icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina45巻10号

2008年10月発行

雑誌目次

今月の主題 内科の基本 肺炎をきわめる

著者: 八重樫牧人

ページ範囲:P.1745 - P.1745

 肺炎は日本人の死亡原因における第4位の疾患であり,さらに高齢者においては85歳以上男性で死亡原因の第2位,90歳以上男性で死亡原因の第1位であり,高齢化社会において今後もますます重要になってくる.

 その診療は簡単なようでいて,実に奥が深い.改善の余地はいくらでもある.例えば,予防の大黒柱である肺炎球菌ワクチンは,適応の一部である65歳以上の人口だけでも2,744万人いるのに,年間20万人にしか投与されていない.さらに保険適応さえもない.喫煙率も全体で24.2%,男性で39.3%もある.抗菌薬の選択に関しても,近年のガイドラインの普及は非常にばらつきの大きい日本での診療の質の底上げに寄与するであろうが,ガイドラインを悪用して喀痰グラム染色など肺炎の起因菌を想定する努力を怠り,不必要に広域な抗菌薬を投与することは耐性菌の発現を促し,偽膜性腸炎などの合併症を引き起こすことになるであろう.

肺炎診療の基本

肺炎診療の基本―Q. 肺炎の診療上犯しやすい過ちは何か?

著者: 八重樫牧人

ページ範囲:P.1746 - P.1750

ポイント

●肺炎の診断・起因菌の想定に病歴は重要である.逆に呼吸器症状がないこともある.

●グラム染色で微生物を想定する.そのメリットと限界を知る.

●加療前に喀痰培養,血液培養2セット必須.

●抗菌薬は適切なスペクトラム・用量・投与間隔で,使うときは使う.切るときは切る.

●肺炎の予防を忘れずに!

肺炎の疫学と起因菌およびその感受性―Q. 肺炎の起因菌としてコモンなのは何か?

著者: 佐竹幸子

ページ範囲:P.1751 - P.1753

ポイント

●院内肺炎の死亡率は20~33%であり,院内感染による死亡の60%はVAPである.

●院内肺炎起因菌の種類,頻度,抗菌薬感受性は,病院によって異なる.

●同じ病院であっても,院内肺炎起因菌の種類,頻度,抗菌薬感受性は,経時的に変動する.

●ローカルファクターを定期的に求める必要がある.

●流行している市中肺炎の情報収集に努める.

市中肺炎ガイドラインの長所・短所―Q. ガイドラインをそのまま用いてよいのか?

著者: 細川直登

ページ範囲:P.1754 - P.1757

ポイント

●ガイドラインは,臨床的アウトカム改善のために現場に合わせて導入すべきである.

●施設ごとの起炎菌や感受性パターンなど,ローカルファクターを把握することが重要である.

●CURB-65などの指標を用い,外来,入院,ICUのどこで治療するかを決める.

●血液培養,喀痰のグラム染色と培養など病原微生物を同定する努力をする.

●cookbook medicineにならないように注意する.

院内肺炎ガイドラインをいかに活用するか?

著者: 長谷川景子 ,   田中竜馬

ページ範囲:P.1759 - P.1762

ポイント

●ガイドラインは院内肺炎の診断や治療の糸口である.

●ガイドラインにある治療は『大きく外れない』ための指針である.

●院内肺炎の治療はガイドラインを参考に,地域や施設ごとの原因菌の特徴も考慮することが望ましい.

市中肺炎

市中肺炎の診断―Q. エビデンスに基づいた病歴・理学所見・画像による肺炎の診断には何があるか?

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.1763 - P.1767

ポイント

●市中肺炎を疑う確定的な単独の病歴聴取はなく,複数の病歴,時に身体所見を組み合わせる.

●知識と十分な経験を通じて,各個人が身体診療に関するスキルを身につける(特にcrackles).

●統計学的には診断的価値が高いものは少ないが,病歴聴取・身体所見で検査前確率を高めることが臨床医にとって重要である.

●胸部X線は肺炎診断における完璧なゴールドスタンダードではないが,コストや被曝の少なさの観点から推奨される.

●胸部X線で異常を呈さない場合は,高齢者や脱水症例などの個々の症例に合わせて胸部CTの適応も考慮する.

