文献詳細
特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
内分泌学的検査 甲状腺・副甲状腺
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗甲状腺マイクロゾーム抗体)
著者: 日高洋1
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科内科学講座(臨床検査診断学)
ページ範囲:P.332 - P.334
文献概要
甲状腺ペルオキシダーゼ(thyroid peroxidase:TPO)は甲状腺ホルモンの合成過程のうち,チロシン残基のヨード化およびヨードチロシンのカップリングに働く膜結合蛋白で,甲状腺内にある臓器特異蛋白の1つである.TPOでマウスを免疫すると,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)が産生されると同時に甲状腺炎も惹起されることより,甲状腺ペルオキシダーゼは自己免疫性甲状腺炎の原因抗原の1つと考えられている.ヒトで甲状腺組織を調べても,TPOAb陽性であれば甲状腺炎が認められる1).したがって,ヒトでの自己免疫性甲状腺疾患である慢性甲状腺炎(橋本病),Basedow病の多くでTPOAbが陽性となる.ただし,TPOAb陽性の妊婦において,胎盤を通過した母体の抗体が胎児の甲状腺に障害を及ぼさないことより,TPOAb自体には病因的意義はほとんどないものと考えられている.
なお,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体は当初,甲状腺マイクロゾーム分画に反応する自己抗体として発見されたため,抗甲状腺マイクロゾーム抗体と呼ばれていた.
参考文献
掲載誌情報