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特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集 血液生化学検査 血液ガス・電解質・微量金属
Mg(マグネシウム)
著者: 荒川泰行1 荒川泰雄2
所属機関: 1公立阿伎留医療センター 2日本大学医学部消化器肝臓内科学分野
ページ範囲:P.273 - P.277
文献購入ページに移動マグネシウム(Mg)は,環境中では炭酸塩(MgCO3),硫酸塩(MgSO4),塩化物(MgCl2)として広く存在するが,生体内では,カルシウム(Ca),ナトリウム(Na),カリウム(K)に次いで4番目に多い陽イオン金属で,細胞内ではKに次いで2番目に多い.例えば,体重70kgの成人の体内には約800~1,200mmol(20~28g)のMgが存在するが,そのうち60~65%が骨中に,27%が筋肉中に,6~7%がその他組織中に,そして残りの1%が細胞外液に存在する.したがって,臓器分布では,骨および筋肉のほか,代謝活性の高い脳・神経組織および心筋,肝臓,消化管,腎臓,外分泌および内分泌腺,リンパ組織などに多い.
Caが主として細胞外に存在するのに比べて,Mgは細胞内に存在し,細胞内:細胞外比Caでは0.0001であるのに対し,Mgは3.0~8.0に達する.Mgは種々の代謝の基本的反応の必須イオンとして重要な役割を果たしているが,それは300種類以上の酵素がその活性化にMgを必要とする点にある.特にリン酸伝達反応とATPが関与する反応系の酵素反応(ATPase,クレアチンキナーゼ,アデニル酸シクラーゼ,Na,K-ATPasseなど)や解糖系酵素(ヘキソキナーゼ,ホスホフルククトキナーゼなどの7種類)にMgがアクチベータとして必須であることより,細胞膜機能,アミノ酸の活性化,DNA合成,蛋白合成,酸化的リン酸化,筋収縮,赤血球と血小板の形態保持など細胞レベルのエネルギー代謝に不可欠である.したがって,神経伝達活性,神経・筋インパルス伝達,心臓興奮性,血管運動性,血圧などの調節にMgは重要な役割を果たしている.
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