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医師が患者になるとき―The PHYSICIAN as PATIENT:A Clinical Handbook for Mental Health Professionals フリーアクセス
著者: 飯野靖彦1
所属機関: 1日本医科大学腎臓内科
ページ範囲:P.1669 - P.1669
文献購入ページに移動監訳はこの分野でのエキスパートである松島英介先生と保坂隆先生である.内容は3部に分かれており,主として医師の精神疾患を中心に,それぞれに症例を掲げ解説を加えている.第1部では医師の特性と脆弱性について述べており,医師の共通する特性は“完璧主義と自己非難である”としている.例として小児心臓外科医の自殺を取り上げ,“100人中98人を救った”とは考えず,“100人中2人を失った”と考えた完璧主義が原因と推論している.この完璧主義はうつ,燃え尽き,自殺などの脆弱性因子となる.さらに医療ミスを0にすることは困難であるにもかかわらず,メディアもこの完璧主義を医療に求める風潮がある.現在の日本においても患者サイドから,100%の治療結果を求めて裁判を起こすことがよく報じられているが,この特性と脆弱性をもつ心ある医師はこれに耐えられず自己不信感・罪悪感・過度の責任感から精神的破綻に陥る.統計でも医師は一般人に比べ自殺率が高い.さらに日本と同じように女性医師の多い米国においても,ハラスメントが存在し女性医師の精神的負担となる.第2部では“苦悩する医師と苦悩させる医師の診断と治療上の問題”について述べている.その中には精神疾患,薬物中毒,パーソナリティ障害,さらには日本でも新聞上で時に問題になる非倫理的な患者との性的関係がある.第3部はその予防と治療とリハビリテーションについて述べられている.
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