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雑誌目次

雑誌文献

medicina45巻4号

2008年04月発行

雑誌目次

今月の主題 一般内科医が診る循環器疾患―3大病態を把握する

著者: 三田村秀雄

ページ範囲:P.583 - P.583

 「内科医は全身を診ろ」,口うるさい先輩は(自分のことは棚上げにして),いつもそう言い続けてきた.ところがいつの頃からか,心臓は心臓内科医が診る臓器,循環器は循環器医が管理する領域,になってしまった.もはや一般内科医は患者がひとたび「胸が痛い」と言おうものなら,「それだったら循環器内科にどうぞ」と微笑みながら紹介し,後はもう知らないと決め込む.

 しかし患者のほうはそんな縄張り争いに興味はない.胸が苦しくて受診すると,呼吸器内科があり,循環器内科がある.むくんだ足を引きずって,むくみ科を探しても見つからない.一瞬気を失った患者が向かうべき科が神経内科なのか循環器内科なのかも,わかるはずもない.

循環器疾患が疑われたときの診断の進め方 【初診時に,何を聞き,どこを診察するか】

胸痛

著者: 本田喬

ページ範囲:P.584 - P.587

ポイント

●急性冠症候群,急性大動脈解離,急性肺塞栓は致死的疾患.否定できるまでは帰宅させない.

●急性冠症候群では診断や早期再灌流療法の実施までの時間経過が重要.

●急性大動脈解離や急性肺塞栓は疑うことが最大のポイント.

●急性大動脈解離では突然の鋭いあるいは引き裂かれるような胸背部痛と高血圧,および心電図変化に乏しいことが特徴的である.

●心電図で異常所見がない場合でも病歴(自覚症状)を重視すること.

●顔面蒼白,冷汗を伴う重篤感のある患者は,バイタルチェック,病歴聴取,救急処置を同時進行する.

動悸・めまい・失神

著者: 栗原宏 ,   前野哲博 ,   栗原陽子

ページ範囲:P.589 - P.592

ポイント

●「動悸」+胸痛,息切れ,失神などの随伴症状は危険信号.

●「めまい」のなかでも胸部不快感,失神,失神寸前のエピソードは危険信号.

●「失神」の患者には心電図は必須.

●「失神」「動悸」「めまい」は多くの場合,予後良好だが,心疾患は必ず除外.

呼吸困難・浮腫

著者: 小林貴 ,   池田奈保子 ,   百村伸一

ページ範囲:P.594 - P.597

ポイント

●病歴聴取で緊急性を判断し,循環器疾患をはじめとした重篤な疾患を見逃がさないようにする.

●病態判断分類の使用により,客観的な状況把握に努め,加療に活用する.

●診断過程に応じた初期加療を行い,そのフィードバックによりさらなる診断に役立てる.

循環器系理学所見のポイント

著者: 伊賀幹二

ページ範囲:P.598 - P.602

ポイント

●病歴をきちんととることができると,診察所見は診断にきわめて寄与する.

●診察では,全身診察を習慣づけること,ならびに正常所見を十分に知ることが大切である.

●到達しうる到達目標を考えて研修することが重要である.

●一つの検査では答えが出せなくても,組み合わせることにより真実に迫れる.

【循環器救急を心電図でどこまでわかるか】

胸痛

著者: 小野智彦 ,   樅山幸彦

ページ範囲:P.604 - P.607

ポイント

●胸痛の鑑別診断に12誘導心電図は必要不可欠な検査である.

●心筋梗塞の発症直後はT波増高のみ認め,心電図では診断困難なことが多い.

●来院時心電図で明らかな異常がない場合には,ニトログリセリン舌下後に再度心電図をチェックする.

●ST低下を認めたら,他誘導でST上昇がないか必ずチェックする.

●胸痛のないときの心電図で異常がなくても不安定狭心症は否定できない.

めまい・失神(洞調律時の12誘導波形から)

著者: 鎌倉史郎

ページ範囲:P.608 - P.612

ポイント

●めまい・失神をもたらす原因として房室ブロックがあるが,基礎心疾患として心サルコイドーシスは重要な疾患である.

