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雑誌目次

雑誌文献

medicina45巻6号

2008年06月発行

雑誌目次

今月の主題 実践! 糖尿病診療

著者: 山守育雄

ページ範囲:P.959 - P.959

 近年,世界中で糖尿病が激増し,医療経済上も大きな課題となっている.国際連合は2006年,毎年11月14日を世界糖尿病デーと位置づけ,全世界が糖尿病制圧に向かって努力することを呼びかけた.患者数の増加に伴い,一般医家の外来を受診する糖尿病患者数も年々増加を続けているものと思われる.また,メタボリックシンドロームへの早期対策により,将来の医療費節減につなげることを目指して,今年度から特定健診・特定保健指導が開始されたが,その結果,これまで未診断であったり,未治療であった糖尿病患者の掘り起こしにより,受診者数の大幅な増加も予想されている.重症化予防の観点からは大いに歓迎すべきことではあるが,一方でこれを受け入れる側の医療供給体制の課題も,今後明らかになってこよう.

 こうした糖尿病患者数の増加は,製薬企業にとっては大きなビジネスチャンスであり,事実,糖尿病治療薬の市場規模は急激な拡大をみせている.さらに今後数年のうちには,新しい作用機序による各種新薬の登場も予想されており,今や糖尿病治療薬は百花繚乱の観がある.インスリン製剤にもさまざまな進歩がみられ,ここ数年のうちには治療風景が大きく様変わりしていくことが予想される.

糖尿病診療の今

わが国の糖尿病の現状

著者: 遅野井健

ページ範囲:P.960 - P.962

ポイント

●わが国においては糖尿病患者の増大に加えて,医療機関の受診率が低いことが問題である.

●糖尿病性の合併症における動脈硬化性疾患の意義が高まっている.

●指導体制も含めた糖尿病診療システム機築が求められている.

わが国の糖尿病治療の現況

著者: 金塚東

ページ範囲:P.964 - P.968

ポイント

●1型糖尿病患者において,超速効型ヒトインスリンアナログ製剤と持効型製剤によるbasal-bolusインスリン注射療法が多用されている.

●2型糖尿病で,経口血糖降下薬あるいはインスリン製剤により治療を受けている多くの患者において血糖コントロールが不良である.

●2型糖尿病は病態が多様であるから,経口薬単剤で血糖コントロールが得られなければ,積極的に第2,3の経口血糖降下薬,さらにインスリンの併用ないしインスリン療法への変更を考慮すべきである.

初診時のチェックポイント

病歴聴取

著者: 織田一昭

ページ範囲:P.969 - P.973

ポイント

●患者が糖尿病手帳や服薬手帳を所持していると,これまでの情報が得やすい.

●問診で必要なことは,通常の問診事項に加えて,病型を把握するのにヒントになる情報を得るように意識することである.なぜなら,病型により治療方法や管理目標が異なるからである.

●現病歴,既往歴のほかに,ライフスタイル,教育,経済状況などの聴取を可能な範囲で行う.

●他疾患で受診した際にも,主訴やそのときの身体状況によっては,糖尿病の可能性を考えて診療にあたる必要がある.

身体所見

著者: 近藤国和

ページ範囲:P.974 - P.977

ポイント

●初診時は著明な高血糖,ケトーシス,高度の脱水など,緊急性のある患者を身体所見から迅速に診断する必要がある.

●初診時の慢性合併症の有無は罹病期間の推定に重要であるが,検査のみに頼らず身体所見から積極的に情報を得ることが必要である.

●糖尿病患者をみたら,一度は内分泌疾患を疑ってみることが大切であり,その身体的特徴を見逃さないことが重要である.

やっておきたい検査

著者: 奥村中 ,   伊藤禎浩 ,   石川孝太 ,   小澤由治

ページ範囲:P.979 - P.982

ポイント

●ピットフォールに注意しながら,診断を進めよう.

