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文献詳細

雑誌文献

medicina47巻1号

2010年01月発行

文献概要

連載 外来診療に差をつけるコミュニケーションスキル・4

診察室の笑い:患者さんの笑いに隠された本当の意味

著者: 長谷川万希子1

所属機関: 1高千穂大学人間科学部

ページ範囲:P.162 - P.167

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事例紹介●治療の説明は堂々巡り,患者さんは何度も笑うけれども……

 ああ,この患者さん苦手なんだ…….診察室に入ってきたのは,苦手な患者Sさん.いつも説明が堂々巡りになって,なかなか診察が終わらない.訴えが多くて,同じ説明を何度しても理解してくれない.Sさんが診察室に入ってきた途端に,どのように診察を切り上げようかと頭を悩ます.

 Sさん(72歳,女性)は,脳梗塞の発作を過去に2回起こしている.利き手の右上肢に軽い麻痺がある.現在は降圧薬を服用していて,リハビリが中心.診察室に入るなり,Sさんは笑いながら「人差し指と親指が力がないんです.いったい普通ならどのくらいで力が出るようになるのか,わかりませんよねえ」.それに答えて「それは,何遍も言いますけれどもね,人それぞれなんですよ」.そこでSさんがふっと笑う.私は説明を続けて,「リハビリを中止したらね,もうそれで終わりですから.もう諦めずに気長にやらないとダメですよ」.

 急いで展開を図りたく,「まあちょっと,血圧測ってみましょうか」.血圧も落ち着いているので,一気に話を切り上げようと,作り笑いをしながら「何とか頑張ってやっていくというようなね.もうダメかなあとか思っても,ずっと続けていくっていうことですよ.ねえ,頑張って」.と励ました.その途端に,「先生,あのう,だいたいどのくらいで元に戻るっていうんですか.元気になるんですよねえ」.……そして今日も,堂々巡りに陥っていく.

参考文献

1)和座一弘:患者満足度と医師のコミュニケーションスキル.medicina 46:1716-1720, 2009
2)長谷川万希子:診察室でのなにげない「笑い」が意味するもの―医療社会学の視点から.看護学雑誌 63:1126-1132, 1999
3)植田栄子:なにげない「ことば」が患者にもたらすもの―言語学の視点から.看護学雑誌63:1050-1057, 1999
4)志水彰:〔笑い〕の治癒力,PHP研究所,1998
5)松村真司・箕輪良行(編):コミュニケーションスキルトレーニング―患者満足度の向上と効果的な診療のために,医学書院,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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