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雑誌目次

雑誌文献

medicina46巻7号

2009年07月発行

雑誌目次

今月の主題 一般内科診療に役立つ消化器内視鏡ガイド―コンサルテーションのポイントから最新知識まで

著者: 緒方晴彦

ページ範囲:P.1023 - P.1023

 「日本の医者は欧米の医者に比べて内視鏡が上手である」という話をよく聞く.間違ってはいないと思う.手先が器用だということもあるかもしれないが,要は好きなのではないかと感じる.まさに「好きこそ物の上手なれ」である.消化器病が専門で内視鏡の経験のない医師は皆無であろうし,学会でも内視鏡の手技に関するセッションは常に大盛況である.加えて,近年の内視鏡機器を中心としたテクノロジーの進歩はめざましく,画質の鮮明さや操作性の向上ばかりでなく,いわゆる内視鏡スペシャリストといわれる医師たちのたゆまぬ努力と工夫で次々と新しい技術が開発されている.

 昨今の悪性腫瘍の治療は「低侵襲」がキーワードとなっており,かつては外科的治療の適応であった食道・胃・大腸早期癌の多くは内視鏡的治療がスタンダードとなりつつある.またバリエーションに富んだ処置具の改良は困難を極めていた多くの膵・胆道疾患への内視鏡的アプローチを可能にした.さらには21世紀に登場したカプセル内視鏡とバルーン内視鏡により,これまで内視鏡が届かずに光の当たらない「暗黒の臓器」と呼ばれていた小腸の疾患に対して,診断,治療の両面において大きな変革がもたらされた.

内視鏡検査の基礎知識とコンサルテーションのポイント

内視鏡検査のコンサルテーションにあたって―依頼医の心得

著者: 北原桂 ,   赤松泰次

ページ範囲:P.1024 - P.1026

ポイント

●内視鏡検査を依頼する際の注意事項を把握する.

内視鏡検査に必要な基礎知識―施行医の心得

著者: 峯徹哉

ページ範囲:P.1028 - P.1030

ポイント

●内視鏡の歴史を知ることが重要である.また内視鏡という語句の含んでいる意味についても十分な理解が必要である.

●内視鏡を行う心得5か条が必要である.消化管の解剖を理解しておくこと.

●操作にあたって機器の使い方を熟知しておくこと.

●上級者が行っていることを学習して実際に行ってみる.

●内視鏡の特性を理解しておく.

内視鏡検査において知っておくべき薬剤の知識―依頼医の立場から

著者: 村崎かがり

ページ範囲:P.1032 - P.1035

ポイント

●出血リスクの低い検査手技では抗血栓療法を継続した状態での検査が推奨されている.

●抗血栓薬中断の判断には,基礎疾患の血栓塞栓症リスクの評価が重要である.

●抗凝固療法継続が必要な場合にはヘパリンへの切り替えが行われる.

●抗血小板薬は作用持続時間が薬剤によって異なる.

●薬物溶出性ステント留置後は長期間の抗血小板療法を必要とする.

内視鏡検査のイロハ―上部消化管

著者: 吉田幸永 ,   松田浩二 ,   玉井尚人

ページ範囲:P.1036 - P.1040

ポイント

●上部消化管内視鏡検査は,比較的安全な上部消化管の検査法としてその役割を確立している.

●上部消化管内視鏡検査は,X線造影検査では見つかりづらい早期癌の発見に有用であるが,その偶発症の発生頻度を含め,その適応について十分に理解し,安易な検査は慎むべきである.

●上部消化管内視鏡検査に関する手技の習得は,日本消化器内視鏡学会認定の教育施設において内視鏡指導医・専門医の監督下で行われるべきである.

内視鏡検査のイロハ―下部消化管

著者: 五十嵐正広

ページ範囲:P.1041 - P.1043

ポイント

●大腸癌検診受診の啓発が必要.

●大腸癌検診便潜血陽性者は大腸内視鏡検査が必須.

