであることを示しました.そして今回は,いよいよ実際の再診のときの対応についてみていきましょう.まずはケースのおさらいです.

内科医が知っておきたいメンタルヘルスプロブレムへの対応・9

摂食障害

著者: 中尾睦宏

ページ範囲:P.1790 - P.1793

 心療内科では摂食障害を診る機会が多い.例えば東京大学医学部心療内科の外来統計では,初診患者の約12%が摂食障害のため来院していた1).摂食障害のなかでは「神経性食欲不振症」と「神経性過食症」が一般的であるが,これら2つの疾患は相反するものではなく,多くの特徴を共有している2,3).両者の診断基準を満たさない摂食障害は「非定型的(もしくは特定不能の)摂食障害」と呼ばれ,特に「むちゃ食い障害(binge eating disorder)」が最近注目されている4).摂食障害とは,食行動の持続的な障害で,西洋社会では若い女性の主要な疾患となっている.身体的な健康や心理社会的な機能に影響を及ぼし,心身両面に重大なダメージを与えることが多いので,内科医としては一通りの知識は押さえておきたい.

聖路加Common Diseaseカンファレンス・6

あなたは呼吸器疾患を的確に診断できますか?

著者: 藤谷志野 ,   西村直樹

ページ範囲:P.1795 - P.1802

呼吸器疾患の診断 まずここをおさえよう
①問診により,病歴,喫煙歴などを聴取し,鑑別診断を考えよう.
②各疾患ごとのガイドラインが確立しているので,それを参考に治療を行おう.

書評

医師アタマ―医師と患者はなぜすれ違うのか?

著者: 草場鉄周

ページ範囲:P.1661 - P.1661

 爽快な本である.それが第一印象.今まで理論武装や文献による裏付けに基づいて,系統的に同様のテーマを扱った本や論文を読むことはあったが,この本のように,現場でまさに日々働いている医師が,真摯に日常の診療を見つめ,一気呵成に論を展開したものは初めて手にした気がする.それゆえに,同じく現場で迷いながら働いている一人の医師としては,実に共感しやすく気持ちがよい.

画像所見のよみ方と鑑別診断―胆・膵

著者: 竜崇正

ページ範囲:P.1722 - P.1722

 診断を体系づけるのが非常に困難な胆・膵疾患診断に待望の書が出版された.現在最も油ののっている消化器内科医である山雄健次,須山正文,真口宏介三氏の編集によるものである.三氏とも切れ味鋭い論理的な診断を展開している臨床医である.ただ多くの検査を投入して診断を進めるのではなく,必要最小限の診断法を組み合わせていつも患者の身になって親切丁寧に診断を進めていく臨床医である.各種診断法から得られた画像はどのような病理所見によって描かれたのかを常に検証している「画像診断プロ」ともいえる存在である.本書はそのような「画像診断プロ」が熱く議論を戦わす場である「日本消化器画像診断研究会」で発表された貴重な症例が満載されている.疾患ごとに診断のポイントを整理してまとめてあるので,読者にとっては非常に参考になると思われる.

基礎から読み解くDPC―正しい理解と実践のために 第2版

著者: 島本和明

ページ範囲:P.1738 - P.1738

 大学附属病院をとりまく医療環境は最近,大きく変わりつつあるが,なかでも最も大きな要因として独立行政法人化,卒後研修の義務化そしてDPC制度の導入がある.DPC制度は,2003年4月より特定機能病院において開始され,2006年度からは対象が大きく拡大してきている.病院の経営改善が叫ばれる現在,DPC制度は少なくとも現時点では経営を圧迫するものとはなっていない.ただし,大学病院(特定機能病院)の急性期医療への役割分担の期待そしてその方向へ行政指導が強まる中で,病床利用率を維持したままで在院日数縮小を図らざるを得ない状況となっている.そのような意味では,DPC制度の理解と応用が,病院本来の戦略を確立していくうえで重要となる.

不整脈―ベッドサイド診断から非薬物治療まで

著者: 栗田隆志

ページ範囲:P.1749 - P.1749

 評者は20数年前,レジデントとして赴任した国立循環器病センターにて本書の著者,大江 透先生に出会った.昼夜を問わず嬉々として患者のもとに赴き,精力的に診察する姿勢に惹かれ,評者は迷わず大江門下生の一人になった.先生は日頃より診療で得られた心電図や臨床所見を臨場感溢れるストーリーに仕上げ,ファイルに留めておられた.これが知る人ぞ知る「大江ノート」である.難解で興味深い心電図があると先生は必ず「大江ノート」を持って現れ,過去の症例と比較しながら病態の本質へと迫るのである.私たちは目の前で繰り広げられる大江ワールドの虜になった.

プロメテウス解剖学アトラス―解剖学総論/運動器系

著者: 野村嶬

ページ範囲:P.1770 - P.1770

 プロメテウスは,人間を創り,人間に文字や火を与えたとされるギリシャ神話の英雄である.解剖学書にその名前を冠したドイツ語版原書の著者(Michael Schunke,Erik Schulte,Udo Schumacher,Markus Voll,Karl Wesker)の,この原書が人間の未来に貢献するとの願いと確信にまず衝撃を受けた.本書は,全3巻構成の原書第1巻の翻訳であり,わが国の著名な肉眼解剖学者である坂井建雄教授と松村譲兒教授が監訳された.

心不全の診かた・考えかた

著者: 永井良三

ページ範囲:P.1789 - P.1789

 心不全は人類にとって重要な疾患である.いかなる疾患であれ,最終的な死因に心不全が必ず関与する.心不全は病名ではなく全身性の症候群である.単一の検査によって診断することは不可能であり,症状,身体所見,さまざまな検査所見を総合して診断する必要がある.また概念も収縮障害,拡張障害,右心不全,左心不全など多様な視点から定義される.さらに心不全をきたす基礎疾患が多彩である.それだけに臨床医にとって心不全症例を的確に診断し対処することは必ずしも容易でない.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.1810 - P.1810

●今月の主題は「消化器薬の使い方 Update」.“最新の消化器薬”の使い方ではなく,従来使われてきた薬を含む“最新の知見と使い方”をまとめました.

●前回企画「消化器薬の使い方2001」(2000年発行)から7年.この間,消化器診療に限らず,EBMの概念が浸透してきました.消化器薬の使い方についても,国内外での臨床研究によりエビデンスが集積され,エビデンスに基づいた“薬剤の適切な選択と処方”が意識されるようになりました.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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