市中肺炎の鑑別診断―Q1. 市中肺炎の鑑別診断として何を考えるか? Q2. 鑑別すべき疾患を除外する感度がよい病歴・診察所見・検査はあるか?

著者: 山藤栄一郎

ページ範囲:P.1768 - P.1771

ポイント

●鑑別の難しい疾患は,感度の高い病歴・検査などが少ない.そのため,1つの所見や検査だけで判断しないようにすることが重要である.

●除外すべき疾患(結核・肺塞栓症)は,頭をよぎった時点で除外する.たとえ可能性が低いとしても.

●どの検査や所見も,検査前確率を考慮しないと正しい結果は得られない.

市中肺炎の起因菌の想定法―Q1.市中肺炎の原因菌診断における喀痰グラム染色の利点と欠点は何か? Q2.起因菌を想定するその他の検査の利点・欠点は何か? Q3.結核を疑ったときに隔離は必要かどうか?

著者: 大路剛

ページ範囲:P.1772 - P.1777

ポイント

●グラム染色は簡便迅速な検査であるが,染色標本の読影には経験も必要である.

●尿中肺炎球菌抗原は有用だが,あくまで肺炎に対する検査であることを理解しよう.

●尿中レジオネラ抗原以外の非定型肺炎の補助検査はいまだ発展途上の感がある.

●体重減少,寝汗,長続きする咳は,常に結核を疑おう.

定型肺炎,非定型肺炎の分類には臨床上の意味があるか?―Q. エンピリカルな非定型肺炎のカバーは必要か?

著者: 菅長麗依

ページ範囲:P.1778 - P.1781

ポイント

●現時点で非定型肺炎をエンピリカルにカバーする有効性を示すRCTはない.

●しかし,一般病棟,ICU含めた入院患者でのカバーについては,死亡率低下という有効性を示した複数の研究結果があることから,IDSA/ATSのガイドラインでは強い推奨となっている.

●JRSの診断基準は,非定型肺炎の可能性を検討するためのものであり,除外するには不十分である(特異度を重視したもの).

●市中肺炎を定型および非定型のいずれかに区分するのは,治療を誤ってしまうことにつながる可能性があり,その限界に注意すべきである.

●ローカルファクター(地域における薬剤感受性パターン)は重要(マクロライド耐性肺炎球菌は米国では約3割,日本では約8割近くを占める.日本ではマイコプラズマでさえ約6%がマクロライド耐性).

市中肺炎の治療

著者: 谷口俊文

ページ範囲:P.1782 - P.1789

ポイント

●地域の主な肺炎起因菌の感受性パターンを入手する.

●抗菌薬の投与は,培養検体を入手後,速やかに行う.

●喀痰のグラム染色にて起因菌を発見できれば非定型肺炎をカバーする必要はない.しかしながら,重症肺炎,血液培養陽性の場合はマクロライドを併用したほうがよい.

●培養結果と感受性がわかり次第,de-escalationを行う.

●ペニシリン耐性肺炎球菌のほとんどは,高用量ペニシリンで治療できる.

補助療法:肺炎の実験的な補助治療は有効か?―Q. ステロイドやその他の薬剤は有効か?

著者: 齊藤茂樹

ページ範囲:P.1791 - P.1793

ポイント

●肺炎患者に対するステロイド治療およびコルチコトロピン刺激試験による副腎不全のスクリーニングはルーティンには推奨されない.

●高用量昇圧薬投与にもかかわらず,低血圧が持続する患者に対しては,敗血症性ショックの発症早期にステロイド治療を開始することは妥当かもしれない.

●肺炎患者に対するIVIG投与やエンドトキシン吸着療法を支持する確固たるエビデンスは,現時点ではない.

●いうまでもなく,呼吸不全患者に対しては,必要に応じて適切な人工呼吸管理(非侵襲的人工呼吸あるいは気管内挿管による人工呼吸)を行う.

治療反応と治療期間―Q1.治療反応は何を指標に決めるか? Q2. 治療期間はどのように決めるか? Q3. 適切な最短入院期間は?

著者: 杤谷健太郎

ページ範囲:P.1794 - P.1797

ポイント

●治療反応は,発熱・脈拍・呼吸数・血圧・酸素化をみて判断する.自覚症状やX線の浸潤影はしばらく残ることがあるので,注意が必要.

●治療期間は,最低5日,解熱後48~72時間経過していることが必要.