●イメージの湧くような結果説明こそが,患者の心を動かす.

●救急外来では,病状変化を予測できるように検査を組み立てよう.

治療の実際

治療の進め方・組み立て方―まず何から始めるか

著者: 山村祐嗣

ページ範囲:P.983 - P.985

ポイント

●まず自分の手に負える症例かどうかを見きわめ,不安があれば専門医に相談する.

●網膜症は必ずチェックし,血糖値の改善に伴う眼底出血を避けよう.

●治療の目標を本人とよく相談し,医師はそれを手伝うというスタンスで臨もう.

【食事療法と運動療法】

食事指導のポイント:管理栄養士がいる場合

著者: 岩岡秀明

ページ範囲:P.986 - P.988

ポイント

●食事療法の原則は,適正なエネルギー量の食事,栄養素のバランスがよい食事,規則的な食生活,糖尿病合併症の予防・進展阻止が図れる食事という4点である.

●食事指導においては,十分な動機づけと,いかに「やる気」を起こさせるか,いかに継続させるかが重要である.

食事指導のポイント:管理栄養士がいない場合―何をどのように教えるか? まずは理解しておくこと

著者: 山之内国男

ページ範囲:P.990 - P.994

ポイント

●摂取エネルギー量の違いは,主に食品交換表の表1(穀物)と表3(魚介,肉,卵,大豆)に反映される.

●コントロール悪化の原因は,果物,菓子,飲料,お酒である.特に果糖には注意しよう.

●外来での指導をスムーズに実施するには,食事記録,アンケート,体重表などを利用する.

運動療法のポイント

著者: 羽賀達也

ページ範囲:P.995 - P.999

ポイント

●運動療法を安全に効果的に行うためには,メディカルチェックが必須である.

●運動療法の基本は,ある程度以上の持続する有酸素運動である.

●可能ならば,有酸素運動と並行してレジスタンス運動を行うことが望ましい.

●最大酸素摂取量(VO2max)の40~60%の運動を,少なくとも週に150分間行うことが勧められる.

●運動療法は,患者の行動変容を促す過程であることを自覚して指導する.

【薬物療法】 どの時点で薬物療法を開始するか

初診時のHbA1cが6%台の場合

著者: 大田祥子 ,   大石まり子

ページ範囲:P.1001 - P.1004

ポイント

●軽症糖尿病(食後高血糖)では,大血管合併症のリスクがある.

●軽症糖尿病の具体的治療目標は,HbA1c(空腹時血糖値),食後血糖値がともに,ガイドラインの「優」である.

●食事・運動療法後2~3カ月で血糖コントロールが是正されなければ,薬物療法を考慮する.

●治療薬は,軽症糖尿病の3つの病態(インスリン分泌能低下,インスリン抵抗性,食後高血糖)を考えて選択する.

初診時のHbA1cが8%台の場合

著者: 重藤誠 ,   松田昌文

ページ範囲:P.1005 - P.1008

ポイント

●治療の目的は合併症を予防することであり,血糖を下げることではない.治療開始のタイミングは患者背景によって異なる.

●健康診断や人間ドックで発見されたような例では,2~3カ月程度食事・運動療法を行い,目標に到達できない場合に薬物療法を考慮する.

●若年者の社会背景は多様になってきており,おのおのにあった治療方針を考える必要がある.

●特に変化に弱い高齢者に対し,初めから厳格なコントロールを要求する必要はない.

初診時のHbA1cが10%台の場合

著者: 傍島裕司

ページ範囲:P.1010 - P.1013

ポイント

●1型糖尿病が疑われるときや急性代謝失調を認める場合は,インスリン治療が必要となる.

●網膜症を認める場合は,急激に血糖コントロールを改善しない.

●糖毒性によるインスリン分泌不全やインスリン抵抗性を軽減する目的で,短期のインスリン治療も考慮する.

