icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina47巻11号

2010年10月発行

文献概要

特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集 血液生化学検査 糖質および関連物質

グルコース

著者: 山口いずみ1 阪本要一2

所属機関: 1東京慈恵会医科大学附属青戸病院糖尿病代謝内分泌内科 2慈恵医大晴海トリトンクリニック

ページ範囲:P.207 - P.211

文献購入ページに移動
異常値の出るメカニズムと臨床的意義

 グルコース(ブドウ糖)は分子量180の単糖で,血液中の糖質の主成分である.生体にとって重要なエネルギー源であり,血中のグルコースの濃度を一般的に血糖値という.生体内のグルコースは腸管からの糖の吸収,肝における糖新生と糖放出,腎からの排泄,骨格筋や脳での糖利用,自律神経およびさまざまなホルモン(インスリン,グルカゴン,カテコラミン,ステロイドホルモン,成長ホルモン)などにより規定され,恒常的に維持される.これらの恒常性が破綻したときに高血糖あるいは低血糖をきたす.

 高血糖は主に一過性と持続性に分けられる.例えば,胃切除後症候群は一過性高血糖をきたすが,これは糖質が胃でとどまらずに一気に体内へ吸収され,一過性に高血糖となるためである.また,肝硬変では肝でのインスリン作用が障害されるため食後高血糖を起こす.一方,持続性高血糖状態はいわゆる糖尿病に多くみられ,インスリンの分泌低下や欠乏が主たる原因である.膵β細胞が免疫学的機序により破壊され,絶対的インスリン分泌低下に至るのが1型糖尿病であり,糖尿病の約5%を占める.一方,相対的インスリン分泌低下やインスリン作用障害による慢性的高血糖を特徴とするのが2型糖尿病であり,本邦の糖尿病の大部分を占める.また,インスリン拮抗ホルモン(成長ホルモン,カテコラミン,ステロイドホルモンなど)が過剰な状態でも高血糖を招く.

参考文献

1)日本糖尿病学会(編):糖尿病治療ガイド2010-2011,文光堂,2010
2)糖尿病診断基準に関する調査検討委員会:糖尿病と診断基準に関する委員会報告.糖尿病53:450-467, 2010
3)Tominaga M, et al:Impaired glucose tolerance is a risk factor for cardiovascular disease, but not impaired fasting glucose;The Funagata Diabetes Study. Diabetes Care 22:920-924, 1999
4)DECODE Study Group:Glucose tolerance and cardiovascular mortality;Comparison of fasting and 2-hour diagnostic criteria. Arch Intern Med 161:397-405, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?