●高齢者の急性徐脈の原因として,第一に考慮すべきは高K血症と薬剤である.

●QTの異常による失神の原因として,QT延長症候群以外にQT短縮症候群がある.

●V1~V3誘導で特徴的なST上昇が認められ,胸痛の既往がない場合は,Brugada症候群を疑う.

●めまい,失神をもたらすT波陰転の原因として催不整脈性右室心筋症,肺塞栓症,たこつぼ心筋障害,肥大型心筋症,急性心筋虚血,心室頻拍停止後のカーディアックメモリーなどがある.

めまい・失神(不整脈記録から)

著者: 丹野郁

ページ範囲:P.613 - P.618

ポイント

●心電図は,めまい・失神を主訴とする患者において必須の検査である.

●心停止につながる危険な不整脈を見逃さないこと.めまい・失神などの症状は,危険な不整脈の前兆の可能性がある.

●心原性失神は予後不良な病態であり,循環器救急と考えるべきである.

●めまい・失神の原因となる徐脈性不整脈には,洞不全症候群と房室ブロックがある.

●めまい・失神を呈する幅の広いR波を示す頻拍は,循環器救急として治療しなければならない.

循環器救急を胸部X線写真でどこまで読めるか

著者: 星俊子

ページ範囲:P.620 - P.624

ポイント

●循環器救急疾患は胸部X線写真で診断がつくものは稀だが,他疾患の否定や心不全の経過観察など有用性は高い.

●急性の呼吸困難患者で肺野に陰影を認めないときは,急性肺血栓塞栓症を疑う.

●気胸は,胸痛を訴える疾患のうち,胸部X線写真で診断がつく重要な疾患.

●左心不全では肺静脈圧の上昇に従って,肺うっ血・間質性肺水腫・肺胞性肺水腫の順に所見が出現する.

心エコーは循環器救急でどこまで役立つのか

著者: 佐藤真司 ,   小柳左門

ページ範囲:P.625 - P.629

ポイント

●良い画像を撮るにはエコーがよく入る体位,プローブを当てる場所・方向の決定が重要である.

●注目すべきポイントは壁運動,左室壁厚,心房・心室径,弁の形態・動きの異常,異常血流の有無,心囊液の有無,上行大動脈の異常,などである.

●循環器救急疾患は急変する可能性が多いので,バイタルサインの観察とともに心エコーによる経時的観察が重要である.

●原因不明の呼吸困難や不明熱の症例では一度は心エコーを当ててみてほしい.

循環器救急を血液検査でどこまで鑑別できるか

著者: 稲見徹 ,   奥村剛 ,   清野精彦

ページ範囲:P.630 - P.633

ポイント

●血液生化学マーカーを有効に用いることによって,循環器救急で重要な心血管イベントを早期に診断することが重要である.

●急性期診断だけでなく,血液生化学マーカーは,リスク層別化および予後推測などに有効である.

●心不全治療では,血液生化学マーカーをガイドとした治療が有効視されている.

虚血のマネジメント

胸痛患者を初診で診たあと,家に帰すか,専門医に紹介するか,入院を勧めるか

著者: 岡田道雄

ページ範囲:P.635 - P.637

ポイント

●外来で多い軽症例でも,患者さんにとっては大問題であり,きちんと対処する.

●外来での診断手段は,問診,診察,心電図,胸部X線の4つである.

●重症疾患における4つの手段の有用性と限界を知り,その場で,重症疾患を,「確定」,「否定」,「否定できない」の判断をする.

●重症疾患を否定できない場合,対処できる病院の専門医へ即座に送る.

急性冠症候群―救急外来で初診医がやるべきことは何か

著者: 高山守正

ページ範囲:P.638 - P.643

ポイント

●初期救急医療機関では患者評価,心電図により搬送先の選定を.

●病院救急部門では,はじめの10分で評価と初期治療を行う.

