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雑誌目次

雑誌文献

medicina46巻3号

2009年03月発行

雑誌目次

今月の主題 膵炎のマネジメント―急性膵炎・慢性膵炎・自己免疫性膵炎

著者: 下瀬川徹

ページ範囲:P.377 - P.377

 ひと口に「膵炎」といっても,急性膵炎,慢性膵炎,自己免疫性膵炎では病態が全く違っており,したがって対応も異なる.膵炎は消化器領域の中では比較的頻度が低い疾患であるが,腹痛や糖尿病などで受診することが多く,一般内科医や初期研修医にもよく念頭に置いてほしい疾患である.特に急性膵炎は,初期診療の善し悪しが患者の生命予後に大きな影響を与える.迅速かつ正確な診断と初期対応,重症化の徴候や病態を知っておく必要がある.慢性膵炎は長期にわたる疾患であるが,成因や病期によって臨床症状や病態が異なり,このような疾患の特徴を理解した適切な診療が求められる.進行した慢性膵炎患者は消化吸収障害による低栄養状態と膵内分泌不全による糖尿病が共存した複雑な病態であり,飲酒継続例では低血糖による死亡例が多い.日常のきめ細やかな診療が患者の生命予後やQOLに影響を与える.自己免疫性膵炎は日本から発信された新しい疾患概念である.高齢男性で無痛性黄疸あるいは軽い腹痛で発症することが多く,画像上は膵癌や胆道癌との鑑別が難しいことがある.経口ステロイドが特効薬であり,適切に治療すると不要な外科手術を避けることができる.一方,悪性疾患との鑑別が不十分だと,癌に対する外科治療のタイミングを失う可能性もある.

 このように,膵炎の診療には専門的な知識や治療法が必要とされることが多く,開業医を初めとする一般内科医と専門医療施設との診療連携が大変重要である.本号の特集では,研修医,一般医家,諸領域の専門医がそれぞれの立場で役立つような膵炎診療上のポイントを解りやすく解説するように心がけた.座談会では,診断基準改訂や診療ガイドラインを中心に,膵炎それぞれの最近の動向についても触れた.本特集が皆様の日常診療に役立ち,患者さんの予後の改善につながるような,より適切な膵炎診療が行われる助けとなることを願っている.

膵炎とは何か

疾患概念・発症メカニズム・疫学

著者: 下瀬川徹

ページ範囲:P.378 - P.385

ポイント

●急性膵炎診療では,適切な初期治療が重症化阻止と予後改善に重要である.

●慢性膵炎は,栄養障害に膵内分泌不全が加わった複雑な病態であることを理解する.

●限局性の自己免疫性膵炎では,膵癌との鑑別診断に特に注意を要する.

膵炎が疑われたときの診断の進め方:初診時に,何を聞き,どこを診察するのか?

明らかな消化器症状がある場合,どう膵炎を疑うか?

著者: 成瀬達

ページ範囲:P.386 - P.388

ポイント

●急性膵炎は腹痛患者の4~5%を占める.

●急性膵炎は2:1で男性に多い.成因は男性ではアルコール性が,女性では胆石性が多い.

●肥満者は急性膵炎のハイリスク群である.

全身症状,不定愁訴から膵炎を見逃さないためにはどうするのか?

著者: 阪上順一 ,   片岡慶正 ,   吉川敏一

ページ範囲:P.389 - P.392

ポイント

●急性膵炎の初発症状で,腹痛の頻度は90 %を超える.

●慢性膵炎の問診では,「反復する上腹部痛発作」,「1日80 g以上の持続する飲酒歴」の有無を聴取する.

●自己免疫性膵炎は一般に症状に乏しいが,多彩な膵外病変を伴うことがある.

膵炎が疑われたときの診断の進め方:検査の進め方と鑑別診断は?

膵炎を疑ったときの検査の進め方と鑑別診断は?

著者: 朝倉徹

ページ範囲:P.394 - P.397

ポイント

●血清総アミラーゼの高値を呈する疾患は多く,診断の特異性は低い.

