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雑誌目次

雑誌文献

medicina45巻3号

2008年03月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医が診る骨粗鬆症 防げる骨折を防ぐための骨粗鬆症診療

著者: 細井孝之

ページ範囲:P.395 - P.395

 最近,骨粗鬆症の診療実態に関する全国的なアンケート調査をさせていただく機会があり,そのなかで骨粗鬆症の診断基準に関する周知度を確かめる項目があった(厚生労働科学研究費補助金・長寿科学総合研究事業「骨粗鬆症性骨折の実態調査および全国的診療データベース構築の研究」主任研究者:折茂 肇).骨粗鬆症の診断基準があることを知っているかという問いに対して,知っているとの回答は内科医の約40%から得られたが,整形外科医の90%台とは大きな差が認められた.内科については専門分野を問わない調査であったために,例えば代謝・内分泌系に絞った調査を行えば,もっと高い数字が得られたかもしれない.しかしながら,内科領域における骨粗鬆症に対する取り組みはまだまだであると考えざるを得ない.

 骨粗鬆症の予防と治療は,骨折の予防を最大の目標としている.しかしいずれにせよ,内科診療の現場では骨折を意識した診療のきっかけを捉えることが難しい.その反面,内科診療こそが骨折予防の機会であることが望まれている.骨粗鬆症診療を意識しないで日常診療を進めることは,骨折リスクが高まっている患者を目の前にしながら,見過ごしていることでもある.

総論

骨粗鬆症のとらえ方―あなたは骨粗鬆症を見過ごしている

著者: 太田博明

ページ範囲:P.396 - P.400

ポイント

●骨粗鬆症の治療目的は骨密度の増加ではなく,脆弱性骨折を防止することにある.

●骨粗鬆症やその合併症である骨折によって腰背痛が生じる場合があることをよく認識しておく必要がある.

●症状がなく,リスクがなくても健診などで自分の骨量を知っておく必要がある.

骨粗鬆症発生頻度の動向

著者: 吉村典子

ページ範囲:P.401 - P.405

ポイント

●骨粗鬆症の発生率には50歳以上で年間男性2%,女性6%との報告があるが,まだ一定の見解は得られていない.

●2002年の全国調査の結果,大腿骨頸部骨折の発生数は12万人と増加しており,年齢別発生率も依然として増加傾向にある.

●脊椎椎体骨折の10年間の発生率は,70歳台で男性の約1割,女性の約2割であると報告されている.

要介護状態をもたらす疾患としての骨粗鬆症―QOLと医療経済の面から

著者: 田中清 ,   桒原晶子 ,   木戸詔子

ページ範囲:P.406 - P.408

ポイント

●骨粗鬆症は生活習慣病として,内科医が積極的にかかわるべき疾患である.

●骨粗鬆症に伴う骨折は,患者のQOL(quality of life)を著しく低下させる.

●骨粗鬆症に伴う骨折は医療費を増大させるため,社会的にも予防が重要である.

病態

骨粗鬆症の背景にある病態生理

著者: 福本誠二

ページ範囲:P.410 - P.412

ポイント

●骨は,破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成を繰り返す組織である.

●骨吸収が相対的に骨形成を上回ることにより,骨量が減少する.

●閉経や加齢に伴う骨量減少に,エストロゲン欠乏が重要な役割を果たしている.

カルシウム・リン代謝の基本と最近の話題

著者: 宮本賢一 ,   瀬川博子 ,   辰巳佐和子

ページ範囲:P.413 - P.416

ポイント

●カルシウム代謝調節には,副甲状腺ホルモン(PTH)と活性型ビタミンDが重要である.

●リン代謝の中心臓器は腎臓であり,PTHはリン利尿を亢進させる作用を有している.

●新しいカルシウム/リン代謝調節因子として,fibroblast growth factor 23(FGF 23)やklothoが加わった.

診断

骨粗鬆症診断の手順

著者: 遠藤直人

ページ範囲:P.417 - P.419

ポイント

●身長低下,亀背:脊椎椎体骨折の有用な指標で,最大身長から4cm以上の低下では骨折を有する危険性が高い.

●臨床骨折(clinical fracture)と形態骨折(morphometric fracture):疼痛などの症状を伴う場合を「臨床骨折」,疼痛などの症状を伴わない場合を「形態骨折」と称する.

●既存骨折(prevalent fracture),新規骨折(incident fracture):高度の骨粗鬆症症例では,明らかな痛みを伴わないにもかかわらず骨折を生じる例がある.

●ステロイド性骨粗鬆症:原発性骨粗鬆症に比して高い骨密度値でも骨折をきたす.

