medicina46巻12号

2009年11月発行

特集 CT・MRIアトラス Update―正常解剖と読影のポイント 胸部 各論

乳腺

著者： 五十嵐隆朗¹ 戸崎光宏² 福田国彦¹

所属機関： ¹東京慈恵会医科大学放射線医学講座 ²亀田メディカルセンター　乳腺センター

ページ範囲：P.244 - P.248

正常解剖と生理的変化

　乳房には，体表面から皮膚，皮下脂肪組織，浅在筋膜浅葉，乳腺，浅在筋膜深葉，乳腺後脂肪組織，大胸筋が順に存在する．成人女性の乳腺（図1）は約15～20の乳腺葉からなる．各乳腺葉の体積は均一ではない．乳腺葉は乳汁産生能を有する終末乳管小葉単位（terminal duct lobular units：TDLU）と乳汁を乳頭へ導く乳管からなる．各乳腺葉からの乳管がそれぞれ乳頭に開口するが，開口直前に紡錘状に拡張する領域がみられ，乳管洞と呼ばれる．生殖可能年齢にある女性の乳腺組織はエストロゲンとプロゲステロンに反応する．エストロゲンは新たな乳管形成や既存の乳管の延長などを促進し，これにより結合組織の量や弾力性が増加し，脂肪組織の沈着，血管分布の増大が生じる．プロゲステロンは小葉の形成を刺激する．乳腺実質は加齢とともに萎縮し，脂肪組織に置換され，周囲結合織の線維化がみられるようになる．

参考文献

1）ACR practice guideline for the performance of contrast enhanced magnetic resonance imaging of the breast. revised 2008

2）Mann RM, et al：Breast MRI：guidelines from the European Society of Breast Imaging. Eur Radiol 18：1307-1318, 2008

3）日本乳癌学会（編）：科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン　検診・診断 2008年度版．金原出版，2008

4）戸崎光宏，福間英祐（編），亀田メディカルセンター乳腺センター：乳腺MRI実践ガイド―撮像法，読影基準，治療．文光堂，2007

5）TanakaY, Oota K：Astereomicroscopic study of the mastopathic human breast. Virchow Arch A Pathol Anat 349：195-228, 1970