●膵炎発症早期には,自発痛のみで腹膜刺激症状がないこともある.

●腹部超音波(US)で明瞭な画像が得られない場合もあり,客観性の高い腹部CTが有用である.

●胆石が乳頭部に嵌頓して発症した胆石性膵炎では,排石治療を優先する.

膵炎に必要な画像検査は何か,どのような患者にいつ行うか?

著者: 宮川宏之 ,   岡村圭也

ページ範囲:P.398 - P.400

ポイント

●急性膵炎において,画像検査ではCTが一番重要である.重症であれば速やかな診断と重症度の判定を行い,適切な処置が必要となる.

●慢性膵炎では,膵石症のあるものの画像診断は容易である.初期の慢性膵炎の画像診断は困難で,EUSを行うべきである.

●自己免疫性膵炎は画像なしで診断は不能であり,膵管の狭細像をMRCP(ERCP)でとらえ,他の画像で膵腫大などを確認する.

膵炎の診断に必要な血液検査は何か? その読み方は?

著者: 上田隆 ,   安田武生 ,   竹山宜典

ページ範囲:P.401 - P.403

ポイント

●急性膵炎の診断には,血中アミラーゼと血中リパーゼの測定が有用である.

●急性膵炎の重症度判定に有効な単一マーカーはCRPである.

●急性膵炎の重症度判定には,厚生労働省重症度判定基準(重症度スコア,2008年改訂)を用いる.

●慢性膵炎では,膵外分泌組織の破壊が進むと,血中膵酵素は低下傾向を示す.

●自己免疫性膵炎では,血清γグロブリン,IgGまたはIgG4の上昇を認めることが多い.

検査異常を指摘された無症候患者における膵関連検査の臨床的意義と解釈は?

著者: 北川元二

ページ範囲:P.404 - P.406

ポイント

●無症状であっても膵関連検査に異常を認めた場合には,常に膵癌を疑い精査をすすめる.

●高アミラーゼ血症を指摘された場合には,アミラーゼアイソザイムを測定する.

●超音波検査で異常を指摘された場合には,造影CT検査かMRCPなどの精査を実施する.

膵炎をどう治療するか:急性膵炎のマネジメントのポイントは?

急性膵炎―初診医が行うべきことは? 見逃してはいけないことは?

著者: 佐藤晃彦

ページ範囲:P.408 - P.410

ポイント

●臨床症状から急性膵炎が疑われる場合には,血液検査や画像検査により診断を確定する.

●成因診断を行い,胆石性膵炎か否かを鑑別する.

●重症度判定を行い,重症度に応じたモニタリング,治療を開始する.

一般医が行うべき初期診療とは何か?

著者: 五十嵐久人 ,   河邉顕 ,   伊藤鉄英

ページ範囲:P.411 - P.415

ポイント

●急性膵炎と診断した場合,入院のうえ,十分な初期輸液,膵の安静,蛋白分解酵素阻害薬投与を行う.

●重症度判定と成因検索を行い,全身状態のモニタリングを経時的に行う.また,重症度判定は繰り返して行う.

●十分な初期治療を行っても,状態が改善しない場合は,ICU・高次医療機関への転送を検討する.

重症のサインは? どんな検査値に注目するか?

著者: 武田和憲

ページ範囲:P.416 - P.419

ポイント

●重症膵炎発症早期は血管透過性亢進による循環血漿量の低下,全身の高度の浮腫がさまざまな臓器障害を引き起こしている.

●重症化のサインとしては,輸液を行っても乏尿であることや,頻脈,呼吸促迫などの臨床徴候が重要である.

●重症度判定基準の予後因子は,急性膵炎重症化のサインとして経時的にチェックすべきである.

どのような患者を,いつ専門医に紹介するか?

著者: 竹山宜典

ページ範囲:P.420 - P.422

ポイント

●急性膵炎と診断されたら,腹部CT検査と緊急血液検査が随時行える施設で直ちに入院加療する.