骨密度測定の基本と実際―骨量と骨密度は同じこと?

著者: 曽根照喜

ページ範囲:P.420 - P.422

ポイント

●骨粗鬆症診断のための標準的な測定法は,腰椎と大腿骨近位部のDXAである.

●腰椎DXAは,薬物治療に対する感度が高い.

●骨密度は,測定再現性を示すCV値の2~3倍以上の変化をもって有意と判定される.

脆弱性骨折を見逃さないための骨評価

著者: 中野哲雄

ページ範囲:P.424 - P.429

ポイント

●X線単純像で発見できない骨折があり,骨粗鬆症患者ではこれがしばしば存在する.

●これらの骨折を診断する最も有用な検査法はMRIである.

骨粗鬆症の危険因子

著者: 安藤富士子 ,   下方浩史

ページ範囲:P.430 - P.433

ポイント

●医療面接で骨粗鬆症のハイリスク者を抽出することは重要である.

●骨密度は,骨粗鬆症診断には重要である.

●低骨密度の危険因子以外に,骨密度を介さない骨折危険因子が注目されている.

続発性骨粗鬆症を考慮すべき病態―この疾患をみたら骨粗鬆症を考える

著者: 和田誠基 ,   扶川武史 ,   神谷貞浩

ページ範囲:P.434 - P.437

ポイント

●基礎疾患に基づいて骨が脆弱化し,骨折危険性が増す病態を続発性骨粗鬆症と呼ぶ.

●骨粗鬆症の合併による骨折が考えにくい年齢で,椎体などの脆弱性骨折を認める場合,続発性因子を疑う.

自他覚症状からの骨粗鬆症診療―この症状をみたら骨粗鬆症を考える

著者: 岸本光司 ,   井樋栄二

ページ範囲:P.438 - P.440

ポイント

●骨粗鬆症による椎体骨折によって,身長の低下や姿勢の変化が生じる.

●椎体骨折は無症候性に起こることがある.

臨床データからみたカルシウム・骨代謝異常

著者: 竹内靖博

ページ範囲:P.441 - P.443

ポイント

●原発性骨粗鬆症と診断するには,続発性骨粗鬆症を鑑別することが必要である.そのために,一般的な臨床検査データを活用することが大切である.

●骨粗鬆症の治療中には,骨代謝マーカーのみならず,特に血清カルシウム濃度の上昇と低下に注意を払う習慣をつけることが大切である.

ステロイド使用患者における骨粗鬆症対策

著者: 田中郁子 ,   大島久二

ページ範囲:P.445 - P.449

ポイント

●ステロイド投与時には,少量であっても骨折リスクが存在する.

●ステロイド性骨粗鬆症では,高い骨量であっても骨折が惹起される場合がある.

●本邦のガイドラインではビスフォスフォネート製剤が第一選択薬である.

●ステロイド性骨粗鬆症の治療中止時期は個々の症例ごとに対応する.

骨代謝マーカーの活用方法

著者: 茶木修

ページ範囲:P.450 - P.455

ポイント

●骨代謝マーカーは測定時の骨代謝の状態を表すだけでなく,将来の骨量減少や骨折のリスクを予測できる.

●同一患者で繰り返し測定する場合には,できるだけ同じ時刻に測定することが望ましい.

●治療効果の判定には閉経後女性における日内変動の2倍の値,最小有意変化(minimum significant change:MSC)以上の低下をもって効果ありと判定する.

●健康保険上,骨代謝マーカーの測定は治療開始前に1回,治療効果判定は6カ月以内に1回しか認められていない.

骨粗鬆症関連ガイドラインの概要

著者: 稲葉雅章 ,   西沢良記

ページ範囲:P.456 - P.460

ポイント

●骨粗鬆症の診断には骨密度測定が重要.脆弱性既存骨折の存在のみで直ちに診断できる.

●骨代謝マーカー高値は,骨量減少とは独立した骨折の危険因子である.

●骨折予防は骨折を起こしてからの治療ではなく,骨折を起こさないようにする予防が重要である.

●骨減少症であっても,過度のアルコール摂取,喫煙,大腿骨頸部骨折の家族歴がある場合には,早期から薬物療法を導入する.

予防と治療

予防と治療のための栄養指導―カルシウムだけで骨粗鬆症は予防できるか

著者: 塚原典子

ページ範囲:P.462 - P.466

ポイント

●骨粗鬆症治療におけるカルシウム摂取量:800mg以上を摂取目標量としている.カルシウム摂取単独では,骨量減少を抑制することはできても,骨折予防効果は期待できない.

