medicina47巻2号

2010年02月発行

今月の主題 アレルギー疾患を疑ったら，こう診る！ Column

造影剤アレルギー

著者： 森本佳和¹

所属機関： ¹医療法人和光会山田メディカルクリニック

ページ範囲：P.234 - P.234

　X線検査で用いる造影剤はベンゼン環を基本構造としてヨード原子3個を含む安定した化合物（トリヨード剤）の溶液である．この造影剤によって，蕁麻疹，悪心といった軽度な反応から，呼吸困難，急激な血圧低下，心停止，意識消失などの重篤な反応がみられることがある．造影剤によるこのような反応はIgEに依存するⅠ型の即時型アレルギーによるアナフィラキシーに類似しているものの，ほとんどのケースで造影剤に特異的なIgE抗体は関与せず，古典的な「アナフィラキシー反応（anaphylactic reaction）」と区別して「アナフィラキシー様反応（anaphylactoid reaction）」と呼ばれる．このアナフィラキシー様反応の生じる正確なメカニズムは明らかではないが，造影剤の高い浸透圧やイオン性であるという物理的な特性によって，肥満細胞や好塩基球からのメディエーターの直接的放出を惹起することが原因の1つになるといわれている．そのため，例えば皮膚検査，特異的IgE検査やリンパ球幼弱化試験などは意味をもたず，造影剤によるアナフィラキシー様反応をあらかじめ予測することはできない．「過去に造影剤を用いた検査で反応がみられた」「アトピー体質をもつ」「重篤な心血管系疾患がある」といったことが危険因子になる^1,2）ので，病歴聴取が重要になる．なお，エビ・カニのアレルギーと造影剤アレルギーに関連はない^3）．

参考文献

1）Enright T, et al : The role of a documented allergic profile as a risk factor for radiographic contrast media reaction. Ann Allergy 62 : 302, 1989

2）Lieberman PL, Seigle RL : Reactions to radiocontrast material；Anaphylactoid events in radiology. Clin Rev Allergy Immunol 17 : 469-496, 1999

3）Beaty AD, et al : Seafood allergy and radiocontrast Media ; Are physicians propagating a myth? Am J Med Feb 121 : 158, e1-4, 2008

4）Katayama H, et al : Adverse reactions to ionic and nonionic contrast media-A report from the Japanese Committee of the Safety of Contrast Media. Radiology 175 : 621-628, 1990

5）Greenberger PA, et al : Two pretreatment regimens for high-risk patients receiving radiographic contrast media. J Allergy Clin Immunol 74 : 540, 1984