●厚生労働省重症度判定スコア2点(重症度Ⅰ)以上の症例は,専門医が常勤し,集中的全身管理の可能な施設へ直ちに搬送し,発症後48時間以内に治療を開始する.

●搬送には医師の同乗が望ましい.

蛋白分解酵素阻害薬,抗菌薬の使い方は? 注意すべき点は?

著者: 伊佐地秀司

ページ範囲:P.424 - P.427

ポイント

●蛋白分解酵素阻害薬は,重症度に応じて投与量を決め,重症例では大量持続点滴静注する.

●予防的抗菌薬は,腸内細菌をターゲットとし,かつ膵組織移行のよいものを選択する.

●予防的抗菌薬は軽症例では不要で,重症例では保険で認められている最大量を投与する.

膵炎をどう治療するか:慢性膵炎のマネジメントのポイントは?

急性増悪への対応は? 専門医にいつ紹介するか?

著者: 正宗淳 ,   下瀬川徹

ページ範囲:P.428 - P.431

ポイント

●慢性膵炎の急性増悪では,血中アミラーゼ値が上昇しないことが少なくない.

●急性増悪を疑った場合,積極的に腹部エコーやCTなどを施行して画像所見を確認すべきである.

●近年の内視鏡的治療の進歩により,慢性膵炎合併症の治療は大きく変貌している.

間欠期の治療は? 経口薬をどのように使うか?

著者: 小泉勝 ,   佐藤晃彦

ページ範囲:P.432 - P.435

ポイント

●慢性膵炎間欠期ではアルコール摂取制限,低脂肪食による急性増悪の予防が重要.

●腹痛などの自覚症状を軽減・解消するために経口蛋白分解酵素阻害薬が投与されるが,膵炎進行阻止作用は不明.

●腹痛に対する消化酵素薬の有用性はまだ不十分.

慢性膵炎の生活指導と栄養管理をどのように行うか?

著者: 片岡慶正 ,   信田みすみ

ページ範囲:P.436 - P.440

ポイント

●慢性膵炎の生命予後は診断時点の年齢,飲酒継続,疼痛経過,喫煙,糖尿病によって規定される.

●腹痛時あるいは腹痛を繰り返す時期には禁酒と脂肪制限が基本となる.

●アルコール性慢性膵炎では禁酒指導が最重要であるが,ほかの成因の場合でも脂肪食とアルコール摂取が増悪因子となる.

●根気強い食事療法と生活指導が望まれる.特に体重減少~低栄養例では,腹痛による食事摂取量の低下に起因する場合と,進行した膵内外分泌不全による吸収不良や膵性糖尿病に起因する場合があり,個別化病態解析に応じた治療法が重要となる.

●非代償期での栄養管理は荒廃した膵内外分泌不全に対する補充療法,すなわち消化酵素薬とインスリン治療が前提となる.

一般医ができる膵機能検査に何があるか?

著者: 洪繁 ,   石黒洋 ,   後藤秀実

ページ範囲:P.441 - P.444

ポイント

●慢性膵炎では,膵内外分泌機能不全が特徴であり,個々の患者の治療に当たっては膵機能を適切に評価する必要がある.

●膵外分泌機能は,導管細胞機能と腺房細胞機能に分けられる.

●現在,国内ではセクレチン製剤が入手できないため,導管細胞機能の評価は不可能である.

●腺房細胞機能の評価としては,キモトリプシン活性を評価するBT-PABAテストがある.

膵性糖尿病とは何か? どのように治療するか?

著者: 中村光男 ,   柳町幸 ,   丹藤雄介

ページ範囲:P.446 - P.449

ポイント

●膵性糖尿病とは,膵内外分泌機能不全を呈する二次性糖尿病である.

●十分量の消化酵素補充と生理的インスリン分泌を模倣したインスリン治療が必要.

慢性膵炎患者の長期管理はどうするか? 何に注意するか?

著者: 木原康之 ,   大槻眞 ,   原田大

ページ範囲:P.450 - P.454

ポイント

●慢性膵炎は膵癌をはじめとする悪性腫瘍を合併することが多く,予後不良の疾患であることを十分認識し,診療にあたる.