●日本人の食事摂取基準(2005年版):厚生労働省が策定した,日本人が健康を維持・増進し,疾病予防のために摂取すべき1日の栄養量(摂取基準量).5年ごとに改定される.現在のものは2005年4月から2010年3月まで使用される.

●上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が,過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量.カルシウムは成人男女ともに2,300mg/日である.

脆弱性骨折の予防からみた運動療法

著者: 酒井昭典

ページ範囲:P.467 - P.470

ポイント

●運動療法は骨粗鬆症患者の骨量減少を防止する.

●運動療法は高齢者の易転倒性を改善する.

●骨粗鬆症患者における運動療法の骨折予防効果は明確ではない.

「高齢者の転倒」に目を向けた骨折の予防

著者: 松井康素 ,   原田敦

ページ範囲:P.471 - P.474

ポイント

●高齢者骨折の多くは,ちょっとした転倒で起こり,骨折予防には転倒の予防という視点が欠かせない.

●転倒リスクの観点から患者の疾患や服用薬を把握し,生活環境改善・運動・ビタミンD摂取指導などが必要である.

骨粗鬆症の薬物治療はいつから始めていつまで続けるか

著者: 三木隆己 ,   嶋田裕之

ページ範囲:P.475 - P.479

ポイント

●骨粗鬆症の治療は,骨密度と骨折危険因子を考慮して開始する.

●早期からの治療が理想である.年齢,治療への積極性,医療経済を考慮し,薬物治療を開始する.

●ステロイド投与者では,骨減少症の状態で治療を開始する.

診療現場での骨粗鬆症治療薬の使い分け

著者: 石井光一

ページ範囲:P.480 - P.484

ポイント

●「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」を参考にする.

●第一選択薬はアレンドロネート,リセドロネート,塩酸ラロキシフェンである.

●患者の病態,薬剤の効果・副作用および服薬継続の観点から選択することが重要である.

ビスフォスフォネート製剤とSERMの骨折予防効果とその生かし方

著者: 山口徹 ,   杉本利嗣

ページ範囲:P.485 - P.488

ポイント

●ビスフォスフォネート製剤であるアレンドロネートおよびリセドロネートと,選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるラロキシフェンは,新規椎体骨折の発生を有意に抑制する.

●骨粗鬆症薬物治療開始基準を満たす症例に対し,これらの薬物を積極的に投与し,椎体骨折の発生を防止すれば,運動機能の低下のみならず消化管や呼吸機能の低下などの内臓機能障害も防止可能である.

女性ホルモン製剤の使い方

著者: 柞木田礼子 ,   樋口毅 ,   水沼英樹

ページ範囲:P.489 - P.493

ポイント

●閉経後骨粗鬆症の発症には,卵巣機能の低下が大きく関与している.

●低エストロゲン状態の骨粗鬆症女性には,ホルモン補充療法は有用である.

●乳癌,子宮体癌,血栓症に注意しつつ,適切に使用する必要がある.

ビタミン系製剤の使い方と最近の話題―活性型ビタミンD3製剤とビタミンK2製剤

著者: 河手久弥 ,   高柳涼一

ページ範囲:P.494 - P.497

ポイント

●高齢者では,ビタミンDやKの不足が骨粗鬆症の発症要因になると考えられている.

●活性型ビタミンD3やビタミンK2は,骨密度は維持する程度であるが,骨折発症は抑制する.

●活性型ビタミンD3は,筋力を回復させて,転倒を防止するものと考えられている.

カルシトニン製剤の使い方

著者: 楊鴻生

ページ範囲:P.499 - P.503

ポイント

●カルシトニン製剤は骨粗鬆症治療における古典的な薬剤であるが,現時点でも疼痛を有する高代謝回転型骨粗鬆症には第一に選択される薬剤である.

●カルシトニン製剤は,注射剤,鼻腔噴霧剤などの剤型がある.本邦では骨粗鬆症に伴う疼痛に対する週1回筋肉注射による投与に保険適用があり,使用期間は6カ月を限度としている.

骨粗鬆症による骨折を寝たきりにつなげないために

著者: 萩野浩

ページ範囲:P.504 - P.506

ポイント

●骨折後には早期から適切な治療によって疼痛や機能障害を改善し,生活機能を維持する.

●大腿骨近位部骨折では原則的に手術療法が必要で,受傷後できるだけ早期に行う必要がある.

●前腕骨骨折や上腕骨近位部骨折でも,最近は手術による内固定を行うことが多くなっている.

トピックスなど

人類の進化からみた更年期と骨代謝

著者: 岡野浩哉

ページ範囲:P.508 - P.511

ポイント

●人類の歴史のなかで閉経が認識されたのは,まだ100年足らずのことである.