●大腸内視鏡検査の前処置法の選択には病状の問診が重要.

●大腸内視鏡挿入手技の習得にはコロンモデルによるトレーニングが重要.

上部消化管の内視鏡診療 【診断】

食道病変の内視鏡診断

著者: 幕内博康

ページ範囲:P.1046 - P.1049

ポイント

●つかえ感,胸やけ,胸痛,しみる感じ,などがあったら食道の内視鏡検査を行う.

●頭頸部癌,腐蝕性食道炎,肝硬変の症例には内視鏡検査を行う.

●食道癌ではヨード染色,NBI・拡大内視鏡,EUSなどが必要である.

●Barrett腺癌の診断はNBI・拡大内視鏡,インジゴカルミン染色,クリスタルバイオレット染色が行われる.

●食道のびらん・潰瘍の良・悪性の鑑別は,ヨード染色の“毛羽様濃染像”やNBIの黒色変化で再生上皮を証明すれば良性である.

胃・十二指腸病変(良性)の内視鏡診断

著者: 榊信廣

ページ範囲:P.1051 - P.1054

ポイント

●陥凹性病変は潰瘍・びらんの鑑別と時相分類が診断のポイント.

●炎症性ポリープと胃底腺ポリープを鑑別する.前者には除菌治療が有効.

H. pylori胃炎は病理組織学的に診断する.内視鏡診断が可能なのは一部.

●ガイドラインに基づいてH. pyloriの診断と治療を行う.

胃病変(悪性)の内視鏡診断

著者: 浜田勉

ページ範囲:P.1056 - P.1061

ポイント

●潰瘍の形だけで良悪性は鑑別できない.

●潰瘍周囲の不整なびらん(Ⅱc)の有無をよく観察する.

●小さい粘膜下腫瘍様の隆起で中心陥凹のあるものは上皮性で悪性のものが多い.

●びまん性病変では,空気量を十分にして壁の硬化や粘膜ひだを観察する.

胃生検組織採取のコツ

著者: 今村哲理 ,   黒河聖 ,   本谷聡

ページ範囲:P.1062 - P.1066

ポイント

●日頃から診断能向上を図り,生検診断のみに頼ることなく総合的に診断するよう努める.

●超多忙な日常業務の中で,多種多様で煩雑な抗凝固薬,抗血小板凝集薬の取扱いは課題の一つであるが,検査前,検査後の休薬期間を決めておく.

●陥凹病変では白苔際を狙撃生検する.隆起病変では無構造部,陥凹部,隆起部,発赤部から採取する.複数個または複数部位から生検採取する場合は出血流を考慮して採取順位を決める.

●生検採取困難部位では,患者側での工夫(体位変換など),スコープ反転操作の工夫,器具類の選択,機種の選択・変更などで対応する.

色素内視鏡・拡大観察の基本

著者: 八木一芳 ,   中村厚夫 ,   関根厚雄

ページ範囲:P.1067 - P.1071

ポイント

●胃癌の診断にはインジゴカルミンによるコントラスト法が一般的である.

●近年,NBI(narrow band imaging)併用拡大観察による診断や酢酸,酢酸・インジゴカルミン併用といった化学的色素法による診断が開発され普及している.

●NBI併用拡大観察による範囲診断と化学的色素法による範囲診断は,インジゴカルミンに比し明らかに正確であると報告されている.

●食道扁平上皮癌ではヨード染色が一般的であるが,NBI併用拡大観察によるIPCL(intra-epithelial papillary capillary loop)診断が広まってきている.

超音波内視鏡の基本

著者: 渡辺真也 ,   芳野純治 ,   磯部祥

ページ範囲:P.1073 - P.1075

ポイント

●超音波内視鏡では粘膜以深を断層像として描出することができる.

●超音波内視鏡により癌,粘膜下腫瘍などの診断および病態の解析が可能である.

●超音波内視鏡の偶発症については,通常の内視鏡検査とほぼ同じである.