●喫煙などの環境因子が慢性膵炎患者の発癌に関与する可能性が考えられるので,禁煙指導,食事指導などの生活習慣改善の指導・教育を行う.

●慢性膵炎患者の膵管はすでに拡張していて,膵癌による尾側膵管の拡張を診断しにくいことがあるので,画像検査を6カ月ごとに行う.

膵炎をどう治療するか:自己免疫性膵炎のマネジメントのポイントは?

どんなときに自己免疫性膵炎を疑うか? 一般医が行うべき検査は何か?

著者: 岡崎和一 ,   小藪雅紀 ,   内田一茂

ページ範囲:P.456 - P.460

ポイント

●自己免疫性膵炎には硬化性胆管炎,硬化性唾液腺炎,後腹膜線維症などの膵外病変をしばしば合併する.

●造影CTにて膵のびまん性腫大,低吸収性被膜様所見が典型である.

●ステロイドが奏効するが,診断的治療はすべきではない.

ステロイド治療―何をどのように使うか? 初期治療のポイントは?

著者: 西森功 ,   大西三朗

ページ範囲:P.461 - P.464

ポイント

●自己免疫性膵炎では,ステロイド治療が中心となる.

●閉塞性黄疸合併例(約2/3)では,適宜胆道ドレナージを併用する.

●全経過を通じ2/3の症例で糖尿病の合併がみられるが,ステロイド治療初期を除き,インスリン治療を必要とする症例は少ない.

●膵炎の軽快とステロイド投与量の漸減に伴い,インスリンの必要量が低下するため,インスリン治療の際には低血糖に注意が必要である.

自己免疫性膵炎患者の維持療法は? 再燃をどのように予測し,治療するのか?

著者: 川茂幸 ,   浜野英明 ,   新倉則和

ページ範囲:P.466 - P.469

ポイント

●経口プレドニゾロンによる初期投与後,維持量まで時間をかけてゆっくり漸減する.

●初期投与後は維持投与施行が望ましい.

●IgG,IgG4,補体の血清値変化などで活動性を評価しながら継続する.

●IgG4の定期的測定が再燃予測に最も有用であるが,現状ではIgGで代用する.

自己免疫性膵炎は全身疾患か?

著者: 神澤輝実 ,   安食元 ,   江川直人

ページ範囲:P.470 - P.473

ポイント

●自己免疫性膵炎は,全身諸臓器にTリンパ球とIgG4陽性形質細胞の密な浸潤を呈する全身性疾患(IgG4関連硬化性疾患)の膵病変の可能性がある.

●線維化と閉塞性静脈炎を生じる臓器において,以下のような病態による臨床徴候を呈する(膵臓:自己免疫性膵炎,胆管:硬化性胆管炎,胆囊:硬化性胆囊炎,唾液腺:硬化性唾液腺炎,後腹膜:後腹膜線維症など).

●高率にリンパ節腫大を伴い,診療当初は悪性腫瘍を疑われることが多いが,ステロイド治療が奏効することより,無益な外科手術を行わないためにも,本症を念頭に置くことが肝要である.

座談会

膵炎診療をめぐる最近の動向―診断基準・ガイドライン

著者: 下瀬川徹 ,   武田和憲 ,   片岡慶正 ,   神澤輝実

ページ範囲:P.474 - P.486

 昨年から今年にかけて,膵炎に関するいくつかの主要な診断基準やガイドラインが,より実地診療に即した形で改訂・作成されている.今回の座談会では,その改訂・作成に携わった専門家に,診断基準やガイドラインをどのように診療に役立てればよいかを具体的に語っていただいた.改訂・作成の背景から見えてくる疾患の本質と診察のコツを読み取っていただきたい.

連載 手を見て気づく内科疾患・3

ジェーンウェー病変,オスラー結節,感染性心内膜炎診断の鍵

著者: 松村正巳

ページ範囲:P.373 - P.373

患 者:58歳,男性

病 歴:3週間前から倦怠感を自覚していた.5日前から38℃台の発熱,悪寒,腰痛が出現した.2日前には,ロキソプロフェン・ナトリウムが処方された.しかし,発熱が治まらず入院となった.