●ただし,マイコプラズマ,クラミジア,レジオネラといったいわゆる非定型肺炎や緑膿菌・黄色ブドウ球菌による肺炎,敗血症では,治療期間が異なる.

●臨床症状が安定していれば,数日で静注薬から経口薬に切り替えて退院することが可能である.

肺炎の重症度―Q1.どのような患者が軽症で,外来で加療できるのか? Q2.どのような患者が重症で,ICUで加療するべきなのか?

著者: 佐藤暁幸

ページ範囲:P.1798 - P.1802

ポイント

●重症度スコアの代表的なものとして,肺炎重症度指数(Pneumonia Severity Index:PSI),CURB-65,CRB-65がある.

●市中肺炎患者で入院を決める際に,重症度スコアを参考にはするが,それ以外の要素も検討する必要がある.

●ICU入室を考えるうえで米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America:IDSA)/米国胸部学会(American Thoracic Society:ATS)の2007年市中肺炎ガイドラインの重症市中肺炎の診断基準が参考になる.

●肺炎診療でクリティカルパス(critical pathway)の導入がコスト削減に有用かもしれない.

肺炎の治療がうまくいかない!どうしよう?

著者: 蛭子洋介

ページ範囲:P.1804 - P.1808

ポイント

●肺炎の治療をはじめた場合,どのような経過で改善するかを理解することが必要.

●改善が認められないときは肺炎の診断にこだわらず,診断が本当にあっているか,あるいはほかの原因がないかを検討する.

●抗菌薬の変更を考慮する前に,原因菌,抗菌薬の種類,その投与量と投与経路を確認し,十分な治療がされているかを確認しておく.安易に広域スペクトラムのものを用いない.

院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎・医療機関関連肺炎

実は奥が深いHAP・VAP・HCAPの診断

著者: 福永真由子

ページ範囲:P.1810 - P.1814

ポイント

●HCAPは入院はしていないが,何らかの形で医療機関にかかわる患者に生じる肺炎である.

●HACPはCAPに比べ,耐性菌によることが多い.

●耐性菌による肺炎を生じるリスクファクターとしては,長期療養施設への入居,肺炎発症前の入院,通院,透析などが挙げられる.

●HAPの起因菌として,緑膿菌,大腸菌,クレブシエラ,アシネトバクターなどの好気性グラム陰性桿菌が最も頻繁に認められる.

●VAPの起因菌特定法としては,BAL,PSB,mini-BAL,気管内吸引喀痰の培養がある.

HAP,VAP,HCAPの治療のジレンマ

著者: 金城紀与史

ページ範囲:P.1817 - P.1822

ポイント

●院内肺炎は院内感染症のなかでも多い.耐性菌が原因菌として多く,死因としても重要である.

●耐性菌のリスクは患者一人ひとりで異なるが,事前の予測は困難なことも多い.

●広域抗菌薬を使う誘惑は大きい.

●患者に漫然と広域抗菌薬を続けることは避けたい.そこで3日後に培養結果と臨床経過をみて抗菌薬を調整し,治療期間は7日にすることが最近のトレンドとなっている.

―【エディターズ・レクチャーノート】―院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎の初期治療

著者: 八重樫牧人

ページ範囲:P.1824 - P.1825

 院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎の初期治療において,用いられるべき抗菌薬は何か.良質な呼吸器検体が採取できた場合と,できなかった場合に分けて,表にまとめてみた.

どのような院内肺炎患者で呼吸器科コンサルトもしくは感染症科コンサルトが必要か?

著者: 法月正太郎

ページ範囲:P.1826 - P.1828

ポイント

●コンサルトは,必要なときに速やかに行う.

●肺炎が改善しないとき,気管支鏡などの侵襲的な検査が必要なとき,多剤耐性菌が同定されたときにコンサルトを考慮する.

●病歴,身体所見を漏れなくとり,鑑別診断を広く挙げることが大切である.

誤嚥性肺炎・化学性肺臓炎

誤嚥性肺炎診療での誤解―Q1. 化学性肺臓炎と誤嚥性肺炎はどう違うのか? Q2. 診断と治療でコモンな落とし穴は?

著者: 名倉功二

ページ範囲:P.1830 - P.1833

ポイント

●化学性肺臓炎と誤嚥性肺炎を区別して理解すること.

