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今月の主題 内科医のためのがん診療Update 支持療法
がんに関連した緊急事態の病態と治療
著者: 綿屋洋1 一瀬幸人1 中尾正嗣2 山本裕康2 安達淳一3 西川亮3
所属機関: 1九州がんセンター呼吸器科部 2東京慈恵会医科大学腎蔵・高血圧内科 3埼玉医科大学国際医療センター脳・脊髄腫瘍科
ページ範囲:P.1482 - P.1486
文献購入ページに移動本稿で述べる心タンポナーデ(癌性心囊炎),癌性胸膜炎という疾患自体は,なにがしかの治療が必要な病態ではあるが,そのすべてに緊急性があるわけではない.症状の有無が緊急性を決める最も大きな因子である.呼吸器,循環器の不全状態は,生命にかかわる.また,症状が時間単位で,日単位で,週単位で増悪しているのかといった,時間的な変化も考慮する必要がある.
電解質異常(高Ca血症,SIADH)
がんに認められる水・電解質異常のなかで,合併頻度が比較的高く,緊急の対応を要する病態として,高カルシウム(Ca)血症である悪性腫瘍随伴高Ca血症(malignancy associated hypercalcemia:MAHC)と低ナトリウム(Na)血症である抗利尿ホルモン分泌異常症(SIADH:syndromes of inappropriate secretion of antidiuretic hormone)について概説する.
脊髄圧迫,脳圧亢進
がんによる脊髄圧迫
がんによる「脊髄圧迫」は,がんが血行性に椎体骨に転移し増殖して起こる場合が多い.椎体骨への転移は椎体の病的骨折を招き,変位した骨によって脊髄が圧迫される.がんが椎体から硬膜外腔へ進展し脊髄を圧迫する場合もある.脊椎の不安定性が圧迫を増悪させる因子となる場合も多い.また,悪性リンパ腫や神経芽細胞腫では,傍脊椎に存在する腫瘍が椎間孔から侵入して,がんそのものが直接的に脊髄の圧迫を引き起こす場合もある.さらに,圧迫による直接の脊髄損傷とは別に,圧迫を受けた脊髄の静脈潅流障害から,虚血・壊死へと至る病態も指摘されている.
参考文献
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