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連載 外来診療に差をつけるコミュニケーションスキル・4
診察室の笑い:患者さんの笑いに隠された本当の意味
著者: 長谷川万希子1
所属機関: 1高千穂大学人間科学部
ページ範囲:P.162 - P.167
文献購入ページに移動ああ,この患者さん苦手なんだ…….診察室に入ってきたのは,苦手な患者Sさん.いつも説明が堂々巡りになって,なかなか診察が終わらない.訴えが多くて,同じ説明を何度しても理解してくれない.Sさんが診察室に入ってきた途端に,どのように診察を切り上げようかと頭を悩ます.
Sさん(72歳,女性)は,脳梗塞の発作を過去に2回起こしている.利き手の右上肢に軽い麻痺がある.現在は降圧薬を服用していて,リハビリが中心.診察室に入るなり,Sさんは笑いながら「人差し指と親指が力がないんです.いったい普通ならどのくらいで力が出るようになるのか,わかりませんよねえ」.それに答えて「それは,何遍も言いますけれどもね,人それぞれなんですよ」.そこでSさんがふっと笑う.私は説明を続けて,「リハビリを中止したらね,もうそれで終わりですから.もう諦めずに気長にやらないとダメですよ」.
急いで展開を図りたく,「まあちょっと,血圧測ってみましょうか」.血圧も落ち着いているので,一気に話を切り上げようと,作り笑いをしながら「何とか頑張ってやっていくというようなね.もうダメかなあとか思っても,ずっと続けていくっていうことですよ.ねえ,頑張って」.と励ました.その途端に,「先生,あのう,だいたいどのくらいで元に戻るっていうんですか.元気になるんですよねえ」.……そして今日も,堂々巡りに陥っていく.
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