●通常,健常な消化管壁は5層に描出される.

●超音波周波数が高いほど,消化管の壁構造をより詳細に描出することができる.

【治療】

緊急内視鏡に必要な知識

著者: 井上義博 ,   藤野靖久 ,   小野寺誠

ページ範囲:P.1076 - P.1078

ポイント

●緊急内視鏡の適応疾患は拡大し,消化管出血のみならず急性腹症にも及んでいる.

●消化管出血の初期対応は内視鏡止血ではなく,全身状態の維持,向上である.

●緊急内視鏡の要点は目的とするものを診断し,速やかに治療することである.

●内視鏡止血後は12~24時間後に行うsecond look endoscopyが重要である.

食道・胃静脈瘤に対する内視鏡治療

著者: 中村真一 ,   岸野真衣子 ,   白鳥敬子

ページ範囲:P.1079 - P.1082

ポイント

●門脈圧亢進症取扱い規約改訂第2版,食道胃静脈瘤内視鏡所見記載基準により,占拠部位,形態,基本色調,発赤所見,出血所見,粘膜所見が規定されている.

●食道静脈瘤に対する治療は内視鏡的硬化療法(EIS),内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)が主流であり,近年はEVLの症例数が増加している.

●食道静脈瘤出血に対する止血法として,EVLが第一選択となりつつある.ただし,出血様態によっては,EISを選択すべきである.

●胃静脈瘤に対する内視鏡的治療はcyanoacrylate系薬剤を用いた塞栓療法が有用である.

食道腫瘍のEMR・ESDの基本

著者: 小山恒男

ページ範囲:P.1083 - P.1086

ポイント

●リンパ節転移の危険因子は深達度,脈管侵襲,組織型であり,これらを詳細に検討するためには一括切除が必要である.

●EMRでは正確な切除が困難で,切除面積に制限がある.一般的な内視鏡医が十分な安全域を確保して一括切除できる腫瘍径は5 mm程度である.

●ESDでは正確かつ大きな切除が可能だが,高度な技術を要すため専門医が施行すべきである.

胃腫瘍のポリペクトミー,EMR,ESDの基本

著者: 中村仁紀 ,   矢作直久

ページ範囲:P.1089 - P.1092

ポイント

●内視鏡治療の適応疾患は,良性ポリープ,腺腫,早期胃癌である.

●内視鏡治療にはポリペクトミー,EMR,ESDがある.

●術前には基礎疾患や内服薬を確認し,適応を見極める.

●内視鏡治療では出血,穿孔,誤嚥性肺炎が3大偶発症である.

●退院後もポリープや癌の異時性再発,異所性再発のチェックのために,年1回の再検を勧める.

内視鏡的胃瘻造設法の適応と実際

著者: 鈴木裕

ページ範囲:P.1093 - P.1100

ポイント

●PEGは開腹胃瘻造設術よりも合併症発生率,入院期間および総コストなどの点で優れている.

●PEGは胃瘻造設術の標準的な術式である.

●PEGは,Pull/Push法,Introducer法が一般的な造設手技である.

●最近,Introducer法の欠点を補ったDirect法/Seldinger法が開発された.

●胃瘻カテーテルは,胃内の形状からバンパー型とバルーン型,外部の形状からチューブ型とボタン型に分かれる.

●胃瘻カテーテルの交換は,バンパー型は4カ月以上経過,バルーン型は24時間以上体内留置されれば保険請求できる.

●2008年4月から胃瘻カテーテルの交換手技料が200点計上できるようになった.

上部・下部消化管狭窄に対するバルーン拡張術とステント留置術

著者: 前谷容

ページ範囲:P.1101 - P.1104

ポイント

●原則的にバルーン拡張術は良性狭窄に,ステント留置術は悪性狭窄に対して行う.

●バルーン拡張における穿孔防止のため,最初は小さいバルーン径から開始する.