●心電図よりSTEMI,UA/NSTEMIの判別から循環器内科医への連携を.

●緊急PCIの実施施設,実施できない施設により治療方針を分けて進める.

急性期の再灌流療法―血栓溶解療法とPCIはいつ,どこまでやるのか

著者: 平山篤志

ページ範囲:P.644 - P.647

ポイント

●急性心筋梗塞(AMI)に対する血栓溶解療法や経皮的冠動脈形成術(PCI)などの再灌流療法が急性期に行われるようになり,死亡率の低下および長期予後改善効果が示された.

●ST上昇型急性心筋梗塞に対してはステントを用いたPCIが第一選択とされ,適応は発症から2日以内であれば有効である.

●非ST上昇型心筋梗塞あるいは不安定狭心症に対しては,早期に冠動脈造影を施行し,責任血管にPCIを抗血小板薬使用下に施行するが,場合によっては外科的手術も必要である.

●drug eluting stent(DES)の急性冠症候群に対する使用は,再狭窄減少という効果はあるが,晩期ステント血栓症のリスクがあることから慎重でなければならない(わが国では保険適用は認められていない).

安定型狭心症の長期管理はどうするか

著者: 伊原俊一 ,   川名正敏

ページ範囲:P.648 - P.651

ポイント

●狭心症治療目的は,発作の予防をしてQOLを向上させることと,予後を改善させることである.

●狭心症治療目標は,CCS Class I以下の運動耐容能を得ることである.

●狭心症増悪因子に対する治療後に,発作に対する治療,生命予後改善に対する治療を行う.

●血行再建術の適応は,薬物治療効果不十分で心筋虚血が証明されている症例である.

●狭心症治療は,患者の病像や社会的背景を考慮したうえで検討することが必要である.

冠動脈疾患例では,血圧とコレステロールをどこまで下げるか

著者: 深尾宏祐 ,   大村寛敏 ,   代田浩之

ページ範囲:P.652 - P.655

ポイント

●少なくとも140/90mmHg未満を目標に血圧管理をする.

●厳格な血圧管理が心血管イベント予防には重要である.

●LDL-C100mg/dl未満を目標に薬物療法を行う.

●LDL-C値にかかわらず,積極的LDL-C低下治療の有効性が報告されている.

不整脈のマネジメント

めまい・失神患者をどう扱うか

著者: 西村敬史

ページ範囲:P.656 - P.662

ポイント

●めまい・失神を引き起こす可能性のある疾患は多くの診療科にわたる.

●原因となる疾患が特定できない場合も少なくない.

●心疾患が原因である失神をみた患者の予後は,他の原因による失神患者の予後より不良である.

●降圧薬の過剰な投与や不必要な減塩指導,抗不整脈薬の不適切な投与などによる医原性のめまい・失神を起こさないよう注意したい.

●めまい・失神に対して確実な根治治療ができず,再発の可能性がある場合には,生活上の注意が必要である.

【致死性不整脈をいかに停め,回避するか】

病院内の心肺停止―病院玄関で人が倒れた,誰がどう動き,何をする?

著者: 堀進悟

ページ範囲:P.664 - P.667

ポイント

●病院内で発生した予期せぬ心肺停止に対しても,救命の連鎖を実施することが重要.

●AHA(アメリカ心臓協会)のガイドライン2000では,院内で発生した予期せぬ心肺停止には3分以内に電気的除細動を実施する体制を求めている.

●さらにガイドライン2005では,medical emergency teamの整備を提唱している.

●現場での蘇生に関して,ガイドライン2005のポイントは,①胸骨圧迫と換気回数の比が30:2,②心肺停止から4~5分以上経過した心室細動では,CPRを実施してから電気的除細動を行うこと,③電気ショック3回から電気ショック1回への変更.

VT/VFの静注薬による停止と経口薬による再発予防

著者: 網野真理 ,   吉岡公一郎

ページ範囲:P.668 - P.671

ポイント

●VT/VFの停止目的に静注薬を使用する際には,血行動態が安定しているか不安定かで選択薬が異なる.