●誤嚥性肺炎を疑う場合には,喀痰グラム染色・培養,血液培養,胸部単純X線など必要検査を行ったうえで,市中肺炎・院内肺炎で想定する起炎菌を考えて抗菌薬を投与すること.

肺膿瘍・膿胸―Q. 肺膿瘍は穿刺・排膿しないと治らないのか?

著者: 渡辺直光

ページ範囲:P.1834 - P.1837

ポイント

●肺膿瘍の多くが,口腔内嫌気性菌の誤嚥によって発症する複数菌感染症である.この場合,標準的治療は,クリンダマイシンや,βラクタム薬/βラクタマーゼ阻害薬合剤である.

●肺膿瘍は,通常,抗菌薬のみで加療する.例外的にドレナージを行うのは,抗菌薬に対する反応が悪いが手術のリスクが高い場合や,あるいは,重症感が強い場合で一定の条件を満たす場合にも考慮される.

特殊な患者群での肺炎と特殊な肺炎

好中球減少患者/化学療法中の患者での肺炎―Q. 他の患者群での肺炎と異なる対応が必要か?

著者: 上田晃弘 ,   大曲貴夫

ページ範囲:P.1838 - P.1841

ポイント

●発熱性好中球減少症はmedical emergencyであり,救命のためには早急な治療開始が必要である.

●好中球減少患者であっても,わずかな症状所見を見逃さず,フォーカスを絞る努力が必要である.

●発熱性好中球減少症で早期に問題となる微生物は,Pseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性桿菌である.重篤な好中球減少が遷延する場合,CandidaAspergillusなどの真菌が問題となる.

●侵襲性肺アスペルギルス症の診断には,早い段階での胸部CTが有用である.

HIV患者・ステロイド内服中の患者での肺炎

著者: 松永直久

ページ範囲:P.1842 - P.1847

ポイント

●HIV患者とステロイドの長期内服患者では,細胞性免疫能が低下している.

●細胞性免疫能が低下している状態であっても,健常者と同じ起因菌の市中肺炎に罹患する可能性は大いにある.

●日和見感染症のなかではPcPが高頻度で現れるが,HIV患者とnon-HIV患者では発症の仕方が異なる.

●ステロイドを長期内服中の患者のなかには,SLEやWegener肉芽腫など現病により肺病変を生じることもある.

●細胞性免疫能が低下している患者では,結核も常に意識する.

液性免疫異常・脾摘後の患者の肺炎―Q. 他の患者群での肺炎と異なる対応が必要か?

著者: 三河貴裕

ページ範囲:P.1848 - P.1851

ポイント

●液性免疫異常,脾摘患者の肺炎は,内科的emergencyであり,早急な対応と断固たる処置が必要である.

●市中肺炎と脾摘後敗血症(PSS)の起炎菌はよく似ているため,PSSの合併を考慮に入れる必要がある.

●PSSは急激な経過をたどる.適切な治療をしたにもかかわらず,死亡した方の80%が48時間以内であった.

●PSSのリスクは,脾摘をした原疾患によって異なる.

●予防が大事なので,肺炎球菌ワクチンを主体としたワクチン接種歴を必ず確認し,摂種を考慮に入れること.

SARS,鳥インフルエンザなどの輸入感染症―Q. どのようなときに疑うべきか?

著者: 竹下望

ページ範囲:P.1852 - P.1857

ポイント

●“今”,どこでSARSや鳥インフルエンザの患者が発生しているかを知る(調べる).

●疑い症例=確定診断ではない,つまり,現在可能な検査を行う.

●疑い症例のときの検査の注意を知っておく.

バイオテロによる肺炎はどのように疑うべきか

著者: 谷口智宏 ,   本郷偉元

ページ範囲:P.1858 - P.1860

ポイント

●一斉に多数の肺炎患者が発生したり,特殊な微生物を検出した場合は,バイオテロを疑う.

●バイオテロに利用される病原体のうち,炭疽,野兎病,ペストは,致死的な肺炎を起こす.

肺炎の合併症

急性呼吸不全―Q. どのような患者で挿管・NPPVが適応となるのか?

著者: 馳亮太

ページ範囲:P.1862 - P.1865

ポイント

●気道確保が危ぶまれる場合には挿管を行う.