●バルーン拡張による疼痛(偶発症と関連あり)を認識できるために鎮静薬は極力使用しない.

●切除不能食道癌に対するステント留置術では,原則としてカバードステントを選択する.

大腸の内視鏡診療 【診断】

大腸癌の診断術

著者: 日山亨 ,   田中信治 ,   茶山一彰

ページ範囲:P.1105 - P.1108

ポイント

●拡大観察の前には,病変を十分に洗浄し,便汁,気泡,粘液などを除去しておく.

●拡大観察は,病変を常に正面視できる位置取りが重要である.

●拡大観察は,まずインジゴカルミンを用いたコントラスト法によるpit pattern観察を行う.

●色素が貯留する部位やIIIs型やV型pit patternが疑われる場合には,染色法を追加する.

●NBI(narrow band imaging)拡大観察でも,pit pattern診断は可能である.

超音波内視鏡検査を用いた大腸癌診断の基本

著者: 趙栄済 ,   高谷宏樹 ,   宮田正年

ページ範囲:P.1109 - P.1111

ポイント

●EUSは病変を内視鏡で詳細に観察した後,脱気水で水浸させて施行する.

●大腸壁は5層構造として描出され,第3層の高エコー層は粘膜下層に,第4層の低エコー層は固有筋層に対応する.

●癌は低エコー腫瘤像として観察され,その深達度は壁層構造の温存と破壊の有無で診断し,M,SM,MP,SS-SE(A1-A2),Si(Ai)と分類する.

●SM浸潤度は,低エコー腫瘤像最深部と隣接正常粘膜下層の3等分層との対比で判定されSM1,SM2,SM3と分類される.

●浸潤癌症例では,壁外の転移リンパ節の有無を確認する.

炎症性腸疾患の内視鏡診断

著者: 長沼誠 ,   岩男泰 ,   日比紀文

ページ範囲:P.1113 - P.1117

ポイント

●炎症性腸疾患の診断をしていく上で内視鏡検査以外に病歴聴取,便培養,超音波・CTなどの検査も有用である.

●潰瘍性大腸炎は直腸から連続して血管透見像の不良,発赤・顆粒状粘膜,びらん,潰瘍,出血を認めるのが特徴である.

●Cryptoabcessは潰瘍性大腸炎に特異的な所見ではない.

●Crohn病の内視鏡所見の特徴は縦走潰瘍と敷石像である.初期病変として不整潰瘍やアフタが認められる.鑑別すべき疾患としてBehçet病や腸結核が挙げられる.

【治療】

大腸腫瘍のEMR・ESD

著者: 鎮西亮 ,   豊永高史

ページ範囲:P.1119 - P.1122

ポイント

●大腸癌罹患率の上昇に伴い,内視鏡治療の重要性が増加している.

●大腸癌で内視鏡治療の適応となるのは,深達度が粘膜内,粘膜下層軽度浸潤の腫瘍である.

●大腸ESDは,大型病変の一括切除が可能であるが,従来法EMRと比較して難易度・偶発症の頻度が高い.

●治療法選択は,正確な術前深達度診断に基づき,そこに施設の治療技術レベルを加味して行われるべきである.

●内視鏡治療の主な偶発症は出血,穿孔であり,術前のインフォームドコンセントは必須である.

大腸憩室出血に対する対応法

著者: 杉山宏

ページ範囲:P.1123 - P.1126

ポイント

●下部消化管出血例では詳細な病歴と服用している薬剤を聴取し,直腸診は必ず行う.

●大腸憩室出血を疑ったら速やかに洗腸を行い,透明フードを用いた内視鏡検査を行う.

●責任憩室が診断できたら,組織傷害が少ないクリップ法やHSE局注法で止血術を行う.

●重症例や内視鏡的止血術の抵抗例ではIVRや高濃度バリウムによる注腸を試みる.

膵・胆道の内視鏡診療 【診断】

ERCP

著者: 宇野耕治 ,   森川宗一郎 ,   安田健治朗

ページ範囲:P.1127 - P.1131

ポイント

●最近では,膵胆道像の描出にまず,MRCPが用いられている.