●AHA2005ガイドラインにおいては,血行動態の不安定なVT/VFに対するリドカインの積極的使用は推奨されない.

●経口薬による再発予防には,器質的心疾患の有無および心機能の程度で選択薬が異なる.

【心房細動をどう手なずけるか】

数時間前からの発作性心房細動

著者: 熊谷浩一郎

ページ範囲:P.673 - P.675

ポイント

●AF(心房細動)の心拍数が毎分100以上の場合,まずレートコントロールを行う.

●AFの心拍数が毎分99以下の場合,抗不整脈薬による薬理学的除細動を試みる.

●AFの停止に,ピルジカイニドの単回経口投与(pill-in-the-pocket)も有用である.

●抗不整脈薬の副作用として,1:1心房粗動,洞停止,torsade de pointesがある.

●有症候性で薬剤抵抗性の発作性AFはアブレーションの良い適応である.

数日前からの心房細動

著者: 藤木明

ページ範囲:P.677 - P.680

ポイント

●持続する心房細動には,塞栓症のリスク対応が必要.

●心拍数のコントロールは治療の基本,洞調律化は症例ごとに判断.

●心房細動が数日持続するとⅠ群薬の停止効果は激減.

●心機能の低下した例にはアミオダロンが,正常な例にはベプリジルが洞調律化に有効.

●アミオダロンの心外副作用,ベプリジルの過度なQT延長に注意.

ワルファリンとアスピリンをどう使い分けるか

著者: 是恒之宏

ページ範囲:P.682 - P.685

ポイント

●リスク因子が増えるに従い,脳梗塞のリスクも増加する.

●CHADS2スコアは,心房細動患者における脳梗塞リスクを評価するうえで簡便かつ有用である.

●アスピリンはあくまでも次善の策であり,第一選択とすべきでない.

●抜歯や小手術ではワルファリン継続のうえで施行することが推奨される.

心不全のマネジメント

急性肺水腫では静注薬をどう使いこなすか

著者: 安岡良典 ,   佐々木達哉

ページ範囲:P.687 - P.690

ポイント

●治療を開始する前に心不全の原因検索を怠ることのないよう,常に留意すべきである.

●急性心不全の心血行動態改善には,前負荷,後負荷,収縮性の3要因を適切に改善させることが重要である.

●血管拡張薬として臓器保護効果を併せもつNa利尿ペプチド製剤を第一選択とすることが多くなってきた.

BNPを心不全の管理にどう活用するか

著者: 猪又孝元

ページ範囲:P.691 - P.694

ポイント

●心不全の鑑別診断におけるBNPの意義はほぼ確立され,100pg/mlとの心不全診断閾値が広く用いられている.

●産生側(心房細動・心筋伸展不良・心肥大)と代謝側(腎機能障害・加齢・貧血・肥満)の要因がBNP値を修飾する.

●200pg/ml未満を目標としたBNPガイド下心不全管理は心不全イベントの発生を低下させる.

●心不全急性期は従来臨床指標で管理し,慢性期・寛解期には長期予後指標としてBNPを補完的に活用する.

●BNP<100pg/mlの心不全例ではβ遮断薬導入が容易であるが,BNP高値は必ずしも導入困難の予見とはならない.

慢性心不全例で,塩分と水はどこまで制限すべきなのか

著者: 杉浦知範 ,   木村玄次郎

ページ範囲:P.695 - P.697

ポイント

●心不全では心拍出量を代償的に維持するため,腎におけるNa+再吸収は亢進している.

●重症心不全では水分の体内貯留が起こり,低Na+血症が進行し,予後が悪化する.

●本邦では,軽症心不全では1日塩分摂取量を7g以下に制限するように勧告している.

●体液バランスを考えると「飲水」量は「尿」の量にほぼ等しい.

●心不全患者が腎機能障害を呈した場合は,予後が悪化する.