●治療抵抗性の低酸素血症,アシドーシスが存在する場合には人工呼吸の開始を検討する.

●呼吸窮迫症状が存在する場合にも,人工呼吸の開始を検討する.

●人工呼吸適応-挿管適応=NPPV適応.

●肺炎患者の急性呼吸不全の初期治療として,NPPVの使用が推奨されている.

●NPPVを使用する場合は,開始後の反応性の評価をしっかりと行うことが重要である.

肺炎随伴性胸水と膿胸―Q. どのようなときに胸水穿刺が適応となるのか?

著者: 羽山ブライアン

ページ範囲:P.1866 - P.1869

ポイント

●胸部X線・エコー・CTで胸水を診断.

●胸水を見つけたらとにかく穿刺!

●PPEがカテゴリー3・4(本文参照)ならば積極的な治療介入が必要.

肺炎の予防

市中肺炎予防で見落としていることはないか?

著者: 一ノ瀬英史

ページ範囲:P.1871 - P.1873

ポイント

●高齢者の死亡原因は,年齢とともに肺炎が増えてくる.

●肺炎の予防には,肺炎球菌ワクチンの有効性が議論されている.

●インフルエンザワクチンの定期接種や禁煙も重要な予防医学の1つである.

院内肺炎・VAP予防には何が有効か?

著者: 清河宏倫

ページ範囲:P.1874 - P.1877

ポイント

●院内肺炎・VAP予防に有効と証明されている方法には,①非侵襲的陽圧換気(NPPV)を用いて気管挿管や人工呼吸を避けること,②ウィーニングを進める,③再挿管を避ける,④声門下分泌物の吸引,⑤半坐位(45°以上),⑥口腔ケア,がある.

●有効性が明確でない方法には,①経鼻挿管を避け経口挿管とすること,②人工鼻,③経管栄養投与方法,④SDD(選択的消化管殺菌),⑤ストレス潰瘍予防にスクラルファートの使用,がある.

●無効と証明された方法には,①人工呼吸器の回路交換,②振動ベッド,がある.

誤嚥予防には何が有効か?

著者: 光石陽一郎

ページ範囲:P.1878 - P.1881

ポイント

●誤嚥性肺炎の予防に関して,薬物的介入/非薬物的介入ともにエビデンスに乏しく,確立された介入はない.今後の臨床試験の結果が待たれる.

●非薬物的介入として,限られたエビデンスながら,口腔ケアと半座位の施行により誤嚥性肺炎の発症を抑制できる可能性がある.

●薬物的介入として,限られたエビデンスながら,東洋人で脳血管障害による嚥下障害のある患者に対して,ACE阻害薬を投与することで誤嚥性肺炎の発症を抑制できる可能性がある.

●寝たきりの患者の誤嚥性肺炎予防に関するエビデンスはない.

鼎談

エンピリック治療vs.グラム染色に基づいた治療

著者: 八重樫牧人 ,   川島篤志 ,   竹下望

ページ範囲:P.1882 - P.1890

 肺炎の適切な治療を行うためには,その起因菌の特定がきわめて重要となる.

 近年,起因菌推定のためのすぐれたツールとして,グラム染色の重要性が強調されるようになってきたが,実際の肺炎診療の現場では,十分に活用されるようになったとは言いがたい.

 そこで本号では,「エンピリック治療vs.グラム染色に基づいた治療」をテーマに,内科臨床の第一線を担う医師による鼎談を企画.「エンピリック治療」,「グラム染色」をキーワードに,日本における肺炎診療の問題点と,その解決法をお話いただいた.

連載

目でみるトレーニング

著者: 窪田哲也 ,   宗政充 ,   黒瀬龍彦 ,   佐々木清貴

ページ範囲:P.1899 - P.1904

研修おたく海を渡る・34

外科医の修行

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1905 - P.1905

 今回は心臓外科医の友人の生活,日々の修行について紹介したい.

 彼は,研究を含めた10年におよぶトレーニングを経て,昨年心臓外科医として,サンフランシスコにある開業グループの一員に加わった.開業グループと言うもののサンフランシスコでは,UCSF(カルフォルニア大学サンフランシスコ校)や,スタンフォード大学に引けをとらない,むしろそれ以上に実績にあるプラクティスだそうだ.そして何よりも師匠のもとで働きたいの一心で決めたという.