身体所見:血圧84/50 mmHg,脈拍120/分,不整,体温39.0℃.呼吸数28/分,意識レベルJapan coma scale 3.手掌,指先,足底に圧痛のない紫斑が散在している(図1).胸骨左縁第3肋間にgrade 2の拡張期雑音を聴取する.腰の痛みを訴えるが,明らかな圧痛は認めない.

検査所見:血液培養2セットから黄色ブドウ球菌が培養された.経胸壁心エコーで大動脈弁,僧帽弁に疣贅を認めた.

聖路加Common Diseaseカンファレンス・22【最終回】

―腎臓内科編―急性腎不全と慢性腎臓病:血尿と蛋白尿の診かた

著者: 津川友介 ,   西﨑祐史 ,   小松康宏

ページ範囲:P.492 - P.499

急性腎不全(AKI)の診療 まずはここを押さえよう

 
①血清クレアチニン値が高い患者を見たら,まずはエコーを当てて,慢性腎臓病(CKD)と腎後性腎不全をルールアウトしよう!
②次に,腎前性腎不全と腎性腎不全のどちらなのか,FENa,FEUNなどで鑑別しよう!
③腎性腎不全だとわかったら,(1)大血管病変,(2)糸球体および小血管病変,(3)間質性腎炎,(4)急性尿細管壊死(ATN;Acute tubular necrosis)の4つのうちどれだろう? と考えよう!

目でみるトレーニング

著者: 永石彰子 ,   黒瀬龍彦 ,   堀田彰一 ,   宗政充

ページ範囲:P.500 - P.505

市中感染症診療の思考プロセス IDATEN感染症セミナーより・12

STD・骨盤内炎症性疾患のマネジメント

著者: 本郷偉元

ページ範囲:P.506 - P.509

ケース 下腹部痛,腟からの膿性分泌物を訴える25歳女性

 

現病歴 25歳の独身女性が2日前からの下腹部痛の訴えで救急外来を受診した.1年前および1カ月前に妊娠するがいずれも中絶した.性交渉の相手は数名いる.ここ2週間以内に性交渉があった.特に服薬はなく,薬物アレルギーの既往もない.月経歴:最終月経2週間前,出血量・周期・期間に特に変化なし.妊娠の可能性は否定している.よく話を聞くと悪臭を伴う帯下が下腹部痛発症前後からあったという.

 

身体所見 体温38.7℃,心拍数80/分,呼吸数22/分,血圧116/74 mmHg,臥位・立位で起立性低血圧なし.全身状態:不安そうな顔つきである.頭目耳鼻喉:異常なし.心臓:I・II音正常,雑音なし.胸部:肺胞呼吸音.腹部:平坦・軟,左右下腹部に圧痛・筋性防御あり,反跳痛はなし,腫瘤なし,腸蠕動音正常,腰背部圧痛なし,肝脾腫なし.四肢:皮疹なし,関節腫脹なし.泌尿生殖器:直腸診にてCMT(cervical motion tenderness,子宮頸部他動痛)あり,内診で左右付属器は触れない.リンパ節:鼠径リンパ節は触知せず.

 

検査データ 尿所見:pH 7,蛋白(-),糖(-),赤血球3/HPF,白血球3~4/HPF.婦

人科で採取した腟分泌物グラム染色:白血球20/HPF;細胞内にグラム陰性双球菌あり,妊娠反応(-).末梢血:赤血球386×104/ml,ヘモグロビン11 g/dl,ヘマトクリット33%,白血球17,500/ml(好中球St17%,好中球Seg64%,リンパ球16%,単球2%,好酸球1%),血小板95×104/ml,CRP3 mg/dl.