ACE阻害薬,ARB,抗アルドステロン薬は同じか,違うのか

著者: 岡崎史子 ,   吉村道博

ページ範囲:P.698 - P.700

ポイント

●レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系は心不全の病態に非常に重要である.

●ACE阻害薬,ARB,抗アルドステロン薬,いずれも心不全には有用である.

●各薬剤とも血圧,腎機能,K値には十分注意しなければならない.

●BNPが心不全治療効果の指標として有用である.

●エプレレノンが日本でも使用可能となり,その効果が期待される.

β遮断薬をいつ,何を投与し,どのように増量するか

著者: 吉川勉

ページ範囲:P.702 - P.705

ポイント

●心不全急性増悪からの回復期においては,退院前にβ遮断薬の初期用量を開始する.

●症状のない心機能低下例においても,β遮断薬を早期に開始したほうがよい.

●必ず通常量の1/8程度の低用量から開始し,忍容性を確認しながら,目標量まで増量する.

●開始時には循環動態が安定し,β遮断薬投与の禁忌となる合併疾患がないことを確認する.

●β遮断薬は必ずしも第二選択薬ではない.

いつペーシングによる心臓再同期療法(CRT)を開始するか,いつICD付きCRTを勧めるか

著者: 松田直樹

ページ範囲:P.706 - P.710

ポイント

●心室内伝導障害に伴う心室同期不全を是正する治療が,心臓再同期療法(CRT)である.

●CRTの基本的な適応は,QRS幅130msec以上,左室駆出率35%以下のNYHAクラスⅢないしⅣ症例である.

●十分な薬物治療を行っても心不全が重症化してきたら,早期にCRTを考慮すべきである.

●QRS幅が広くても,心室同期不全が軽度の例や左室自由壁に大きな梗塞巣がある例は,CRTの有効率が低い.

●心不全患者の予後改善には,心不全対策に加え突然死対策が重要である.

●突然死予知が困難な現状では,致死性不整脈の既往のない症例にもCRT-Dの植込みが広く行われている.

座談会

安全第一の循環器管理―ポイントは何か?

著者: 三田村秀雄 ,   赤石誠 ,   出川敏行 ,   山下武志

ページ範囲:P.712 - P.723

 循環器疾患の診療はしばしば一刻を争い,プライマリケア段階での対応が鍵を握ることも少なくない.循環器の専門家ではない一般内科医,あるいは研修医は,さまざまな病態を呈する循環器疾患に,日常診療のなかでどう対応していったらよいのだろうか?

 「一般内科医が診る循環器疾患」を特集した本号では,循環器診療の最前線で活躍する4人のエキスパートに,循環器管理のポイントについて,一般内科医向けにわかりやすくお話しいただいた.

連載

目でみるトレーニング

著者: 山本元久 ,   小田口尚幸 ,   久田剛志

ページ範囲:P.729 - P.734

研修おたく海を渡る・28

契約書

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.735 - P.735

 前回の就職活動に続き,今回は契約について書いてみたいと思います.あくまで,腫瘍内科での話ですが…….

 2~3回の訪問で,お互いにうまくやっていけそうだと確認できると,勤務体系,収入や,医療過誤保険についてさらに突っ込んだ話が進みます.1人でやっているところに2人目として加わるのと,十数人抱える開業医グループに加わるのとでは,状況はずいぶん違ってきます.

市中感染症診療の思考プロセス IDATEN感染症セミナーより・1【新連載】

市中感染症診療の基本原則

著者: 青木眞

ページ範囲:P.736 - P.741

適切な感染症診療の基本要素

ポイント

1. 正確な感染症の存在とその重症度の認知

2. 問題の臓器・解剖と原因微生物の整理

3. 2に基づく適切な抗菌薬の選択・変更

4. 適切な抗菌薬の効果(=感染症の趨勢)判定

見て・聴いて・考える 道具いらずの神経診療・4

―患者が診察室に入ってきた,その瞬間を捉える3―歩行からわかること

著者: 岩崎靖

ページ範囲:P.742 - P.747

 今回は,患者が診察室に入ってきた際の歩行について,観察のポイントを書いてみたい.