聖路加Common Diseaseカンファレンス・18

―神経内科編―Parkinson病について考えてみよう!

著者: 野村征太郎 ,   竹見敏彦

ページ範囲:P.1906 - P.1909

Parkinson病の診断  まずはここを押さえよう
①Parkinson病の主症状(振戦,筋固縮,寡動,姿勢反射障害)を理解しよう.
②Parkinson病に特徴的な,すくみ足,starting hesitation,腕振りの減少,加速歩行(festinating gait),前傾・前屈,矛盾性運動(kinesie paradoxale)といった歩行障害を理解しよう.
③Parkinson病の類似疾患(脳血管パーキンソニズム,薬剤性パーキンソニズム,線条体黒質変性症,進行性核上性麻痺)を理解しよう.
④Parkinson病の診断に有効な画像検査(MRI,MIBG心筋シンチグラフィ)を理解しよう.

市中感染症診療の思考プロセス IDATEN感染症セミナーより・7

感染性心内膜炎のマネジメント

著者: 大曲貴夫

ページ範囲:P.1910 - P.1919

ケース 発熱,心雑音,腰痛の訴えでER受診した65歳女性


現病歴 大動脈弁狭窄症を指摘されている65歳の女性が,歯科にて抜歯後,2週間続く微熱,食欲不振,易疲労感,倦怠感,安静でも改善しない腰痛で救急外来を受診した.歯科の抜歯直前にはとくに内服治療を受けていないという.抜歯後に2世代経口セフェムを処方された.薬物アレルギーはない.


身体所見 体温37.8℃,心拍数90/分,呼吸数22/分,血圧130/70mmHg.全身状態:ややきつそうにみえる,“だるくてどうしようもない”と.頭目耳鼻喉:結膜の出血斑あり.頸部:問題なし.心臓:逆流性のII/VIの収縮期・拡張期雑音あり,心尖部へ放散.胸部:肺胞呼吸音.腹部:平坦・軟,腫瘤なし,肝脾腫なし,第3・4腰椎に一致した叩打痛あり.四肢:爪下点状出血あり,手掌に無痛性の紅丘疹.

患者が当院を選ぶ理由 内科診察室の患者-医師関係・10

もっと患者を知りたい

著者: 灰本元

ページ範囲:P.1920 - P.1924

 前回は「患者が一番知りたいこと」を主題にしたが,今回はその逆の私たち医療関係者が「もっと患者を知りたい」がテーマである.昨今では個人情報保護や漏洩防止に社会全体がやっきとなっており,患者も個人情報を守るという権利が身についているので,秘密主義が一つの潮流となっている.それに患者の秘密を知るとその後の患者-医師関係は後戻りできない,ならばいっそ知らないほうがよい,関わらないでおこう,そのほうが面倒でない,そんな時代を私たちは生きている.しかし,無言であったり多くを語らない患者たちは本当に知られたくない,本音を明かしたくないのだろうか.そして私たちはもっと患者を知らずに診療が成り立つのだろうか.

見て・聴いて・考える 道具いらずの神経診療・10

―主訴別の患者の診かた5―頭痛を訴える患者の診かた(後編)

著者: 岩崎靖

ページ範囲:P.1925 - P.1928

 頭痛は日常診療においてはありふれた症状であるが,原因疾患はさまざまである.頭痛の原因として大部分を占める「機能性頭痛」(緊張型頭痛や片頭痛など)の鑑別ポイントについては前回述べた.今回は,頻度は低いが緊急の対応を必要とする器質性疾患による「症候性頭痛」について,鑑別のポイントを概説したい.

研修医のためのリスクマネジメント鉄則集・10【最終回】

インフォームド・コンセントの手順(後編)―リスクマネジメントの基本としての

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.1930 - P.1934

 いよいよ本連載も最終回を迎えた.前回に引き続き,リスクマネジメントの基本である「インフォームド・コンセント」について述べるが,特に,臨床現場で医療者がジレンマを抱えることが多い「癌告知」と「終末期」について,適切なインフォームド・コンセントとは何かを,なるべく具体的に述べていきたい.