見て・聴いて・考える 道具いらずの神経診療・15【最終回】

主訴別の患者の診かた10―筋力低下を訴える患者の診かた

著者: 岩崎靖

ページ範囲:P.510 - P.517

 「力が入らない」と訴えて神経内科の外来を受診する患者,他科からの紹介患者は多い.筋力低下があると中枢神経疾患が疑われる傾向があるが,筋力低下をきたす疾患は末梢神経疾患,筋疾患から炎症性疾患,自己免疫性疾患,廃用症候群など多岐にわたる.

 連載の最終回として,今回は主として筋力低下(運動麻痺)の診かたについて,病態の評価法,神経学的診察による病変部位の診断,代表的疾患の鑑別法のコツを述べてみたい.

研修おたく海を渡る・39

医療者と患者の想いがテーマのカンファレンス

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.519 - P.519

 研修医のためのモーニングカンファレンス,がん治療の方針を決めるTumor Boardなどいろいろなカンファを紹介してきましたが,今回は,うちの病院でもつい最近はじまったSchwartz Center Roundとよばれる緩和ケアカンファレンスを紹介させてください.

 これはボストンの弁護士であったKenneth Schwartzが,肺癌患者として医療者とかかわるなかでみられた自身の感情の動きを綴ったことに始まります.肺癌患者としてだけでなく,ひとりの人間として関係を築くことがいかに心の支えになるか,平静さを与えてくれるかを,彼は詳細に記述しました.

書評

内科医のためのうつ病診療―第2版

著者: 松村真司

ページ範囲:P.419 - P.419

 当院には時に医学生や研修医が診療所実習に訪れる.実習が終わった後には必ず,彼らが実習中に受けた印象を聞くことにしている.患者との距離の近さを挙げる学生がもちろん多いが,それとともに「診療所には精神面の問題をもつ人がこんなに多いと思わなかった」との印象を述べる実習生が多い.不安障害,認知症などとともに,身体的愁訴が前景に立ったうつ病患者は本当に数多い.最近ではうつ病に関する啓発も増え,患者自らが「自分はうつ病ではないか」と考えて訪れる患者も多くなってきている.

 著者自身も記しているが,認知症,高血圧,糖尿病などと並び,うつ病は疾患の罹患率とその症状の多彩さ,そのアウトカムの重大さから考えると,専門家のみですべてに対応することは現実的ではない.著者によると,内科医のうつ病診療のレベルが期待された水準にないことが,本書のような啓発書を書くきっかけだったとのことである.確かに,これほどありふれた疾患であるにもかかわらず,卒前・卒後における研修機会は十分とはいえない.精神科医に相談をすることも,地域に出てしまうとなかなか容易ではない.また,地域によっては精神科医の診察のアクセスが悪い場合もあり,その場合には好むと好まざるとに関わらず,非精神科医が治療の相当の部分まで担当せざるを得ない場合もある.できれば専門医に診療してもらいたいと思いながらも,薄氷を踏む思いで診療をしている非専門医はかなりの数に上るのではないだろうか.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.526 - P.526

●今年から右欄に,年ぎめ予約購読料とともに“MedicalFinderパーソナルオプション付き”の価格も表示されるようになりました.MedicalFinderとは,弊社発行の32誌に掲載された文献(最大過去6年分収載)を電子ジャーナルとして閲覧できるシステムで,「MedicalFinderパーソナル」とは,年ぎめ予約購読をしている雑誌の電子ジャーナルが閲覧できるオプションサービスです.例えば『medicina』のMedicalFinderパーソナルオプション付きを申し込むと,年13冊の冊子体が届くだけでなく,過去6年分の『medicina』がPDFで閲覧できます.

●また,MedicalFinderには「MedicalFinderパーソナル」のほかに「MedicalFinder法人サービス」と「MedicalFinderペイ・パー・ビュー」があります.法人サービスは,学校や病院などに所属する職員や学生の皆さんがMedicalFinderをご利用できるサービスで,施設(法人)ごとの契約になります.ペイ・パー・ビューのほうは,1つ1つの文献ごとにお金を払って閲覧するサービスです.これら3つのサービスは,似ているようで,それぞれ用途や対象・価格が異なりますので,詳しくは弊社ホームページをご覧ください.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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