●ERCPは,病理診断や精査,治療を前提とする場合に行われることが多い.

●ERCP施行前には病歴や病状,服薬内容などを把握するとともに文書による同意を取得しておく.

●ERCP施行後には自他覚症状や血液検査成績を確認し,術後膵炎の発症に注意する.

超音波診断

著者: 木田光広 ,   宮澤志朗 ,   今泉弘

ページ範囲:P.1132 - P.1135

ポイント

●超音波とは,20~20,000 Hzの人間の可聴域を超えた音波で,周波数が高いほど分解能は向上するが,他方,超音波は伝わりにくくなる(減衰).

●胆膵系のスクリーニングとして胆道系酵素,膵酵素,CA19-9などの腫瘍マーカーとともに,超音波検査は最初に用いるべき簡便で空間分解能の高い検査である.

●EUSは,胆膵系の早期癌の存在診断,進行癌の進展度診断,胆囊隆起性病変,膵囊胞性病変の鑑別診断に有用である.

●EUS-FNAは,他の画像診断で確定診断ができない腫瘍,リンパ節腫大,化学療法前の組織学的証明,仮性囊ドレナージ,腹腔神経叢ブロックなどに用いられている.

【治療】

内視鏡的乳頭切開・バルーン拡張術

著者: 五十嵐良典 ,   宅間健介 ,   岡野直樹

ページ範囲:P.1137 - P.1140

ポイント

●ガイドワイヤー型パピロトームによるESTでは,総胆管に確実に挿入する.

●切開方向を11時~12時に向けてendocut modeで切開する.

●胆管への挿入が困難な場合には,プレカットまたは乳頭膨大部切開術を行う.

●バルーン拡張では,総胆管の太さにあわせてバルーンを選択し,ゆっくりと拡張する.

●術後の患者状態を適切に把握し,症状がある場合には腹部CT検査などを行う.

内視鏡的胆道・膵ドレナージ術

著者: 糸井隆夫 ,   祖父尼淳 ,   糸川文英 ,   森安史典

ページ範囲:P.1141 - P.1146

ポイント

●内視鏡的胆管ドレナージ術は,胆管ドレナージ術のなかで最も推奨されるドレナージ法である.

●内視鏡的経鼻胆管ドレナージ術(ENBD)と内視鏡的胆管ステンティング術(EBD)の奏功率は,ほぼ同様である.

●胆囊ドレナージ術では,経皮経肝胆囊ドレナージ術(PTGBD)が内視鏡的胆囊ドレナージ術よりも推奨される.

●内視鏡的膵管ドレナージ術の有用性や方法は,いまだ十分に確立しているとは言えない.

●近年,超音波内視鏡を用いた胆管・膵管ドレナージが行われている.

トピックス:消化器内視鏡のこの10年間のブレイクスルー

経鼻内視鏡

著者: 星野明弘 ,   河野辰幸 ,   川田研郎

ページ範囲:P.1147 - P.1150

ポイント

●鼻内視鏡では咽頭反射がほとんど生じず,鎮静薬は必要ない.

●径が細いための相対的な画質の低さ,処置機能の低さが弱点である.

●丁寧にゆっくりと観察することや色調強調などで弱点を補うことができる.

●通常スコープでの適応に加え,経鼻・極細径ならではの適応がある.

●経鼻内視鏡の目的を明確に認識して実施することが重要である.

カプセル内視鏡

著者: 大塚和朗 ,   小形典之 ,   工藤進英

ページ範囲:P.1151 - P.1154

ポイント

●カプセル内視鏡は,内服したカプセルで小腸を撮像する新しい概念の内視鏡である.

●本邦での保険適応は,上部下部消化管の検査で原因不明の消化管出血例である.

●出血源同定は発症から時間が経過するほど困難となるので早期の検査が重要である.

