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今月の主題 苦手感染症の克服 コラム
小児感染症専門医の役割:小児と大人の違いとは?
著者: 齋藤昭彦1
所属機関: 1国立成育医療センター第一専門診療部感染症科
ページ範囲:P.590 - P.590
文献購入ページに移動 “Children are not just miniature of adults(小児は単なる大人のミニチュアではない)”という言葉をどこかで耳にされた方は多いのではないだろうか? 小児科医が小児の特殊性をほかの医師に強調するときによく使う言葉であるが,小児科全般では,患児の年齢によって,疾患の病態生理が大きく異なるため,大人とは異なるアプローチが必要であることはいうまでもない.同時に小児は,常に成長の過程にあるため,疾患に罹患した際の適切な診断と治療が遅れると児の発達に大きな影響を与える.Failure to thrive(発育遅延)という病態にどのようにアプローチするかも,小児科医の重要な役割である.
小児感染症という専門領域においても同様で,年齢という因子が,その患者の診断,起因菌,治療を考えるうえできわめて重要である.なぜなら,患児の年齢は,その免疫能に大きく影響するからである.乳幼児での免疫グロブリンの絶対量は少なく,母体からの移行抗体が生後約6カ月で底をつき,特に生後12カ月までは,液性免疫で防御される感染のリスクが大きくなる.一方で,年齢によって重症細菌感染症の起因菌が大きく変化する.具体例を挙げると,新生児期には,B群溶連菌,リステリア,大腸菌など,乳幼児期には,肺炎球菌,B型インフルエンザ桿菌などが主な起因菌となる.これらの情報は,患者のempiric therapyを決定するうえで重要である.また,起因菌を同定するうえで重要な培養を行う検体量が限られていること,同定された起因菌の解釈が大人とは大きく異なること〔新生児集中治療室(NICU)において表皮ブドウ球菌が血液培養陽性の半分以上を占める〕など,小児科特有のアプローチが必要である.Failure to thriveに対して,感染症の立場からのアプローチも非常に重要で,HIV,結核などの持続的感染症がその原因となることがある.
小児感染症という専門領域においても同様で,年齢という因子が,その患者の診断,起因菌,治療を考えるうえできわめて重要である.なぜなら,患児の年齢は,その免疫能に大きく影響するからである.乳幼児での免疫グロブリンの絶対量は少なく,母体からの移行抗体が生後約6カ月で底をつき,特に生後12カ月までは,液性免疫で防御される感染のリスクが大きくなる.一方で,年齢によって重症細菌感染症の起因菌が大きく変化する.具体例を挙げると,新生児期には,B群溶連菌,リステリア,大腸菌など,乳幼児期には,肺炎球菌,B型インフルエンザ桿菌などが主な起因菌となる.これらの情報は,患者のempiric therapyを決定するうえで重要である.また,起因菌を同定するうえで重要な培養を行う検体量が限られていること,同定された起因菌の解釈が大人とは大きく異なること〔新生児集中治療室(NICU)において表皮ブドウ球菌が血液培養陽性の半分以上を占める〕など,小児科特有のアプローチが必要である.Failure to thriveに対して,感染症の立場からのアプローチも非常に重要で,HIV,結核などの持続的感染症がその原因となることがある.
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