書評

レジデントのための呼吸器診療マニュアル

著者: 永井厚志

ページ範囲:P.1861 - P.1861

 このたび,医学書院から『レジデントのための呼吸器診療マニュアル』が上梓された.本書は大変ユニークな日常診療への実践書である.冒頭に編者は,“医学は再び長崎から”と付言し,本書の作成に当たる意気込みを吐露している.その思いは,ポンぺ・ファン・メールデルフォートがわが国の西洋近代医学教育として長崎医学伝習所(現長崎大学医学部)で患者中心の臨床教育を最初に行った史実にあったであろう.

 これまでにも多くのマニュアルやハンドブックが作成されてきた.その構成は,症候や疾患を網羅的に取り扱い,整然とした記載内容はミニ成書の類であった.しかし,本書は大きく異なっている.まず第1章「疾患・症状のマネージメント」で目にするのは,“〇〇の疾患に出あったとき”や“〇〇症状をみたら”といった日常的に交わされる指導医とレジデントの会話が項目になっていることである.

レジデントのための感染症診療マニュアル―第2版

著者: 大庭祐二

ページ範囲:P.1870 - P.1870

 感染症診療においてはすでに定番書となっている『レジデントのための感染症診療マニュアル』が改訂,出版された.著者の青木眞先生は,公私において私の恩師の一人であり,緒方洪庵の適塾の門下生で種痘の普及に尽くした湯浅芳斎の末裔でもある.

 私の専門の一つは集中治療であるが,感染症を制するものが集中治療を制すると言っても過言ではないほど,感染症診療は多くの臨床診療科においてかなり重要な位置づけを占める.しかし残念ながら,日本では臨床感染症という領域はかなりの長期間軽視され続けてきた.

間質性肺疾患の外来診療

著者: 近藤康博

ページ範囲:P.1891 - P.1891

 「間質性肺疾患」多くの読者はこの病気の名前は知っていても,どんな病気? どう診療するの? と,尋ねられると,はたと困ってしまうのではないだろうか.間質性肺疾患は,有効な治療がほとんどない難病も多く含むため,専門家をも悩ませる厄介な病気である.かくいう私も,この悪女のような悩ましい病気に心奪われ,深みにはまり,不惑の年を迎えても,相も変わらず悩める少年のごとく葛藤しているのである.

 このような「間質性肺疾患」に対する実践的解説書として作成されたのが本書である.本疾患に20年以上も携わってこられた長井先生の,情熱,臨床経験,知識・エビデンスを駆使しての力作で,先生の多くの難病に苦しむ患者さんに対する深い愛情からうまれたものである.先生の属する京都大学間質性肺炎グループの世界に誇る臨床データも,随所にちりばめられている.私自身,本書から多くを学ぶとともに長井先生の難病に立ち向かう医師としての姿勢に強い感銘を覚えた.

呼吸器病レジデントマニュアル―第4版

著者: 長坂行雄

ページ範囲:P.1897 - P.1897

 8年目の改訂で第4版が上梓された.初版以来20年を経て,すでに定評のある本書であるが,第3版から内容も使いやすさも大きく向上した.製本上の改良も見られ,30ページ増えたにもかかわらず冊子の厚さは変わらない.活字も工夫されて情報量も大幅に増えているが読みやすく図表も見やすい.片手に持って親指でページを繰れば見開き右端の表示で速やかに求める項目が見つかり,ペンを持ちながらの参照も簡単である.

 内容も格段に充実した.執筆者は医師としても書き手としてもピークを迎えた方たちで気魄に満ちた記述は読んで気持ちがよい.最初の「診断へのアプローチ」の章は,検査など総論的な項目であるが“臨床現場で知りたい”内容が簡明に記されている.「救急の実際」の章では研修医が大急ぎでページを繰りながら必要な記載とわかりやすい図を見つけてほっとするのが眼に見えるようである.

--------------------

編集室より

著者:

ページ範囲:P.1944 - P.1944

●大作曲家ベートーヴェン(1770~1827)の死因はいまだ不明とされているが,近年,その原因に迫る意欲的な研究が行われている.

●手がかりとなったのは「ベートーヴェンの遺髪」だ.ベートーヴェンの死の翌日に切り取られた遺髪は,さまざまな人の手をわたり,約170年後の1994年にサザビーズ(ロンドンにある世界最大のオークション会社)の競売にかけられた(遺髪の数奇な運命については,『ベートーヴェンの遺髪』という有名なノンフィクション作品がある).

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?