●種々のコンピュータ支援診断機能が開発されて読影を簡便化している.

●食道用や大腸用も実用化され,生検や治療ができるものも研究されている.

バルーン内視鏡

著者: 林芳和 ,   矢野智則 ,   山本博徳

ページ範囲:P.1156 - P.1161

ポイント

●バルーン内視鏡の登場によって,小腸疾患の診断・治療が飛躍的に進歩してきている.

●ダブルバルーン内視鏡は2つのバルーンによって安全・確実な小腸内視鏡検査を実現した.

●バルーン内視鏡は優れた挿入性のみならず,深部挿入後にも保たれる優れた操作性が特徴である.

●近年,ダブルバルーン内視鏡の簡略型であるシングルバルーン内視鏡も登場し,小腸のバルーン内視鏡検査はより普及しつつある.

座談会

患者さんによりやさしい内視鏡検査を求めて―依頼医・施行医の立場から

著者: 緒方晴彦 ,   小林清典 ,   河合隆 ,   安岡博之

ページ範囲:P.1162 - P.1172

 消化器領域における内視鏡診断・治療は広く普及しており,一般医にとっても内視鏡検査を依頼する,もしくは自分で行うケースは増えている.

 本誌では,一般医が内視鏡検査を依頼する際の注意や,内視鏡施行医から依頼医への理想的なフィードバック,患者への望ましいインフォームドコンセントのありかたなどについて依頼医・施行医双方の立場からお話しいただいた.

連載 手を見て気づく内科疾患・7

RS3PE,高齢者の手の浮腫には注意

著者: 松村正巳

ページ範囲:P.1019 - P.1019

患 者:66歳,女性

病 歴:3週間前から朝の手のこわばり感が出現した.指をまっすぐ伸ばそうとすると痛い.こわばり感は昼過ぎには改善する.2週間前からは両手がむくんできた.

身体所見:両手背に著明な浮腫を認める(図1).両第3指近位指節間関節(proximal interpharangeal joint)に関節炎あり.

検査所見:血沈119.0 mm/時間,リウマトイド因子陰性

目でみるトレーニング

著者: 谷口浩和 ,   石川晶久 ,   田宮寛之 ,   鎗水浩治

ページ範囲:P.1182 - P.1188

内科医のためのせん妄との付き合い方・4

せん妄に対する薬物療法

著者: 本田明

ページ範囲:P.1189 - P.1193

せん妄の薬物療法は意識レベルを落とさないことを目標とする.ただし,せん妄に保険適応のある薬物はほとんどないため,その使用には患者・家族の同意が望ましい.

研修おたく海を渡る・43

新米指導医の生活―回診のコツ

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1194 - P.1194

 アメリカの大学病院では,入院患者の回診は外来主治医が行うのではなく,病棟当番を決めて持ち回りで担当することが多いです.今回は僕のいる血液腫瘍内科の回診スタイルを紹介します.たとえば,僕は2週間を一つのブロックとして,1年間で2週間×6回で3カ月間,病棟当番が当たっています.もっとも僕はClinical Facutlyの中でも下っ端なので,これは多い方です.Professorだったり,研究メインの人だと,年に2週間×2で1カ月だったりします.ともかくこの2週間は,毎日病棟回診をするのです.

 腫瘍内科の回診は,指導医,フェロー,レジデント,インターン,医学生,さらに抗がん剤を使うので薬剤師,薬学部の学生まで含めた大所帯でまわります.キャスターつきのコンピュータまでもお供に従えます.このコンピュータがまだ出ていなかった検査結果や,画像を見るには欠かせません.

書評

消化器内視鏡リスクマネージメント

著者: 多田正大

ページ範囲:P.1112 - P.1112

 繰り返される医療事故が社会的にも問題視されてから久しいが,医療従事者が原因究明と事故防止に努めることは責務である.まして合併症や偶発症の危険性が少なくない消化器内視鏡診療において,普段からリスクマネージメントの在り方を考えておくことは重要である.その精神を理解することは正しい診断と安全な治療に直結し,偶発症発生の予防,不幸にして事故が発生したときには患者の被害を最小限に留めることにつながる.内視鏡医やコメディカルはリスクマネージメントを知らずして診療に携わることはできないと断言しても過言ではない.