血糖降下薬の使い分け

α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)とグリニド系薬

著者: 菅原正弘

ページ範囲:P.1015 - P.1019

ポイント

●治療薬の選択は,①遺伝的素因,②インスリン抵抗性,③脂質代謝や血圧の異常の有無を重視する.

●空腹時血糖値140mg/dl未満かつ2時間血糖値200mg/dl以上かつHbA1c7.5%未満が対象である.

●インスリン初期追加分泌の低下が顕著の場合,グリニド系薬を考慮する.

ビグアナイド(BG)薬とチアゾリジン(TZD)薬

著者: 中山幹浩

ページ範囲:P.1020 - P.1025

ポイント

●インスリン抵抗性は,糖尿病とメタボリック症候群の発症・進展と密接な関係があり,動脈硬化性疾患を引き起こす.

●BG薬とTZD薬は,インスリン抵抗性を改善し,大血管合併症のリスクを低減できる.

●BG薬では消化器症状と乳酸アシドーシスの発症に,TZD薬では浮腫と体重増加に注意する必要がある.

経口血糖降下薬の併用療法

著者: 宮岡弘明

ページ範囲:P.1026 - P.1028

ポイント

●併用薬選択のポイント:異なる薬効の薬を併用する.保険適応に注意を要する.

●血糖降下作用に差あり:血糖降下作用の強い順にSU薬,TZD薬,BG薬,速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬),α-GI.

薬剤の適正選択

著者: 山守育雄

ページ範囲:P.1029 - P.1031

ポイント

●わが国の2型糖尿病の病態は多様化しつつあり,かつては補助的な存在であったビグアナイド(BG)薬が奏効する症例が確実に増えてきた.

●膵β細胞の保護には空腹時血糖の正常化が重要であり,空腹時血糖が上昇し始めた時期にはスルホニル尿素(SU)薬がよい適応となる.

●SU薬を増量しても十分な効果が得られない場合には,いつまでもSU薬にこだわらず,早めにより確実な効果の得られる手段を選択すべきである.

どの段階でインスリン治療に踏み切るか

著者: 平井愛山

ページ範囲:P.1032 - P.1039

ポイント

●病態に合わせ,SDM2008を活用する.

●血糖とHbA1cによる評価を適切に行う.

●インスリン導入は,必要なケースでは積極的に行う.

インスリン療法

インスリン1回および2回注射法

著者: 横井寿

ページ範囲:P.1041 - P.1043

ポイント

●食事時間が不規則な症例と1型糖尿病例には導入しない.

●2回注射法は,25~30%超速効型混合インスリン1日0.2~0.3単位/kgを朝2:夕1または朝3:夕2に分割して開始する.

●1回注射法は1日4単位から開始する.

●十分な血糖コントロールが得られなければ,強化インスリン療法に切り替える.

インスリン3回注射法

著者: 村上雅子

ページ範囲:P.1044 - P.1048

ポイント

●二相性インスリンアナログ製剤の特徴と適応を理解したうえで,これらを組みあわせて有効利用する.

●インスリンアナログ製剤は食後高血糖のコントロールに有効である.

●ヒトインスリン混合型アナログ製剤から二相性インスリンアナログ製剤への切り替えにおける有用性が,The 1-2-3 Studyなどにより報告されている.

インスリン4回注射法

著者: 加藤光敏

ページ範囲:P.1050 - P.1054

ポイント

●低血糖に対する不安は,患者よりも患者を診る糖尿病非専門医に強いことが多い.

●インスリン4回注射法での眠前インスリン量は,早朝空腹時血糖が正常に近づくように調節する.

●1日3回のインスリンと同時に,夕食時に持効型インスリンを使用すれば,患者にとっての負担感は3回注射法と変わらない.

インスリンと経口血糖降下薬の併用療法

著者: 辻野元祥

ページ範囲:P.1055 - P.1057

ポイント

●経口血糖降下薬に早期にインスリン療法を併用することによって,低血糖の増加や体重増加なしに血糖コントロールを改善し,細小血管障害を25%抑制しえたという報告がある.