 歩行障害を訴えて神経内科を受診する患者は多く,「ふらつく」,「歩きにくい」と問診表に記載されていることが多いが,「よく転ぶ」という訴えもしばしばみられる.歩行障害を「めまいがする」とか「足がしびれる」と訴える患者も意外と多く,ふらつきを周囲が感じていても本人が気にしていない場合など,歩行障害が問診表に上がってこない場合もある.したがって,歩行障害の訴えがない場合でも入室時の歩行状態を観察することは神経学的診療において極めて重要である.歩行の異常は,パターン認識でもあり,入室時の歩行をみて「〇〇歩行だ!」と直感を働かせることができれば鑑別診断,その後の診察をスムーズに行うことができる.

患者が当院を選ぶ理由 内科診察室の患者-医師関係・4

患者に怒りよりも悲しみを伝える

著者: 灰本元

ページ範囲:P.748 - P.751

 患者-医師関係がいつもうまくいくわけではない.患者も医師もその時々にいろいろな日常的苦難を抱えているから心身とも不調な時期もあって,そういうときは早く一日が過ぎてくれればと無事を祈りながら診療することもある.また,患者のなかには性格がゆがんだ人(いわゆる人格障害圏)や精神病圏の人もかなりの数(統計的に人格障害は10人に1人,精神病圏は100人に数人レベル)いるから,うまくいかなくても何も全部自分のせいにすることはないだろう.

聖路加Common Diseaseカンファレンス・13

―一般内科編―あなたは浮腫を的確に鑑別できますか?

著者: 森信好 ,   田中まゆみ

ページ範囲:P.752 - P.757

浮腫の診断 まずはここを押さえよう
①浮腫では,局在性(全身性か部分性か)の問診と,圧痕の有無が重要である.
②病態の理解が診断への鍵である.

研修医のためのリスクマネジメント鉄則集・4

リスクマネジメントのABCD―その2 事故が起こらないような組織をつくる

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.758 - P.760

 前回に引き続き,リスクマネジメントのABCDより「A:Anticipate(予見する)」について取り上げる.前回は,医師個人として日ごろから,リスクマネジメントの基本となる「予見性」を身につけるにはどうしたらよいかを中心に述べたが,今回は医療機関という組織として「予見性」を身につけるにはどうすべきか,また,個々の医師としてどうこの問題にアプローチすべきか,考えてみることにしたい.

リスクマネジメントのABCD

A=Anticipate……(予見する)

B=Behave………(態度を慎む)

C=Communicate(何でも言いあい話し合う)

D=Document……(記録する)

書評

認知行動療法トレーニングブック DVD付

著者: 尾崎紀夫

ページ範囲:P.676 - P.676

訳:大野裕

A5 頁360 2007年

定価12,600円(本体12,000円+税5%)

[ISBN978-4-260-00426-8]医学書院刊

 認知行動療法に対する関心は,精神科医,臨床心理士のみならず,一般にも広がっており,新患患者から「認知行動療法を受けたい」と言われる場合もまれではない.気分障害,不安障害さらには統合失調症など多様な精神障害に対する治療効果が示され,患者のニーズにも適っているとなれば,認知行動療法をできるだけ臨床場面で活用したい.また,教育を使命としている大学に在籍する以上,認知行動療法を実践できる臨床家を養成することが求められる.そこで,何かよい認知行動療法のテキストはないかと探してきた.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.768 - P.768

●医師の診療能力をアップさせるために,最も有効なトレーニングとは何だろうか? この問いに,少なくない医師が「とにかく患者さんをたくさん診ること」と答えるのではないだろうか.

●患者の示す病歴,症状は多様だ.それを限られた時間のなかで適切に把握し,適確に診断するのは並大抵の能力ではない.その能力を支えるのは,やはりたくさんの患者を診てきた経験であろう.これまで診てきた経験の蓄積こそが,瞬時に「疑うべきポイント」を想起させ,次の一手を導かせるのだ.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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