文献詳細
文献概要
特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集 免疫学的検査 感染関連検査〈微生物の抗原・抗体検査〉
マイコプラズマ抗体
著者: 松本哲哉12
所属機関: 1東京医科大学微生物学講座 2東京医科大学病院感染制御部
ページ範囲:P.418 - P.419
文献購入ページに移動肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は主に上気道炎,気管支炎,および肺炎などの呼吸器感染症を起こし,特に市中肺炎例では分離頻度が高く,重要な病原体として位置づけられている.マイコプラズマ肺炎の臨床的特徴として,①小児から若年の成人に多い,②乾性咳嗽が持続する,③胸部X線で明らかな肺炎像を認めるにもかかわらず肺雑音などの聴診所見に乏しい,④末梢血白血球数やCRPは正常域か軽度の上昇にとどまる,という特徴を有している.一方,細菌性肺炎では臨床症状が顕著で,炎症所見も高値を示しやすいため,上記の特徴をもとにマイコプラズマ肺炎は非定型肺炎の範疇に入れられている.なお,同じく肺炎クラミジアも非定型肺炎の重要な起炎病原体であるが,これらの病原体はいずれも肺炎の治療によく利用されるペニシリン系やセフェム系などのβ-ラクタム系抗菌薬が無効であり,起炎病原体の診断が治療上重要である.
マイコプラズマはPPLO培地を用いて培養が可能であるが,ルーチンの検査として微生物検査室で培養が行われることはない.そこで一般的にはマイコプラズマ抗体価による血清学的診断が用いられている.抗体価の測定は通常,急性期と発症後2~4週間後の回復期のペア血清による判定が行われるが,IgM抗体を検出する試薬を用いれば発症後1週間以降の診断も可能である.
参考文献
掲載誌情報