●閉経とは生殖能の喪失だけでなく,各種器官の機能低下も意味する.

●閉経の意義を探ることは,ヒトの存在理由にまで及ぶ壮大な命題である.

骨粗鬆症専門外来を担当して思うこと

著者: 竹村真里枝

ページ範囲:P.512 - P.513

ポイント

●骨折予防を目的とした骨粗鬆症治療は,今のところ十分に行われていないと推定される.

●地域保健と医療機関の連携により,効率的な骨粗鬆症治療体系の確立が必要である.

●骨粗鬆症外来の役割は,骨粗鬆症ハイリスク者の診断と対策を行うことと考えている.

骨代謝研究の最前線―国内外の学会活動とわが国からの情報発信

著者: 遠藤逸朗 ,   松本俊夫

ページ範囲:P.514 - P.518

ポイント

●Runx2(Cbfa1),ODF(RANKL),OPG,FGF23の発見,ビタミンD-1α水酸化酵素の同定など,骨代謝関連分野における日本人研究者の貢献は多大である.

鼎談

診療現場での骨折リスク評価と今後の展望

著者: 細井孝之 ,   藤原佐枝子 ,   五來逸雄

ページ範囲:P.520 - P.530

 骨粗鬆症の予防・治療の目的は骨折予防であることが,ガイドラインにおいて示されている.骨折予防には,日常診療で骨折リスクをもつ患者を把握し,早期に治療が開始されなければならないが,内科領域ではその取り組みが遅れている.

 本鼎談では,骨折リスクの考え方および骨折リスクをどのように評価し,治療にどう活かすか,また現在開発中の骨折リスク評価ツールFRAXについてお話しいただく.

連載 聖路加Common Diseaseカンファレンス・12

―血液内科編―汎血球減少症から鑑別診断を考えよう

著者: 森信好 ,   岡田定

ページ範囲:P.537 - P.542

汎血球減少症の診断  まずここを押さえよう
①日常診療のなかで汎血球減少症に遭遇することは意外に多い.汎血球減少症をキーワードにした鑑別疾患ができるようになろう.
②汎血球減少症をきたす代表的病態には,肝硬変に伴う脾機能亢進症,抗癌剤使用に伴う骨髄抑制,再生不良性貧血,骨髄異形成症候群,巨赤芽球性貧血,重症感染症,SLEがある.

研修おたく海を渡る・27

就職活動

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.543 - P.543

 フェローシップも最後の年になり,まわりでは就職活動が盛んになっています.腫瘍内科に関しては,フェローシップに入るときの厳しい極端な買い手市場とはうってかわって,完全な売り手市場です.USA Todayという全国紙にも,リタイアする60代の腫瘍内科医が多く,がん専門医は今後足りなくなるだろうという予想が載っていました.

 ではどうやって就職先を見つけるのでしょうか? 今研修している地域で探す場合は,地域のカンファレンスなどで開業医グループと顔見知りになりながら,新しい人を雇う予定があるか探りを入れます.探りを入れるといっても,単刀直入に「来年卒業するんだけど,新しい人をとる予定ある?」と聞くだけですが.あとは,製薬会社のプロパーさんはその手の情報をよく知っており,複数の州をまたいで担当しているような人からは他州の情報も手に入れることができます.

目でみるトレーニング

著者: 小田口尚幸 ,   木村琢磨 ,   立花崇孝

ページ範囲:P.544 - P.549

見て・聴いて・考える 道具いらずの神経診療・3

―患者が診察室に入ってきた,その瞬間を捉える2―表情からわかること

著者: 岩崎靖

ページ範囲:P.551 - P.556

 第1回は問診表について,第2回は患者が診察室に入ってきた際の姿勢について観察のコツを書いた.今回は診察室入室時の表情について,観察のコツを書いてみたい.「表情を読む」ことは,社会的存在としての人間にとっても重要な課題である.一方,パターン認識でもあり文章で表現するのは難しいが,神経疾患との関連がなるべくわかるよう概説したい.

 患者が診察室に入る瞬間から,向かい合って座り,問診中,診察中に表情を観察することは重要な神経学的診察である.表情の観察は,「それでは表情を観察させていただきます」と患者に言うわけではなく,常に観察を続ける必要がある.一方,顔面や舌,咽頭の動きを含めた脳神経系の神経学的診察では,患者に「眼をつぶってください」,「舌を出してください」,「あー,と声を出してください」などの口頭指示をして診察する.これらの脳神経系の所見の取り方については,神経学的診察のなかでも最初に行う重要な検査であるが,今回の論点とは異なるので成書を参照していただきたい.

