medicina45巻12号

2008年12月発行

連載 患者が当院を選ぶ理由 内科診察室の患者-医師関係・12【最終回】

医師の原罪

著者： 灰本元¹

所属機関： ¹灰本クリニック

ページ範囲：P.2284 - P.2287

　いわゆる医者嫌いの患者をしばしば見かける．そういう患者は薬だけ取りに来るが決して診察室に入ろうとしない．たまに診察すると，びくびくしたその表情から私に恐怖を抱いているように感じられ，診察を受けたくないのも無理はないと思う．また，白衣高血圧の原因は緊張だが，会社や井戸端会議では決して緊張しないのに，病院だけで緊張する患者がかなりいるのではないか．

　医師が冷たい態度を取ったからでも，誤診したわけでもなく，医師という存在そのものが患者の症状を発現させ，悪化させる，そのような医師の原罪について心気症を題材にして最後に書いてみたい．心気症は内科医が最も苦手とする疾患であるが，身体を診る技術，検査の技術，それに患者から逃げない強さが必要で，内科医が最も鍛えられる疾患であると思う．