●スルホニル尿素(SU)薬で血糖コントロールが不十分な症例に対する持効型インスリン併用療法(BOT)が簡便なインスリン導入方法として注目されている.

●BOTは,強化インスリン療法導入が困難な症例に対して,とりあえずHbA1cを改善する手段としては有効であるが,治療のゴールとしては不十分な場合もあり,必要であれば追加分泌の補充を躊躇なく検討する必要がある.

主治医として知っておきたいこと

緊急を要する高血糖・低血糖

著者: 布井清秀

ページ範囲:P.1058 - P.1061

ポイント

●緊急を要する高血糖として,糖尿病ケトアシドーシスと高血糖高浸透圧症候群がある.インスリンの減量,感染症の併発,ステロイドや高カロリー輸液などが誘因の場合が多い.

●低血糖は,薬と食事・運動のアンバランスで起こる.無自覚性低血糖,スルホニル尿素(SU)薬投与時の食欲低下や運転時,アルコールなどに注意する.

●高血糖・低血糖ともに,教育と血糖自己測定による早期発見が重要である.

合併症早期発見のために

著者: 升田紫 ,   仁科祐子 ,   藤林和俊 ,   林道夫

ページ範囲:P.1063 - P.1068

ポイント

●糖尿病合併症は,「血管のトラブル」である.

●臨床では,①細小血管障害(神経障害,網膜症,腎症)と②大血管障害(脳血管障害,冠動脈疾患,閉塞性動脈硬化症)に大別し,おのおのについて評価を進める.

合併症が進んだ患者の外来管理

著者: 加藤泰久 ,   山家由子 ,   新実光朗

ページ範囲:P.1070 - P.1073

ポイント

●糖尿病合併症,大血管障害の程度とリスクを評価し,患者と情報を共有しておく.

●腎機能低下患者では薬剤の選択,低血糖の発生には特に注意し,専門医と早めに連携をとる.

●足潰瘍,壊疽の発生を見逃さない.見つけたら治療を躊躇しない.

治療中断を防ぐ方策

著者: 船山秀昭

ページ範囲:P.1074 - P.1077

ポイント

●患者が治療中断する心理的要因や客観的要因を把握する.

●6カ月以上の治療中断例では合併症の頻度が高く,男性により多い.

●治療中断防止策として,患者の属性(特に職種)を知ること,また「生きがい」のための血糖コントロールを強調することである.

●受診中断率の半減を目的とするJ-DOIT 2研究が進行中である.

●治療中断後の対応は,医療側のポリシーや地域によって異なる.

糖尿病療養指導士とは

著者: 渥美義仁

ページ範囲:P.1078 - P.1080

ポイント

●日本糖尿病療養指導士は,糖尿病治療に欠かせないチーム医療において経験と知識が認定されているメンバーである.

●糖尿病療養指導士がその能力を発揮するには,看護部の認知と医師の協力と支援が欠かせない.

『糖尿病治療のエッセンス』について

著者: 宮川高一

ページ範囲:P.1081 - P.1084

ポイント

●『糖尿病治療のエッセンス』は,コンパクトに治療のポイントがまとめられ,実地医家に使用しやすいものになっている.

●2007年度版で「インスリン療法」も追加された.

●しかし,個々の患者の治療をどう進めていくかについては,『エッセンス』をもとに2~6時間の実践的な専門医などの講演が必要であろう.

糖尿病診療の将来

糖尿病治療にかかわるエビデンスの構築に向けて

著者: 山守育雄

ページ範囲:P.1086 - P.1089

ポイント

●血糖コントロールの重要性など,総論的レベルでは強く推奨されるエビデンスが蓄積されている.

●しかし,個別具体的な方法については,いまだ十分なエビデンスが存在しない分野も多い.