 日本消化器内視鏡学会でも各種委員会などにおいて,安全な内視鏡診療の在り方に関する討論が繰り返され,必然的にさまざまなガイドラインが提案されてきた.本書の執筆者である小越和栄先生は常にこの方面の議論の中心にいる存在であり,さまざまな提案を行ってきた最大の功労者の1人である.小越先生は海外における内視鏡診療の現況と問題点に熟知し,わが国の医療水準と社会的ニーズなどの事情を考慮しながら,リスクマネージメントの概念の普及に尽力してきた先駆者である.私も学会リスクマネージメント委員会における報告書作成の場で,小越先生の博学と篤い情熱を知り教えられることが少なくなかった.

肝疾患レジデントマニュアル―第2版

著者: 宜保行雄

ページ範囲:P.1174 - P.1174

 日本の誇る良書である.本書の第1版も“肝疾患の『ワシントンマニュアル』”のような必要十分条件を満たしており,すばらしい内容であったがさらにその上を行く内容になっている.

 ちなみに第1版は台湾で中国語版が出版され,彼らの白衣のポケットに入り日々の診療に大いに役立っているのである.

新・膠原病教室

著者: 近藤啓文

ページ範囲:P.1181 - P.1181

 「新・膠原病教室」は順天堂大学膠原病内科橋本博史名誉教授の新著である.橋本教授が14年前に上梓した「膠原病教室」の精神を受け継ぎながら全面的に改定し,up-to-dateにしたものである.橋本名誉教授は膠原病の臨床と研究でわが国の誇るべき最も優れた医学者の一人である.特にその臨床の力量はわが国で最も多い症例数を誇る膠原病内科を主宰した経験に基づいて得られたものである.橋本教授は教室における豊富な症例を解析し,素晴らしい臨床研究の成果に結実させ,膠原病に関する多くの専門書,一般書を上梓している.さらに教育者として多くの膠原病・リウマチの専門医を育て世に送り出した.本書はそこで培われたノウハウに基づいて著されたものである.

 本書を一読すると,まず橋本教授の臨床医・教育者としての力量が本書の組み立てで明らかになる.286ページのうちの三分の一を割いて膠原病の基礎について記述されている.膠原病の歴史から始まって,その位置付け,病態形成機序,膠原病にみられる臨床像や検査所見,そして治療に当てられている.医学生の教育ではこれほど詳細には教えていないので,学生に膠原病への関心をもたせる参考書としてとくに有用な部分である.治療薬については,最新の生物学的製剤を含めて作用機序から副作用までまとめて記されており,診療の現場で極めて有用である.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.1204 - P.1204

●この春の人事異動で弊誌を担当することになりました.前職の『週刊医学界新聞』では幅広い領域のトピックを取り上げていましたが,弊誌では1つの主題を掘り下げて学ぶことができる面白さを感じています.また,内科の各専門科の中でも切り口によってあらゆるテーマが存在することを知り,内科という領域の奥深さを改めて認識しました.今後,どうぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます.

●診断・治療技術の向上により,内視鏡を希望する患者さんは年々増加しています.また,本年1月には日本ヘリコバクター学会のガイドライン改訂により,ピロリ菌除菌が推奨度Aとされるなど,日常診療で内視鏡を依頼または施行される機会はさらに増えていくことと思います.座談会では,そのような日頃の診療で,一般内科の先生方が感じておられるであろう問題に焦点をあてました.抗血栓療法中の患者さんに休薬を行うか否か,内視鏡依頼医と施行医がうまく連携するにはどうしたらよいか,といったお悩みの答えが見つかるかもしれません.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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