患者が当院を選ぶ理由 内科診察室の患者-医師関係・3

患者は医師に何を求めているか―医師の父性性

著者: 灰本元

ページ範囲:P.558 - P.562

“しかる”と“怒る”

 若い看護師が「先生は患者を“しかって”ばかりいるのに,どうして次にもちゃんと来るんだろう?」そんな疑問をつぶやいたことがある.“怒る”は攻撃的で自己中心的な感情が中心となる場合で,“しかる”は患者になんとかよくなってほしい心が患者に伝わる場合をいう.“しかる”つもりで会話が始まったのにだんだん“怒る”になってしまう場合もあるし,その逆もあるので,“しかる”と“怒る”は紙一重である.“怒れ”ば患者は来なくなるかもしれないが,“しかって”も患者はきっと次にも来るだろう.

 また,当院には非常勤で男性の臨床心理士H先生がいてカウンセリングをお願いしているが,あるとき「この医院に患者がまたやって来るのは,先生が“断定する”ところにありますね.それが現代社会に合っているんです」と指摘された.

研修医のためのリスクマネジメント鉄則集・3

リスクマネジメントのABCD―その1 予見する

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.564 - P.567

 救急患者を診るときのABCD(Airway,Breathing,Circulation,Drug)は医師なら誰でも知っている.ところが,リスク・マネジメントのABCDは知らない医師がほとんどである.リスク・マネジメントは,ハイ・リスク産業である医療の根幹と言っても過言ではない.自身の安全意識を高めるために,まずはこのABCDを,救急のABCDと同じぐらいの真剣さで身につけてほしい.

リスクマネジメントのABCD

A=Anticipate……(予見する)

B=Behave………(態度を慎む)

C=Communicate(何でも言いあい話し合う)

D=Document……(記録する)

書評

神経救急・集中治療ハンドブック―Critical Care Neurology

著者: 金澤一郎

ページ範囲:P.405 - P.405

監修:篠原 幸人 編集:永山 正雄,濱田 潤一

A5 頁496 2006年 定価5,775円(本体5,500円+税5%) [ISBN978-4-260-00132-8] 医学書院刊

 われわれが医師になったのはちょうどインターン闘争から大学紛争に拡大していく時期であった.そこで「患者のためになる良い医療を」という旗印の下で,青年医師連合を結成した.医師とは関係のないところで政治的に活動していた仲間もいたが,われわれノンポリは医師国家試験をボイコットした非合法的なインターンとして医療の世界に飛び込んでいった.すでに医師として社会で働いていた先輩たちの技術や知恵を授けてもらいながら医療に邁進した.実に充実していた.中でも,いわゆる救急には心をときめかした.自分こそがこの患者を救うのだ! という心意気に燃えていた.ただ心意気だけでは救えないので,いざというときはすぐに先輩に聞けるように「連絡網」を作成していた.救急医療は,医師になりたての身には格別の魅力があった.さしもの大学紛争も少し落ち着いた頃,大学に戻り,患者の受け持ちになってみると,病室で急変した患者に対応する先輩たちの動作の鈍いのにあきれた.しかし,今思えばその頃がわれわれの一般医療の腕前としてはピークだったように思う.頭で反応するよりも体が反応していたような気がする.

画像診断シークレット 第2版

著者: 富樫かおり

ページ範囲:P.562 - P.562

監訳:大友 邦,南  学原著 編者:E. Scott Pretorius, Jeffrey A. Solomon

B5変型 頁724 図37 写真627 定価8,820円(本体8,400円+税5%) [ISBN978-4-89592-489-4] MEDSi刊

 本書はシークレットシリーズのひとつであり,2000年に邦訳が出版された『画像診断シークレット』の第2版である.しかし,原著執筆陣は一新され,内容・写真もすべてが最先端のものとなり,また,近年急速に重要性の増した領域,すなわちPET,心臓核医学検査,乳腺に関しての記載も大幅に増加するなど,いっそう充実した書となっている.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.576 - P.576

●数年前のある日のこと.「おばあちゃんがカーテンを開けようとして転んでね,ガラスを割って縁側から外に転げ落ちたの」実家の母からの電話に,背筋がぞっとしたのを覚えています.幸いにも,打撲と手首の切り傷ですみましたが,祖母が転倒する話を聞くたびに「骨折して寝たきりになってしまうのではないか」と心配になります.

●というのも,母方の祖母が大腿骨頸部骨折で寝たきりになってしまったからです.痛むような病気にはかかりませんでしたが,寝たきり5年,認知症が進み,昨年末,眠るように亡くなりました.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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