●現在,わが国のエビデンスとなるべき研究が数多く進行中であり,数年後にはそれらの成果が得られると期待されている.

今後,登場が期待される糖尿病治療薬

著者: 清野弘明

ページ範囲:P.1090 - P.1092

ポイント

●GLP-1は,血糖がある程度高値のときに限って,インスリン分泌効果があり,低血糖の危険性が少なく,動物実験では膵臓β細胞の増殖および新生が観察されている.

●吸入インスリンは,インスリンパウダーや液体エアロゾル化インスリンを吸入する方法で,速効型インスリンに匹敵する.

地域医療連携の展開

著者: 篠田純治

ページ範囲:P.1094 - P.1097

ポイント

●広い視野をもって,予防から治療まで連携する.

●医療スタッフの有効活用を地域で考える.

●地域ごとの特性を生かす.

座談会

糖尿病診療における専門医と一般医のコラボレーション

著者: 山守育雄 ,   野﨑士郎 ,   佐久山雅文 ,   山村祐嗣

ページ範囲:P.1098 - P.1109

 2006年国民健康・栄養調査によると,糖尿病が強く疑われる人は約820万人,可能性が否定できない人は約1,050万人と推定されている.

 増え続ける患者,コントロール不十分や未受診の患者に対し,専門医と一般医,医師とコメディカルがどう連携し,診療にあたっていくか.本座談会では,診療現場の問題を挙げ,血糖コントロール,治療継続のためのマネジメントなど,一般医と専門医および医師とコメディカルとの効果的な連携について,糖尿病診療に携わる一般医・専門医の先生方にお話しいただいた.

連載

目でみるトレーニング

著者: 久田剛志 ,   岩崎靖 ,   山本元久

ページ範囲:P.1115 - P.1120

見て・聴いて・考える 道具いらずの神経診療・6

―主訴別の患者の診かた1―しびれを訴える患者の診かた

著者: 岩崎靖

ページ範囲:P.1122 - P.1127

 第2~5回では,患者が診察室へ入る際の観察点について書いた.今回からは日常診療で比較的頻度の高い神経症状(しびれ,めまい,ふるえ,頭痛,物忘れ,歩行障害)について,問診や診察のポイントを書いてみたい.

患者が当院を選ぶ理由 内科診察室の患者-医師関係・6

生活習慣病の向こうに癌がみえる

著者: 灰本元

ページ範囲:P.1128 - P.1131

 平均寿命は女性で85歳に,男性では78歳に達した昨今では,寝たきりや認知症がないなら80歳まで元気で生きたいという願望が多くの中年患者から聞こえてくる.一昔前は70歳までが主流だった.この願望に答えられるように長期的に深慮するのは開業医ならではの責務である.勤務医では数十年先まで診たくても診ることは難しい.

研修医のためのリスクマネジメント鉄則集・6

リスクマネジメントのABCD―その4 「日ごろの態度」がものをいう

著者: 田中まゆみ

ページ範囲:P.1132 - P.1134

 今回のテーマは,「リスクマネジメントのABCD」の「B:Behave(態度を慎む)」である.「日ごろの態度」が結局は訴訟を防ぐことになるので,真剣に身につけなければならない.

リスクマネジメントのABCD

A=Anticipate……(予見する)

B=Behave………(態度を慎む)

C=Communicate(何でも言いあい話し合う)

D=Document……(記録する)

市中感染症診療の思考プロセス IDATEN感染症セミナーより・3

市中肺炎のマネジメント

著者: 岩渕千太郎

ページ範囲:P.1136 - P.1144

ケース 湿性咳嗽と肺野浸潤影を伴う66歳の重喫煙歴がある大酒家

(本稿では,洛和会音羽病院の大野博司先生がIDATEN感染症セミナー用に作成したシナリオを使用した)


現病歴 66歳男性が7日間続く38℃台の発熱,悪寒・戦慄,血痰を伴う湿性咳嗽の訴えで救急外来を受診した.患者は特に既往歴はないと言い張るが,毎日4~5合の焼酎を飲み,2箱/日(40年間)の喫煙もある.職業は自由職という.


