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特集 CT・MRIアトラス Update―正常解剖と読影のポイント 胸部 各論
心臓・心囊
著者: 市川泰崇1
所属機関: 1松阪中央総合病院放射線科
ページ範囲:P.203 - P.211
文献購入ページに移動正常解剖(図1~4)
心臓は心膜に包まれ,人の握り拳大で,重量は250~350gである.心臓の下端部はやや尖り,心尖と呼ばれる.心臓内部は右心房,右心室,左心房,左心室の4つの部屋に分かれる.房・室および左右心室を隔てる境界に一致して,心臓の表面に溝がみられる.心房と心室の間の溝は房室間溝と呼ばれる.心室の前面と後面には縦走する溝があり,前室間溝・後室間溝と呼ばれる.右心房は心臓の右上部を占め,後方の上下に上大静脈と下大静脈が注ぐ.右心耳は上大静脈の基部から左前方に向かって突出する.心房中隔には浅い卵円形の凹みがあり,卵円窩と呼ばれる.三尖弁は前尖・後尖・中隔尖からなる.右心室は心臓の最下部を占め,内面に多数の肉柱がみられる.心室中隔は右心室に向かって膨隆する.心室中隔の大部分は筋性で厚いが,中隔上部の小部分は薄く膜様で,膜性部と呼ばれる.肺動脈弁口は右心室の前上部に位置する.左心房は心臓の後上部にあり,後壁上部に左右肺から2本ずつ肺静脈が開口する.左心耳は肺動脈起始部の左方に位置する.左心室の内面には右心室と同様に多数の肉柱がみられ,前壁と下壁には強大な乳頭筋(前乳頭筋・後乳頭筋)が突出する.僧帽弁は2個の弁尖(前尖・後尖)からなる.大動脈弁と肺動脈弁は同様の形状をもち,3枚の半月弁からなる.
冠動脈は右冠動脈と左冠動脈からなる.右冠動脈は大動脈起始部腹側の右冠動脈洞から分岐し,右房室間溝に沿って走行する.左冠動脈は大動脈起始部左背側の左冠動脈洞より起始し,左冠動脈前下行枝と左冠動脈回旋枝に分岐する.分岐するまでを左主幹部と呼ぶ.分岐した左冠動脈前下行枝は前室間溝,左冠動脈回旋枝は左房室間溝に沿って走行する.冠動脈の各セグメントの名称については,AHA(American Heart Association)の分類が一般的に使用される.心臓の静脈の大部分は冠状静脈洞に集まり,右心房に注ぐ.冠状静脈洞の開口部は,下大静脈口と三尖弁口との間に位置する.
心臓を包む結合組織性の膜を心膜という.心膜は,心臓表面を覆う臓側心膜と,胸膜と接する壁側心膜より構成される.両者に囲まれた空間が心膜腔であり,心膜腔には正常でも50ml以下の心囊液が存在する.
心臓は心膜に包まれ,人の握り拳大で,重量は250~350gである.心臓の下端部はやや尖り,心尖と呼ばれる.心臓内部は右心房,右心室,左心房,左心室の4つの部屋に分かれる.房・室および左右心室を隔てる境界に一致して,心臓の表面に溝がみられる.心房と心室の間の溝は房室間溝と呼ばれる.心室の前面と後面には縦走する溝があり,前室間溝・後室間溝と呼ばれる.右心房は心臓の右上部を占め,後方の上下に上大静脈と下大静脈が注ぐ.右心耳は上大静脈の基部から左前方に向かって突出する.心房中隔には浅い卵円形の凹みがあり,卵円窩と呼ばれる.三尖弁は前尖・後尖・中隔尖からなる.右心室は心臓の最下部を占め,内面に多数の肉柱がみられる.心室中隔は右心室に向かって膨隆する.心室中隔の大部分は筋性で厚いが,中隔上部の小部分は薄く膜様で,膜性部と呼ばれる.肺動脈弁口は右心室の前上部に位置する.左心房は心臓の後上部にあり,後壁上部に左右肺から2本ずつ肺静脈が開口する.左心耳は肺動脈起始部の左方に位置する.左心室の内面には右心室と同様に多数の肉柱がみられ,前壁と下壁には強大な乳頭筋(前乳頭筋・後乳頭筋)が突出する.僧帽弁は2個の弁尖(前尖・後尖)からなる.大動脈弁と肺動脈弁は同様の形状をもち,3枚の半月弁からなる.
冠動脈は右冠動脈と左冠動脈からなる.右冠動脈は大動脈起始部腹側の右冠動脈洞から分岐し,右房室間溝に沿って走行する.左冠動脈は大動脈起始部左背側の左冠動脈洞より起始し,左冠動脈前下行枝と左冠動脈回旋枝に分岐する.分岐するまでを左主幹部と呼ぶ.分岐した左冠動脈前下行枝は前室間溝,左冠動脈回旋枝は左房室間溝に沿って走行する.冠動脈の各セグメントの名称については,AHA(American Heart Association)の分類が一般的に使用される.心臓の静脈の大部分は冠状静脈洞に集まり,右心房に注ぐ.冠状静脈洞の開口部は,下大静脈口と三尖弁口との間に位置する.
心臓を包む結合組織性の膜を心膜という.心膜は,心臓表面を覆う臓側心膜と,胸膜と接する壁側心膜より構成される.両者に囲まれた空間が心膜腔であり,心膜腔には正常でも50ml以下の心囊液が存在する.
参考文献
1)中島好晃,他:冠動脈の解剖とCT表示法.臨床画像24:36-44,2008
2)陣崎雅弘:冠動脈の撮像法と画像表示法.臨床画像22:606-612,2006
3)栗林幸夫(編):新・心臓病診療プラクティス―画像で心臓を診る.文光堂,2006
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