身体所見 体温38.6℃,心拍数118,呼吸数30,血圧120/62.全身状態:きつそう.衛生状態は悪そう.頭目耳鼻喉:結膜・咽頭軽度発赤あり,口腔内齲歯多数,心臓:I・II音正常,雑音なし,胸部:右上肺野の呼吸音減弱,打診上濁音,ラ音あり,腹部:平坦・軟,圧痛・腫瘤なし,肝脾腫なし,四肢:浮腫なし,皮疹なし,チアノーゼなし.


検査データ 白血球26,200/μl(65%好中球,8%桿状球,8%リンパ球,1%単球),喀痰グラム染色:多量の多形核白血球,大型のグラム陰性桿菌の貪食像,胸部X線:右上葉に浸潤影.

研修おたく海を渡る・30

がんプロ(1)

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1146 - P.1146

 がんプロになりたいという想いを胸に渡米して,すでに6年が経ちました.日本ではがん対策基本法の成立に伴い,がんプロ養成のための特別予算がついたという話を聞きました.

 well-rounded oncologist,つまりバランスのとれたがんプロになるにはどうすればいいのでしょうか? 田舎の大学病院での経験ですが,これがよかったんちゃうかなぁと思うものを書きつづってみます.

書評

在宅酸素療法マニュアル―新しいチーム医療を目指して 第2版

著者: 飛田渉

ページ範囲:P.1089 - P.1089

 在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)は,1985年に保険適応になって20年を過ぎました.わが国における在宅医療のパイオニア的役割を果たしてきたと言っても過言ではありません.この間,HOTは大きな変貌を遂げてきているのも確かです.基礎疾患が大きく変わっているのもその理由の一つです.HOT患者ははじめ,肺結核後遺症が全体の約3割を占めていたのが漸減し,間質性肺炎や肺癌のHOT患者が増加してきております.新たに睡眠呼吸障害を伴う心不全にHOTが適応となりました.一方では,HOT患者の高齢化も起こっております.当初,平均年齢は63歳でした.それが今や70歳を超えています.さらに社会環境の変化に伴い,HOT患者においても例外なく核家族化が進んだだけでなく,独居患者も増加しています.このような背景にあって,HOTの今後のあり方がきわめて重要な課題になっています.

 本書の著者,木田厚瑞氏はわが国の呼吸病学の第一人者であり,呼吸器疾患患者のリハビリテーションに関する臨床研究を一貫してなさってきました.特に,呼吸器病の治療にはチーム医療による包括的なアプローチが必要であると,「包括的呼吸リハビリテーション」のプログラムを提唱しました.1995年のことです.これを契機にわが国において,チーム医療による呼吸リハビリテーションが多くの医療施設に導入されるようになりました.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.1154 - P.1154

●不安定な天候が続いた4月下旬,子が体調を崩しました.ゼーゼーが続き,夜中も咳込みます.気管支拡張薬を吸入・服用し症状は治まってきましたが,再診時おそるおそる尋ねてみました.「やはり喘息ですか?薬は飲み続けなければいけないのでしょうか?」

●医師は「その可能性が高いですね.“小児喘息”と聞くと肩を落とす親御さんが多いですが,大人も便秘や肌荒れなど,誰もが弱い部分をもっています.病気とうまくつきあっていきましょう」.また「症状には出ないが,体内では気管支の炎症が続いています.症状を抑えるだけでなく,予防的に薬を飲みながら,季節の変わり目などどの時期に調子が悪いのか,経過を追うことも大切です.長い目でみながら,状態に応じた治療をしていきましょう」と電子カルテの記録を見ながら話してくださいました.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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